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07-01 186号 青汁教室の食養断想(4) ガンの予防について
07-02 187号 青汁教室の食養断想(5) ガンの予防について
07-03 188号 青汁教室の食養断想(6) ガンの予防について
07-04 188号 青汁教室の食養断想(1) 健全な子どもを産むには
07-05 189号 青汁教室の食養断想(2) 健全な子どもを産むには
07-06 190号 青汁教室の食養断想(3) 健全な子どもを産むには
07-07 191号 青汁教室の食養断想(4) 健全な子どもを産むには
07-08 192号 青汁教室の食養断想(5) 健全な子どもを産むには
07-09 193号 青汁教室の食養断想(6) 健全な子どもを産むには
07-10 194号 青汁教室の食養断想(7) 健全な子どもを産むには
07-11 195号 青汁教室の食養断想(8) 健全な子どもを産むには
07-12 196号 青汁教室の食養断想(9) 健全な子どもを産むには
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07-14 198号 青汁教室の食養断想(11) 健全な子どもを産むには
07-15 199号 青汁教室の食養断想(12) 健全な子どもを産むには
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07-01. 青汁教室の食養断想(4) ガンの予防について
    完全栄養の工夫

     友成 左近 

     ガンをはじめ、最近目立って多発している厄介な病気を予防する食養には、すべての食物をよく吟味して、発ガン原因になるものはいうまでもなく、およそ体に有害有毒作用を及ぼすものを極力排除すると共に、毎日の食物構成を改めて、できる限りの完全栄養をはかり、体力・抵抗力を強化することが大切である。完全栄養をはかるには、お互い毎日の食物全体の実状からみて、まず第一に、なかのなかまで緑色の濃い青野菜を、日に体重の1%以上と、できるだけ沢山食べると共に、さらにその他の食物も、砂糖や精白した米麦を極力ひかえて、芋や未精白の米麦にきりかえ、筋肉部だけの魚や肉を極力ひかえて、大豆やマルごと食べる小魚や内臓にきりかえ、そして、すべて薄味にして、ハラ八分に食べることが大切である。

     お互い毎日、めいめい習慣や好みや、栄養上の心がけに従って、いろいろなものを食べているが、おしなべて、米・麦・砂糖・油や、肉・魚・卵といったものが多く、野菜・果物・海草、分けても青野菜が少ない。ために、生きていく力になる熱量素や、体の細胞組織をつくりかえていく蛋白質は、ほぼ必要なだけはとり入れており、人によっては必要以上になっているが、これが体内で栄養として利用されるのに必要不可欠な各種のミネラルとビタミンが著しく不足して、栄養が不調和になっている。従って、せっかくとり入れた熱量素や蛋白質が十分に利用されないので、結果的には不足して、栄養が不十分・不完全になっている。それだけではなく、利用されなかったものが体内にたまって、あれこれとわざわいをしている。これはたとえば、風呂をわかすとき、燃料は十分いれてあるが空気が十分はいっていないため、燃料のわりに風呂がわかず、その上、カマドやエントツをすすだらけにしているようなものだ。

     栄養に調和・完全をはかるには、実状、野菜・果物・海草を思いきりふやして、各種のミネラルとビタミンを十二分にとりいれることが大切である。他のどんな食物も、これがあれこれと不足しているからだ。といって、なかのなかまで緑色の濃い青野菜以外は、こうした成分がケタちがいに少ないので、まずもってこの青野菜をふやすことが肝要である。
     それも実状、日に体重の1%以上になる位ふやさないと、うまく調和がとれないのだ。そうする以外に、だれがなんとリクツをつけようと、理論的にも実際的にも、これに代わり、これに勝る方法はないのだ。しかも青野菜は、種類の選定と栽培の仕方と食べ方をあやまらなければ、その他すべての食物とちがって、どんなに食べすぎても、体に少しも差し支えは起こらず、多ければ多いほど抵抗力が強くなるのだ。

     青野菜をできるだけ沢山食べるには、まず第一に、新鮮なうちに生のまますりつぶして、汁だけしぼりとって、青汁にして飲むのが最も有効であり、ふつうの成人では、日に2合以上飲むことが大切である。少しは香りや味が悪くなるが、どんな固い青野菜でも、さらに広く家畜の飼料(実は、こんなものほど成分がすぐれているのだ)でも、しかも多量に、胃腸をいためることなく食べることができ、必要な成分が最高度に吸収できるからだ。と共に、さらに、生のまま、油(あるいはキナコやイリゴマ)と酢と塩などで調味したり、また、好みにあわせて煮たきしたりして、できるだけ沢山食べることが大切である。毎度の食物に変化がつき、また栄養がよりいっそう完全になり、さらに便通に必要なセンイをとり入れることができるからだ。

     だが、この青野菜は、必ず、栽培や保存に有害有毒な農薬や医薬を使っていない安全なものであることが肝要である。なにぶんとも沢山食べるので、もしこうしたものを使っていると、多少とも残留しているため、同時に多量に食べこむようになって、栄養はよく調和してきても、肝臓・腎臓・神経その他に慢性中毒を引き起こすからだ。またこの青野菜は、化学肥料ばかりにたよらず、深耕して、有機質肥料と石灰を十分施して栽培したものであることが大切である。それだけ成分にすぐれ、味もよくなるからだ。
     もうひとつ、青野菜ではあるが、ホウレンソウ・フダンソウや、スイバ・ピートの葉などは、ゆでて汁をすて、ほどほどに食べるのは差支えないが、生のまま多量に、ましてや青汁にして食べてはならない。ビタミンは多いが、シュウ酸が多いので、カルシウム(ミネラルのうち最も不足しているもの)と結合して、その吸収を妨げ、さらに体内でも、その利用を妨げ、その上、腎臓結石ができる恐れがあるからだ。なお、青汁には、ふつうの大根葉やヨモギなどのように、刺激の強いものは不適切である。飲みにくいだけでなく、胃などをいためるからだ。

     完全栄養をはかるには、まずもって青野菜を、できるだけ沢山食べることが肝要であるが、さらにその他の食物も、ミネラルやビタミンが多く、栄養に調和をとりやすいものをふやして、そうでないものをひかえることが大切である。せっかく沢山食べる青野菜の効果を、よりいっそう高めるためである。
     このため、砂糖や精白した米麦や、それを材料にした菓子・酒・パン・ウドンなどを極力ひかえて、芋や未精白の米麦にきりかえ、筋肉部だけの切り身の魚や肉や、それを材料にした加工食品を極力ひかえて、大豆やマルごと食べる小魚や内臓などに切りかえることが大切なのだ。なお、こうした食物も、栽培・飼育・保存・加工で有害有毒物がはいっていない安全なものを選ぶことが大切であり、それには今のところ、主として芋と大豆にするのが適切である。その他に比べて安全度が高く、栄養もよく調和しており、入手も容易であるからだ。
     というと、いかにも粗食のようで、それではたして栄養が十分とれるのか、と疑問をいだく人があるかも知れない。だが、それは偏った栄養知識からであって、理論的にも実際的にも、これで、いな、こうして初めて完全栄養がはかれるのだ。また、毎日の食物がさぞ味気なかろうと、ためらう人があるかも知れない。だが、それはたとえば、まだ泳いだことのない人が陸上でためらうようなものであって、実際に食べてみると意外とおいしいのだ。たとえ始めのうちは多少まずくても、しばらく食べつづけていると、これが最高においしくなる。(もっとも、その品質を選ぶことが大切であるが)。

     そして、ふつう人々がご馳走といっているものが、食べておいしくはあっても、別にそう食べたくはなくなる。とくに青汁は、もともとそうおいしいものではないが、飲みつづけていると、おのずから体が要求してきて、毎日飲まねばモノ足りなくなる。とりわけ冬分は、有機質肥料と石灰を十分施して栽培した材料で作った青汁は、なんともいえずおいしくなる。
     であれば、お互い、「食は命なり」とわきまえて、あやまった習慣や好みや栄養知識にとらわれることなく、すなおに心を開いて、毎日の食物をこういうふうに改めて完全栄養をはかり、ガンその他厄介な病気の予防につとめて、心身ともに健やかに天寿を完うしたいものである。




07-02. 青汁教室の食養断想(5) ガンの予防について
    早期の発見治療と再発転移の防止

     友成 左近 

     ガン予防の食養には、一方においては、食物はすべてよく吟味して、発ガン性物質はいうまでもなく、およそ有害有毒な添加物のはいった加工食品や、有毒な農薬その他で汚染した食料、その他発ガンの原因になるようなものを極力排除することが大切である。
     そして他方においては、毎日の食物構成を改めて、まずもって、なかのなかまで緑色の濃い青野菜を、日に体重の1%以上と、できるだけ沢山、その品質に応じて、青汁にして(ふつうの成人で日に2合ぐらいは)飲み、さらに生のまま、あるいは煮たきして食べ、また、その他の食物も、精白した米麦や、筋肉部だけの魚屋肉などをひかえて、芋や未精白の米麦や、大豆やマルごと食べる小魚や内臓などにきりかえ、砂糖と塩をひかえて薄味にし、ハラ八分に食べて、できる限りの完全栄養をはかり、ガンに対する抵抗力を強化することが大切である。

     だが、こういうふうに、どんなに注意し、努力しても、人間ナマミであり、それに生活環境は悪化しており、また食料事情は思うにまかせず、さらに習慣や好みは容易に改めがたいので、いつ、どんなことでガンその他厄介な病気にかからないとも限らない。そこで大切なことは、こうだ。30歳40歳以上になって、ガンにかかりやすい年令ともなれば、面倒くさがらずに定期に検診をうけること。
     そして、もしガンにかかっているときはいうまでもなく、その疑いがあり、それに移行する恐れのある病気にかかっているときは、ためらわずに早期に十分な治療をうけること。ましてや、ガンの危険信号に気づいたときには、早速こうすること。

     ひと口にガンといっても病類はいろいろあるが、殆んど自覚症状のないものもある。が、今のところ、およそつぎのような症状があったら、ガンの危険信号と考えよといわれている。

    1. 体のどこかに痛みが長くつづき、あれこれと手当をしても、すっきりと治らないとき。
    2. 乳房その他にシコリができて、いつもでも消えないとき。
    3. 子宮から異常な出血があったとき。
    4. ホクロやコブに、なにか変化が起こったとき。
    5. しわがれ声やセキが長くつづくとき。
    6. 飲食物をのみこむときに、たえずどうも調子よくいかないとき。
    7. 消化不良の下痢や便秘が長くつづくとき。
    8. 飲食物の好みに著しい変化が起こったとき。

     ガンの検診は最近よほど進歩してきたとはいえ、必ずしも常に、早期に的確に検診できるとは限らない。だからといって、定期の検診や危険信号に気づいたときの検診を怠るのは、なにより大切な健康を保っていくのに不心得なことだ。

     検診の結果、さいわいガンの疑いはなくても、他に厄介な病気を早期に発見して治療することができるからだ。ましてや、慢性胃炎や胃潰瘍や皮膚の古傷などからガンができることがあり、その他どんな病気からガンができるか、今のところ、まだよく分かっていないからだ。
     人間ナマミであり、それに不心得もさけがたいわけであれば、およそ病気というもの、とくにガンはその性質から、神経質に心配してはならないが、常に必ず早期に発見して治療することが大切である。

     ガンの治療としては、今のところ手術と放射線照射と化学療法とが主なものである。すなわち、ガン組織やガンに移行する恐れのある前ガン組織を、取り除くことができる場合は手術をする。が、完全に取り除くことは困難であるため、手術後つづけて、これを放射線照射や化学療法によって破壊する。手術ができない場合は放射線照射や化学療法だけである。
     だが、こうした治療だけで、ガン組織が完全に除去され破壊されて、必ずガンが治るとは限らず、再発することもあれば転移することもある。そこで大切なことは、とくに治療中・後には、できる限りの完全栄養をはかって抵抗力を養なうことだ。でないと、治療中・後には体力・抵抗力が著しく低下してくるので、これが治療の効果を妨げるのだ。また、とかく気分がすぐれないので、十分な治療を怠るようになりやすいのだ。さらに、十分な治療をしても、なお体内どこかにガン組織が残っていることがあるので、再発したり転移したりする恐れがあるのだ。

     けれども、たとえ気分がすぐれず、食欲が出なくても、そこは努力して完全栄養をはかっておれば、治療の効果がよりいっそうあらわれ、だんだんと気分もすぐれ食欲も出てきて、十二分に治療をうけ、さらに再発・転移をくいとめることができるようになるのだ。
     ガンの治療が成功して、再発や転移をくいとめることができるかどうか、ということは、その病類や病状や治療の仕方にもよるが、この食養によって著しく左右される場合が多いのだ。

     ガンの治療中・後の食養には、予防の工夫を徹底的に行なえばよい。とくに初期には、なにはさておき青汁を、日に4合ないし6合以上飲むことが肝要である。そしてその他の食物は、芋と大豆を主とし、それ以外は、小魚・牛乳・卵・海草・野菜・果物などをほどほどにすることが大切である。そして、これはすべて、必ず安全なものでなければならない。
     といって、これで必ず確実に治療が成功して、再発や転移をくいとめることができるか、というと、今のところ、できると断言するわけにはいかない。
     人間ナマミのことであり、それに、ガンの再発や転移の原因がまだ明きらかでないからだ。けれども、こうして再発や転移をくいとめている人が少なくないのであり、また、これを中途で怠ったために、再発したり転移したりした人もあるのだ。




07-03. 青汁教室の食養断想(6) ガンの予防について
    再発・転移の防止例

     友成 左近 

     ガン予防の食養には、一方においては、食物はすべてよく吟味して、発ガン性物質はいうまでもなく、およそ有害有毒な添加物のはいった加工食品や、有毒な農薬その他で汚染した食料、その他発ガンの原因になるようなものを極力排除することが大切である。
     そして他方においては、毎日の食物構成を改めて、まずもって、なかのなかまで緑色の濃い青野菜を、日に体重の1%以上と、できるだけ沢山、その品質に応じて、青汁にして(ふつうの成人で日に2合ぐらいは)飲み、さらに生のまま、あるいは煮たきして食べ、また、その他の食物も、精白した米麦や、筋肉部だけの魚屋肉などをひかえて、芋や未精白の米麦や、大豆やマルごと食べる小魚や内臓などにきりかえ、砂糖と塩をひかえて薄味にし、ハラ八分に食べて、できる限りの完全栄養をはかり、ガンに対する抵抗力を強化することが大切である。

     だが、こういうふうに、どんなに注意し、努力しても、人間ナマミであり、それに生活環境は悪化しており、また食料事情は思うにまかせず、さらに習慣や好みは容易に改めがたいので、いつ、どんなことでガンその他厄介な病気にかからないとも限らない。そこで大切なことは、こうだ。30歳40歳以上になって、ガンにかかりやすい年令ともなれば、面倒くさがらずに定期に検診をうけること。
     そして、もしガンにかかっているときはいうまでもなく、その疑いがあり、それに移行する恐れのある病気にかかっているときは、ためらわずに早期に十分な治療をうけること。ましてや、ガンの危険信号に気づいたときには、早速こうすること。

     ひと口にガンといっても病類はいろいろあるが、殆んど自覚症状のないものもある。が、今のところ、およそつぎのような症状があったら、ガンの危険信号と考えよといわれている。

    1. 体のどこかに痛みが長くつづき、あれこれと手当をしても、すっきりと治らないとき。
    2. 乳房その他にシコリができて、いつもでも消えないとき。
    3. 子宮から異常な出血があったとき。
    4. ホクロやコブに、なにか変化が起こったとき。
    5. しわがれ声やセキが長くつづくとき。
    6. 飲食物をのみこむときに、たえずどうも調子よくいかないとき。
    7. 消化不良の下痢や便秘が長くつづくとき。
    8. 飲食物の好みに著しい変化が起こったとき。

     ガンの検診は最近よほど進歩してきたとはいえ、必ずしも常に、早期に的確に検診できるとは限らない。だからといって、定期の検診や危険信号に気づいたときの検診を怠るのは、なにより大切な健康を保っていくのに不心得なことだ。

     検診の結果、さいわいガンの疑いはなくても、他に厄介な病気を早期に発見して治療することができるからだ。ましてや、慢性胃炎や胃潰瘍や皮膚の古傷などからガンができることがあり、その他どんな病気からガンができるか、今のところ、まだよく分かっていないからだ。
     人間ナマミであり、それに不心得もさけがたいわけであれば、およそ病気というもの、とくにガンはその性質から、神経質に心配してはならないが、常に必ず早期に発見して治療することが大切である。

     ガンの治療としては、今のところ手術と放射線照射と化学療法とが主なものである。すなわち、ガン組織やガンに移行する恐れのある前ガン組織を、取り除くことができる場合は手術をする。が、完全に取り除くことは困難であるため、手術後つづけて、これを放射線照射や化学療法によって破壊する。手術ができない場合は放射線照射や化学療法だけである。
     だが、こうした治療だけで、ガン組織が完全に除去され破壊されて、必ずガンが治るとは限らず、再発することもあれば転移することもある。そこで大切なことは、とくに治療中・後には、できる限りの完全栄養をはかって抵抗力を養なうことだ。でないと、治療中・後には体力・抵抗力が著しく低下してくるので、これが治療の効果を妨げるのだ。また、とかく気分がすぐれないので、十分な治療を怠るようになりやすいのだ。さらに、十分な治療をしても、なお体内どこかにガン組織が残っていることがあるので、再発したり転移したりする恐れがあるのだ。

     けれども、たとえ気分がすぐれず、食欲が出なくても、そこは努力して完全栄養をはかっておれば、治療の効果がよりいっそうあらわれ、だんだんと気分もすぐれ食欲も出てきて、十二分に治療をうけ、さらに再発・転移をくいとめることができるようになるのだ。
     ガンの治療が成功して、再発や転移をくいとめることができるかどうか、ということは、その病類や病状や治療の仕方にもよるが、この食養によって著しく左右される場合が多いのだ。

     ガンの治療中・後の食養には、予防の工夫を徹底的に行なえばよい。とくに初期には、なにはさておき青汁を、日に4合ないし6合以上飲むことが肝要である。そしてその他の食物は、芋と大豆を主とし、それ以外は、小魚・牛乳・卵・海草・野菜・果物などをほどほどにすることが大切である。そして、これはすべて、必ず安全なものでなければならない。
     といって、これで必ず確実に治療が成功して、再発や転移をくいとめることができるか、というと、今のところ、できると断言するわけにはいかない。
     人間ナマミのことであり、それに、ガンの再発や転移の原因がまだ明きらかでないからだ。けれども、こうして再発や転移をくいとめている人が少なくないのであり、また、これを中途で怠ったために、再発したり転移したりした人もあるのだ。




07-04. 青汁教室の食養断想(1) 健全な子どもを生むには

     友成 左近 

    異常児の出生増加は人間尊貴上極めて重大
     心身ともに健全な子どもは、自分の子であれ他人の子であれ、だれしもひとしく、なにごとにもまして念願している。
     が、それにはいうまでもなく、まず最初に、肢体健全な子ども・心身ともに健全に育つ素地を備えた子どもを生むことが肝要である。
     だが最近、流・死産もさることながら、異常出産児・未熟児・奇形児の出生がだんだん増加している。
     それだけではなく、生まれたときは外見一応健全ではあるが、成長するにつれて、先天的・生得的と思われる潜在的な異常があらわれて、心身に障害のある異常児になる場合も増加している。
     人間尊貴が最高命題であるのに、生まれたときから顕在的にか潜在的にか、心身に異常・障害という負荷をもった子どもの出生が増加していることは極めて重大な問題である。

     * 

     ところで、異常出産や異常児の出生、わけてもこれが最近だんだん増加していることには、それ相応の原因があるわけであり、原因によっては予防できるはずである。
     だがこれは、なにぶんとも神秘な生命にかかわることであり、また科学的な調査研究には種々困難な問題を伴なうため、まだなにほども究明されていないのが実状である。
     だからといって、根も葉もない言い伝えや迷信に盲従して、いたずらに取り越し苦労をしたり、また、どうにもならないことと、なりゆきにまかせていては、ことは打開されない。
     不十分ながらも科学的に、そのおそれがあるといわれていることでも手がかりにして、人類が長い間つみ重ねている知恵に学んで、そこは賢明に推察して予防に最善をつくすことが肝要である。

     * 

     と共に、もし異常児が生まれた場合には、できるだけ早期に発見して、その治療と福祉に最善をつくさねばならず、それには広く社会的政治的に行き届いた配慮が必要である。
     ところが実状、異常児の問題心理については、個人的にも社会的・政治的にも、その出生予防よりも治療や福祉の方にウェイトがおかれているきらいがある。
     だがこれは、同時に同等に、最善をつくして対処しなければならないことがらであり、筋道としては、まずもって予防に、そしてそのうえで治療や福祉に、というのでなければならぬ。

     * 

    遺伝による異常児は近親結婚をさけて
     人間しょせん生きものである以上、どんな子どもが生まれるか、ということは一面、生物学的な遺伝の法則に支配されている。

     * 

     子どもとして生まれる新しい生命は、母親になる女性の卵子が、父親になる男性の精子を受精したときに始まる。
     そして、この卵子も精子も、それそれ一個の細胞ではあるが、その内部にある染色体は、ふつうの細胞の半数、23個であり、この染色体が、それそれ数万個といわれる遺伝子を内包しているのであって、この卵子と精子それそれの遺伝子によって、どんな遺伝的素質をもった子どもが生まれるかが決定するのだ。
     そこで先天的異常児が生まれるのは、まず第一に、この卵子か精子あるいは双方の遺伝子に祖先から代々うけついでいる異常がある場合であって、ふつう遺伝による先天的異常というのは、こういう場合である。

     * 

     だが、今日の人類が生まれるまでの遠い昔の進化の歴史はさておき、人類の長い歴史の間に、生活環境にうまく適応できないような異常児は適者生存の法則のもとに、多くの場合、流・死産し、たとえ生まれても自然に淘汰されて、今日では、異常児を生むような遺伝的素質をもった成人は極めて少なくなっている。
     とはいってもまだ、血友病や色盲その他の遺伝病をもっている人や、手足その他心身に遺伝のよる奇形・異常をもっている人が、全くなくなっているわけではない。
     また、顕在的には別に異常はないが、生まれてくる子どもに出てくるような異常を潜在的にもっている人も、同様である。

     * 

     そこで肝要なことは、近親結婚をさけることだ。近親者は、良し悪しにつけ、ほぼ同じような遺伝的素質をもっているので、双方の悪い方の遺伝子が重なって、異常児が生まれるおそれがあるからだ。
     であれば、自分自身に、あるいは近親者に、なんらかの遺伝的な異常がある場合は、容易にたどることのできる範囲の近親者とは結婚しないのが賢明である。

     * 

    異常児の出生には生活環境による場合が多い
     流、死産した胎児や、異常出産であれ正常出産であれ、生まれた子どもに、奇形その他の異常があるからといって、それがすべて、祖先からうけついだ、いわば不可抗的な遺伝的素質によるわけではない。
     そうした遺伝だけによるものと推定されるのは、流・死産児も含めて、せいぜい10−30%であり、その他は、多少とも遺伝的素質があるところに、それを助長するような生活環境が作用した場合や、もっぱらそうした生活環境の作用による場合である。

     * 

     ところで、この生活環境は、動物のように自然そのままのものではなく、いろいろな意味や程度で人手を加えた文明的自然である。そしてこの文明は、もともと適応していきやすいようにと人手を加えたものではあるが、人手といい人知といい必ずしも常に十全なものではない。
     ために、ときに結果的には、思わぬ副作用を伴なって、かえって適応していきにくい生活環境をつくりだしてしまうことがある。
     とくに最近は、科学=技術と、それによる産業=経済の急速な発展によって、この副産物もまた急速に増大している。

     * 

     人類は本性、その長い進化の歴史を経て、すべての動物のうちで、生活環境の変化に最もうまく適応していける生活的な素質を備えている。
     だが、最近の生活環境の変化・悪化は、この適応能力をはるかに上まわっている。
     このため最近、かつては極めて少なかった病気や、思いも及ばなかった病気が急速に増加・発生すると共に、遺伝とは考えられない異常児の流・死産や出生もまた増加しているのだ。
     そうとしか考えられないのであり、科学的にもだんだん究明されているのであって、そこから異常児の出生予防に手がかりがえられる。
    (つづく。この断想つづきは、遠藤先生が青汁教室であれこれと強調されていることを主題にそって整理したもの)




07-05. 青汁教室の食養断想(2) 健全な子どもを生むには

     友成 左近 

    胎児に異常をつくる生活環境の要因
     流・死産した胎児もさることながら、生まれた子どもにも、顕在的にか潜在的にか心身に異常があるからといって、それがすべて祖先からうけついだ遺伝的な素質によるわけではない。
     その大部分は、父親か母親、あるいは双方に多少ともそうした素質があるところに、それを助長するような生活環境が作用した場合や、もっぱらそうした生活環境の作用による場合である。
     そしてこの作用は、受精前の母親の卵子(または父親の精子)がうける場合と、妊娠後の胎児がうける場合があり、胎児の生活環境といえば、直接的にはただひとつ母親の胎内であり、これはもっぱら母親の生活によってつくられるのだ。

     * 


     ところで、この生活環境の要因には各種各様のものがあるが、このうち最も重大なものは、受精前の卵子(または精子)や妊娠後の胎児に損傷作用を及ぼす有毒物(産業排出物、環境消毒剤や農薬、食品添加物、医薬品など)や病原菌と、胎児の発育に必要な栄養の不足・不完全である。
     が、卵子(または精子)が作用をうけたときは、多くの場合、不妊という結果になり、妊娠しても胎児が正常に発育し始めないために流・死産して、異常が生まれることはまれである。
     そこで、異常児が生まれる生活環境として最も重大なものは、母親の胎内であり、その要因は、母親が毎日の生活で体内にとりいれる各種の有毒物や病原菌と不完全な栄養である。

     * 


     なお、こうした先天的異常と少し様子はちがうが、異常出産によって、なかば先天的・生得的な異常が起こる場合がある。
     未熟児として生まれ、その後の保育で視力障害その他の異常が起こる場合や、難産で脳性麻痺その他の障害が起こる場合などだ。が、こうしたことも多くの場合、胎児の生活環境、わけてもその発育に必要な栄養の不完全が主な原因になっているのだ。

    胎児は母体より強力に作用をうける
     環境要因の作用についてとくと理解しておかねばならないのは、胎児は母体よりはるかに強力に作用をうける、ということである。
     母体には別になにも異常は起こらないようでも、胎児には致命的な異常を引き起こすことがあるのだ。
     それは、母体はすでに身体諸器官が成長しとげており、しかも、この作用にそれ相応の抵抗力を備えているが、胎児は、ただ一個の成熟卵が受精後、極めて急速に分裂増殖し、僅か280日間で、一人前に身体諸器官が発育して出生するのであり、その間、この作用になにほどの抵抗力も備えていないからだ。

     * 


     もうひとつ、とくと心得ていなければならないことは、この作用の研究は、母体のようにすでに成長しとげている場合については、かなりすすんでいるが、発育最盛期の胎児については、なにほどもすすんでいない、ということである。
     しかもこの研究は、まず実験動物で行なって、これを人間に推定適用するわけであるが、人間と実験動物とでは、この作用のうけ方がちがう場合があり、各種の実験動物の間でもちがう場合があるのだ。

     * 

     従って、人畜無害とか副作用なしといわれているもの、そして一応、成人には別になにも障害・副作用はないようなものでも、胎児には思わぬ障害作用を及ぼすものがあるのが実状である。
     そしてこのごろ、こうしたものが生活環境にみちあふれているのだ。
     であれば、とくに妊婦としては、健全な子どもを生むために、生活環境わけても胎児に異常をつくる要因には、格別細かい注意を払って、その排除に最善をつくさなければならない。

    胎児の発育段階と環境要因の作用
     胎児に異常をつくる環境要因にはいろいろなものがあるが、その作用はそれぞれ胎児の発育段階によって多少様子が異なる。

     * 


     成熟卵は輸卵管内で受精するが、受精すれば直ちに細胞分裂を始めて新しい生命の芽となり、やがて子宮内にうつって着床する。
     これまでが約1週間の肺胞期である。
     この間に異常をつくる環境要因が作用すると、それが強いときは死滅し、弱いときは多くの場合もと通りに回復する。
     もと通りに回復しないときは、正常に発育し始めないために早期に流・死産する。従って肺胞期は、異常児の出生にそう問題はない。

     * 


     肺胞期をすぎると、新しい生命の芽は、第6週ころまでの間に、盛んに細胞の分裂増殖をつづけて、身体諸器官の芽ができる。
     この間、約5週間が胎芽期・器官形成期である。
     この間に異常をつくる環境要因が作用すると、その強弱に相応して異常が起こり、強すぎれば流・死産する。
     しかもこの間は、胎児が体内に安定し、また胎盤がまだ完成していないので、この期間は、諸種の影響をうけやすく、異常の発生と流・死産の危険が最も多い。

     * 

     胎芽期をすぎれば、新しい生命は胎児期にはいり、これまで発育してきた身体諸器官の芽が分化発達して、だんだんと人間らしく形を整えて出生する。
     従ってこの間は、胎芽期よりも異常ができる危険は少なくなるが、少しおくれて胎芽ができる脳と生殖器には、なお当分、異常ができる危険が多い。
     もうひとつ、この間の発育いかんによって、未熟児として生まれたり、過熟して難産になったりして、なかば生得的な異常が起こる危険がある。

    妊娠前から自分自身の健康を最高度に保って
     胎児の発育経過については、ふつう受精第何週とはいわず、最終月経の1日目から起算して、1ヶ月を28日とした月で言い表わす。
     そこで、胎芽期まではおよそ妊娠3ヶ月ごろまでにあたるが、4ヶ月末には胎盤が完成するので、このころまでを妊娠初期という。
     従ってこの期間は、異常ができる点からも流産する点からも危険が最も多く、また妊婦の心身にも異状が最も起こりやすい。
     5ヶ月ごろから7ヶ月までを中期といい、この期間は、胎児にも妊婦にも危険・異状は最も少ない。
     が、8ヶ月ごろから出産するまでの末期は、早産その他で胎児にも妊婦にも再び危険や不安が起こる。

     * 

     胎児の発育と妊娠の経過をこういうふうにみてくると、流・死産もさることながら異常児の出生予防に、妊婦が、いな妊娠の可能性のあるものが、とくと留意しなければならないことがよく分かる。
     生まれる子どもに環境要因(それはすなわち妊婦の生活)による異常ができる危険が最も多いのは、まだ妊娠とは気づかず、気づいても、その自覚がまだしっかりとしてこない間である、ということだ。
     そこで、健全な子どもを生むために肝要なことは、妊娠と気づいてからはいうまでもなく、さらに重要なことは、それ以前の平素から、胎児に障害を及ぼすおそれのある有毒物や病原菌の排除と、胎児が正常に発育するのに必要な完全栄養に最善をつくすことである。
     それはすなわち、自分自身の健康を最高度に保つことなのだ。
     そうすれば、さらにひきつづき、その子を健全に育てることもまた、おのずから容易になる。
     といってこれは、妊婦ただひとりでできることではなく、周囲の人々の協力、さらに広く社会的な協力と政治的な措置が必要であることはいうまでもない。
    (つづく)




07-06. 青汁教室の食養断想(3) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

     産業排出物について
     妊婦の健康に、さらに胎児の健全な発育に障害を及ぼす有毒物として、まず第1に排除しなければならないのは、世にいう公害の原因物質になっている産業排出物である。
     といえば、だれでもすぐ思いつくのは、水俣病の有機水銀である。これが、チッソ水俣工場の排液に含まれていたため、その付近の魚介を汚染し、これを食べていた人々の体内にはいり、主として脳に蓄積して、中枢神経障害という、あのいたましい病気を引き起こしたのだ。それだけではなく、妊婦の胎盤を通って胎児の体内にはいって、出生児にも同様の水俣病を引き起こしたのだ。
     だが、こうした公害病の原因物質は、なにぶんとも最近になって排出され始めたものが多く、しかも急激に増加し、そのうえ多種多様であるため、成人や子どももさることながら、胎児に及ぼす障害については、まだなにほども究明されていないのが実状である。
     だからといって、これを放任しておくことは決して許されない。水俣病だけでなく、イタイイタイ病や四日市ぜんそくなどでも分かるように、産業排出物の多いところでは、もうすでに多数の子どもや成人が、あれこれと厄介な公害病にかかっているのだ。であれば、これは当然、胎児にも、しかもより強力に作用して、発育に障害を及ぼしているはずである。
     事実、疫学的調査によれば、工場地帯や自動車の多い地方では、その他に比べて不妊症や流・死産が多くなっており、流・死産した胎児に、さらに出生児にも奇形が多くなっているのだ。
     ただ、まだ、それがどういうしだいで発生するのか、厳密な科学的究明まで、個々の排出物についてすすんでいないだけのことだ。

     公害の原因物質はゼロにすること
     そこで重要なことは、成人や子どもの健康はいうまでもなく、さらに胎児の発育に障害を及ぼすおそれのある産業排出物は、最小限に、いなゼロにすることだ。わけても水銀やカドミウムなどのように、容易に自然に浄化されない性質のものについては、これが肝要である。公害防止のための排出基準量とか許容量といったものは、これを達成するための、とりあえずの目安でなければならない。

     それはこういうわけだ、
     第1にこれは、不可抗的な自然物ではなく、産業活動の副産物として、人工的につくりだされたものであって、ゼロにしようとして、絶対にできない性質のものではない。
     第2にこれは、たとえ微量であっても、いったん排出されると、自然に浄化されるには、それ相当の年月が必要である。ところが最近の排出量は、個々の工場についても急速に増加している場合が多く、たとえごく微量にしても、そうした工場が急速に増加しているため、総量としては急激に増加して、この自然の浄化能力をはるかに上まわっている。
     ために、空気・水・土地といった、そこで生活している人々は逃げ出すことができない環境が、急速に濃厚に汚染し始めているので、これは早急に防止しなければ、やがては健康に生きていけなくなってしまう。地域によっては、もうすでにそうなって、厄介な公害病が発生しており、人間より適応能力の劣っている動植物のうちには、いろいろな奇形が発生したり、目に見えて減少したり、あるいは死滅してしまったものもあるのだ。
     第3に、空気・水・土地が汚染すれば、当然、そこで生きている動植物が汚染し、その間の植物連鎖によって、人間の食物が意外と濃厚に汚染してくる。熊本や新潟で水俣病にかかった人々は、こうして濃厚に汚染した魚介を、それとは知らずに食べていたのだ。
     第4に、空気・水・土地が、そうしてさらに食物が汚染してきても、まだそう濃厚ではない間は、だれもかれも、おいそれと病気にかかるわけではない。だが、この多くは、体内に蓄積する性質のものであるため、やがては体のあちこちを冒すのだ。
     しかも、この殆んどすべては、健康に最も重要な肝臓・腎臓・神経・造血器といったところを冒す性質のものであり、こうした器官は、いったん冒されると容易に回復しないのだ。
     さらに重大なことは、成人・妊婦がやられる前に、胎児の方が先にやられて健全に発育しなくなるのだ。
     こういうふうに公害は、人々に最も重要な健康と、わけてもつぎの世代をになう胎児の健全な発育に障害を及ぼしては、たとえ国民経済と人々の生活を豊かにする産業活動の副産物であっても、決して「必要悪」として認容することは許されないのだ。国民経済の成長をおさえても、公害はぜひともゼロにしなければならないのであって、そうして初めて人々の生活が名実ともに豊かになるのだ。そしてこれは、して、できることなのである。
     だが、これは決して容易なことではない。辛抱強く市民運動をすすめて、業者に、地方公共団体に、国に、そして公害の原因と防止について最も深い知識をもっている科学技術者に、これを強力に要求しなければならない。
     なお念のため。
     公害対策としては、当面、早急の課題として公害病患者の救済に、業者も国も全責任をもってあたらなければならない。厳密な科学的究明がないからといって、その責任を回避することは許されないことがらだ。
     だが、公害病患者の救済が急を要するからといって、ただそれにとどまっていてはならない。これと同時に、公害そのものの、末然の完全防止が肝要なのである。(つづく)




07-07. 青汁教室の食養断想(4) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    環境消毒剤や農薬について

     妊婦の健康に、さらに胎児の健全な発育に障害を及ぼす有毒物として、産業排出物と共に、第二に排除しなければならないのは、戦後になって新たに急速に多量に使われだした環境消毒剤や農薬である。といえば、除草剤の2・4・5Tを思いうかべるであろう。ベトナム作戦でアメリカがこれを多量に使ったため、現地住民に奇形児が多数出生したのだ。

     ところでこれは、産業排出物と同様に、ある種の公害ではあるが、少し事情がちがって、殺虫・殺菌・除草その他一定の目的をもって、わざわざ開発・使用しているものである。だがこれは、もともと極めて有毒な化学薬品なのだ。といって、使用するときには弱毒化しているわけであるが、それでもなお在来の石灰・石炭酸や除虫菊・ニコチンなどよりも、はるかに毒性が強く、その持続期間も長いのだ。
     そのうえ在来のものは、ただ作物の表面に付着するだけであるのとちがってその内部にしみこんでいくのだ。ために、その効果は高いが(といって、それは結果的には一時的なことになってしまった場合が多いが)、反面、産業排出物と同様に、空気・水・土地といった生活環境を汚染し、さらに作物・食物を汚染して有毒化するのだ。しかもこれは、内部にしみこんでいるので、洗っても皮をむいでも始末がつかず、また病原虫のように生きものではないので、煮ても焼いても始末がつかないのだ。従って、こうした毒性については予め研究して、そのおそれのない、というよりも少ないものだけが「人畜無害」として使用が許可され、その多くは、使用基準が定められている。

     だがこの研究には、急性中毒はともかく慢性中毒については、それ相当の年月がかかり、胎児に及ぼす作用については、世代にわたっての慎重な研究が必要である。にもかかわらず、殆んどすべて、そうした十分な研究を経ずして使用が許可されたのだ。しかも、これには多種多様のものがあるが、いずれも、その使用が全国的に急速に普及し、そのうえ使用の目的・量・時期・方法・保管などの規準がロクに守られなかった場合が多いのだ。ためにこれまで、使用や保管の間違いによる急性の中毒症や中毒死、あるいは自殺や他殺といった不祥事が起こると共に、産業排出物と同様に、空気・水・土地を、さらに食物を急速に汚染して、子どもや成人の肝臓・腎臓・神経・造血器その他に慢性中毒を引き起こした。そして、これは当然、胎児にも、より強力に障害作用を及ぼしているわけであるが、まだそこまで詳しい調査研究がなされていないのが実状である。

     そこで最近、つぎつぎと使用が禁止または制限され始めているしだいであるが、これは結果的には、してはならない危険な人体実験を、しかも全国的な規模でしてしまったわけだ。であれば、現に許可されているものにも、同様に慢性中毒を引き起こすもの、胎児の発育に障害を及ぼすものがあるかも知れない。というよりも、強いか弱いかはともかく、すべて慢性中毒を引き起こすおそれのあるものばかりだ。

    やむをえず使用する必要があれば
     だがこれは、環境衛生上あるいは食料生産上、場合によっては、やむをえず使用する必要がある。そこで重要なことは、こうだ。

     第一に、伝染病の発生や病害虫の繁殖のおそれがある場合にだけ使用し、それも範囲を限定することである。消毒の季節がきたからといって、しかもヘリコプターで全面的に撒布するような消毒はしないことだ。そして、できるだけ弱毒性のもので、短期間に分解して無毒化するものを使用することである。確実に予防するからといって、強毒性のものや、毒性が長期間つづくものを、しかも多量に使わないことだ。

     第二に、主として環境衛生については、排水・下水・通風・採光・清掃その他の施設を整備して、できるだけ消毒剤は使わなくてすむようにすることである。伝染病の予防が達成されている地域では、予防注射の普及もさることながら、こうした環境衛生が整備しているのだ。

     第三に、主として農薬については、その昔の農法に学んで、できるだけ危険な農薬は使わなくてもすむようにすることである。すなわち、深耕したり客土したりすると共に、有機質肥料を十分施し、化学肥料を最少限にして、作物を丈夫に育てることだ。もうひとつ、風土と季節に適した作物をつくり、できるだけ病害虫の繁殖期をさけて栽培すると共に、天敵を利用して、ムリな増産や季節はずれの作物に走らないことだ。

     第四に、主として消費者については、季節はずれのものや、見た目の美しさにとらわれずに、健康になにより重要な安全と栄養価と味に最大の関心をよせて食料をえらぶことである。従って、季節のものを好んで使うと共に、虫くいのあとのあるもの、虫のついたもの、形のゆがんだものなど、それが作物当然のすがたと心得て、それを気にしないことだ。そうすれば、これに安心して農家は、だんだんと農薬を使わなくなる。その危険を身にしみて知っているが、見た目の美しいものでなければ売れないから、やむをえず使っているからであり、自家用には決して使わない農家が少なくないのだ。(つづく)




07-08. 青汁教室の食養断想(5) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    食品添加物について

       妊婦の健康に、さらに胎児の発育に障害を及ぼす有毒物として、産業排出物や・農薬と共に第三に排除しなければならないのは、人工の着色料・漂白剤・殺菌剤・防腐剤・甘味料・香料その他の食品添加物である。
       といえば、先年使用が禁止されたチクロを思い出すであろう。
       無毒有害で砂糖に近い味といわれ、しかも安価であるため、その前に禁止されたズルチンに代わって、急速に多量に使われ始め、ほとんどすべての加工食品に使われていたのであるが、子どもや成人に慢性中毒を引き起こすだけでなく、胎児に奇形までつくることが、その後の研究で明きらかにされたからだ。
       こうした添加物は、食品の保存や品質改良などのために使うものではあるが、在来の塩や砂糖や紅花などとちがって、人工的に開発・製造した化学薬品である。
       従って、これは食物といっしょに食べこむため、その副作用については予め研究して、無害無毒であったものだけに使用が許可され、多少ともそのおそれがあるものについては使用規準が定められている。
       だがこの研究には、急性中毒はともかく、体内にだんだん蓄積して引き起こす慢性中毒については、それ相当に年月がかかり、胎児に及ぼす作用については、成人の場合よりもはるかに慎重な研究が必要である。しかも、一つ一つの添加物としては、さして有害有毒でないようでも、二種三種と複合すると、そこに相乗作用が起こって、意外と有害有毒になる場合があり、この研究となると、なおさらである。
       ところが多くの場合、そうした十分な研究を経ずして、しかも極めて多種多様のものが許可されているのだ。
       そして、これは安価なうえ、加工にあまり手数をかけずにすむため、これを使った加工食品が急速に多量に出まわり、市販食品では殆んどすべて、添加物をあれこれと使うようになってきたのだ。ために、産業・農業公害ともあいまって、その慢性中毒が主な原因と思われる病気が急速に多くなってきたわけだ。そして、これは当然、胎児には、より強力に障害作用を及ぼしているはずである。チクロが使用禁止になったのは、成人や子どもに中毒症を引き起こすだけでなく、母体には別になにも異状は起こっていないようでも、胎児には、奇形その他の致命的な障害を及ぼすことが動物実験で明きらかになったからなのだ。

    加工食品はよくよく注意して

       そこで最近、添加物はあれこれと使用が禁止または制限され始めているが、まだ許可されているものに、すでに有害有毒であることが明きらかにされ、他国では禁止されているものが少なくないのであって、厳密にいって全く無害無毒とみられているものは、ごく僅かなのである。
       そこで、自分の健康と胎児の健全な発育をはかるには、こと加工食品と添加物については、よくよく注意する必要がある。


      • まず第一に、食べ物であれ飲み物であれ、およそ口に入れるものには、ここ当分、市販の加工品は極力さけることが大切である。使うにしても、よく吟味して、有害有毒のおそれのある添加物のはいっていいないものを使うことだ。
         毎日のように、また多量に食べるものは、とくにそうだ。そしてこれを、お互い語らいあって辛抱強く不買運動を起こして、業者には、添加物を使った加工食品の製造販売を断念させ、政府には、少しでも有害有毒のおそれのある添加物を禁止させることが大切である。

      • 従って第二に、毎日の食物には、つとめて原材料を、それも、よく吟味して産業排出物や農薬で汚染していないものをえらんで、家庭で安全に加工・調理することが大切である。
         というと、市場経済の今日、いささか時代ばなれと思うかも知れないが、なにより大切な自分の健康と、最愛のわが子の健全な出生のためには、当面、こうした配慮が必要なのだ。
         それに、食物というものは本来、一家の健康と好みと親和と家計のため、その昔から市販されているようなものはともかく、できるだけ広範囲に、原材料を手に入れて家庭で加工・調理することが大切なのである。

      • そこで第三に、食物というものは、食塩を除いてはすべて、無害無毒の動植物だけであり、それは必ず腐りもすればカビもはえるものと心得ることが大切である。
         そしてこれを、腐りもせずカビもはえぬうちに食べ、その保存加工には、加熱・冷蔵・乾燥・塩づけ・砂糖づけといった昔ながらの方法によるのだ。
         というと、いかにも手数に思うかも知れない。だからといって、殺菌剤や防腐剤といった保存料を使うと、それは必ず体内にはいり、それは細菌やカビといった生きものを殺す性質のものである以上、人体にも当然それ相応の障害作用を及ぼすわけである。手数ははぶけて保存効果は高くなるが、その代わり体を内部からいためつけられるわけだ。

      • もうひとつ第四に、自然のままの食物というものは、それそれ特有の栄養価と味・香り・色あい・口ざわりといった持ち味を備えており、それを心得もし賞味もして食べることが大切である。
         そして、これを加工・調理するのは、大切な成分の消化吸収をはかると共に、自然本来の持ち味を引き立てるためなのだ。
         ところが、この頃の市販の加工食品は、食物それそれの自然本来の栄養価も持ち味も引き倒してしまうほど、それに取って変わるほど度ぎつくなっている場合が多い。全くのにせもの・うそつきものも少なくないのだ。
         そして、これには殆んどすべて、多かれ少なかれ、有害有毒な添加物を使っているのだ。にもかかわらず、それを知ってか知らずか、これがうまいと、好んで食べている人が少なくないようであるが、それは、生来備えている口や鼻の感覚が狂っているからだ。
         これはたとえば故障した羅針盤で航海するようなものであって、とうていわが身の健康を保つことも、健康な子どもを生むこともできない。
         だが、少々狂っている口や鼻でも、食物それそれの自然本来の味わいを味わっていると、だんだんマトモにもどってきて、それが本当にうまくなり、かつてうまいと思っていたものが、そううまいとは思わなくなり、なかには口や鼻をひどく刺戟して吐き出したくなるものもある。
         それには、それ相当の期間と努力が必要であるが、そうなって初めて「うまいものが身につく」食べ方ができるようになるのだ。


    (つづく)




07-09. 青汁教室の食養断想(6) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    病気・医薬について
     心身ともに健全な子どもは、健康な母親から生まれる。
     病弱な体では、妊娠しない場合が多く、妊娠しても、とかく流・死産し、出産しても、ときに未熟児であったり、はては奇形児であることもある。
     母体が病弱であれば、胎児の発育に必要な栄養が不足するからであり、その病原菌によっては、胎児に障害を及ぼすことがあるからだ。
     また、病気の診断や治療や予防に使う医薬品やレントゲンその他の放射線が、胎児に障害を及ぼす場合があるからだ。
     そこで、妊婦の健康に、さらに胎児の発育に障害を及ぼす有毒物として、産業排出物・環境消毒剤や農薬・食品添加物と共に、第四に排除しなければならないのは、そのおそれのある医薬品と放射線である。

     * * * 

    クスリは双刃の剣
     胎児に障害を及ぼすクスリといえば、だれでもすぐ思いつくのはサリドマイドである。
     1956年来、副作用の少ない睡眠剤・つわりどめとして、世界各国で使用が認可されたが、数年後には、これを妊娠初期に使用した場合、母体には別になにも異常は起こらないのに、胎児には手足や耳・目・心臓・腎臓その他に奇形・異常をつくることが明きらかにされて、間もなく使用が禁止されたのだ。

     * 

     いったいクスリというものは本来、口に入れて身につく栄養・飲食物ではないのだ。病気の治療や予防や診断のため、必要やむをえないときにだけ使う性質のものである。
     いうなれば、栄養剤・保健薬といったものまで含めて、殆んどすべて、程度の差こそあれ有害有毒物であって、よく効くものほど副作用もまた強く、双刃の剣なのだ。
     そこでクスリは、その有効性と副作用とについて、所定の基準に従って究明して、それに合格したものだけが認可され、その使用規準も定められている。
     だが、認可されたクスリでも、その有効性もさることながら、ときに思わぬ副作用を伴なうことがある。
     それもサリドマイドのように、妊婦・成人には別になにも副作用はないのに、胎児には重大な障害を及ぼすような場合があるのだ。

     * 

     それは、この究明は、まず実験動物で行ない、その結果を人間に適用して試験するのであるが、これには、世代にわたっての長年の研究が必要であるだけでなく、その間いろいろ面倒なことが起こるからだ。
     その主な原因は、実験動物と人間との間に、また各種の実験動物の間に作用の相異があることだ。
     サリドマイドについていえば、実験に最も広く使われるネズミでは、胎児に奇形はあらわれなかったのであるが、人間(やウサギ)ではあらわれたのだ。

     * 

     なお有効性については、これもサリドマイドについていえば、動物では睡眠効果はあらわれにくいが、人間では著しいのだ。
     そのうえ人間では、効くと思えば効く、といった心理作用を伴なう場合が多く、また病気・病状によっては、別にクスリを使わなくても、栄養・休養その他に注意すれば、自然に治ってくる場合があるのだ。
     そこでクスリの有効性を試験するには、二重盲検法といった手数のかかる大規模な調査が必要なのだ。

     * 

     だが、製薬も売薬も営利を目的とした私企業で行なわれており、国の政治の未熟もあってか、こうした十分な究明を経ずしてクスリが認可されている場合が少なくないのだ。
     このため、認可・発売されているクスリに、いうほどには効果がないものがあったり、たとえ効果はあっても意外と著しい副作用がある場合、それも、妊婦には別になにも副作用はないようでも胎児には致命的な障害を及ぼす場合があるのだ。
     ときには、全く無効であるだけでなく有害でさえある場合もあるのだ。

     * * * 

    クスリの使用には慎重な注意を
     そこで、クスリの使用には医師も素人も慎重な注意が必要であり、妊婦、わけても妊娠初期、従ってまた、妊娠の可能性がある場合には、格別慎重な注意が必要であるが、素人に大切なことはこうだ。

     * 

     まず第一に、平素から栄養・運動・休養・衛生などに留意して、クスリが不用であるような健康体を保っていくことが肝要である。
     とはいっても、人間ナマミのことであり、不注意なところも少なくないので、ときに体具合がおかしくなることがあり、妊娠初期では、とくにそうだ。だがこうなっても、オイソレと素人判断でクスリを飲まないことが大切である。
     できるだけ早めに、それ相応に栄養・休養その他によりいっそうつとめ、わけても「クスリヤよりヤオヤへ」と野菜果物、それも青野菜を平素より沢山食べるのだ。
     そして、こうしてもなお本調子にならないときに、ほどほどのところで医師にみてもらうのだ。
     が、これ以外に、医師にできれば定期に健康診断をうけることが大切である。
     これといった自覚症状はなくても病気にかかりかけていることがあるからだ。

     * 
     第二に、医師にみてもらうときには、予め妊婦中であること、あるいは妊娠の可能性があることを、はっきりと伝えることが大切である。
     と共に、ただクスリをもらうだけでなく、必要な養生法もきくのだ。
     病気の予防・治療の土台は、必要な養生によって体力を回復・強化することであって、クスリはその補助的なものであり、しかも程度の差はあるが副作用を伴なうので、これは必要最小限に使うことが大切であるからだ。
     いったい医師のおかげというものは、まずもって健康・病気の診断と必要な養生法の指導でうける性質のものであって、これに時間とカネをおしんではならないのだ。
     そしてそのうえで、必要なクスリとその用い方の指導でうけるものであって、医師はただのクスリヤではないのだ。

     * 

     なお参考までに、胎児の発育に障害を及ぼすおそれのあるクスリ、それもごくありふれた病気に使うものをあげると、こうだ。
     まず、つわりといった症状に使う鎮吐剤・鎮静剤・精神安定剤などには、いずれもこのおそれがあり、とくに精神安定剤には知能低下のおそれがある。
     つぎに、カゼの予防に使うワクチンには、このおそれが多く、妊娠初期では注射してはならない、
     という専門家もあるほどである。また、この治療に使う下熱剤・鎮痛剤・抗ヒスタミン剤や、肺炎その他の併発予防に使う抗生剤・サルファー剤・ステロイド剤などには、いずれもこのおそれがあり、とくにステロイド剤には死産や未熟児のおそれがある。
     もうひとつ、流・早産の予防に使うホルモン剤には、このおそれが多く、その他いろいろの薬に奇形をおこす危険がいわれているので、妊婦はどんな薬にたいしても慎重でなければならぬ。

     * * * 

    放射線診療は胎児に障害を及ぼす危険が多い 病気の診療にレントゲンその他の放射線を使い、あやまって下腹部にあたると、胎児に発育障害・白血病の誘発・奇形・死産といった作用を及ぼすことがある。
     専門家によっては、妊娠初期にそれとは気づかずに放射線を下腹部にあてた場合には、人工中絶をするのが賢明である、といっているほどである。であれば妊娠中に、わけても初期に、従ってまた妊娠の可能性がある場合に、放射線診療をうけるときには、必ずその由を言って、十分な防護具をつけてもらうことが大切である。
    (つづく)




07-10. 青汁教室の食養断想(7) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    病気・病原菌について
     妊婦が病気にかかると、その病原菌が胎児を損傷して、奇形その他の異常児が生まれることがある。
     といえば先年オキナワで、風疹(三日ばしか)が流行して、視力・聴力・脳・心臓その他に障害や奇形のある異常児や未熟児が少なからず生まれたことを思い出すであろう。
     妊婦が風疹にかかると高率に異常児が生まれる
     妊婦が、それも妊娠初期に風疹にかかると、
     極めて高率に異常児が生まれる。

     * 


     それはこういうわけだ。これは風疹ビールスの感染で発病するのであるが、このビールスは感染力が極めて強く、感染すれば多かれ少なかれ細胞を損傷する。
     従って、妊婦が風疹にかかれば、胎児も、このビールスが母体からの血液といっしょに体内にはいってきて感染する。
     そこで、風疹にかかったときが妊娠初期であると、ちょうどそのころは胎児に身体諸器官のもとができる胎芽期であるため、その芽を損傷して、身体諸器官の発育に障害が起こる。
     ために、とくに目・耳・脳・心臓といった細胞組織の微妙な器官には異常が起こり、また全身の発育も妨げられて、異常児や未熟児が生まれるおそれがあるのだ。
     それも、発生率50%と極めて高率なのだ。
     また、別に発病しなくても妊娠初期に感染すれば、やはり異常児や未熟児が生まれるおそれはある。
     けれども、この感染・発病が妊娠初期をすぎておれば、異常児が生まれることは少なくなる。
     が、未熟児の生まれるおそれはある。

     * 


     ところで、わが国本土では、風疹が流行し、しかもそのときが妊娠初期であっても、その高率に異常児や未熟児は生まれていない。
     大部分のものが子どものときにかかって、その免疫がついており、この免疫は強力であるため、成人になって再び感染・発病することはまれであるからだ。
     けれども風疹には、有効で、副作用わけても胎児の発育に障害を及ぼすおそれのない、適切なワクチンがまだ開発されていないので、これを確実に安全に予防する方法はないのだ。
     従って、これが流行してくると、これまでかかったことのない人は、たとえ発病しなくても感染はするので、もしこのとき妊娠初期であると、異常児や未熟児が生まれるおそれが多い。

     * 


    風疹流行時には細心の配慮が必要
     そこで、これまで風疹にかかったことのない妊婦や妊娠の可能性がある人は、この流行時には細心の配慮が必要である。
     まず第一に、まだ妊娠していない場合は、流行がおさまるまで妊娠を調節するのが賢明である。
     そしてそのうえで、風疹に感染するように患者に近づくのも一考である。
     第二に、妊娠初期に流行してきた場合は、風疹患者に近づかないように、従って人ごみに出ないようにすると共に、栄養・休養その他によりいっそう注意して体力を強化して、感染しても発病はしないようにすることが大切である。
     が、もし発病したときには、中絶について医師に相談するのが賢明である。
     発病したときが妊娠初期であったことが、あとで分かった場合も同様である。
     第三に、妊娠後期に流行してきた場合は、前記と同様に注意することが大切であるが、発病しても、中絶を考える必要はなく、栄養、休養その他によりいっそう留意すればよい。

     * 


     なお、これまで風疹の流行に出くわしたか、かかったかどうかはっきりしない場合は、前記と同様に配慮するのが賢明である。
     もうひとつ、これは周囲の人々のことであるが、風疹にかかっている場合は、全治するまで外出しないようにしてほしいものだ。

     * 


    梅毒菌をもっていると異常児が生まれる
     異常児を生む病気・病原菌として、昔から広く知られているのは性病わけても梅毒である。
     もし梅毒菌が妊婦の体内にあると、現に発病していなくても、これは母体からの血液といっしょに、胎児の体内にはいり、極めて強力に細胞を損傷するからだ。
     従って、梅毒菌をもっている人は、妊娠しても流・死産しやすく、出産しても、程度の差こそあれ殆んど例外なく、心身ともに障害のある子供が生まれ、ために、幼少の間に死亡する場合が多い。

     * 


     だが梅毒は、婚前婚後、男女間に堅く節操を守っておれば、これに感染するようなことは極めてまれである。
     とはいっても、万が一にも体内にひそんでいないとも限らないので、結婚前には念のため、男女双方とも、この検査をうけてみることが大切である。
     これは法令でも定められていることであって、現に梅毒にかかっているものはいうまでもなく、これが体内にひそんでいるものも、結婚する資格も子どもを生む資格もないのだ。

     * 


    およそ病気にはかからないように
     風疹や梅毒以外の病気でも、とくにビールス性のものに妊娠初期にかかると、ときに、その病原菌が胎児を損傷して、異常児が生まれることがある。
     その主なものは、おたふくかぜ、はしか、ポリオ、インフルエンザといったものである。
     が、インフルエンザ以外は、殆んどすべての人が、結婚前までに感染して強力な免疫がついているので、再びかかることはまれであるため、これが流行しても、異常児が生まれることは極めて少ない。

     * 


     だがインフルエンザは、免疫が弱く、その持続期間も短いので、流行すれば、重いか軽いか、大部分の人がかかる。
     もしこれが妊娠初期であり、重症にでもなれば、多少とも心身に障害のある子どもが生まれるおそれがある。
     しかもこのワクチンは、それほど確実でないばかりか、妊娠初期では胎児に奇形をつくり、また、この免疫がつきにくい異常体質にするおそれがあるのだ。

     * 


     それは、診療に使う薬や放射線によっては、胎児に障害を及ぼすことがあるからだ。
     が、それ以外に、母体自身が病気にうちかつため、平素よりよけいに栄養を消費し、しかも平素ほどには正しく栄養を摂取しないことも多いので、胎児の発育に必要な栄養が不足するようになるからだ。
     もうひとつ、病気といわれるほどの病気にかかるような体は、もともと毎日の生活に節制を欠ぎ、わけても食物が栄養上著しく不完全であるので、妊娠中、別に病気にかからなくても、胎児の発育に必要な栄養が不足するのだ。
     そこで、病気というほどの病気にはかからないで、心身ともに健全な子どもを生むには、他にもいろいろ気をつけねばならないが、まず第一に毎日の食物によく注意して、完全な栄養をはかることが肝要である。

    (つづく)




07-11. 青汁教室の食養断想(8) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    完全栄養について
     生まれたとき肢体健全な子どもはいうまでもなく、その後も心身ともに健全に育つ素地をもった子どもを生むには、
     まず第1に、近親結婚をしないことが大切である。近親者であれば、良し悪しにつけ、ほぼ同じような遺伝的素質を備えているので、ときに悪い方の素質が重なりあって、心身に障害のある子どもが生れるおそれがあるからだ。
     そして第2に、とくに妊婦は妊娠と気づいてからはいうまでもなく、さらに重大なことは気づくまえから、およそ病気といわれるほどの病気にはかからないことが大切である。かかれば、その病原菌や病原有毒物によっては、また診察に使うクスリや放射線によっては、胎児の発育に障害を及ぼすことがあるからだ。さらに、どんな病気でも、胎児の発育に必要な栄養が程度の差こそあれ不足するようになるからだ。

     およそ病気といわれるほどの病気にかからないためには、
     まず第1に環境衛生に留意することが大切であり、それには当面、空気・水・土地といった生活環境や毎日の食物から、およそ健康に障害を及ぼすおそれのある有毒物、わけても産業排出物・環境消毒剤・農業・食品添加物といったものを排除しなければならない。たとえ妊婦がこれといった病気にかからなくても、胎児の発育には重大な障害を及ぼすことがあるからだ。
     そして第2に、平素から栄養・運動・休養その他に留意して、ちょっとやそっとでは病気にかからず、かかっても軽くてすむような体力を養なうことが大切であり、わけても実状、栄養には格別留意することだ。
     体力の土台として最も重要なのは栄養であり、これを最高度に養なうには、この栄養に完全をはかることが大切である。すなわち毎日の食物で、必要な各種の栄養素をもれなく、必要なだけ十分、その間に過不足がないように、よく調和してとりいれることだ。
     そして妊娠すれば、さらに胎児の健全な発育に必要な栄養を補給するため、妊娠の経過・胎児の発育に応じて、その分だけよけいにとりいれなければならず、しかも、この栄養には、妊婦自身の場合以上に調和・完全が重要なのだ。
     もうひとつ環境衛生にどんなに留意しても実状、妊婦の健康に、さらに胎児の発育に障害を及ぼす有毒物や病原菌を完全に排除することはできず、いわば不可抗的に多少とも体内にはいってくる。けれども、本当に完全な栄養をはかって体力を強化しておけば、ある程度までは、この障害にうちかつことができる。ところが実状、この栄養が著しく不調和・不完全である人が、意外と少なくないのだ。

    まず第1に青野菜を 日に体重の1%以上
     妊婦として、自分の健康と、さらに胎児の健全な発育に必要な栄養に調和・完全をはかるには、
     まず第1に、その決定打として青野菜を、日に自分の体重の1%以上と、できるだけ沢山食べることが肝要である。健康に働いて生きていくには、おおまかにいって、生きて働く力になる熱量素と、生きて働いて消耗する体を補修する蛋白質と、こうした栄養素が体内で栄養として利用されるときに必要な各種のミネラルとビタミンが必要であり、それぞれもれなく、年令・体格・労働などに応じて、必要なだけ十分、よく調和してとりいれなければならない。
     そして妊娠すれば、胎児の発育に応じて、その分だけよけいにとりいれなければならないが、この健全な発育には、この調和が格別重要である。
     このため、だれでも毎日あれこれと食品を取り合わせて食べいるわけであり、とくに妊娠すれば、平素はそう食べないようなものまで、つとめて食べるわけである。
     それはもともと、食品それそれ栄養成分にかたよりがあって、ただひとつでは、どんなに沢山食べても、各種の栄養素を必要なだけ十分、よく調和してとりいれることができないからだ。
     けれども実状、だれでも毎日、そこをそう細かく意識しているわけではなく、身についた習慣に従って、あれこれと食品を取り合わせている。ために、栄養摂取がうまく調和していない場合が多く、厚生省が毎年定期に行なっている調査によれば、その様子は、おおよそこうだ。

     まず、米・麦・砂糖・油や、魚・肉・卵といったものは、それ相当量取り合わせているので、熱量素と蛋白質はほぼ必要なだけはとりいれている。人によっては、とくに裕福な家庭では必要以上にとりすぎている場合が多い。
     そして妊娠すれば、胎児の分までと、とかくこうしたものを、わけても蛋白質が大切だと考えて魚・肉・卵といったものを、より沢山食べている場合が多い。
     けれども、カルシウムや鉄その他ある種のミネラルと各種のビタミンが、必要量の2分の1あるいは3分の1というふうに著しく不足しており、妊婦についても同様である。
     それは、野菜・果物・わけてもこうしたミネラルとビタミンがケタちがいに多く、しかもよく調和している青野菜が著しく少ないからであり、これは貧富にかかわらず同様である。

     そこで、完全栄養をはかるには、だれでも習慣として取り合わせ、しかも、カネさえあれば、ますます沢山取り合わせるような米・麦・砂糖・油や魚・肉・卵といったものについて、とやかくいうまえに、まず第1に青野菜をふやすことが肝要であって、これ以外に決定打はないのだ。それも、厚生省調査の栄養摂取の実状からみると、日に自分の体重の1%以上にする必要があるのだ。
     それは、野菜・果物以外のものはいずれも、それそれ程度の差はあっても、各種のミネラルとビタミンが不足しているが、これに青野菜をそれ相当量加えたら、ただそれだけでも栄養がうまく調和するようになるからであり、青野菜以外の野菜・果物では、とうてい食べきれないほど沢山加えても調和しないからである。そしてこれは、貧富にかかわらずだれでも、それ相応に工夫すれば、できることなのだ。




07-12. 青汁教室の食養断想(9) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    良質の青野菜を効率よく
     妊婦として、自分の健康と胎児の健全な発育に必要な完全栄養をはかるには、その決定打として、青野菜を自分の体重の1%以上食べることが肝要である。ところで、ひと口に青野菜といっても、いろいろな種類があり、食べ方も様々であるが、これで完全栄養をはかるのに大切なことは、こうだ。
     まず第一に、なかのなかまで緑色が濃く、成分わけてもカルシウムが吸収しやすい、という良質のものであることだ。なかのなかまで緑色の濃いものほど各種のミネラルとビタミンが多いのであるが、そうした青野菜のうちでも、カルシウムや鉄その他の成分がうまく吸収しないものがあるからだ。
     そして第二に、大切な成分が最も効率よく利用できるように、生のまま、新鮮なうちに、よくかみくだいて食べることだ。成分によっては、煮たきすれば、ゆで汁や煮汁にとけて出て利用できなくなるものがあり、また鮮度がおちたり熱を加えたりすれば、こわれて無効になるものがあり、さらにミネラルもビタミンも、生のままであれば消化、吸収がよく、吸収すれば栄養としてうまく利用されるからだ。また、青野菜には固いセンイが多いので、よくかみくだいて食べないと、大切な成分が効率よく消化吸収せず、胃腸もいためるからであり、生でピンとしておれば、煮たきしたものや漬け物より、かみくだきやすい場合が多いからだ。
     もうひとつ第三に、食べて味がよく、とくに生で食べる場合には刺激性が少なく、栽培しやすく収穫が多い、といったことだ。
     こうした意味で最も良質で適切な青野菜は、カキバダイコン・シーオー・コマツナ・カブ菜・シソ葉・パセリ・ミズナなどである。が、ホウレンソウは野菜の王様などといわれているが、カルシウムの吸収が悪く、生食には味の点で不向きであり、そのうえ生で沢山食べると腎臓に結石ができることもあって、緑色は濃いが劣格である。また、青野菜の生食といえばレタスと思う人が多いが、これは緑色が薄いので青野菜としては劣等である。なお、ニンジン・カボチャ・ミカンなど黄色の濃いものは、青野菜についで優れているが、キャベツ・ハクサイ・リンゴなどは緑黄色の野菜果物ではなく、青野菜に比べると材木とツマヨウジのちがいである。

    青汁にして日に2合以上
     だが、こうした良質の青野菜は、ただ生のまま食べるだけでは、歯が丈夫でなければ、日に体重の1%以上と必要なだけ十分食べることがむずかしく、丈夫な歯でよくかんでも、胃腸をいためるおそれがある。けれども、ジューサー・ミキサー・ミンチ・スリバチなどですりつぶして、汁だけしぼりとって青汁にして飲めば、大切な成分が殆んどすべてしぼりとれ、250gが約1合になるので、味は少し拙くなるが、どんなに歯の悪い人でも、胃腸をいためることなく、生のまま、必要なだけ十分、しかも最も効率よく食べることができる。そのうえ、生でも煮たきしても食べにくいが、成分は良質である家畜の飼料が利用できるので、年間通じて必要なだけ十分収穫することが容易になる。青汁材料として広く利用されているケールは、もともとそうした飼料なのだ。
     そこで完全栄養をはかる決定打として、良質の青野菜を必要なだけ十分、しかも効率よく食べるには、これを青汁にして、日に2合以上飲むのが最も有効適切である。そしてそのうえで、なお青野菜を、煮たきしたものでも生でも、つとめて沢山よくかんで食べることが大切である。栄養がよりいっそう完全になり、またセンイをそれ相当量食べこむので、健康のもとである便通がよくなり、腸内で有益細菌が繁殖して各種のビタミンの供給が増してくる。

    栄養剤では不十分
     こうしたことは、中学校や高等学校の教科書でほぼ分かっているはずである。だが実状、分かっていないのか分かっていてもか、毎日の食物は間違った習慣通りにして、体具合がおかしくなると保健薬・栄養剤に走る人が意外と少なくないのだ。毎日の食物は好きなように食べ、そこで不足するものは栄養剤で補なうのが文化人と考えている人も少なくないのだ。けれども、どんなに優れた(と宣伝されている)栄養剤でも、毎日の食物を改めない限り、完全栄養をはかることはできず、使い方をあやまると副作用が起こる場合もあるのだ。
     このごろ発売されている栄養剤には、いろいろな商品名がつけられているが、その主成分は、ビタミンB1・Cその他のビタミンや、カルシウム・鉄といったミネラルや、リジンその他のアミノ酸といったものであり、いずれも、もともと各種の食物わけても青野菜に含まれているものであり、間違った習慣食では不足してくるものである。そして、このただ一種を主成分としたものもあれば、あれこれと綜合したものもあり、なかには、これが不足すれば栄養障害を起こすが、習慣食でも別に不足はしていないものを主成分としたものもある。けれども、習慣食で不足しているのは、すでに究明されているものだけについても、こうした主成分以外に数多く、まだ究明されていないものは(数限りないと考えねばならないが)全く含まれていないのだ。従って、症状に応じて利用すれば、ある程度までは有効である(はずである)が、ただそれだけでは、とうてい完全な栄養にはならず、体具合もすっきりとはよくならず、全くのムダづかいになる場合もある。
     また、栄養というものは、熱量や蛋白質とミネラルやビタミンとの間だけでなく、さらに各種のミネラルや各種のビタミンの間にも、過不足がないように調和していることが大切であって、あるものが多すぎると、他のものが相対的に不足して栄養に障害が起こる。従って、ヤタラと栄養剤をのむと思わぬ副作用が起こることがある。もうひとつ、このごろの栄養剤の多くは、自然の食物から取り出したものではなく、化学的に合成したものである。従って、構造はほぼ同様であるが全く同一ではない場合があり、不純物が残っている場合もある。ために、期待通りの効果があらわれないこともあれば、思わぬ副作用が起こることもある。
     けれども、青野菜であれば、各種の栄養成分が、既知未知すべてにわたって、もれなくうまく調和しているので、少々沢山食べすぎても、ますます栄養が完全になるだけであって、少しも副作用は起こらない。草食動物は青草だけを食べて健康であり、肉食動物は、まず第一に、この草食動物の胃腸の中でなかば消化している青草を食べて健康である通りであって、人間は、胃腸の構造と食性に応じた食べ方、すなわち青汁にして飲めばよいのだ。同じカネを使うなら、それほど効果もなく、副作用を招くこともある栄養剤よりも、効果が確実で副作用のない青野菜に使うのが賢明であって、「クスリヤよりヤオヤヘ」といわれている通りだ。




07-13. 青汁教室の食養断想(10) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    青野菜は多ければ多いほど効果が著しい
     妊婦の健康と胎児の健全な発育に必要な完全栄養をはかるには、その他の食物についてあれこれと工夫する前に、まず第一に良質の青野菜を、日に自分の体重の1%、いなそれ以上につとめて沢山食べることが肝要である。それには、こういうわけがあるのだ。

     第一に、このごろの栄養学で設定している数量通りに完全にするには、厚生省調査の栄養摂取の実状からみて、良質の青野菜を日に体重の1%ほど食べたら、ほぼ達成することができ、そうする以外に、その他の食物を少々工夫しても、とうてい達成できないのだ。
     すなわち、完全栄養をはかるには、多量に消費される熱量素と蛋白質がそれ相当量必要であり、これは主として米・麦・芋・雑豆・砂糖・油や、魚・肉・卵・大豆などでとりいれている。そして、これが体内で栄養として利用されるとき、微量ながら各種のミネラルとビタミンがぜひ必要であり、これは、こうした食物ではいずれも、あれこれと不足しているため、主として野菜・果物・海草などでとりいれている。
     ところが多くの人々の習慣食では、熱量素と蛋白質はほぼ必要なだけはとっているが、ミネラルとビタミンが著しく不足して、栄養が不調和・不完全になっている。
     そして妊娠すれば、胎児の分までしっかり食べよう、栄養をつけようと、とかく熱量素や蛋白質の多いものはふやすが、野菜や果物、わけてもミネラルとビタミンがケタちがいに多い良質の青野菜はいっこうにふやさず、一時好みが変わることもあって、せいぜいミカンをふやすくらいであり、栄養はますます不調和・不完全になる。
     そこで完全栄養をはかるには、ふつうの習慣食・栄養食には間違ったところが多い、ということをよくわきまえて、他の食物をあれこれと工夫する前に、まず第一に良質の青野菜を思いきりふやして日に体重の1%ぐらいにすることが大切なのである。

     第二に、ミネラルもビタミンも、熱量素や蛋白質と少し様子がちがって、栄養剤ではなく食物、わけても良質の青野菜でとる限り、必要以上に少々とりすぎても、栄養には別に少しも障害は起こらず、ますます健康に好都合なのだ。
     すなわち、熱量素も蛋白質も必要なだけはぜひとらねばならないが、これが体内で利用されるのに必要なミネラルやビタミンが不足すると、その分だけ利用されないので、結果的には栄養が不足してくる。
     それだけではなく、未利用のものが体内にたまって栄養に障害を引き起こす。胎児の分までしっかり栄養をつけようと、熱量素や蛋白質の多いものを必要以上にふやすと、胃袋には限度があるので、ミネラルやビタミンの多い野菜果物、わけても良質の青野菜はとかく少なくなって、この障害はさらに著しくなる。
     けれども、ミネラルもビタミンも、良質の青野菜でとる限り、必要以上に少々とりすぎても、栄養には別に障害は起こらない。
     それだけではなく、熱量素も蛋白質も完全に利用されるので、ふつうの習慣食よりも少なくてすみ、それだけ少食になって胃腸の負担が軽くなり、また身もひきしまった健康体になる。
     それは草食動物は青草だけ食べて健康である通り、良質の青野菜は、各種のミネラルもビタミンもケタちがいに多いだけでなく、蛋白質も熱量素もよくそろった完全栄養食であるからであって、これは少々食べすぎても栄養には少しも障害は起こらないのだ。
     ただ人間は、胃腸の構造と食性から、この食べ方に工夫が必要であり、また、これ以外からも熱量素や蛋白質をとらねばならないのだ。
     そこで妊婦は、妊娠が経過するにつれて、平素ほどにも食べきれない場合が多いので、その他の食物にもそれ相応に工夫することが大切であるか、その前にまず良質の青野菜を、日に体重の1%といわず、それ以上につとめて沢山食べることが肝要なのであって、それには、その大部分を青汁にして飲むのが最も有効適切である。

     第三に、良質の青野菜を日に体重の1%といわず2%以上と、思いきりふやして、このごろの栄養学で設定している完全栄養を通りこして、各種のミネラルとビタミンが必要量をはるか超えるようにすると、健康に意外な効果があらわれてくるのだ。
     すなわち今日の医学で、治療が手間どる厄介な病気が、意外と順調に治ってくる場合が多い。また、どう処置しても容易に治らないとされている病気や、まだ原因も治療法も分かっていない病気が、だんだんと治ってくることがある。かつて妊娠中毒で困りぬいた人が、つわりさえもそう起こらずに、しごく順調に経過する場合が多く、また、流産・死産したり未熟児や異常児を生んだ人が、無事に正常児を生むことがある。
     それはおそらく、まだよく分かっていない必要不可欠な栄養素、ごく微量の痕跡成分といったミネラルが、良質の青野菜に多いからであり、これが最近だんだんと究明されているのだ。
     そこで妊婦は、胎児のほんとうに健全な発育をはかるため、良質の青野菜を日に体重の1%といわず、それ以上につとめて沢山、できれば2%以上食べて、既知未知すべてにわたって、ほんとうに完全な栄養をはかることが大分である。
     なにぶんとも胎児は、ただ1個の細胞である成熟卵が受精して、僅か280日間で、一人前の諸器官を備えた3kgの体に発育して出生するので、そのほんとうに健全な発育には、こうしたほんとうに完全な栄養が必要であり、そしてこれは、ただひとつ母体の栄養からうけいれているからだ。
     なお念のため。この青野菜は、危険な農薬や産業排出物その他で汚染していない安全なものであることが重要である。
     なにぶん沢山食べるので、汚染している有害有毒物もまた多量に食べこむようになって、完全栄養ははかれても、他方で自分の健康に、いなその前に胎児の発育に障害が起こるからだ。
     もうひとつ、この青野菜は、深耕したり客土したりすると共に、有機質肥料、それもできれば根の深い木の葉や海草と、石灰を十分施して栽培したものであることが望ましい。それだけ重要な成分が多くなり、また味もよくなり、(さらに病害虫に強くなって危険な農薬にたよらなくてもすむようになるからだ。)




07-14. 青汁教室の食養断想(11) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    なおつとめて海草・小魚・牛乳・卵・大豆をふやす
     妊婦が自分の健康と胎児の健全な発育に必要な完全栄養をはかるには、まず第一に、その決定打として良質の青野菜を、日に自分の体重の1%以上と、できるだけ沢山、その大部分を青汁にして、効率よく食べることが肝要である。
     が、その他の食物についても、なおつとめてあれこれと配慮すること、すなわち、

    • 海草・小魚・牛乳・卵・大豆といったものをふやすこと、
    • 米・麦わけても精白したものや筋肉部だけの魚・肉はひかえめにすること、
    • 砂糖・塩はできるだけひかえて薄味にすること、
    • 菓子や甘い飲み物は極力ひかえること、

     といったことが大切である。
     もうひとつ、良質の青野菜以外に、その他の野菜や果物も、つとめてふやすことが大切である。が、これで青野菜に代えるようなことをしてはならない。それはこういうわけだ。

     * 

     胎児は、ただ1個の細胞である成熟卵が受精して、僅か280日間で、一人前の諸器官を備えた体に発育し、約3kgになって出生するのだ。
     従って妊婦としては、こうした発育に必要な栄養、わけても身体諸器官をつくりあげる蛋白質やカルシウムを、妊娠が経過するにつれてだんだん多く、それだけよけいに食べなければならない。
     けれども、妊娠初期にはつわり症状が起こって食欲が出なくなる場合があり、妊娠が経過するにつれて平素ほどにも食べきれなくなる場合が多い。
     そこで大切なことは、平素よりそうよけいに食べなくても、食べたものがムダなく利用されて、必要な栄養が十分とれるようにすることだ。
     このため良質の青野菜を青汁にして日に2合以上飲むことが肝要なのであるが、なおつとめて、この青野菜からとるミネラルとビタミンで不足が生じないように、できるだけ余裕がでるように、他の食物も、できるだけミネラルやビタミンが多く、また蛋白質が良質であるものをふやし、そうでないものをひかえることが大切である。

     * 

     ミネラルやビタミンが多く、青野菜をそう沢山そえなくても、うまく栄養に調和がとれ、しかも良質の蛋白質が多いものは、まず第一が牛乳とマルごと食べる小魚、第二が卵と大豆と芋、第三が未精白の米麦と雑穀と雑豆である。
     そして、その反対の第一が砂糖わけても白砂糖、第二が精白した米麦、第三が筋肉部だけの魚や肉である。
     そこで、まず第一に大切なことは、調味上であり嗜好上であれ、砂糖や菓子や甘い飲み物を極力ひかえることだ。こうしたものは実状、栄養摂取上不要であり、有害でさえあるのだ。
     と共に、塩は平素よりひかえめにすることだ。実状、必要以上にとりすぎている場合が多く、とくに妊娠中は、腎臓の負担が重くなっているので、必要以上にとりすぎると、この負担がさらに重くなって妊娠中毒を起こし、さらに胎児にむくみがあらわれて発育に障害をきたすことがあるからだ。
     第二に、ごはんであれパンやウドンであれ、精白した米麦は未精白のものにするか、極力へらして芋や雑豆や雑穀で補なうと共に、つとめてひかえめにすることだ。食量の多い割りに栄養量が少なく、蛋白質もそう良質ではないからだ。
     第三に、筋肉部だけの魚や肉をできるだけひかえめにして、大豆や卵や小魚にかえることだ。とくに大豆は、古くから日本人の重宝な蛋白原であり、ドイツでは「畑の豚肉」といわれている通り、栄養に調和がとれやすく、良質の蛋白質が多く、安価でもあるのだ。
     第四に、家計が許す限り牛乳をふやすことだ。欧米で蛋白質の多いものを、という場合、それは肉や魚や卵ではなく牛乳のことなのだ。蛋白質が最も良質であると共に、各種のミネラルとビタミンも多いからだ。なお、良質の青野菜を青汁にして牛乳と比べると、各種のミネラルもビタミンもはるかに多く、蛋白質もまた多く、しかも劣らず良質なのであるが、ただ脂肪が少ないために熱量が劣っているだけだ。もっとも味わいは劣っているが。

     * 

     妊娠中は海草を、ということは古くからの言い伝えであるが、これは、海の青野菜であるだけでなく、さらに科学的にも根拠のある知恵である。すなわち、とくに胎児の健全な発育に、ごく微量ながら極めて重要なヨードその他のミネラルが、海底にはえる海草には多いが、陸上の野菜その他の食物には少ないのだ。
     それは、地球ができてこのかた、こうしたミネラルがだんだんと陸上から流れ出て海にたまっているからだ。

     * 

     妊娠中の食物については数多くの言い伝えがあり、食べてはならぬといわれているものもいろいろある。だが、殆んどすべて科学的には根拠の少ないものであって、平素食べて栄養に本当に役立つものであれば、妊娠中に食べても別に差し支えはない。
     たとえば柿は、各地で食べてはならぬと言い伝えられているようだが、渋味のぬけたものをよくかんで食べれば別に差し支えはなく、青野菜にははるかに及ばないが、黄色の野菜・果物として、ニンジン・カボチャ・トマト・ミカンなどについで栄養価が高く、嗜好品としても適切である。
     だが、その他の中味の白い野菜・果物は、こうした黄色のものに比べると著しく劣り、青野菜とは比較できないほど劣っている。
     けれども、毎日の食膳に変化をつけるために、また嗜好品として、さらにはこれでハラのたしにして、たべすぎてはならぬものをひかえるためには、それなりにけっこうである。
     ミネラルやビタミンの補給にもいくぶんかは役立ち、便通にも好都合である。だが、これで青野菜の代わりにしてはならない。

     * 

     なお、念のため。こうした各種の食物についても、青野菜の場合と同様に、すべてよく吟味して農薬や産業排出物などで汚染していない無害無毒の安全なものを、とくに加工品については、危険な添加物のはいっていない純正なものをえらぶことが大切である。たとえ妊婦にはこれといった障害は起こらなくても、胎児には重大な障害を招くことがあるのだ。
    (つづく)




07-15. 青汁教室の食養断想(12) 健全な子どもを産むには

     友成 左近 

    その気になれば青汁でもけっこう飲める
     心身ともに健全な子どもを生むには、なによりもまず母体が健康であること、そしてこの健康には、他にもあれこれと気をつけねばならないが、その土台である栄養に調和・完全をはかることが肝要である。
     それも、一応の健康がはかれる程度の、ひと通りの完全栄養にとどまることなく、胎児のシンから健全な発育に必要な、既知未知すべてにわたった、ほんとうに完全な栄養をはかることが大切である。
     それには、まず第一に、その決定打として、良質の青野菜を日に自分の体重の1%以上、できれば2%以上、それを青汁にして2合3合4合と飲むことが肝要である。
     そしてそのうえで、なおつとめて牛乳・小魚・海草・卵・大豆などを沢山、できるだけ塩と砂糖をひかえて薄味にして食べること、精白した米麦や筋肉部だけの魚や肉はひかえめに、菓子や甘い飲み物は極力ひかえることが大切である。
     なお、さらに食物はすべて、原材料であれ加工品であれ、よく吟味して無毒無害の安全純正なものをえらぶことが大切である。

     * 


     というと、ふつうの習慣食や世にいう栄養食とは少々ちがったところがあるためか、イヤダ、という気持が先立って、この意義をマトモに理解しようとする前に、食わず嫌いに拒む人が少なくない。
     一応は理解もし、改めようともするが、人の常として弱いところがあるため、これまでの習慣・好み・わがままに打ちかてない場合もある。
     だが、最愛のわが子の健全な出生を念願して心を開けば、この意義をマトモに理解することもでき、そして改めることもできるのではあるまいか。
     ここでいう通りにまで改めなくても、なにほどかでも改めることはできよう。
     そうすれば、それだけの効果は必ずあり、それを足場にして、だんだんと改めていくことができるのだ。

     * 


     最も食わず嫌いに拒まれやすい青汁でも、しかもつわりで、なにを口にしてもムカづいていたのに、別にあげることもなく、意外とうまくおさまって、けっこう飲みつづけた人もある。
     多少はあげさげしたが、胃腸の大掃除だと思って、しばらく飲みつづけているうちに、うまくおさまるようになった人もある。
     青汁に限らず、ほんとうに身につくものは、こうした性質のものであり、また、これで少々あげさげしても、それで決して流産するものではない。
     とはいっても、妊娠と気づいてからでは、いささか手おくれであり、また、つわりがひどければ、改めるのに、よほどの決心と努力が必要である。
     であれば、気づくまえから、いな結婚前から、こういうふうに改めておくのが賢明である。

     * 


     妊娠中こうした食べ方につとめると、お産は至って軽く、生まれた赤ちゃんは大きなうぶごえをあげ、早く母乳をしっかりと吸い始め、新生児の間でも体重がそうへることなく、しごく順調に発育する。それは、よけいに脂肪がついていないために小さいが、骨組みと肉づきがしっかりとした、ほんとうに丈夫な赤ちゃんであるからであり、「小さく生んで大きく育てる」というのは、こういう意味なのだ。

     * * * 


    赤ちゃんにも青汁を砂糖は与えないで
     なお序に、出産後のことについて、ひとこと。
     妊娠中こうした食べ方をすれば、出産後の肥立ちがよく、母乳もよく出るが、いうまでもなく、ひきつづきほぼ同様な食べ方につとめて、必ず母乳で育てることが大切である。
     人間のあらゆる食物のうちで、母乳は栄養が最もよく調和した完全食であり、こうした食べ方をすれば、よりいっそう完全な母乳が沢山出るからだ。

     * 


     だが、この母乳でも、ある主のミネラルが少し不足しており、また、赤ちゃんが成長するにつれて、母乳だけでは栄養総量が足りなくなる。
     そこで、おそくも3ヶ月ごろから、だんだんと補食しなければならないが、これには必ず青汁を加えることが大切である。
     それも、できるだけ早めに、生後2週間もたち、母乳をしっかりと吸い始めたら、サジの先につけてなめさせ、だんだんと胃腸をならしながら回数と量をふやして、6ヶ月ごろには日に五勺ぐらいまでにするのだ。
     そうすれば栄養が完全になるので、至ってイジよく、筋骨がしっかりと発育する。

     * 


     というと、あんな青汁をと、びっくりする人があるかも知れない。
     だがそれは、よいかげん狂っている成人の目・鼻・口先でそう思うだけのことであって、まだ狂っていない赤ちゃんには、まことにけっこうな補食なのだ。
     ミカンやリンゴの汁はよいが、青野菜の汁はいけない、というリクツは成り立たないはずであり、栄養上からも、青汁はケタちがいに優れているのだ。

     * 


     もうひとつ、母乳より甘いもの、わけても砂糖は決して加えてはならない。
     赤ちゃんの口があまやかされて味覚が狂い、肥満・不健康のもとになる甘いものをヤタラとほしがり、栄養上大切なものをきらうようになるからだ。
     であれば妊娠中、というよりも結婚前に、必ず母乳をなめてみて、その甘さかげんをシカと覚えておくこと、
     そして、それより甘いものは食べないようにつとめることが大切である。
    (おわり)




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