健康と青汁タイトル小
クリック  食材あれこれインデックス

食材あれこれ(1)
食材あれこれ(2)
食材あれこれ(3)
食材あれこれ(4)
食材あれこれ(5)
食材あれこれ(6)
食材あれこれ(7)
食材あれこれ(8)





8-1. 老化を防ぐゴマの効能

    現代人が不足がちな栄養がいっぱい
     食事改善で治療している所を見て回りましたが、どこも共通してゴマをたくさん使っています。ゴマは中近東やアジアで古くから薬効と貴ばれてきた伝統ある食品です。
     私たちも子どものころから、ゴマを常食していると、肌がきれいになって、白髪が防げるなどと聞かされたものです。

     最近、欧米でもゴマが注目されだしたので、その栄養価を細かく調べてみると、なるほど・・・理由が分かりました。
     ゴマには現代の食生活では不足しがちな微量ミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンなど)やビタミンB群が多く含まれているのです。
     さらに細胞を作っている脂質(ビタミンFとも呼ばれるリノール酸やレシチンなど)の種類も多く、そのためゴマ自体が酸化を防ぐために持ち合わせているセザノールには、ビタミンE同様の強い抗酸化作用があって、老化を防いでくれます。

     ゴマには色で白、黒、茶、金と4種類ありますが、成分的にはどれも大差がありません。選ぶときには粒ぞろいで丸みのあるもの。
     黒ゴマの場合、黒々として艶がないというのは着色の疑いがあります。ゴマは小さく皮が硬いので、そのままではせっかくの栄養素もりようされずに排出されてしまいます。できるだけ生のものを求めて、いってすりつぶして食べたいものです。
     卓上ゴマすり器なども利用して、手軽にご飯やいろいろな料理にふりかけてみてはいかがでしょう。

    (サンケイ56・4・11)




8-2. 諸葛菜

     医学博士 遠藤 仁郎 

     国訳本草綱目第7冊403ページ、蕪菁(かぶら)(蔓菁)項の釈名に、

      「劉禹錫の嘉話録に“諸葛亮は軍隊を駐めると、兵士を指揮してそこに蔓菁だけを種えさせたものだ。
       それは、
        一にはわずかに苗が生えはじめると生で啖へる。
        ニには葉がのびれば煮て食へる。
        三には久しくそこに滞在すればますます繁茂し成長する。
        四には棄て去っても惜しくない。
        五には再びその地に向ったばあいたづねて採り易い。
        六には冬には根があって食へる。
       諸種の蔬菜に比してその利用の甚だひろい点に着眼したものだ。
       現在でも、蜀地方では諸葛菜と呼び、江陵ではやはりさう呼んでゐる”とある。」

     と出ている。
     なるほど、この記事の一,二と六とはカブラのことだろう。
     が、三の、久しくおればまずます繁茂することや、五の、またもどって来たときさがしやすい、とあるのはケールにぴったりで、カブラのこととはかんがえられない。




8-3. ジャガイモ

     新ジャガのおいしい時期になりました。
     お塩でよし、バターでよし、そしておみそ汁の実にも最高ですね。
     このジャガイモ、原産地は南アメリカ大陸の高原地帯とか。
     日本に渡ってきたのは、今から約4百年前。
     ジャワのジャガタラという港から運ばれてきたので、ジャガタライモと名付けられたそうです。
     ところが当時は、「ジャガタライモは有害だ、食べると恐ろしい病気になる」というわけで、もっぱらお花を観賞したんですって・・・。
     今から考えると、これはジャガイモの芽や皮に含まれている“ソラニン”という物質が原因。
     それにジャガイモの淡泊な味が、お米のご飯にあまり合わなかったせいもあるようです。
     でも無実の罪は、いずれは晴れるもの。
     正しい調理法が伝わり、明治になってお肉をいただくようになると、人気急上昇!“肉ジャガ”は、今や「おふくろの味」の代表格にまでなりました。
     ところでジャガイモというと、デンプンのかたまり(=太る)と思いがちですが、これは大変な誤解。
     ビタミンやミネラルが豊富な、とてもバランスのとれた食品なんです。
     とくに強調したいのが、ビタミンC。
     −かつて北欧では、野菜が少なくて壊血病が猛威をふるいました。ところがジャガイモが普及してからは、これがピタリと止まったとか・・・。
     以来ヨーロッパでは“黄金のリンゴ”とか、“地のリンゴ”と呼んで、とても大切にしているそうです。

    (59・5・28 サンケイ)




8-4. 梅干(うめぼし)

     日本食事学 東京農大教授 小泉 武夫

    日本人を支えてきた“小さな紅い玉”古くから“万能薬”として重宝
     梅干(うめぼし)といえば、戦前派の人ならまず、「日の丸弁当」を思い起こすに違いない。戦時中の苦難期や戦後の混乱期に、露営や勤労工場で、そして、焼け跡の整地場で、四角い弁当箱の飯の中に梅干一個を埋め込んだ質素な弁当を食べながら苦難と欠乏を耐えしのんだ日本人。この赤い小さな玉こそ、粗衣粗食の日本人を支えてきた食生活の原点といってよいだろう。
     梅は中国原産のバラ科サクラ族に分類される落葉小木で中国文化とともに、薬木として奈良時代に渡来した。平安時代の永観2年(984)に丹波康頼(たんばのやすより)が著した『医心方(いしんほう)』には「烏梅(うめぼし)」としてその薬効が説かれているから、大変古くから、日本人は梅干を重宝してきたことがよくわかる。
     禅僧は点心(てんじん)=茶請け(ちゃうけ)や正食時のさい(菜)=として、武士は出陣や凱旋の兵糧として、また家庭では食べものというより常備品として、大切に食べ続けてきた。
     梅は塩漬けにすると、食塩の作用で浸透圧が高くなり、細胞の原形質分離が起こって梅の実から浸出液が出る。この液が梅酢(うめず)で、平安時代・昇平年間(931〜938)の『和尿少(和妙少)』ではこれを塩梅(えんばい)とあり、この塩梅がやがて「あんばい」と読まれて味かげんを意味するようになった。この梅酢は当時、よほど重要な調味料であったのだろう。
     塩漬けにした梅には、途中、しその葉を加えて着色し、成果の晴天には梅酢から一度出して、日干し、再び戻して、しばらく置いた後、肉が軟らかくなったところで、梅酢と分け、容器内に密封貯蔵して味をならす。
     梅干の強い酸味(約4%)の主体はクエン酸で、ほかにリンゴ酸やフマール酸を含むが、これらの有機酸は現代医学でも整腸や食欲増進、殺菌作用などに効果あるものとされている。
     そのことを体験的に知っていた日本人は梅干を実に、上手に使ってきた。疲れると、元気回復にと食され、風邪といえば湯に解いて飲み、子供の食あたりには下痢どめによしと飲ませ、夏まけの防止にとしゃぶり、ツワリによしと妊婦が好み、時にはこめかみに梅肉を貼り付けて頭痛の特効薬ともした。
     食べものが腐りやすい時期には、弁当やおむすびに入れて防腐の効果も期待した。まさに、梅干は日本人にとってオールマイティーの万能薬的存在であった。
     梅干に薬効があるのは、梅から溶出してきたさまざまな有機酸のほかに、種子の核やシソの葉から溶出してきた快香をともなった薬効成分(芳香族アルデヒド類、テルペン系化合物、ぺリラ化合物など)のためである。これらの化合物群は、前述したさまざまな症例のほかに、鎮咳、解熱、利尿、健胃、発汗、解毒、精神安定などに効果がある。単に梅を塩につけただけでなく、そこにしそを加えて着色させ、見た目を美しくしようとした一方で、梅成分とともにシソ成分の薬理効果も併せて期待した日本人のこの知恵には驚かされる。
     梅干の都合のよいところは、何といっても長時間、保存のきく食品であることだろう。いつ、どんなときでも即席ものとして梅干一個で飯の二杯は食べられるから、“救荒食品”として重宝され、有事の際は常に日本人を守ってきた。だが、飽食の時代といわれる今日、この日本の風土と生活の知恵が生んだ健康食品も次々に食卓から遠ざかっていく感があるのは、はなはだもったいない気がしてならない。

     梅干すや庭にしたたる紫蘇(しそ)の汁(しる)

    (60・6・12 サンケイ)




8-5. ゴボウやコンニャクの効用

     牛蒡(ごぼう)は日本人だけが食べる根菜である。
     ヨーロッパ、シベリア、中国北東部にその野生原種がみられるが、日本にはない。
     わが国には、平安時代の初期に薬物の一つとして大陸から渡来してきた。
     中国では、漢方薬の原料に使われる程度で食用としての例はほとんどない。
     牛蒡は、難消化性多糖類の繊維素が主体であるので、食べても消化せず、胃腸を通過するだけなので栄養源にはならない。
     ところが、その牛蒡の繊維素は、白米や肉などにくらべ20〜30倍もの水を吸収して膨潤し、腸管を通過する際に腸内を清掃し、お通じがよくなることは、昔からいわれているところである。
     そのうえ、繊維素は体にとって、在り難い腸内細菌を多く増殖させる場ともなるから、腸に侵入した腐敗菌や異常発酵菌の増殖を抑えるとともに、そこでさまざまなビタミンを生合成するから、体はそれを吸収し利用していることもわかった。
     さらに、繊維素は胆汁酸の分泌を多くして、脂肪の分解やコレステロールの過剰を抑えるのに効果ありとされるなど、栄養価ゼロの食品が、実は体にとって大変に役立つものであることがわかってきた。
     日本には、この牛蒡の例のように栄養的には無駄な食べものでありながら、実は貴重な価値を持っているものがずいぶん多い。
     薊(あざみ)の根▽薇(ぜんまい)▽蕨(わらび)▽土筆(つくし)▽筍(たけのこ)▽蓮根(れんこん)▽糸瓜(へちま)▽萌(もやし)▽蕗(ふき)などは、いずれもその仲間である。
     中でも、蒟蒻(こんにゃく)は、多くの話題を持っている。主成分が多糖類の一種マンナンで、人間はこの成分を消化吸収できないから、低カロリー食品の代表格とされている。
     そのうえ、このマンナンは、水にあうと、みるみる膨潤して膨れ上がり、蒟蒻となってからは、その97%が水分という水ぶくれ状態。
     カロリーはゼロに等しい。
     その性質を利用して、古来から「砂払い」といって、腸管の掃除役に重宝した。
     家の大掃除の後、体に吸い込んだ埃(ほこり)を取り出そうと、本気で蒟蒻を食べさせられた記憶も古くはない。
     日本人がこのように、一見無用と思われる食べものを好んで食してきた背景をよく物語るものとして、江戸時代に食べられていた極めて珍妙な料理の例を挙げてみよう。
     この料理の驚くところは、何と栄養など、まるで無い和紙を食べてしまうところにある。

     「奉書紙を3日ほど水に漬(つけ)、成(なる)ほど能(よく)たたきつぶし、葛(くず)を合(あわせ)て味噌にてこね 能程(よくほど)に切(きり)て みそ汁にて煮る 此餅を食する者は 年中悪病を除く也」。

     これは明和元年(1764)の『料理珍味集』に記載されている一節である。
     奉書紙の原料は楮(こうぞ)の繊維であるから、すでに日本人はこのころから、最近重要視されるようになった食物繊維(ダイエタリー・ファイバー)を意識的に採り入れ、腸管への刺激による便秘の防止や、腸内細菌のコントロールをしていたことが推察されるのである。
     便秘の薬や整腸剤などのなかった時代での、まさに理にかなった知恵である。
     このように牛蒡も蓮根も筍も蕨も薇も、そのほとんどが繊維素を食べることに共通をみるが、今ひとつ大切な共通点を持つのが歯ごたえである。
     日本人は昔から、歯ごたえのある堅さも一つの風味の要素として重宝してきたから、これらの食物が口に入ってからの物理的抵抗感は日本人にピッタリの好みともなって、大いに食されるところとなった。
     だから、牛蒡ではキンピラ、蓮根ではゴマ和えといったように、なるべく繊維をいためることなく、そっとしておいた調理法が、これらの根菜には共通してとられているのである。
    (東京農大教授 小泉武夫)
    (61・1・22 サンケイ)




8-6. シイタケ

    血圧低下から抗がん作用まで
     「香りマツタケ、味シメジ」とキノコが思い出される秋になった。
     高根嶺の花のこれらのキノコと異なり、シイタケは私たち庶民にはなじみの深い食品である。
     言葉通り、シイタケはシイの木に生えるキノコである。
     日本で食べられた記録はすでに西暦200年からある。
     江戸時代には盛んに用いられたが、「酒の肴にしてはいけない」とされていた。
     酒の酔いが早くまわるというのである。
     だからといって、悪い成分が発見されているわけではない。
     たぶんうまい肴で飲み過ぎるなという戒めであろう。
     シイタケのうま味はグアニル酸で、かつお節のイノシン酸と並んで、うま味の双壁である。
     香りの成分はレンチオニンといい、干しシイタケにするときに生成する。
     乾物をもどすには、じっくりと水につけてもどした方が、香りと風味が十分に出てくる。
     シイタケの栄養成分は何といってもエルゴステロールであろう。
     シイタケに紫外線が当たると、これがビタミンDに変化するので、天日で乾燥したもののほうがD量が多くなる。
     エルゴステロールは、体内でも皮膚の部分で紫外線に当たってDに転換し、生理効果を発揮する。
     Dはカルシウムの吸収には不可欠のビタミンで、骨を強化するのに役立つ。
     最近話題の食物繊維も多量に含まれており、シイタケの食卓での活躍ぶりは相当なものがある。

    (啓介)

     シイタケは昔から不老長寿の薬といわれて珍重されてきた。
     その点に着目した生理効果の研究が盛んに行われてきた。
     例えば、コレステロールに関する研究は昭和39年ごろから始まり、血中コレステロールの排せつを高め、動脈硬化を抑制するエリタデニンという成分が発見された。
     国立栄養研究所でも、ボランティアによる実験が行われた。
     健康な若い女性30人を10人ずつ3グループに分け、1日あたり生シイタケ90グラム、その乾燥量にあたる干しシイタケ9グラム、紫外線照射干しシイタケ9グラムを毎日1週間食べさせたところ、3群とも血中コレステロールは低下した。
     高齢者でも同様の結果がでたし、動物性脂肪の代表であるバターと一緒に食べても、血中コレステロールは増えなかった。

     次いで遺伝的に血圧の高くなるラットを用いて、高血圧に対する影響を調べた。
     飲料水として水を与えたグループに比べ、乾燥シイタケの水抽出液(もどし汁)を飲ませたグループでは血圧が低下し、この液を飲ませるのをやめると血圧は上昇した。
     シイタケのこの有効成分は加熱に対しても抵抗性を持ち、比較的低分子の物質であること。
     また、コレステロールを減少させるエリタデニンとは異なる成分であることも、筆者によって確認されている。
     最近の研究では、シイタケには抗がん作用もあることが判明している。
     シイタケはがんを抑えるインターフェロンを誘起することが分かったのである。
     実際に抗腫瘍性のレンチナンを含んでいて、がんやウイルス性の病気に対する身体の抵抗性を増やすのに用いられている。
     このレンチナンもβ−D−グルカンという食物繊維の一種である。
     動物性や植物性の食品を好き嫌いなく何でも食べることが健康増進には肝要であるが、キノコもこれからの健康、長寿のために有用な代表的食品の一つかもしれない。
    (62・9・30 サンケイ)




8-7. パセリ ビタミン、ミネラルの宝庫

     食生活が多様化している。
     日本人の中でも洋食党が増えてきて、特にヤングでは肉類やパン、スパゲティなどの大好き人間が目に付くようになった。
     洋食にはパセリが添えものとしてよく使われる。
     どこにでも姿を現す人をイタリアでは「パセリのように」と表現するそうである。
     パセリのふるさとは遠く中近東のシリア高原とされている。
     ギリシャやローマ時代から薬用、香辛料として利用されてきた。
     歴史の古い野菜の一つである。

     日本には18世紀にオランダゼリとして渡来したという。
     にんじんと同じセリ科の植物である。
     このファミリーには香辛料になっているものが多い。
     日本では料理のツマにお皿の上に乗っかっていることがせいぜいであるが、ヨーロッパでは根が太ってカブのように食べられる品種もある。
     けっこうバラエティーに富んだ奥の深い野菜なのである。
     アメリカやスイスで観察した限りでは、欧米人は添え物も残さずにきれいに食べてしまう。
     学会で一緒になった北欧やソビエトの学者たちは、特にそうであった。
     野菜の一種であるパセリは北の地方では貴重品なのであろう。
     それどころか、お皿に付着したドレッシングやソース類までパンできれいにぬぐって平らげてしまう。
     日本人は出されたものをすべて食べてしまうのは、お行儀が悪いように感じるのか、もうおなかがいっぱいですよとばかりに、席を立つのが普通である。
     しかし、パセリを残すのは栄養的にはもったいないことである。
     その理由は後で出てくるが、ビタミンやミネラルの宝庫である。
     ハナにソエがあり、サシミにツマがあるように、サンドイッチには単にパセリが付く決まりでは決してない。
     確かにパセリの効用の一つに見た目の美しさがあるだろう。
     白いお皿に赤いお肉、だいだい色のにんじん、それに濃い緑色はよく映える。
     すばらしい配色である。
     みるだけでだ液の分泌がよくなり、食欲がわき上がってくる。
     それ以上に優れている点は香りがよいことである。
     この香りは日本人にとってはなじみの薄いものである。
     乾燥した欧州では香水が好まれるのと同様に、料理のバター臭さを中和する効用が評価されている。
     セリに似た香りで、成分は精油やペトロセリン酸とされている。

    (啓介)


     ビタミンやミネラルの含量を食品ごとに並べていくと、ほとんどのグループでパセリが上位に並ぶ。
     野菜のなかでは独走体制で、後に続くものはぐんと落ちてしまう。
     レタスと比べてみると、
        ビタミンAが5.5倍、
           B1が4倍、
           B2が2倍、
        ナイアシンが4.5倍、
            Cが15倍、
        カルシウムが4.2倍
         カリウムが2倍
     も含まれている。
     二口か三口で食べられる10グラムのパセリで、大人の男子が一日に必要なビタミンAの5分の1、Cの2分の1が、充足される。
     生でこれだけの量の微量栄養素を供えている野菜は少ない。
     決してサンドイッチのツマなどとバカにしてはいけない。
     肉のようにタンパク質と脂肪に富む食品、あるいは辛口の魚料理などにもよく合う香辛料である。
     新鮮なものほどビタミンなどは多いから、庭で栽培したものを摘んできて利用するのが最高だ。
     肥料はあまり要らないし、農薬もつかわないほうがよい。
     日陰の地でも元気よく生育する。
     細かく刻んでスープに入れると香りが楽しめる。
     ビタミンAになるカロチンを有効に吸収させるためには、植物油でさっと揚げるか、天ぷらにすると、効率があがる。

    (悦子)

      (啓介氏は国立栄養研究所の栄養資源開発研究室長、
     悦子さんは病態栄養研究室長)
     (63・5・11 サンケイ)




8-8. ダイコン

    ビタミンCの貴重な供給源
     晩秋の夕日を浴びて、収穫したダイコンを1本1本丁寧に流水で洗う光景は、かつてはどの地方でも見られた。
     しかし、最近では自動洗浄器で簡単にピカピカに磨かれるハイテク時代となった。時代は変わっても、ダイコンの人気は相変わらず高く、収穫量、消費量ともに日本の野菜の中で最も多く、名実ともに野菜の王様である。

     古くから日本で栽培されたが、原産地は地中海沿岸。
     古事記に淞富泥(おほね、大根)の名で現れる。
     すずしろ(鈴白)ともよばれる。
     大根足はもともとは女性の白い足を褒めたたえた表現であったが、いつのまにか太さを冷やかす意味に変わった。
     長い間の品種改良で、さまざまな形態のものに分化した。
     「桜島」は重さ10キロにも達するジャンボ、「守口」は長さ2メートル近くにもなるスリム。日本人はダイコンの白色を好むが、中国には赤や青の肉色をもつものもある。
     青首は甘みが強く、どんな料理にも向いているため、消費者からの評価が高い。
     根は水分が大部分である。残りは糖質、食物繊維で、ビタミンCも多い。
     「大根食うたら菜葉は干せ」とことわざにあるように、葉にはビタミンC、カロチン、カルシウム、鉄、カリウムなどが多いので、干し葉にして保存し、まさかのときに利用されてきた。
     加工品の糖みそ漬けはビタミンB1やナイアシンが増える。

    (啓介)


     ダイコンのほのかな甘みはブドウ糖が主体、ショ糖が補佐役である。
     合計で3%内外含まれる。ビタミンCが多いことはよく知られているが、根に15ミリグラム、葉に70ミリグラムと、葉に圧倒的に多い。
     根におけるCの分布は均一ではなく、葉のつけ根に近い上部、成長著しい先端部、皮部などの、どちらかというと破棄されやすい部位に多い。
     また、若どりのダイコンにはCが多く、収穫が遅れるほど減少していく。
     ビタミンC不足は歯ぐきからの出血や内出血の治療を遅らせる。
     生体内における油脂の過酸化物の生成を防ぐ抗酸化作用、魚の焼け焦げに含まれる発がん物質の抑制、抗高脂血症やストレスへの抵抗力の増強などビタミンCの効果は多彩である。
     Cの不足しやすい冬場には、ダイコンは貴重な供給源となる。
     「ダイコンどきの医者いらず」といわれるように、ダイコンは消化を助け、いくら食べても飽きない。ご承知のように、ダイコンにはもちやご飯のでんぷんを消化するアミラーゼという消化酵素が含まれている。皮部に多く、冬よりも夏のダイコンに多い。

     辛みの母体はイソチオシアネート。ダイコンの代謝が活発な生育初期に多く、成長とともに減少し、根の先端部に近づくほど含量が増してくる。ダイコンおろしの辛みを敬遠したい人は根の上部を選び、先端部を避けるとよい。おろしたものに酢やみそを加えたり、わずかに熱したり、しばらく放置しておけば辛みは減少する。
     ダイコンとニンジンを一緒に混ぜおろすもみじおろしは、せっかくのCをニンジンが酸化してしまう。30分でCが3分の1に減ってしまうので注意したい。

     この場合でも、酢、しょうゆ、食塩などを加えておけばCの分解は遅れる。
     ダイコンは形が整っており、根が真っすぐな雪白のものがよい。根が曲がったり、裂けたり、二股のもの、ひげ根が発達しているものはよくない。
     加熱すると首部が黒く変色し、コルク状になったり、裂け目ができる。肉質は多汁でしかもち密なものが望ましい。鬆(す)が入ったり、水気が少ないものは食味が悪いだけでなく、栄養価値も低い。
    (悦子)

    (啓介氏は国立栄養研究所の栄養資源開発研究室長、
    悦子さんは病態栄養研究室長)
    (62・11・18 サンケイ)




8-9. 食べたことある? うまいケールの花芽

     4月中旬にはケールは一斉に花芽を出します。
     この芽と茎のやわらかい部分は天下の一品です。会員さんで希望する方には、手間ですが束にして研究所から送ってくれるようです。料理の仕方は簡単ですので後に述べます。先づ4月中の野菜の王者です。当会員か栽培している人でなければ味わえないでしょう。

     食べ方は

    1. 花芽の白あえ。花芽を熱湯で約2分間ほど湯がき、さっと上げて水で冷やし、トーフ一丁と塩少々すりゴマを入れて、すりバチで軽くかきまぜ出来上り。
    2. さっと湯がき上げて水で冷やし、マヨネーズをかけて食べてもおいしいです。
    3. 花芽の玉子あえ、花芽を湯がき上げ、水で冷やして1センチ位に切りフライパンに油をひき、玉子と一緒に煎り上げ、マヨネーズかケチャップなどかけて食べます。
    4. 花芽をさっとゆがき水で冷やす。酢、しょうゆ、煮切りみりんで味付けし、少しおいていただきます。

    (ケール健人会報より)




8-10. 岸ユキのちょっと味な話

    “ラッカセイ”
     灯火親しむ候、ラッカセイをサカナに読書三昧。
     ポリッ、ポリポリ・・・。ふっと気がつくと、菓子鉢には皮ばかり。
     −こんなご経験、みなさんもおありになるのでは。
     このラッカセイ、漢字では落花生と書きます。どういう意味なのかというと、これが実のでき方と関係があるんだそうです。
     ラッカセイは、受粉して花びらが落ちると、子房(しぼう)が下のほうへスーッと伸びていきます。
     そして土のなかで実をつけるんです。なんだか植物というよりは、昆虫が卵を産むような感じですね。
     “花が落ちて生(な)る”ので、落花生。もともとはラッカショウと読まれていたということです。
     原産地は、南米のブラジル。日本には、中国経由で江戸時代に渡ってきました。中国の南京(なんきん)から伝わったので、南京豆とも呼ばれたとか。
     でも、実のでき方があまりにも不思議だったので、当時はほとんどつくられなかったそうです。
     本格的に栽培されるようになったのは、明治時代に入ってから。以来、お茶うけやビールのおつまみ、そして読書の友として日本人に愛されてきました。ラッカセイの実には、脂肪が約50%、タンパク質が約30%も含まれています。
     さらに、ビタミンB1や不飽和脂肪酸も豊富。血のめぐりをよくしたり、老化防止に役立つ健康食品として注目されています。
     以前は殻をむいたラッカセイが好まれていたそうですが、最近は殻つきの方が人気が高いとか。
     やっぱり殻つきの方が味がいいし、パリッと割ったときのあの香ばしさはなんともいえませんものね。
     秋の夜長、殻をかじりつつラッカセイのお話など、いかがでしょうか。

    (6



8-11. 『マナ』のこと

     医学博士 遠藤 仁郎 

     さきに“神のマナ”について、私の勝手な解釈を書きましたが、それについて久米としみさんからキリスト教の参考文献からコピーをいただきました。

    「久米さんは、四国の秘境祖谷に祈りの家を開設(5月号の写真)、キリスト教伝道と併せて青汁の普及に献身されています。」

    マナ
     イスラエルの人々がエジプトからカナンへ旅をしてシンの荒野に到着した時、彼らは食べ物に困ってしまった。彼らは「餓死すること」を恐れて、モーセに対して、苦々しそうに不平を言った。彼らのつぶやきに応じて「天からのパン」が、彼らに与えられたのである。次の日の朝「降りた露がかわくと」そこに「美しい薄片・・・・・・美しい、地に結ぶ白い霜のようなもの」が、現われた。彼らは、ちょうど各人が「おのおのその食べるところに従って」それを集めた。それは「コエンドロの実のようで白く、その味は蜜を入れたせんべいのようであった」。
     「イスラエルの家はその物の名をマナと呼んだ」(出エジプト16:2−31)。
     もしも、このことについての自然的説明を求められるならば、いくつかの説明が可能である。
     様々なこん虫が、荒野で成長するある種の植物の樹液を吸うと、甘味のある汁を分泌し、それが上述したような物質を生じるのである。
     この珍しい写真は、エルサレムにあるヒブル大学の植物学者のF.S、ボーデンハイマーが、1927年にシナイ地方の、学術研究旅行をしていた時に撮影したものである。
     それは、ナヤコッキ(植物の寄生虫)が、枝の上に、ガラス状の物質の小球体を生じさせた、タマリスク(ぎょりゅう)の小枝を写している。
     シナイ半島のべドウィンたちは、これらの物質を集めて、食用とする。
     人が、1日に1キログラムを集めることは、容易であると言われている。
     それが、イスラエルの人々が、集めては食べた物であろう。
     彼らはそれをマナと呼んだ。(ヒブル語で、マンフウとは、〈それは何ですか〉という意味である。)




8-12. わが家の甘藷葉雑炊(カンダバージューシー)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     今年は、8月に降雨の日が多く、秋野菜の出来がわるく、高値をなげく主婦の声を尻目に、わが家では毎日ナッパ、ナッパ。150本もさしたサツマイモのつるは、連日の雨でのびること、のびること。
     2〜3回もツルオコシをし、どんどん摘みとってもいるのだが、畑いっぱいにひろがったイモの葉。
     「なんの野菜ですか?」
     とたずねられるほど、立派な大きな軟かそうなハート型の葉が、それこそ畑いっぱい。
     例の私の定食イマナ飯のナッパはもとより、汁の実にも、煮つけにも、酢のものにもと、毎食青づくめ。
     そして、食べ残しは全部朝食用の汁にぶちこみ、新しく摘んだ葉もろとも雑炊(イモの葉雑炊)にする。
     スリゴマ4〜50グラムを入れ、時には卵もおとしてみる。見かけはよくないが、いろんなものの混った味のカクテルとでもいうかなかなか味はよい。
     先年、沖縄の小料理屋で食ったカンダバージューシー――豚のダシで白いお米の中にイモの葉を少し炊きこんであるおいしい雑炊だった――にはくらぶべくもないが。
     その時、あとで古老から

    「それは今様のお客さまむきのカンダバーで、むかし、わしらが食べていたのは、そんなものじゃない。まるで葉ばかりで、米粒はたまにしかお目にかからぬようなものだった」
     ときいたが、そのほんもののジューシーはこんなものじゃなかったか、と思い思い毎朝あかずに腹いっぱい食べている。
    (平成元・9)




8-13. ミカンの皮

     医学博士 遠藤 仁郎 

     こどもの頃、おやじが毎年カマスで買入れてくれたので、手の平が黄色くなるまで、存分に食べた。
     皮は、風呂に入れたり、酢のものや漬物に多少入れる程度で、殆んど畑に捨てられていた。
     高等学校の時だったか、教えられて皮ごと、外の皮も、中のふくろも、よくかんで全部食べるようになった。
     独特の味があって決してまずくはないし、なにより経済的に大いに助かるので、ひとにもすすめたりしていた。
     が、そのうち農薬がつかわれだしたのと、少々贅沢にもなって、外の皮はもとより、中のふくろも捨て、お上品な食べ方になっていた。
     さいきん、あちこちから無農薬ミカンをいただくようになったが、こんどは、歯が悪くなって、以前のようには食べられない。
     しかし、捨てるのはいかにも勿体ないので、煮てオカズにすることにした。
     黒砂糖を少し入れるそうだが、やわらかくて食べよく、とてもうまい。
     つい食べすぎるくらいだ。
     栄養価はどうだか、食品成分表には出ていないが、おそらく黄色菜なみとかんがえていいのではないだろうか。
     少なくとも、日常食にもっとも不足がちなカロチンは確かに多いにそういないから、安全なものでさえあれば、こうして大いに食うべきだと思う。

    (平成2・1)




8-14. たけのこ 食慾をそそり「繊維」も十分

     国立栄養研究所 辻  啓介・悦子

     日本の風土は竹や笹の生育によく合い、万葉集の大伴家持の歌などにも竹庭を賞して歌った秀作がある。竹の生育の速さは植物界のギネスもので、一日に数十センチものびる。その生命力に感嘆するとともに、材質が直にして強い弾力性を持ち、種々の加工に適しているところから、無教の竹細工が考案され、生活の中に利用されて来た。
     食用にする竹の仲間もいろいろある。有名な孟宗竹(モウソウチク)はたけのこの体表として有名であるが、中国から琉球を経て18世紀に鹿児島にもたらされ、関東以南の適地に広まった。
     その名の由来は、病の親に食べさせるために寒中にたけのこを求めた孟宗の故事にたどりつく。その他、ハチク、マダケ、ネマガリタケなども利用されるが、その市場量はわずかである。
     中国料理に欠かせないメンマは輸入品である。中国の華南地方や台湾のマチク(シナチク)を細かく切ってから蒸し、塩漬にして乳酸醗酵させたのち、天日で乾燥させて作る。戻して中華ソバの具とする。
     たけのこの漢字は筍と書く。旬(しゅん)の竹がすなわちたけのこである。本当においしい盛りは10日間ほどなどで旬の言葉の意味にぴったりしている。最近は台湾からの輸入品のたけのこがおせちをにぎわしているが、今ごろの時期の朝掘りたけのこには味、香り、口当たり、いずれもかなわない。掘り出して、数時間以内ならそのままで刺し身にして食べられる。
     収穫してから時間がたつにつれて、うまみ成分のチロシンというアミノ酸が酸化されて、ホモゲンチジン酸というえぐみ成分が増えてくる。
     関東付近では頭頂が地上に出て日を浴びて皮の毛が黒くなったものが多い。これはクロコ、クマと呼ばれるが、あくが強い。一方、京都のほうでは、地下のものを掘りあてるが、もやし状で皮の色も白く、シロコと呼び、上品とみなす。雨後のたけのこの例えがあるように、掘ると補充するように次々と出てくる。掘らずにおくと一定の数が生え揃うと新たに出なくなる。実に興味深い植物資源である。

    (啓介)


     たけのこは栄養成分の補給するというよりは、野趣あふれる風味を味わったり口当たりを楽しむものとされてきた。これだけでも、食欲を高進し、消化液の分泌をよくするので、立派な栄養効果がある。
     しかし、当世マスコミをにぎわせている食物繊維を多量に含んでいる。従来の成分表に載っている粗繊維はわずかに0.8%に過ぎないが、最新の酵素を用いて測定する方法で分析した厚生省の結果は、2.3%と約3倍に跳ね上がった。この量は他の野菜類とほぼ同量であるが、たけのこの栄養成分としての意義は大きい。
     日本人の食物繊維摂取量は約17グラムであるが、たけのこは煮物で100グラム食べるのはわけないので、余分にこれだけ食べると20グラムとなり、ほぼ十分な摂取量に到達できる。他の高繊維の伝統的食品とともにたけのこを上手に食卓にのせることは、便秘や成人病予防の面から大切なことといえよう。
     微量栄養素としてはビタミンC、B1、B2はまずまずの含量である。煮たときに出る白い粉は前述のチロシンである。さっぱりした味を演出するアミノ酸なので、安心して食べられる。米のとぎ汁と下煮するとシュウ酸やあくがとれる。
     たけのこはしゅんのワカメやサンショと相性が実に良い。新ワカメをたけのこの頂部の軟らかいところと煮て若竹煮、木の芽みそをかけたり、かつおぶしをまぶしたり、毎年飽きないリピートである。
    (悦子)

    (啓介氏は国立栄養研究所の栄養資源開発研究室長、悦子さんは病態栄養研究室長)

    (63・5・4サンケイ)




8-15. 米がまずくなった

     国立栄養研究所 辻  啓介・悦子

     日本の風土は竹や笹の生育によく合い、万葉集の大伴家持の歌などにも竹庭を賞して歌った秀作がある。竹の生育の速さは植物界のギネスもので、一日に数十センチものびる。その生命力に感嘆するとともに、材質が直にして強い弾力性を持ち、種々の加工に適しているところから、無教の竹細工が考案され、生活の中に利用されて来た。
     食用にする竹の仲間もいろいろある。有名な孟宗竹(モウソウチク)はたけのこの体表として有名であるが、中国から琉球を経て18世紀に鹿児島にもたらされ、関東以南の適地に広まった。
     その名の由来は、病の親に食べさせるために寒中にたけのこを求めた孟宗の故事にたどりつく。その他、ハチク、マダケ、ネマガリタケなども利用されるが、その市場量はわずかである。
     中国料理に欠かせないメンマは輸入品である。中国の華南地方や台湾のマチク(シナチク)を細かく切ってから蒸し、塩漬にして乳酸醗酵させたのち、天日で乾燥させて作る。戻して中華ソバの具とする。
     たけのこの漢字は筍と書く。旬(しゅん)の竹がすなわちたけのこである。本当においしい盛りは10日間ほどなどで旬の言葉の意味にぴったりしている。最近は台湾からの輸入品のたけのこがおせちをにぎわしているが、今ごろの時期の朝掘りたけのこには味、香り、口当たり、いずれもかなわない。掘り出して、数時間以内ならそのままで刺し身にして食べられる。
     収穫してから時間がたつにつれて、うまみ成分のチロシンというアミノ酸が酸化されて、ホモゲンチジン酸というえぐみ成分が増えてくる。
     関東付近では頭頂が地上に出て日を浴びて皮の毛が黒くなったものが多い。これはクロコ、クマと呼ばれるが、あくが強い。一方、京都のほうでは、地下のものを掘りあてるが、もやし状で皮の色も白く、シロコと呼び、上品とみなす。雨後のたけのこの例えがあるように、掘ると補充するように次々と出てくる。掘らずにおくと一定の数が生え揃うと新たに出なくなる。実に興味深い植物資源である。

    (啓介)


     たけのこは栄養成分の補給するというよりは、野趣あふれる風味を味わったり口当たりを楽しむものとされてきた。これだけでも、食欲を高進し、消化液の分泌をよくするので、立派な栄養効果がある。
     しかし、当世マスコミをにぎわせている食物繊維を多量に含んでいる。従来の成分表に載っている粗繊維はわずかに0.8%に過ぎないが、最新の酵素を用いて測定する方法で分析した厚生省の結果は、2.3%と約3倍に跳ね上がった。この量は他の野菜類とほぼ同量であるが、たけのこの栄養成分としての意義は大きい。
     日本人の食物繊維摂取量は約17グラムであるが、たけのこは煮物で100グラム食べるのはわけないので、余分にこれだけ食べると20グラムとなり、ほぼ十分な摂取量に到達できる。他の高繊維の伝統的食品とともにたけのこを上手に食卓にのせることは、便秘や成人病予防の面から大切なことといえよう。
     微量栄養素としてはビタミンC、B1、B2はまずまずの含量である。煮たときに出る白い粉は前述のチロシンである。さっぱりした味を演出するアミノ酸なので、安心して食べられる。米のとぎ汁と下煮するとシュウ酸やあくがとれる。
     たけのこはしゅんのワカメやサンショと相性が実に良い。新ワカメをたけのこの頂部の軟らかいところと煮て若竹煮、木の芽みそをかけたり、かつおぶしをまぶしたり、毎年飽きないリピートである。
    (悦子)

    (啓介氏は国立栄養研究所の栄養資源開発研究室長、悦子さんは病態栄養研究室長)

    (63・5・4サンケイ)




8-16. あわてモチ、マンマラ

    愛知県 M.M. 

     鹿児島出身の浜口さん(大阪関目スタンド)から、本場のおいしい芋をいただいて、思い出したこと。

    あわてモチ
     終戦の年の5月に、三度目の召集で九州の山奥、熊本県の人吉に駐屯していた時のこと。なんしろ、残りものをかき集めた部隊。
     弱兵ばかり。病人も多い。
     隊に薬?はあるが、これは戦闘が始まらねば手がつけられない。
     町の薬屋にも、もう、めぼしいものはない。
     そこで、青汁をのませようと、毎日、衛生兵をつれて、材料あつめに出かけていた。
     暑い真夏の最中、時折、そのあたりの農家で小休止させてもらった。
     そのある日、ご主人は戦地にいられるという一軒家のおかみさん、井戸で冷やしたお茶をふるまわれ、“ちょっとゆっくりしてください”との親切な言葉にあまえて、縁側でしばしまどろませてもらった。
     しばらくして、“この辺じゃあわてモチと申しまして、不意のお客の時つくるものです”と出していただいた蒸したてのモチ。
     それは、アンの代りにサツマイモを入れた小麦粉のモチ。
     甘いものにかつえていた時だったせいかも知れないが、イモアンのおいしかったこと、心から感謝しながらタラフク頂戴した。

    マンマラ
     それから数日後、こんどは小部落の商店の奥さんから、病人の相談にと招じ入れられた。
     そこで出されたのが、こどもの頃おふくろがつくってくれたイモヨウカンだった。
     ナマ干しのサツマイモの粉を太い棒状にこねて蒸したもの。
     切ると、ちょっとヨウカンのようだし、味も格別だったのでイモヨウカンといっていた。
     それに久しぶりにお目にかかったわけで、とてもおいしかった。
     郷里に疎開しているこどもたちに食べさせてやりたい、などと思ったものだ。
     “これは珍らしい。この辺じゃ何といいますか、ときいてみたがハッキリしたことはおしえていただけなかった。

     ずっと後のこと。
     この話をしたら、高校を鹿児島でやった友人が“それ、むこうで、俗にマンマラというやつだろう。
     ほんとにうまいもんで、俺もよう食った。
     黒い太い棒の格好が馬のマラそっくりなんで、マンマラというんだそうだ。
     なんでも、天皇さまに差し上げたところ、大変お気に召し、なんという菓子かとおたずねになった。
     あわてたのは知事さん。まさかマンマラとも申し上げられず、思いつきでハルコマ(春駒)とお答えした。
     以来春駒というようになったんだそうな”と話してくれた。
     当時のことだから、今時のように砂糖味でなく、イモの粉だけでつくられたものだったろうが、今はどうなっているだろう。
     昔ながらの春駒、いや、マンマラがあったら、もういちど食べてみたいものだ。

    (平成3・3)(遠藤)




クリック 食材あれこれインデックスへ戻る






ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 青汁 健康と青汁 上の階層へ
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法

Copyright 2011 11 田辺食品株式会社