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1. ユキノシタ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     西洋古方では、浄血のほか、胆石や腎石など結石をとかす作用がある、といわれている。南方先生によれば、ユキノシタの属名であるSaxifragaは「石割り」の義で、石に生えこんだ根が石を割る、と信じられ、したがって結石を治す、といったものだ、そうだ。
     大阪には「石は石切さん(生駒山の麓にある石切神社)にまいると治る」という信仰があり、胆石で入院した患者の枕もとには、必ずといってよいくらい、石切さんのお札が立っていた。ユキノシタ信仰と似た話だが、この方は植物だけに、ただの迷信ではなくて、なにかの効能があるのかも知れない。
     ずっと以前のこと、故宮本百合子女史が胆石でみえたとき、ユキノシタなど数種の薬草をすすめたことがあるが、便通がついてぐあいがよくなったといわれていた。
     救荒本草に、「葉も茎も炊て食ふべし」とあるが、ふつうヒタシモノやテンプラにする。
     子供のころ、テンプラには必ずこれを採りにやらされた。疳によいというので、癇のつよい私に食べさせるためだったのかも知れぬ。「小児驚風、ユキノシタの葉をもみ、その汁をのますべし」。(掌中妙薬集)とあって、こどものヒキツケ、知恵熱、虫下しに生葉のもみ汁をのます。
     テンカンにもよいという。咳どめには黒焼や砂糖をまぜた生汁。
     本草綱目には、「瘟疫(流行性熱病、インフルエンザの類)には酒にすって服す」(時珍)「痰飲(むなやけ)に汁を用い吐をとる」。「生で用ふれば人を吐利せしむ。煮熟したものを用ふれば吐利を止める」。などと出ている。
     なお南方先生は面白い話を引用していられる。
     「続沙石集に、長崎大村間の山路に、一丈程高い石に、経2尺余の丸い石乗て、地震にも落ちず。昔、鯖を商ふもの通り懸って、この石落ちて後通らんと、立って待つ内に、鯖皆腐った。因って、この石を鯖腐らしと称ふ。人の命の危きを忘れ、いつも変らぬこの石を危ぶむは大きな間違いだ。さて、ユキノシタの花落るをみれば長者になると、俗信のままに半時も一時も悠然と眺め居る輩は、石を見て鯖を腐らせた愚人に異らぬ、と有る。是は182年前に書たのだが、今もそんな俗信あるか知ら。」

    (南方全集、7、139)




2. アオイ

    フユアオイ、冬葵
     冬にも緑葉があるからの名。
     古名、アオイ。仰日、日を仰ぐ。日に向うの意で、葉に向日性がある。
     往時、薬用に栽培した。朝鮮、中国では食用にもした。牧野先生によると、わが国の庭園などには殆んど見ず、ただ海岸地方に、むかし渡って来たものが、帰化植物となって残っているだけだ、という。

    オカノリ
     近種にオカノリという葉のちじれたのがあり、稀に栽培されている。フユアオイの種子をまいてオカノリになり、オカノリからフユアオイになることもある、という。
    葉を乾かし、あぶって食べたり、ゆでて食べる。味がノリに似ているからの名だ。
    煮て食べ、生で食べ、青汁にもなる。もっとも、青汁はかなり粘る。味は悪くない。

    通利
     「大腸を滑する」「腸を寛む」などとあり、粥にして食べている。

    下痢にもよい
     「下痢にこれを食ふ」(汪頴)。

    肝・胆疾に
     「煮汁を服すれば、時行黄病を治す」。
     「これを食すれば肝胆を補し、目を明にす」(崔禹)。

    尿利
     「小便を利す」「水腫を消す」。
     また、「よく石淋を下す」。
     尿石を下すにもよいらしい。

    消渇(かわき、糖尿病)
     「葵菜、消渇を去る」(崔禹)。

    分娩を助ける
     滑っこいので、「妊婦これを食へば、胎を滑して、分娩を容易にする」(蘇頌)。また「乳を下す」。コシケにもよい。

    解毒
     「毒虫 毒蛇の毒を消し、蛇蠍の螫傷に搗汁」(千金方)。
     毒劇薬を服用するときや酒毒を消すに、食べたり搗汁をのむとよい。

    熱病
     「客熱を除き、小児の熱毒、丹毒に、これを食ふがよし」(汪頴)。
     むかし、痘瘡が大流行したとき、これを食ったのでおさまった、という記事が本草綱目にのっている。
     また、「悪瘡を治し、膿血を散ずるに、食ふがよし」(汪頴)。

    外傷出血
     「乾葉を末にし、および灰に焼いて服すれば、金瘡出血を治す」。
     などといったぐあいで、効能は一般緑葉と同じだが、冬にもあるのが、何よりのとりえというものだ。




3. ハッカ

     鎮痙、健胃、通経の効がいわれ、本草綱目には、「邪毒を辟け労気を除く。」
     骨蒸・労熱(いずれも結核性の病気)や丹毒、また吐血・衂血など諸出血によい。
     本朝医談には、「三位法眼伝に、打身に用ふといへり。またいふ、婦人血の薬にはなすべからず。」
     食用としては、本草綱目に、「生食しう」(唐本)。「四季これを食ふがよし。」(土良)とあり、大和本草には、「生葉をきざみ、膾に加へ、又、煎茶・煖酒に和してのむ。本草にも茶に代へてのむと云えり。」
     救荒本草抜萃には、「葉と茎と炊ても煮ても漬物にしても食ふべし」とある。
     但し、「菜にして久く食すれば腎気を却く。」とか、「?たべると勃起を妨げ、精を溶して体を弱める。」(ヒポクラテス)とあり、「痩弱の人、久しく食ふべからず」(大和本草)と注意されている。
     どうやら、食べすぎると体力・精力を消耗するらしい。
     また、「よく婦人の乳汁を消す」(和蘭薬鏡)ともある。
     青汁には、少量を矯味料として加えるくらいが無難だろう。
     なお、「猫くらへば酔ふ。猫の酒なりといふ」(大和本草)
     南方先生によれば、「チクマハッカ、英語でキャットミント(猫の薄荷)。マタタビ同然、猫好むこと甚しく、かいだり、咬んだり、身を摺付けたり、終には転げ廻る。
     ホフマン説に、猫の様な人も、これを咬むと、怒って喧嘩をしだす。
     おとなしい刑事有りて、いつもこの草の根を噛み、焼糞になりて後、罪人を殺した、といふ」

    (南方熊楠全集七)




4. ハハキギ(ホウキギ)

     枝がこまかく分れ繁っていて、繊維がつよい。
     枯れたあとホウキになるので、ホウキグサ、ホウキギ。
     漢名、地膚。苗葉も果実も食べられる。

    「?熟し、さわして食べし。又、熱湯に少し煮てほしてもよし。」
    (救餓録)
     生食でき、青汁にもなる。
     効能は一般緑葉と同じ。
     本草書には、
    「大腸泄潟に主効。気を和し、胃腸を墻し、悪瘡の毒を解す。」
    (蘇頌)
     というので、下痢や赤痢に搗汁やヒタシモノを食べている。
     出血にもよい。
    「潟血は地膚葉湯にして粥を煮て食ふ。」
    (本草主治)

    利尿
     「脚気水気に、鯉魚一尾、栗粥、帚葉。
     古昆布の煎汁にて煮、味噌汁に加え毎日食して、
     7日間に效あり」
    (烈公食薬)

    淋(小便出しぶるもの)
    「水煎、日毎に服すれば小便諸淋を利す」
    (時珍)

    「淋に搗自然汁」
    (医学正伝)

    「淋・地膚の葉をしぼり汁をのみてよし、
     また煎じ用ひてもよし。
     妙なり」
    (薬屋虚言噺)

     淋病、地膚のヒタシモノ食ひてよし。」
    (烈公食薬)


    「水煎、日毎に服すれば手足の煩疼を治す。」
    (時珍)




5. ウイキョウ

     薬用・食用に栽培されている。
     ウイは茴の唐音(大言海)
     茎葉 辛 平 無毒。
     特有の芳香がある。
     こどもの頃のまされたカゼ薬を思い出すが、実にも茎葉にも痰をキル作用があり、局方薬にもなっていた。
     全草に、食欲をすすめ、尿を利し、駆風(ガスを出す)、乳汁分泌をすすめるなどの効がある。

    本草書には、また、
    「茎葉の搗汁は、眼疾によく、視力を増す」
    「熱病、蛇咬、強犬の咬傷にもよい」
    「脇痛喘息し、臥し得ぬに、生擣汁一合を、熱酒一合に投じ和して服す」とか、 「疾急痛撃、小腹に牽入、忍ぶべからず、一宿人を殺すに、苗葉の擣汁一升、一日三四服し、その滓を貼る。これ外国の神方、永嘉(晋の懐帝の年号、元年は西紀307年)以来之を用い、起死回生の神験あり。」(范汪方)
    など、ともかく卓効があるらしい。

     食べてもよい。
     悪心方として、「懐香辛葉をとり、煮て之を服せよ」とか、
    「煮食へば卒然の悪心で腹中の不安なるを治す」とあるのは、おそらく蛔虫のことだろう。
     また、疝気、膀胱、育腸(小腹痛)の気に、茴香を粥に煮る」(本草百病主治)とあり、腰や下腹の痛みにもよいとみえる。

    食用 「苗葉を採り、炊き熟し、水を換え淘浄し、油塩を調へ食ふ。」(救荒本草)
     薬味には生で少量を加える。





6. ライ麦パン

    倉敷市 Y.A. 

     近頃パンを焼くのが、流行っておりますが白生地のパンとは、違った味わいのある、黒パンの作り方を、書いてみましょう。
     作り方は簡単ですし、焼いてからも3〜4日は味も香りもかわらずおいしく、内容的にも、すぐれたものではないかと思います。

    材料

         無漂白小麦粉         300g
         Aライ麦粉          150g
         Aホールフィートシリアル
         (細かめの荒びき小麦粉)   
         50g
         Aキャラウェイシード
         (姫ういきょうの実)     
         大匙1
        (なければよい。入れた方が香りがよい)
         A塩              小匙1
         バター             20g
         ドライイースト         大匙1
         ハチミツ又は黒砂糖       大匙1〜2
         ぬるま湯           カップ1.5 

    作り方
       
    1. ボール(24cm位が使いよい)にぬるま湯を入れドライイーストを溶かす。さらにハチミツを入れよくかき混ぜる。
    2.  
    3. ふるった強力粉とAの材料をよく混ぜ合せ
    4.  
    5. の中へ入れ、中心だけくぼませる。
       10分位でプクプク泡立ってくる。
       さらに溶しバターを加えざっとこね、ひとまとめにする。
      (やわらかすぎてまとめにくいときは、強力粉を足す)
       ぬれ布巾をかけ、その上にビニールでもかぶせ醗酵させる。
       30〜40分位。
       (5月〜10月頃までは室温でよい。)

    6. 倍くらいにふくれたら、4等分して丸め、油をぬった鉄板にならべ、もう一度醗酵させる。
       15〜20分位。
    7.  
    8. ほぼ倍になったら、250℃位のオーブンで20分程焼き上げる。
       火を止めてから水をたっぷりふくませた刷毛でパンの表面を刷き、余熱でさっと乾かすとつやが増す。

     風味が良くて重いこのパンは、焼きたてより完全にさめてから薄切りにして、いろいろなものをのせて食べるとさらに美味しい。
     尚、粉の配合割合は適当にかえてやって御覧になると面白いでしょう。
     又、糖分を全部抜くことはできますが、醗酵が悪くなるので、少量はいれた方がよいでしょう。





7. ハナよりナッパ(3)       (255号)
   カキバダイコン・青シソ・シーオーナタネ・レタス

     友成 左近 

     前記のように私宅では家内と二人で、健康保持に良質で安全な青野菜が毎日2kg以上必要であって、このうち最少必要量の1.5kgは、青汁仲間の木村さんがわけて下さる青汁用のケールでまかない、これを補足する500g以上は、ハナよりナッパと狭い庭を最大限に活用してまかなっています。そして、これは専ら生食用なのですが、それは、せっかく作ったナッパを、栄養上最高度に利用するためです。従って、作っているナッパも、つぎのような要領で選定しています。

    主要青野菜の選定要領
     まず、ここ数年来作っているのは、主としてカキバダイコン、青シソ、シーオーナタネとレタスですが、いろいろ作ってみたあげく、こう選定するようになったのであって、それはつぎのようなしだいです。
     まず第一に、家庭菜園を作っているのは、世にいう趣味と実益をかねて、といったものではなく、専ら健康保持の実益をはかるためであるので、ふつう広く家庭菜園で作っているようなもの(わけてもトマト、ナス、キウリなど)ではなく、成分が最高度に優れたものであることが大切です。と共に第二に、なにぶん狭い菜園であるため、年間通した坪当たり収量が最も多く、そして連作ができ、素人でも作りやすいものであることが大切です。そして第三に、生食用であるため、生のままで刺激性や固いセンイが少なく、そして味わいもよいものであることが大切です。もうひとつ第四に、及ばずながらも接する人々に青汁食養生をすすめ、青野菜の生食がおいしいことも話しているので、ときに人に差し上げて味わってもらうため、広く人々がなじんでいるものも多少は作っておかねばなりません。だいたいこういうしだいで、今のところ主として前記のようなものを作っているのであって、その性質はつぎの通りです。

    カキバダイコン
     まずカキバダイコンは、ふつうは養鶏用などに栽培しているものですが、ふつうの大根葉と同様に、良質青野菜のうちでも成分が最も優れたものです。そして、大根葉のようなカラミもケバもなく、それに緑葉部が多く、これが若葉のうちは柔らかくて味もよいので、生食用には最適です。そのうえ、根は細長くて食べられませんが、大根葉にまさる大きな葉がつぎつぎと沢山つくので、はしからかいでいけるため、いちど植えたら長いこと多量にとれます。そして、秋の彼岸前後に種をまけば一ヶ月もすれば間引いて食べられ、残定植したものには、翌年4月下旬にトウだちするまで、つぎつぎと葉がつき、春の彼岸前後に種をまけば、一ヶ月もしないうちに間引け、6月下旬にトウだちするまで葉がつき、そして連作ができます。こういうふうにカキバダイコンは、生食向きの良質青野菜のうちで成分が最も優れ味わいもよく、年間通しての坪当たり収量も最高であるので、菜園の大部分にこれを作っています。(なお、春や秋には葉がつきすぎて生食しきれず、タケすぎて少し固くなり、味も劣ってきて、生食には不向きになることがありますが、こんな場合は、青汁にしたり、炒り菜などの煮食にしています。)が、6月下旬のトウだち後に備えて種をまいても、発芽はするが成長しないことがあり、成長しても、葉つきも味もひどく劣ってきます。また冷寒期には、味はしごく優れてきますが、葉づきが悪く、この葉が小さくなります。

    青シソ
     そこで、夏には青シソを作っているのですが、これは良質青野菜のうちで成分が最高に優れたものです。そして、4月下旬に種をまいて苗を育て、カキバダイコンがトウだちしたあとに移植するのですが、活着後は葉がつぎつぎと沢山つき、夏季の良質青野菜のうちで坪当たり収量が最高です。そして、新芽には格別の風味があり、若葉のうちは至って柔らかくて味もよいので生食用に最適です。(が、タケてくると固くなり、それに刺激性が強くなって生食にも青汁にも不向きになるのでこれはサッと湯がいて炒り菜などにしています。)なお赤シソも、成分や味わいなどほぼ同様ですが、いずれも9月下旬にはトウだちするので、ほどほどのところで抜きとって、そのあとにカキバダイコンなどを作るわけです。

    シーオーナタネ
    つぎに、冬季の収量減を多少とも補なうために作っているのがシーオーナタネですが、これはナタネを品種改良して耐寒性をつけたものあり(倉敷地方では耐寒性に大差ないようですが)、ふつうは養鶏用などに栽培しているものです。そして、成分はダイコン葉についで優れており、栽培時期や坪当たり収量も、柔らかさや味わいもカキバダイコンとほぼ同様ですが、人によっては、この味わいの方を好みます。が、これは予め苗を作って移植するので、種まきして収穫できるまでの期間がカキバダイコンより長く、またトウだちする時期も早いので、年間収量が少し劣っているため、菜園のごく一部に作っています。

    レタス
    もうひとつレタスは、江戸川レタスなどのように緑色が濃く、そして葉をかいでいける多収量のものを作っていますが、成分は良質青野菜のうちで最低でしょう。が、これを作っているのは、総入歯の家内が好むからであり、また、人さまに差し上げても来客に食べてもらっても喜んでくれるからです。が、栽培時期がカキバダイコンと重なるので、菜園のごく一部と菜園外の鉢で作っています。(なお、ふつうの良質青野菜のうちで、レタスより成分がはるかに優れ、そして柔らかくて味もよいので、生食用として、また煮食用としても青汁用としても万人向きなのはコマツナであって、これは夏以外はいつでも作れます。が、カキバダイコンのように葉をかいでいけないために坪当たり収量が少ないので、狭い菜園には不向きです。)なお、こうしたもの以外に、菜園の畝間や菜園の外に大きな素焼の鉢をところ狭しとおいて、いろいろなものを作っています。夏間に作っているのがツルムラサキ、ツルナ、レイシ、インゲン、エンサイ、バイアム、夏以外で作っているのがパセリ、シュンキク、ミツバ、セロリー、植えっぱなしにして時折肥培しているのがニラ、ローリエ、サンショなどで、主として季節の風味をたのしむためです。(つづく)




8. リョウブ(令法)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     山地にはえる小喬木。3〜7メートルになる。
     むかし、令して葉をたくわえ、飢饉にそなえたので令法の名がある。
     本草綱目に、

       凶年に、飢民葉をとり、蒸して食す。
       京都にも、飢歳にはうる。
       また、貧民は平時も煮て飯の上におき、
       蒸して飯にまぜて食す。味よし。

     わか葉をゆがき、さらし、油塩で食ったり、煮つけ、ひたしものにし、蒸して乾かし茶代りにもする。
     粉にしてもよかろう。癪を治し、熱を去り、虫を下す効がある。が、多食すると下すことがある。もちろん、青汁の材料として利用もできる。




9. ポプラ

     葉に一種の芳香がある。西洋では、このヤニをつけると髪がよくなる、というので、バタをいれたツボに、葉をきざみこみ、1週間おいて、火にかけて脂をとり美髪料にした、という。
     ギリシャ神話に、アポロの子フェートンは、アポロにせがんで日の車にのせてもらったが、あやまって手綱をはなしたので、地上に近づき、世界中が焼けだした。
     ジュピターは驚いて雷火で車をくだいたので、フェートンはエクダヌス川に落ちて死んだ。
     兄の死を悲んで川岸に立ちつくしていた妹のヘリダヌスはポプラの木になり、落した涙はかたまって琥珀になった、とある。
     葉は食べられないことはない。味はそう悪くはないが、ヤニがあるので、生食や青汁よりは、むしろ、ゆがくか乾して粉末にするほうが無難だろう。




10. ナンテン

     医学博士 遠藤 仁郎 

     牧野先生の続植物記に、
     「赤飯、魚を他家へ贈る時ナンテンの葉をそへる。人によると、これは、ナンテンその物に食物を嘔吐さす性能があるから、この贈物で、若しか中毒した事があったら、即坐に、此のナンテンの葉を利用して嘔吐させ、その危難を免かるる様に、との親切心でそへるのだ、といふ。」

     南方先生も、
     「見たところ乾いた様だが、葉に汁多く、苦い。満食したり、毒を飲んだ者に、その葉を塩で揉で汁をとり、飲せば忽ち吐く。」といわれている(南方熊楠全集)。

     最も、築田氏の実際的看護の秘訣には、
     「南天葉一握りを塩もみにし、水少し加へた絞汁を盃に半分位のむと吐く。魚類の中毒に最もよく奏効する。しかし、2〜3枚の葉をかんで汁をのむと嘔気がとまる。即ち、多量では吐き、少量では止める。」とある。
     民間薬(富士川游著)には、
     「河豚中毒 南天葉もみしぼり汁を茶碗に一杯用ふ。」(諸国古伝秘方)
     「鰹中毒 南天葉をもみしぼりて、その汁を茶碗に一杯用ふ。」(宝因蒔)
     「山椒毒 南天の葉、生にてすり、しぼり汁をのむべし。」(和方一万方)
      酒毒 南天の若葉をせんじ用ふるよし。」(諸国古伝秘方)

     あるいは、  「咽喉に骨のたちたるに、ナンテンの葉煎じ用ふ。」(諸国古伝秘方)
      腹痛 南天葉と芥子のから、せんじ用ふべし。」(掌中妙薬集)
     「船酔 南天の葉をかむべし。」(諸病薬記)
     「瘧 南天、茎葉とも黒焼、粉にし、前夜一匁、翌朝二匁、サユにて用ふ。」
     「胸虫 南天葉陰干、酢酒各半にして、一日に4〜5匁用ふ。」(諸国古伝秘方)などとある。

     また、和漢薬考には、
     「葉 泄を止め、腫を除き、筋を強くし、気力を益す。長服年を長く、人をして饑えざらしむ。」
     食用にもされており、
     「若芽をよく煮て、黄色になるまでよくさまして食べし。」(救荒本草抜萃)




11. 食用菊

     医学博士 遠藤 仁郎 

     料理菊、甘菊ともいう。
     黄・白2種あり、花も葉も、ともに苦味がない。
     葉にはカルシウムが多い。吉村清尚氏によると、乾物100グラム中に、2.992グラムあるという(服部・近藤 食用植物学による)。写真(一面)は、隠明寺さん(本会新庄支部長)からいただいた、うす赤紫のボカシのある白花種、モッテノホカ――もってのほかに味がよいからの名とか。




12. ヘチマの種子

     医学博士 遠藤 仁郎 

     中華料理につきものの水瓜子や南瓜子は、良質の蛋白質や脂肪にとんでおり、ミネラルもビタミンBもある、すぐれたものだ。
     同じように、大きなタネのできるものにヘチマがある。このタネ(絲瓜子)の栄養価については、手許の成分表にないので、くわしいことはわからないが、服部・近藤 食用植物学(昭17)によれば、脂肪が41.6%もある、という。蛋白質やミネラル・ビタミンも、それぞれ相当あるだろう。ヘチマといえば、ふつう、繊維を利用するだけで、ときにわかい瓜を食べることはあるが、この栄養豊富らしいタネを捨ててしまうのは、いかにも勿体ない気がする。

    水瓜子南瓜子
    カロリーCal478.00575.00
    蛋白質18.9029.70
    脂肪27.4048.90
    糖質41.6013.80
    カルシウムmg56.00
    リンmg40.00
    mg7.10
    ビタミンA国単0.002.00
    B1mg0.080.65
    B2mg0.010.13




13. コンニャク

     医学博士 遠藤 仁郎 

     なじみぶかい食べものの一つ。精進料理はもとより、お節料理にも、スキヤキ、オデンにも欠かせない。煮しめ、あえもの、刺身にしてもうまい。しかし、三訂日本食品標準成分表(昭39)でみると

      カロリー1
      蛋白質ゼロ
      脂肪ゼロ
      糖質2.2g
      繊維0.1g
      カルシウム43mg
      5mg
      0.4mg
      ビタミンA・B1・B2・Cともにゼロ

     と、栄養分はまるで無いにひとしく、ただ、カルシウムの多いことだけがめだっている。
     これは、製造にあたって、主成分マンナン――糖質の一種で、水によくとけるが、アルカリでかたまる性質をもっている――をかためるために石灰乳がつかわれることによるのだが、これが、どうやら、コンニャクの効用の主なものらしい。
     それは、穀・肉中心の邦食では、白米のカルシウム6mg
     牛肉4〜6mg、豚肉4〜9mg、鶏肉4mg
     と、いずれもカルシウムの少ない酸性食品。
     したがって、よほど野菜・クダモノがそえられないと酸性食になってしまう。ところが、コンニャクには43mgもあるから、それだけでも、かなり補われるだろうからだ。
     そのほかの効用としては、そのまま便に出ることもあるといわれるほどの不消化物(必ずしもそうではなく、腸管内の細菌のもっている酵素マンナーゼでかなり消化される、ともいうが)ゆえと、かさ高のため、腹ごたえがあって、食べすぎを防ぐこと。腸管内の通過がはやく、便通をよくするだろうこと。
     そして、同時に、他の食べものの栄養分の吸収までも妨げ、栄養の過剰、つまり肥満を防ぐだろうこと、などがあげられよう。
     事実、さいきんでは、コレステロールの吸収を妨げ、血液コレステロールを下げる作用があるというので、動脈硬化の予防効果がいわれ、また、発癌にたいしても予防的にはたらく(発癌物質を吸着する)、などともいわれている。
     これらのことは、コンニャクを好物の一つに数えられている女性が長命であることや、コンニャクの名産地の多くが、健康長寿者の多い山間の僻地であることとも、なにかかかわりがありそうな気がする。
     それはともあれ、コンニャクは、精製穀・肉類にかたより、とかくカルシウムの不足に陥りがちな現在の文化生活者には、とりわけ大切な食べものの一つといってよさそうだ。
     なお、俗に、腹やキンの砂をとるといわれているが、これは、コンニャクに砂がくっつくとなかなかとれにくいので、腸の中にもし砂があれば、うまくとってくれるのだろう、と説明されているようだ。が、キンの方はどうなんだろうか。
    (53・1)




引き続き、食材あれこれ(7)へ






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