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食材あれこれインデックス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(1) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(2) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(3) |
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食材あれこれ(4) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(5) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(6) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(7) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食材あれこれ(8) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1. エンドウ・ソラマメ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
これから、おいしいエンドウやソラマメが出ます。
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2. タウコギ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
水田の畦道や荒地など、湿地によく見かける雑草。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3. トウモロコシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
原産は中米。
次が乾燥物ですが、これも消化の点では同じです。 しかし、消化をよくした粉やその製品(コーンフレークなど)は、成分的にはずっと劣っている、というわけです。 私の郷里では、旧暦の3月3日、桃の節句の日がナンバの種まきの日ときまっていました。 山の花見から帰ると、みんなで、畑の周囲に、適当の間隔をおいて蒔きつけ、その後の育ちにも気を配ったものです。 夏になると、頃合いに熟れるのを待ち兼ねて、毎日皮をむいてみたりしました。 なんでも、トウモロコシの味は、とりたてから卅分もたつと、グッと落ちるということですが、実際、もぎ立てを、そのまま火にくべた香ばしさは、札幌の街で食べた名物のトウモロコシよりも、ずっとおいしかった。 忘れられぬ故里の味の一つです。 また、軒につるしてよく乾燥したのを、焙烙にかけると、梅の花のようなかたちに、勢よくはぜてとび出るのを、あらそって頬ばり、舌を焼いたこともあります。 このハゼナンバをいり小米、いり大豆と、黒砂糖で煉りかためた「オイリ」は、私どもの子供のころの最上の「オ八ツ」でした。 このオイリは、花見には欠かせぬものでしたし、そのナンバの種子をこの日にまく、ということの因縁めいたものを、子供心にも感じたことも、なつかしい思い出です。 附記 さいきん、蛋白質や脂肪の多い優良突然変異種が発見され、研究がすすめられているそうです。これが普及して来れば、ずっとすぐれた主食品になるでしょう。
(注 表の単位 熱量はカロリー。蛋白質はグラム。カルシウム、燐、鉄はミリグラム。ビタミンAは国際単位。B1B2はガンマ。Cはミリグラム。図は理想的と考えられる釣り合いを基準としたもので、ミネラルやビタミンがカロリーや蛋白質の高さにそろうか、それ以上あれば、うまく釣り合っているか、むしろ余裕のあることをしめす。) トウモロコシ 生100 + 大根葉100 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4. ヒマワリ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
中央アメリカの原産。
実は炒って食べ、油をしぼり、しぼり滓はすぐれた飼料になる。 熱量、蛋白質、脂肪ともに多い。 しかも、この脂肪には、90%以上もの不飽和脂肪酸があり、血液のコレステロールを下げ、動脉硬化を防ぐ効果があるという。 中国やソ連では、この実をよく食べるが、あのたくましい精力の源になっているらしい。 つまり、不老強精の効力があるわけだ。 葉 葉はよい飼料になる。ソ連の畜産は、これによって成功している、といわれているほどだ。 食用にもなる。 わか葉はやわらかくて、サラダにしてもよいし、仲々おいしい。 たけた葉でも揚げ物にすれば結構たべられる。 茶にしてもよい。 花 インジアンは染料にしているそうだ。 茎 茎からは繊維がとれる。 薬用 全草に、解熱、?痰、駆風の効があり、煎用したり、酒に浸して飲んで、リウマチやマラリアによいという。 青汁にすればなおよいだろう。 といったぐあいで、ただ観賞用だけに終らすのは、全くのところ勿体ない。 もっともっとしっかり作って、葉も実も大いに利用すべきだ。 名のいわれ 花が太陽に向ってまわる、というのでヒマワリ。 ギリシャ神話に、クリテイという水の妖精が、日の神アポロに恋い焦れて、9日間、空を仰いで立ちつくした末、花になり、いまもなお、ひねもす日の神のあとを追いつづけているのだとある。 ただし、太陽の方にむいてはいるが、その進行につれてまわるものではないそうだ。
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5. ツワブキ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
海岸ちかくに多く自生している。つやつやとした大きな常緑の葉をつけ、秋おそく、黄色い花をつける。 「葉茎をとり、焼淘苦汁を去り蔬とす。その葉は魚毒を解し、河豚魚毒に中る者、生にてくらひ屡、效あり。また、馬に飼ふによし。薊葛の葉に劣らず。九州の人、今も毎日蔬菜となし食ふ」民間薬(富士川游)には
ツワブキの葉を生にてすり汁を多くのむべし(秘方録)。 河豚毒 ツワ葉茎とも。右一味、水にて常の如く煎じ用ふべし。 急なるときは生にてかむべし(和方一万方)。 鰹毒 ツワブキの葉を煎じ服す效あり(此君堂薬方)。 鳥肉毒 ツワブキの葉を煎じのむべし(秘方録)。 前田曙山氏によれば、
流石に捨つるは惜しくして、漁夫ども、手料理して舌鼓打ってたいらげたるに、この時の魚には毒強かりけん。 其所にも此処にも中毒を起して、うめき苦しむ声聞えけり。然るに、或家にて、夫婦と7才の男児とあり。皆、鍋の辺に打ち寄って肝までも食したれど、いささかも中りたる気色なく、昨日に増して健かに、心地も鮮かなれば、夫婦相見て慶びつつも、四隣の惨状見るに忍びず。 夫婦して介抱に奔走しける中に、夫は、己れ一家の中毒せぬをいぶかり居たるが、いささか心得ある者なりけん。 偶、海豚鍋にツワブキの軟葉を和して食ひたることを思ひうかべ、若しや此の草に毒消しの效あるにやと、すなわち裏庭に走りて、今を盛りと咲き出てたるを、引き抜き来りて、苦しむ人々に頒ち与え、生ながら噛しめしに、忽ち、烈しく嘔吐を催ほし、腹中の毒を除くと共に、九死に一生を救ひたり。 これより、この村にては、こぞりてツワブキを栽え、みな陰乾にて貯ふとぞ。」 生乾にかかわらず、煮て食べてよし、煎じ汁よし、生ならばさらによし、というわけだ。 もっとも、この解毒能はツワブキに限らず、すべての緑葉に共通の効能のようだ。 ところで、フグのシーズンは冬だから、折から冬枯れの青物不足の時季だ。そこに常緑のツワブキのあることは、まさに天の配剤の妙とでもいうものだろうか。 その他、上記の民間薬には、 痢病 ツワブキ葉茎とも味噌汁にて食べし。さゆにてせんじ用ふるも又よし (経験千方)。
また腫れ物にもよいとみえ、本朝医談に、
と出ている。 庭園にもよくみかけるが、ただ観賞用というだけでなく、こうした意味からも、ぜひしっかり植えておきたいものだ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
6. 青玉葱 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
玉葱はふつう根、いや、球茎を食べるのだが、私どもはむしろ青玉葱をすすめる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
7. 海藻 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
「本邦、海中産する所の藻苔の類、各所、土地により異品多し。窮知りがたく、枚挙すべからず。凶年には、貧民海草とり食ひ、飢を助くること山蔬にまされり。海草の、民間に利あること亦大なるかな」(大和本草)。四面に海をめぐらすわが国、海藻はすこぶる豊富、いわば無尽蔵です。 昔から食糧不足のばあい、各地で、いわゆる糧物ととして利用されました。 栄養上では、大体の性質は陸上の緑葉にちかく、主としてミネラル、ビタミンの給源。 耕地は、長年月の間に、しだいにミネラル分を失って来ており、ために、陸上の作物は、とかく、ミネラル分に欠乏しがちです。 これに反し、海水には、すべてのミネラルが十分にあり――海水のミネラルは、もと陸地にあったものが溶け出して集まったもの−海草は、人体に必要なすべてのミネラル、ことにカルシウムや鉄やヨードにとんでいます。 したがって、ビタミンにもとんでいる筈です。 もっとも、海草の多くは、乾燥したり、塩蔵した貯蔵物なので、その間に失われるものが少くありません。 なお、近年は、船舶の廃棄物、放射能、あるいは農薬、洗剤、工場廃液などによる海水の汚染をまぬかれぬため、必ずしも、無条件に安心することは出来ないでしょうが、ともかく、良質ナッパに匹敵する、すぐれたミネラル・ビタミン源です。 海草の利用の多い地方に長寿者の多いことは周知ですが、これは、海草によって、日常食が改善され、バランスのよくとれた完全食となりやすいからに相違ないでしょう。 また、古くから、甲状腺腫の予防ならびに治療に賞用されているのは、海草がヨードにとんでいるからです。 駆虫効果もいわれています。これは、マクリのような有効成分が、一般の海草にもあるのかも知れないが、おそらく緑葉と同じく、ビタミン、ことにAにとむこと。 および、栄養のバランスがうまくとれ、寄生虫感染にたいする体の抵抗力が増すためでもありましょう。 浅草海苔 ムラサキノリ、海草の中でもっとも愛好されるもの。 紅藻類の一種で、やわらかく、食べよいし、風味もよろしい。 蛋白質にとんでおり、ミネラルことにカルシウムや鉄も多い。 しかもカルシウムと燐の比もよく、ことに下級品ほどよろしい。 ビタミンでは、AもB1B2もすばらしく多い。 もっとも、これは乾燥物についてのことで、ふつうに食べるには、精々2〜3〜5グラムにすぎないので、その中のビタミンは、もちろん大したことではありません。 注目すべきは、乾物でありながら相当量のCのあることで、これは、生の海苔のビタミン量が、いかに豊富であるかをしめすもの、といってよろしいでしょう。 ところで、最近の海苔は殆んどが養殖ものばかりですが、その中には、水銀の含量がすごく多いのがあるそうです。 これは、養殖場が川口にちかい関係上、上流の耕地に、容赦なくまかれる農薬の水銀が流れて来ているためではないでしょうか。 水俣病や、阿賀野川(新潟県)の水銀中毒事件といい、米の水銀問題といい、ともに無気味なことですが、ほかにも、洗剤や工場廃液による汚染もさけられないのではなかろうか。 また、色つけしたもの、味つけ海苔や佃煮その他、加工品に用いられている色素や薬剤なども、はなはだ気がかりです。 岩海苔は、へんぴな海岸の岩に自生しているのを、むしってきて乾かしたもので、養殖ものに比べ、作りが粗く、貝がらのかけらや砂などがついていたりするが、香りも味も一段とよいし、農薬その他の汚染の心配も少い。 韓国では、ゴマ油に塩を混ぜたものを塗って、コンガリと焼いて食べるということですが、なるほど、これはうまい。歯ぎれがよくて、いくらでも食べられる。 かみ砕きやすいので、消化の点でもすぐれているでしょう。 ふつうは、乾燥物を食べるが、海岸では、なるべくとりたての新鮮物を利用すべきです。 汁の実にもよかろうし、三杯酢もうまいでしょう。 なお、海苔の食べすぎのための腹痛には醋がよいと昔からいわれています。 昆布や荒布などを炊くばあいにも、醋を入れるとよいというのと同じ理窟でしょう。 ワカメ 海藻類のうちでは比較的やわらかいもの、ミネラル、ことにカルシウムや鉄にとみ、ビタミンも少くない。 乾燥物でもCのあるのもうれしい。 産地では生のままもたべられているでしょうが、栄養価の点でもずっとよいにちがいありません。 乾燥物は、水にもどして、酢味噌にしたり、三杯酢、あるいは汁の実にするが、そのまま火に焙って揉み、ふりかけにしてもおいしい。 東北では、臼で搗いて細い粉にし、飯に炊く(メノコ飯)。 惜しいことに、今では、大抵のものが色つけしてあるが、はたして、どんな色がつかってあるのでしょうか。 コンブ 古くからなじみ深い海草。 ヒロメ、ヨロコンブと呼ばれ、不老長寿の効がいわれて、縁起ものにもよろこばれます。 だしにつかわれることが多いが、なるべくは全体をたべたいもの。 但し、繊維がかたくて消化はよくないし、うっかりすると色がつけてあり、軟かく味よく加工したものには、どんな添加物がしてあるだろうか、と少からず案じられます。 アラメ、ヒジキなどと同じく、いずれも乾物。 乾燥するだけでも、相当の栄養分が失われるだろうし、水にもどすさい溶け出す成分もあることでしょう。 なるべく純正品をもとめ、調理に注意するとともに自然のまま食べられるもの、軟らかくて特に手を加える必要のない海草を利用したいものです。 そういうもののうち、よく知られているのは、浅草海苔のほかに、モズク、フノリ、テングサ、アオノリなどがあります。 モズク 三杯酢にして酒のさかなにされるが、汁の実にもよろしい。 コンブ、ワカメと同じ褐藻類ですが、細い管状の藻で、軟かく、少し粘り気があって、いたって食べよい。 カルシウムがかなり多く、ビタミンはあまり豊富とはいえません。 ことにAは少く、Cは0。もっとも、これは貯蔵品だからで、生鮮品にはもっと多いのではないでしょうか。 フノリ 汁の実にしたり、刺身のツマにしたり、三杯酢で食べるほか、布につける糊にする。 それで布糊。この辺りにも布糊用のフノリはあったが、食用のはなく、私など、これまで一度も食べたことはなかった。 先年、矢野先生(米沢出身の京大文学部名誉教授)から、食用フノリをいただき、早速、飯にまぶしたり、汁の実にして食べてみましたが、なかなかおいしい。 とても軟らかく、汁に入れると、まるで、トロトロに溶けてしまいます。 消化のよい点では、おそらく海草中随一といってもよいでしょう。 ツノマタ 壁土の糊にするツノマタも、同じく食用されます。 テングサ 寒天の原料になるものにテングサのほか数種あるようですが、いずれも、生のままでも、乾燥したものでも、利用できます。 汁の実、刺身のツマ、三杯酢など。オゴノリもその一つ。 ハワイの土人料理に、生のオゴノリが、生玉葱のスライスとともに添えてありました。 ちょっと食塩をつけて食べるので。見た目にも見事だし、味も悪くない。 カルシウムがすばらしく多く、ビタミンではAやや多いが、BやCはモズクと大差なし。 アオノリ 緑藻類。乾藻して貯蔵し、カキモチに搗きこんだり、生菓子や煎餅にふりかけてある。 香りのよい青海苔。飯やおかずにかけてもよいし、汁の実にもなる。 生は刺身のツマにも、三杯酢にもよいでしょう。 ミネラル、ビタミン源としてすぐれており、カルシウムも鉄も豊富、ビタミンではAもBも多い(ことにB2)。 Cも僅ながらある(もっともこれは乾物の成分だから、生乾物には、ずっと多いでしょう)。
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8. 松葉 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
冬枯れ、夏枯れのナッパ不足の時にも、年中いつでも間に合うのは松葉。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
9. ヒジキ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
姫路市 H.I.
下痢にこの味噌汁がよいといわれる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
10. カンゾウ(萱草) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
春さき、わかい芽を摘んでヒタシモノにして食べた。
(蘇頌)
それから、日本でワスレグサといふ。今昔物語に、紫苑をみれば思ふ事を忘れず。ゆえに嬉しい事があれば紫苑を、憂ひある人は萱草を常にみよ、とある。 今も、支那人、一種の萱草、ヘメロカンス・グラミネアの花を乾し、夥しく在外支那人へ送るを、茶に煎じて用ひ、金鍼菜と呼ぶ。 前年米国で調べると、頗る摂生に益ありと分った。その苗を食ふと、少しく酔ふといふから、後家婆さんなどが、憂ひを忘るる便りとなるべく、さてこそ、人の老母を萱堂といふのだらう」 (南方全集七) 「身体煩熱を治す」(大明)とか、 「湿熱を利す」 (時珍)とあり、 奇魂には、 「汁をとって傷寒の病を治す」。 なお「小便赤渋」によいとあり、 富士川游編の民間薬にも
萱草の葉せんじ用ふ。 多く用ふべし」 (経験千方)
真夏に赤橙色のうつくしい花が咲く。 枕草子に、
うべうべしき所、せんざいにはよし」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
11. ノゲシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
苦菜。一名ケシアザミ。
水に浸し苦味を淘去り、 油塩に調へ食ふ。 生にて揉みても、亦食ふべし」 (救荒本草) 本草書には、いろいろの効能があげてあるが、一般的なものとして、
聰察にし、臥すことを少くし、 身を軽くし、老に耐へる」 (本経)
などとあるから、なかなか大したものだ。 なお、南方全集には、次のような愉快な話がのっている。
露国の伝説に、魔が上帝に、何かくれ、と望むと、麦も稷もやれぬ。烏麦をやらう、と云った。大悦びで、烏麦、烏麦と呼びながら去った。 上帝、烏麦を惜しくなり取返したいといふに、ポール尊者、承知の助、と駆け抜て、橋の下で待つと、烏麦と唱へ続けてやって来た。ポール尊者、突然、ワッと驚かすと、何だお前か。上帝がよい物を呉れた。その名を、今のびっくりで忘れたといふ。 ライで無かったか、大麦でなかったか、と問ふに、否々と答ふ。ノゲシで有たか、と問ふと、其だ、其だ、ノゲシ、ノゲシ、と大切に覚えて行った。以来、魔は後生大事と、この雑草を守っておるといふ」。 (南方熊楠全集七)
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12. ノウゼンハレン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
阿南市 H.M.
花はノウゼンカズラ(凌宵花)のようで、葉はハスに似ている(葉蓮)ので、この名がある。 「ペルーの原産だが、其ハスの葉様の葉と、兜やうの花を、古欧州の円楯と金兜に見立て、トロペオルス(戟利品)と学名した。と書かれているが、この高名な搏識の先生、なにを思いちがいされたのだろう(それとも、編集者のミスか)この記載は、すべて、ノウゼンハレンのことだ。 さて、この漬物、(塩と酢の漬物ピックルス)が、豪的に食をすすめる、とあるので、試してみたが、なるほど、ピリット辛味があって、おいしい。 生で、サラダの薬味にもなる。 花はなかなか綺麗で、葉っ葉ばかりの殺風景きわまる私ども青汁党の畑に色をそえるには、まことに恰好なもの。 ところで、このピリッと来る成分は、一種のからし油。 ベンチール芥子油といい、強力な殺菌作用をもっており、薬用にもされているという。 化膿菌、大腸菌、結核菌、リッケチア、インフルエンザ・ビールス。また、カンジタ(カビ菌)にも有効。 胃腸から、よく吸収されるが、血中では、血液成分と結合して、不活性になっていて、殺菌作用はないが、腎臓や肺から排出されるとき遊離されて、尿や呼気、唾液に殺菌力をあたえる。(この葉を20グラムも食べると、尿にその効力があらわれる)。 だから、腎盂炎や膀胱炎、カゼ、気管支炎や肺炎、また口内炎、扁桃炎などによいわけ。 サラダにして食べてよし青汁にすればなおよかろうというところだ。 もっとも、この青汁は、多すぎると胃を刺戟するだろうから、少量を混ぜるのが適当だろう。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
13. 水瓜 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
水瓜のシーズンになった。暑い日ざかり。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
14. サボテンはいかが | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
サボテンを食べる、といったら、たいていの人は、「あのトゲのいっぱいあるやつを?」と、目をまるくされましょう。私自身も、日南海岸、小弥太郎サボテン公園の技師長、渡辺忠夫氏から、初めてうかがったときは、いささかならず驚きました。 の三種で、これらは、太古の米大陸文化(前史時代)の原住民によって、新芽を蔬菜として食用にするために栽培され、作物化されている。 今日でも、メキシコなどの野菜市場では、とげをむしりながらサボテンを売っているインジオの姿が、よくみかけられるそうです。果実も食べられ、米国では「刺のある梨」(プリックリーペアー)と称して、一般果実同様にひろく食用されています。 また、例のメキシコ特産のテキーラ種は、おもには竜舌蘭の汁からですが、サボテンの果実からつくるのもあるとの事です。ただし、食用サボテンの栽培は、原住民の居住する地方だけに限られたもので、サボテンが広く全世界に栽培されるようになったのは、サボテンに寄生するコチニール貝殻虫(エンジ虫)から、赤色染料(エンジ)を採取する。という用途がひらけたためでした。けれども、この用途はアニリン染料の出現によって完全に失われてしまったので、今では、もっぱら観賞用として、僅かに栽培されているにすぎぬ。という状態になっています。 そこで、渡辺氏は、サボテンの食用作物としての復活を念願され、つくり出されたのだが、サボテン公園名物のピックルスや奈良漬、砂糖煮などです。そして、もっとひろく、食用の一般化ははかれないが、青汁の材料にはどうか。ともかく試食してみてほしいとのことで、昨年の秋私どものところへも送っていただきました。 大部分はサボテン公園に100万本もあるという大ナイヤガラ種で、中に、バーバンク氏が改良したというトゲナシ種もありました。
なお、いろいろの薬効もいわれています。一つご試作、ご試食はいかがです。そして、なんとか、大いに活用のみちを拓こうじゃありませんか。
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15. ミョウガ(茗荷) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
むかし、ある宿屋に、大金をもった客がとまった。あの財布をおき忘れさそうじゃないか、とたくらんだ欲深の宿の老夫婦。どんどんミョウガの料理を出した。よく朝。部屋にいってみると、これはしたり、忘れていたのは、財布じゃなくて宿賃だった。という笑話がある。 「狂言純根草に、釈尊の弟子で、智恵第一の阿難の塚から生た故、蓼を利根草と名け、愚純第一の周利槃特の塚より生た草を純根草と名けたとあり」とあるが、あるいは、芽の出るのがおそいこと――もう他の草木には若葉のしげる5月ごろになって、ミョウガはようやく顔をのぞけ出す。 そのノロマ加減。ふかい繁みのかげに、ひそやかに咲く花蕾の、いやに遠慮気なのも、いかにもうとましげに見える。そんなところから、こうしたウツケ話が生れたのでもあろうか。 「さりとて無闇に嫌はぬのみか、冥加の意に取って祝事に用ひ、家紋にもされ」ているといった、まことにとぼけた草だ。 ふつう食用されるのは花蕾だが、根も茎も葉も、みな食べられる。子供のころ、母がつくってくれた柏餅には、ミョウガの葉にくるんだのもあり葉ごと食べたが、かわった風味があってなかなかよいものだった。 何でもすりつぶして飲んでみていた当時、このミョウガの青汁もやってみたが少しドロつくが、特有の香味があり、乙なものだ。 それに、古方に、 この青汁を熱病の治療や予防、また薬ののみ過ぎや中毒にもよい、 とあるのも嬉しい。 温病の初期、頭痛し、熱甚だ壮なるに檮汁を服す(本草綱目)。 時疫流行の時のがるる方メウガの根と葉をつき、汁を取り、多く飲みてよし(懐中妙薬集)。 服薬過剤。及び中毒し、多煩悶、死せんとするに、搗汁一二升を飲む。夏は葉を用ふ(葛氏方)。 服薬過剤、悶乱するに汁(本草経)。 この葉にどれほどの栄養分があるのか、こういうものまで調べる物好きの栄養学者もいないとみえ、花蕾の成分は載っていても、葉については、何も書いてない。が、一般の緑葉と、おそらく似よったものだろうし、たとえ飲みすぎても、そうそう大馬鹿になるものでもあるまい。 いちど植えておけば、毎年、夏の間中は、青々として葉が繁るから、とかく、菜っ葉の不足がちな真夏の青汁の材料の足しになるし、風味のよい花蕾を賞味も出来る。日蔭でもよくそだつので垣根の隅っこにでも植えておきたいものだ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
16. 漬物 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
香の物、香々は漬物の総名で、今では沢庵漬のことになっているようですが、もともとは、味噌漬大根のことだったそうです。 といった。 そこで、香の物は食事の途中には手をつけず、最後に茶をのむときに食うのが古来のしきたりなんだそうです。 しかし、一般庶民、ことに農家では、日常食に漬物の占める位置は相当に大きくて、副食の殆んどを、これに依存するという場合が少くありませんでした。 ところで漬物は、本来、食物の貯蔵の目的に出たものであり、塩分がつよい(うす塩もので2〜3%、ふつうは5〜6%、甚しくは9〜10%)。 ために、少量の漬物で主食をうんと食うという、甚しい偏食のもとになるし、漬物を大量に摂ろうとすれば、たとえそれが良質菜っ葉であって、栄養のバランスは幾分よくなるとしても、甚しい食塩の食べすぎになります。 いずれにしても、栄養上香ばしからぬ結果をまねくわけで、このことは従来からも喧しくいわれていました。 けれども今日では、さらに別の、ゆるがせに出来ぬ問題が加わって来ています。 というのは、元来、農家の自家製品であり、しかも安全良質であった漬物が、今では、殆んど食品業者の手にうつり、色素、人工甘味、防腐剤など、有害あるいは有毒であるかも知れない各種添加物が混入されているからです(農薬汚染があってならないことも勿論)。 沢庵 漬物の代表ともいうべきものは沢庵でしょうが、市販品のあのあくどい色と味はどうです。 むかしの農家でつくっていた本漬け糠漬けは、本当に、何ともいえずおいしかった。 高校時代(もう50年もまえだが)、別府で療養していた友人を見舞ったあと大分から、3日がかりで外輪山をこえて阿蘇谷へ下ったことがあります。 その途中の田舎宿(何という所だったか思い出せない)で、お茶うけに出された沢庵。 色といい、香りといい、味といい、実にすばらしかった。 今ではもう、ああした純粋な漬物の味は、おそらくないのではないでしょうか。 漬物の出来栄えを主婦の誇としていた農家でさえ、色をつけ、人工甘味を入れています。 まして、一般市販の沢庵と来ては、全くもってお話しになりません。 その上、糠は糠で、もとは、米の糠で、失われた成分をいくらか補う意味もあるといわれたものですが、今は農薬の水銀や砒素が気にもなるという始末です。 粕漬 奈良漬のあの美しい色。 あれは、少くとも3〜5年はかからねば出ぬものです。 それが、なんと、瓜や茄子の時節が来ると、いちはやく立派に色づけされて店頭に姿をあらわします。 それに、我慢のならぬある甘さ。 味噌漬 香のものの元祖だという味噌漬また同じ。三年味噌、五年味噌、十年味噌と、むかしはながくねかした味噌ほど珍重され、それに漬けたのですから、色あいも、香りも、味も実にすばらしい、正に無類のものでした。 今では、味噌そのものが速成品になってしまったので、こうした本物の味噌漬が、そうざらにあろう筈がないのに、どこの店にも、まこといい色をした(色づけした)のが並べられています。 もちろん、特有のあの香りもなければ、味はひどく甘ったるいものになってしまっています。 福神漬 大根、蓮根、牛蒡などの醤油漬ですが、これまた、純粋のものでは、あの色が出るまでには相当の時日がかかるもの。 ふつうの市販品の殆んどは、色づけし、人工甘味で味つけしたものばかりです。 ですから、一般に漬物は香の物の本義にかえって、食後の口なおしに少量を食べるのが精々のところで、副食物として大量にたべるものは、ごくうす塩のもの以外は問題だし、人工甘味の甘ったるいものでは、さらに、その口なおしが必要、といったぐあいです。 ともかく、現在のところ一般市販品の中には、安心して食べられるものは、まず無いので、むかしながらの純粋の、しかも美味しい漬物を食べるには、少々手数でも自分でつくるほかありません。 その際気をつけねばならぬことは、 この意味では、飛騨の酸菜漬という塩なしの漬物(大根の葉を温い湯に浸して、塩なしで桶に入れ、重石をのせておく)は、もっとも合理的なものといってよいでしょう。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
17. アザミ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
旧約創生紀に、上帝アダムが禁果を食べたのを怒り、呪って、「汝は一生の間労苦しみて其(土)より食を得ん。土は莉棘と薊とを汝のために生ずべし」とある。あのトゲのきつい葉は恐ろしげだが、春にはわかい芽を摘んで食べたし、たしか正月7日の七草粥にも入れた。ゴボウのような長い根は粕漬けにもした。ムンムンする陽炎の立つ初夏の野辺で、美しい紅い花をつみ、掌をかるく叩いて、「牛出え馬出え」と小さい虫のとび出るのを面白がった。病気した牛に食わすために、鎌を片手に、おやじに連れられて籠一杯とって来たこともある。 毒虫や蛇咬によい。 酒に擂り服し、外部にぬる。 癬瘡の痒きに刺薊の葉の搗汁(千金方)。 つまり、強壮、浄血、解熱、感染にたいする抵抗力、化膿症、中毒、皮膚病などによい。 また、各種の出血、外傷の出血、衂血、吐血、下血、痔出血、子宮出血などに生のしぼり汁。 痔瘻や淋(尿頻数)、石淋(膀胱結石)、婦人帯下、安胎を主る。 などといったぐあい。 要するに緑葉食、青汁一般の効で、その他のどんな場合にもよいわけだ。食用にはふつう春さきのわかい芽に限られるが、青汁にすれば、刺の強いものも安心して用いられる。かなり大きい葉であるだけに青汁材料としての利用価値も大きい。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
18. カラスムギ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
そこいらの道傍にいくらでもある雑草。どんな荒地にでも出来るので、ほかに何も出来ぬ痩畑とか、開こんしたての畑につくる。
食用に初めて用いられたのは北部アルプス地方だったようだが、北欧、ことにスコットランドでは、広く食用されている。 製品の主なものはオートミール。成分的にはなかなか優秀。蛋白質が多く質的にもよい。脂肪も多いし、カルシウムも比較的多い。ビタミンB1B2にもとんでいる。 つまり、穀物のうちでは、おそらく、もっともすぐれたものではないか、といわれている。 消化のよいオートミールが、老人や病人にすすめられているのも、そうしたところに謂れがあるのだろう。 もっとも、カルシウムや鉄、ビタミンBは全粒よりはかなり減ってはいるが。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
19. ヒルガオ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「嫩苗葉をとり、たき熟し水に浸し淘浄し、油塩に調へ食ふ」また、 「つけものにもすべし」とか、 「日に干して食ふべし」などともある。 が、備荒草本図には、 「但し毎日連ては食ふべからず」とあるそうだが、それは何故だろうか。 和漢薬考には、 「茎葉花根利尿薬とす。戦後の窮迫当時、学会でも、 「血糖を下げ糖尿病によい」という報告があった。 もっとも、これは、すべての緑葉に共通した効能ではあるが。 夏枯れの、野菜の欠乏時にも、この草はよく繁るから、青汁の材料にも、また青菜の代用としても利用価値は少くない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
20. パセリ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
西洋料理にはつきもの。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
21. カヤ(榧)の実 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
カヤの実は南京豆そっくりで、味もよく似ている。
ミネラルでは、カルシウム9ミリグラムだけで、燐や鉄は記載がないので、詳しいことはうかがえない。 またビタミンでは、
B1 40ガンマ、 B2 110ガンマ、 C 7ミリグラムで、 なお、「寸白を療ず」とあって、クルミや南瓜子と同様サナダムシを出す効能があるらしい。 「多食すれば腸を滑する、五痔の人によろし」(宗爽)というのは、脂肪にとみ、通じがよくなるからだろう。もっとも、また、「多食しても病を発せぬ」で、いくら食っても大丈夫だ、ともある。(遠藤) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
22. 菊 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
花にも葉にも不老延命の効がいわれている。むかし、南陽県の山の中に甘谷というところがあり、両岸に甘菊がしげっていた。その露のしたたった流れを汲む人々は、140〜150才も生き、なおかくしゃくとしていた、という。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
23. ミカン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医学博士 遠藤 仁郎
ふつう、袋の中身だけを食べる。しかし、外皮の内側の白い部分にはペクチン(ゼラチン様の粘液質で、果汁がゼリーに凝るもと)が多く含まれている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
24. もやし | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
大麦、小麦、カラスムギ、キビ、コウリヤン、大豆、小豆、緑豆(文豆)などを、水または微温湯にひたし、あるいは厚蒔きして、発芽させたもの。
楠正成は籠城中の野菜不足を、この「もやし」で凌いだということだ。 日露役に、難攻不落を誇った旅順が降伏を余儀なくされたのは、野菜欠乏の結果、壊血病が多発したためだったが、あの時、露軍の倉庫には多量の穀物や豆があったそうだ。 もし、露軍に「もやし」の知識があったら、あの旅順も、ああうまくは行かなかったろう、といわれている。 ところで、ふつうは密室内でつくるので、「もやし」の栄養価は、白色菜なみの貧弱なものにしかすぎない。 しかし、日光にあてると緑色となり(緑もやし)、ビタミンA、その他もできる。 つまり緑菜になるわけで、それだけに栄養価も、ぐんと上って来る。 スコットランドでは、カラスムギを常食し、カラスムギの「緑もやし」を愛用するそうだが、このことは、スコットランド人の強健さと、おそらく無関係ではあるまい。 それにひきかえ、わが国では、愚かなことにも、もともと白い「もやし」を、わざわざ漂白までして、いっそう栄養価を減らして食べているという始末だ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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