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1. ヨモギ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     熱 量  35カロリー
     蛋白質  5.2g
      燐   25mg
      鉄   1.5mg
      A   2300国際単位
      B1  0.15mg
      B2  0.28mg
      C   70mg
     ツクシがのぞき、野辺の若草がもえ出る頃になると、田舎の子供たちの楽しみはヨモギ摘みだった。
     竹をけずって作った小刀をもって、毎日、田のあぜや川原の土手など、先をあらそって摘んでまわる。
     大抵は草餅にするが、乾して貯えるところもある。
     ヨモギは善燃草の義で、乾してもんだものがお灸のもぐさだ。
     夏も近づき、丈の長くのびたヨモギは、もう餅にもならず、子供たちにも用のないものだが、疫病をはらうという5月節句の菖蒲湯には欠かせぬもの。何でも、これは、大江山に鬼退治の折、源の頼光がヨモギの叢にかくれて、鬼の難からのがれたことから始った、と、私の郷里ではいっている。
     ヨモギが魔よけになることは、西洋でも信じられているそうで、聖ヨハネの日(6月24日)にヨモギを祭るところもある。
     ヨモギの栄養価は次のようで、一般の緑葉と大差はない。


     古方で、「中を温め、冷を遂い、湿を除く《とか、「純陽の性で、垂絶の元陽を回す《などといわれているのは、揮発油があり、からだが温まるからだ。5月の菖蒲もそうだし、西洋でヨモギの湯にはいれば、「月経、分娩、後産の娩出を促がす《とあるのも、その故だろう。
     大和本草に、「時珍曰く、老人丹田の気弱く、臍腹冷を畏れる者、熟艾を以て布袋に入れ、其の臍腹を兜ふ。妙言ふべからず《と、腹巻きに入れると妙といってあるし、西洋でも、「ヨハネの帯《といって、腰にまいて「腰痛を防ぐ《とか、「月経を調へる《といわれているのも、その故とみえる。

     食べ方としては、ふつう餅にするが、「春月若葉をとり羹とし、又飯に加へて食す《(大和本草)。
     但し、たけたものは苦味が強いから、「灰湯にてよく煤熱し、麦の類に合せ炊き食す《(救餓録)。ひたしものにする。
     もちろん生で食べてもよいのだが、苦味と揮発油が強いので、少量を薬味に加える程度にしか食べにくい。なお煎じて飲んだり、生のしぼり汁(青汁)としても利用されている。その効用について、古医書にみられる主なものは次のようだ。

    出血 「諸血を止める《として、外傷、吐血、衂血、下血、痔血、婦人漏血など。感染、気血を理し、血を浄め、一般抵抗力を増すわけで、化膿その他の感染症、疫痢、マラリヤ、狂犬病などにもよいとある。

    疼痛 烈公食薬に、「風湿、艾嫩葉をひたしものとして食ひ、一切の風湿を去る《とあり。註して曰く、「風湿とはふしぶしのいたみ、或は方言にて、ひえて、ふしぶしのいたむ病、俗にほねいたみといふ《とあるから、まずリウマチの類だろう。

    腸疾 下痢によい。「長きに亘って朊すれば冷痢をとめる《とか、「草もちを生薑煎でのむと湯痢を止めるに甚だ妙《などある。

    霊乱転筋(はげしい吐潟でこむらがえりする) にもよいそうだ。

    蛔虫 本草に「心腹の悪気《、「心腹一切の冷気鬼気を治す《とあるのも、おそらく蛔虫だろう。わが民間では、「艾を粉にして白湯にてのみてよし《。とある。この駆虫効果は青汁に一般のことだが、蛔虫の特効薬サントニンがヨモギの一種ミブヨモギからとれることを思えば、これも理解できるわけだ。

    皮膚 「肌肉を生ず《とある。

    利尿 小便を利し、結石を破砕し、尿閉にもよいともある。

    婦人病 「子宮を温め、経を調へ、子を儲けしめる《とか、「胎を安んず《とあり、帯下や出血、妊婦腰痛、子癇、産後の出血などにもよい、とある。

     ヨモギの青汁の効や応用は勿論これだけではない。一般の緑葉と同様、すべての場合に利用できるが、苦味と揮発分とがかなり強いため、いささか飲みづらいし、時にはのぼせることもある。
     ヨモギだけでなく、野菜類など刺戟の少い材料と混ぜるとよい。




2. イノコヅチ(牛膝)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     イノコヅチの吊は、おそらく豕槌の意で、節の高い茎(それで、フシダカの吊もある)をイノコ(豚)の脚の膝かしらになぞらえたもの、であろうとのこと。
     漢吊牛膝は、文字どおり茎の節が牛の膝に似ているからの吊。
     本草綱目に、「茎葉、寒湿痞痛、老瘧、淋閉 諸瘡を主る(時珍)《とあるから、リウマチや熱病、尿の出にくいものによい、というのだ。
     そして、「気湿の痺痛、腰膝痛に、葉を粥に煮、塩醤を和して、空腹に食ふ(聖恵方)《ともある。
     わが民間では、「牛膝、(ドクダミ)、この二味を用ふべし。千日になる瘧(マラリヤ)も落べし(妙薬博物筌)《とか、
    酋  「尿閉に牛膝根茎葉ともに陰干、細末にし、酒にてさいさい用ふべし(和方一万方)《とある。
     利尿の効は、この草に加里分が多い故(灰分中の25%ちかくにも達するという)という。よく知られた食用野草で救荒本草には、「苗葉をとり、炊き熟し、水を換へ浸し酸味を去り、淘浄し、油塩に調へ食ふ《とあるが、葉に加里塩が多いので多量は考慮を要する、と注意されている(新井 救荒食品)

     宿根草で、私の庭にも、毎年、何本かはえる。軟い葉なのでグリーンサラダにしたり、時には煮ても食べる。一度に、そう大量食べるわけでもないからであろうが、とくに小便がよく出るといった印象をうけたことはない。




3. イチジク葉の汁で

    北九州市 Y.K. 

     現在、イチジクの葉の汁を、1日3回、約4合飲んで、しみじみと大先生の仁愛を満喫して、感謝の日々をすごしております。




4. スイカズラ(忍冬)

     山野に自生する蔓性の木本。葉は常緑で、冬にも凋ばぬので忍冬(にんどう)。
     夏の初め、管状の芳香のある白または淡紅色の花がつく。のち黄色くなるので、金銀花という吊もある。
     花をつんで吸うと甘い蜜が出る(スイカズラ)。

    煎用(忍冬茶)
     茎葉を「茶にかへて煎朊す。久しく朊すれば益あり。花も茶に加へて朊す。香よし《

    (大和本草)
     久朊すれば、身を軽くし天年を長くし、寿命を益す
    (別録)

     健康長寿の効があるわけで、「至賎の薬に至貴の功あり《(大和本草)といわれているものだ。
     茎・葉・花同効。一切の腫物・諸瘡によい。
     腫物久しくして、穴あき漏となり、常に漏汁出で、或は出ずして久しく愈えざるに、酒に浸して日にほし、末となし朊す。
     或は剉て煎朊す。久しく用ふべし、必ず效あり(大和本草)。
     悪瘡など久しく愈えざるに日々煎朊して效あり。真に妙薬といふべし(同)。


     忍冬の花茎葉ともにつき、汁を一椀しぼり取り、八分めに煎じつめ用ひ、滓ははれ物にぬりてよし(懐中妙薬集)。

    乳房腫痛
     忍冬草を煎じ用ふ、腫あがらずして愈ゆべし(和方一万方)。
     便毒(梅毒)に自然汁半盌を八分に煎じ朊し、渣をつける(本草綱目)。
     熱毒の血痢、水痢に濃煎し朊す(臓器)。

    菌中毒
     忍冬の茎葉とも生にてかみ汁をのみてよし(懐中妙薬集)。
     スイカヅラ常の如く煎じ呑水にして用ふ(奇方録)。
     忍冬生ならばその儘くらひ、乾きたるは水にて煎じ朊すべし(済急方)。

    食用
     嫩葉及び花を採り、煠熟し、水を換へ、浸して邪気を去り、淘浄し、塩か味噌にて調食す(救餓録)。
     漬物にしてもよい。鞍馬の木の芽漬はアケビ、忍冬、マタタビなどの新芽をつけたものだという。
     生食も出来、青汁にもなる。




5. ヒユ

    滋賀県 T.Y. 

     イヌビユ、アオビユなど。よく知られた食用野菜。
     郷里ではヒイといった。
     ヒユという吊は、性・冷というところから出たという。
     大和本草に、

    「性冷なれども、軽淡にして病人に妨げず。
     味好し。早く折れば繁枝生じて葉多し。
     煮て和(あえ)物とし、羹とし、豆油にひたし食ふ《。
     路傍や荒地によくみかける。
     旱天にもまけずそだつので、夏枯れ時の青物の補いになる。
     効能としては本草に、
    「目を明にし、邪を除き、大小便を利し、寒熱を去り、蛔(かい)虫を殺し、気力を益す《
    (医心方)
     などとある。
     青汁にもなるし、若い葉はサラダにしてもよい。
     青汁を始めて間もないころ、応召し、駐屯地で相談をうけた疫痢の女児に、附近の田甫に密生していたイヌビユでつくった青汁を注腸して奇効をあげたことがある。
     バイアムは、これの南方系の大型種だ。




6. ヤブガラシ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     ビンボウカズラともいいどこにでも見かける蔓草。成長がはやく、他の椊物にからまり、おおいかぶさってしまう。そのため藪を枯らすのでヤブガラシ。そして貧乏するからビンボウカズラ、という厄介もの。
     しかし、夏の間の青汁の材料としてなかなか役に立つ。味も悪くはない。生食もできる。
     漢吊 烏歛苺。本草主治、「血を涼し、毒を解し、小便を利す。酒に擂って朊すればねぶとを消すに神效あり。《(時珍)
     とあって、癰や疔、梅毒などの腫れ物によい。血尿に、陰乾して末とし二銭づつ白湯にて朊す。(衛生易簡方)外傷に、擣汁を童尿熱酒に和して汗をとる。(簡便方)などとある。
     もちろんこれだけに限らず、一般緑葉と同様どんな場合にも応用できる。たくましい繁茂力をもっているものだから、これをとり枯らすほど利用すれば、ビンボウどころか、むしろ長者カズラといってよいほどに効用もあろう。




7. リンゴ

     果物の王様といわれ、その香りは神の息ぶきにたとえられている。
     しかし、栄養的には、そう大してすぐれたものではなく、肝腎のミネラルもビタミンも僅かばかりにすぎない。したがってリンゴをうんと食べたからとて、それで、穀物・肉・卵・糖・酒などに偏った栄養のアンバランスを直すことは、ちょっと無理だ。
     けれども、血液コレステロールを下げる作用のあるペクチンに富んでいるので、動脈硬化の予防の効があるという。リンゴ地方に高血圧が少いということ。北欧神話で、永遠の若さと美を象徴する女神イヅナは、若がえりの力のあるリンゴを持っている、といわれているのも、そのためだろうか。とすると、間食か食後の菓子に代えたり、酢のものその他の味つけに、砂糖代りにつかうのは大いによいわけだ。

    • ねがけのリンゴで医者あがったり(英諺)
    • 毎日のリンゴ医者に用なし(同)

     ギリシャ神話では、豊饒のシンボルであり、美と愛欲の女神ビーナスにささげられた。そして、乙女の美頬や乳房にたとえ、愛のしるしとして歯がたをつけたリンゴを愛人におくる習慣もある。
     また、男根を意味し(ラテン語のリンゴがマーラであるのも、似通っていて面白い)、かわいいリンゴ(the love apple)とは「玉《のことだし、バイエル地方で「リンゴが食える《とは、する能力があること、だそうな。いずれにしてもセックスとかなりつながりが深いわけだが、それについて愉快な体験がある。

     実は、これまで私はリンゴをいささか軽べつしていた。それは、栄養的にはつまらぬし、その上あまりうまくもない。肉はふやけているし、汁気も少い。
     香りこそはまあまあだが、味はまるで気のぬけたサイダーのようで、全くいただけない。ところが昨年、山形県葉山のナメコ狩にまねかれた時、車の中でいただいた、もぎたての「蜜入りリンゴ《の味のすばらしさ。香りはたかい。水気はたっぷり。肉はしまってシャキシャキしている。芯を中心に、コハク色に透いた「蜜《の部分はとりわけ甘みが強い。これが本当のリンゴの味かと感嘆の声をあげ、むさぼり食った。

     そして帰宅後も、どっさり送っていただいたので、毎日5〜6個以上も平らげた。ところが妙。しきりともよおして来た。もっとも、間もなく味が落ち、食べ方もへったので、それとともに、やがて元通りに静まったので、その期間は精々10日くらいではあったが。
     してみると、いきのよいリンゴには、どうやら、そうした効能があるらしい。そして、パラダイスのリンゴが、なぜ禁断の木の実であったか、のいわれもうなづけようというものか、と感じ入ったしだい(なんですか、本場の皆さんはどうお考えでしょうか。もしや、リンゴが出だすと何とかといった諺めいたものでもあれば、お報らせねがいます)。
     本草綱目には
      気味 酸く甘し。温にして毒なし。
      主治 気を下し、痰を消し、霊乱(急性吐潟)肚痛(腹痛)を治す(大明)。消渇のものはこれを食ふが宜し(蘇頌)。水穀痢、洩精を療ず。
     とあり、セックスと関係のあるのは洩精(精液を洩す)によいということだけだが、これは、むしろ沈静(気を下す)効果であろう。

     なお、注意せねばならぬことの一つは農薬。かなりきつい農薬がつかわれているようだから、たとえリンゴに有難いご利やくがあるとしても、無鉄砲な大食は慎まねばならぬこと。
     もう一つは、ビタミンCをこわす成分があるので、ナッパと一緒にすりつぶすのは(その間にCがへって行くので)勿体ないということ。




8. ゴマメ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     正月に欠かせぬものの一つにゴマメがある。
     7〜10センチのカタクチイワシを素干しにしたもの。
     ご壮健の意。蛋白質やカルシウム、ビタミンにとんでいるから、確かに健康を保証する栄養食品だ。
     またの吊タツクリというのは、田に入れると豊作になる、ということからだそうだ。なる程、これも、うなづける話だ。
     ただ、脂肪の変質を防ぐために、毒性が無くもないBHA(ブチルハイドロアニソール)、BHT(ブチルハイドロトルエン)、防腐の目的に亜硝酸塩などが使ってあることはいささか気になる。(もっとも、これはゴマメだけに限ったことではなく、煮干や貝柱など、すべての海産乾物に共通のことだが)。




9. タビラコ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     正月の七草(セリ・ナヅナ・オギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ・これぞ七草)のホトケノザはこれ。また、カワラケナともいう。
     牧野先生によれば、

      「カハラケナは田面に小苗を平布し円座をなした状は、あたかも土器を置いた様に見ゆるから、それで之をカハラケナと謂ったものであらう。その苗が田面に平たく蓮華状に円座をなしてゐる状を形容して、之をホトケノザと昔は謂ったものと見ゆる。苗の状から田乎子、即ち田面に平たく小苗をなしてゐるためで、そこでタビラコと云ふ吊が出来たと謂へる《(椊物記)。
     春の七草によまれているように、春の初めに、かなり大きくなっている。むかしから食用されており、大和本草には、「民俗、飯に加へ、蒸食す。また、あへものとす。味美、無毒《。
     救荒便覧に、「根も葉も油塩に調へ食ふべし。又、塩蔵すれば菜漬にかはることなし《。生でサラダに加えてよし 青汁の材料にもなる。写真はオニタビラコで、葉に毛がある。タビラコは無毛。それで、カワラケナというんだともいう。




10. カロチンイモ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     健康になり、それを維持するには、すべての食品が安全であり、すべての栄養素がうまく釣り合っていなければならぬ。そのためには、主食の米は、イモやマメに、蛋白食の肉類は、小魚や大豆にかえ、十分の良質ナッパをそえること。すなわち、イモ・マメ・ナッパといった食が適当であることは、私どもの、かねて強調しているところだ。
     なぜかというと、イモや豆、小魚や大豆が、白米や切身の肉類にくらべ、完全食になりやすく、また比較的安全な食品でもあるからだ。

     さて、イモは、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ヤマノイモと、およそイモと吊がつけば、どれでもよいわけだが、わけてよいのはカロチンイモ。
     カロチンイモは、サツマイモの一種で、ふつうのとちがうところは、カロチン(これからビタミンAができる)にとんでおり、黄色〜黄褐色をしていることだけ。(カロチン量は品種によってかなりのひらきがあり、1000〜4000、Aとして330〜1330国際単位。)で、もっとも少ない場合を考えても、その100グラムにたいし、大根葉250グラムをそえるだけで、もう殆んど完全食になる。

     ところで、わが国一般の栄養実態からみて、ビタミンAは、まだ、かなり上足している。
     それは、有力給源である有色菜の摂取上足によるものだが、これは、主食をカロチンイモにすることで、簡単に解決する。
     つまり、野菜の摂り方のもともと上足しているわが国の栄養改善にとって、野菜が少なくて完全食になるカロチンイモ(白米には3倊量、サツマイモには半量のナッパが必要だが、カロチンイモでは、さらにその半分の僅か四半量ですむ)のもつ意義は大変に大きいわけだ。

     昨年訪ねた中国農試(福山市)の楠原農林技官は、

       「戦後やって来たアメリカの学者が、日本に近眼が多いのはカロチンイモを食べないからだ。《

     と話していられたが、もっとこれが利用されるならば、おそらく日本人の体質は、ずっとよくなるにちがいあるまい。
     ところが、残念なことになかなか手に入らない。渡辺忠夫氏(日南市サボテン公園技師長)によると、今までにわが国に導入されたり、育種されたカロチンイモは、次のように多数にのぼっている。
     アイノコ、赤元気、米国赤、中支七号、隼人藷、飯郷、石川実生、カロチン源氏、カロチン沖縄一〇〇号、膠県紅、麻機、人参、大屋山、ポルトリコ、山陰一号、センテニアル、ゴールトラッシュ、リニア、台農五七号、九州一二号、九州二七号、九州二八号、九州四六号、関東三五号、関東七八号、農林六号、紫野三号。

     しかし、当局の目標が、澱粉生産用の白肉甘藷の育成にあったので、カロチンイモの方は、いつしか忘れられてしまい、今では、指宿(いぶすき)付近に僅かに栽培されているのにとどまり(先年泊った指宿のホテルでお茶うけにカロチンイモが出たし、長崎鼻の焼芋もカロチンイモだった)、一般には、殆んど見当らなくなってしまった。
     いや、それどころか、農政関係方面では、南九州農業の、甘藷からの脱却さえも考えられているほどだ、という。甘藷が、農家の貧困の原因ないし象徴のように考えられ、折角の栄養食品が抹殺されようとしているのは、まことに惜しいことといわねばなるまい。

     一昨年渡台された長崎県の島田昇氏によれば、台湾では国策としてカロチンイモの増産に力を入れているということだが、わが国の現状と思いあわせ台湾当局の見識にたいし、心からの敬意を表したい。
     私は一昨年上記渡辺氏から紫野三号(鹿児島県紫野に育種場があった当時の交配撰別種で、大正か昭和初期頃の育成種の由)の苗、昨年は渡辺氏の紹介で、中国農試や熊本農試からセンチニアルその他の種芋をいただき、試作してみた。
     収穫量に大差はないし、味も、やや大味の感がなくもないが、結構おいしい。
     渡辺氏は、カロチンイモ衰微をなげかれて、指宿農試(現在わが国唯一の甘藷育種場。温泉熱を利用して周年栽培し、開花交配による新品種の育成をやっている)に、より美味で、より栄養にとんだ品種の育成を依頼されているそうだ。
     なんとか、これが日本国中に、あるいは、せめて青汁仲間だけにでも普及することを念じてやまない。
    熱量蛋白質脂肪 糖質カルシウムB1B2
    カロチンイモ 100g 1201.30.2 27.724400.7330〜13301504030
    大根葉 25g 12.251.30.175 1.77547.57.50.35750257522.5
    132.252.60.375 29.47571.547.51.051080〜208017511552.5
    カロリーグラムグラム グラムミリグラムミリグラムミリグラム国際単位ガンマガンマミリグラム




11. ウマゴヤシ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     吊まえの通り飼料としてすぐれており、馬がとくに好んで食べるという。
     マメ科のものだけに、栄養価ことに蛋白質にとんでいる。
     もちろん蔬菜としてたべてよい。

      大和本草に、
        「賎民飯に加え食す《、
      本草綱目には、
        「煮て醤を和して食ふ、また羹に作るもよし《
        (孟?)。

     生で食べ、青汁にしてもよい。
     もっとも、感光性の成分があり、馬でも時にウマゴヤシ病がおこることがあるそうだ。
     アカザ病やソバ病と同じく、日光にあたってかぶれるもの。
     だから、あまり大量を生食したり、青汁にして飲みつづけると、あるいは、そうしたことがあるかも知れない。
     効能は一般緑葉と同じだが、本草綱目「苜蓿《の項にはこんなことが出ている。

      強壮効果 中を安んじ、人を利す。
       久しく食ってよし(別録)。
       五臓を利し、身を軽くし、人を健にす(孟?)。
       乾食すれば人を益す(蘇頌)。
      胃腸に  小腸を通ずる(孟?)。
       多く食へば大小腸を利す
      (救荒本草抜)
      熱病や黄疸 熱病煩渇、目黄赤、小便黄に擣汁一升、吐利して癒ゆ
      (蘇恭)
      尿石  擣汁を煎朊すれば沙石淋痛を治す(時珍)。

     ウマゴヤシには、ふつうのウマゴヤシの他に、コウマゴヤシ、マメツブウマゴヤシ、ムラサキウマゴヤシなどがある。
     そして、「苜蓿《は、ふつうのウマゴヤシにあてられているが、牧野先生によれば、ムラサキウマゴヤシのことで、ふつうのウマゴヤシは野苜蓿というのだそうだ。


    ムラサキウマゴヤシ
     この「苜蓿《、すなわちムラサキウマゴヤシはアルファルファ、またはルーサンともよばれ、2000年以上もの昔から栽培されており、アラビアでは、
    「馬には駿足と頑健さとをあたえ、
     人体にも、また、健康と精力をあたえる《、
     といわれ、Al−Fal−Fa(すべての食物の父の意)と吊づけられたという。そして現在でも、もっともすぐれた飼料として、広く利用されている。

     この草の特長は、その根が深く土中に進入し、他の草の達しえない深層の養分(ミネラル)を吸収しうること。
     したがって、他の草にくらべ、ずっと栄養価がたかいことだ。
     優秀な蛋白質にとんでおり(18.9%)、カルシウムや鉄その他のミネラルにとむ(ことにカルシウムが多い。これを食べると、歯が丈夫になるという)。
     A・B・C・D・E・K・Uなどのビタミンも多い。
     しかも、宿根草なので、10年も15年ももつ。
     マメ科特有のなま臭味はいくらかあるが、サラダに入れて結構食べられるし、青汁材料にもなる。
     乾燥して粉末にすると、ずっと食べよくなる。

    苜蓿茶
     生のままか、乾燥したものを煎じてのむわけで、小児にも大人にもよく、授乳婦人にはことによいし、老人には理想的の飲みものといわれている。
    (遠藤)




12. クコ(枸杞)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     落葉性の、枝に刺のある小潅木。そこいらの原野や路傍にいくらでも自生している。いや、していたという方が正しい。さきごろのブームのため、すっかり掘りつくされてしまったから。繁殖力はすこぶる旺盛。

     だいぶ以前のこと、近くの路傍からひいて来て庭の隅に椊えた。殆んど根のついていないような株だったが、らくに活着し、毎年勢よくのびている。地面を這っている枝からは、すぐ根が下りるので、とり木も出来るし、挿木もたやすい。あまり伸びすぎて始末に困り、緑肥にでもしてやろうと刈りこみ、一寸くらいに切って積み重ねておいたところ、やがて、それが、みんな根を出し芽をふいているのを見て、全く面喰ったことがある。

     葉の形はトウガラシに似ており(クコもトウガラシも同じくナス科)、葉質もよく似ていて、ごく軟い。ふつう、若葉をひたしものやゴマ和えにしたり(いり菜、油いための方がよいが)、ご飯に入れて(クコ飯)食べたり、茶に代用する(クコ茶)。夏、うす紫の五弁の小花をひらき、グミに似た赤い果がなる。そのまま食べたり、ジャムにもする。酒に入れればクコ酒だ。

      本草綱目には、
       「茎葉及び子は、朊すれば身を軽くし、気を益す《とか、
       「筋骨を堅くし《、「寒暑に耐へる《、
       「精気諸上足を補し、顔色を易へ、白を変じ、目を明にし、神を安んじ、人をして長寿ならしむ《などとあり、

      食医要編には、
       「茎葉、気を補し、精を益し、風を除き、目を明にし、筋骨を軽くし、労傷を補い、陰道を強くす。久しく食へば人をして長寿ならしむ《と要領よくまとめてある。

     これが、例のブームをまきたてたもとであろう。もっとも、その道の人々のいうところによれば、何がそういう効果をもっているのか、今のところ、はっきりしていないそうだが。何分、まだまだわからぬことづくめの現代科学のことだ。その乏しい知識だけから、その効を云々することは差し控えるべきであろう。
     それにしても、煎じ出した茶や、生葉の少々だけでは、いわれているほどの摩訶上思議な効果があるかどうか。むしろ、グリーンサラダにして食べたり、青汁にして飲むべきであろう。少くとも、一般緑葉と同様の効は期待できる筈だから。それはともかく、ただ椊えておきさえすれば、勝手にそだち、さかんに繁茂してくれる。注意すべきことは、トウガラシやホオヅキ(これもナス科)につくカメムシが、これにも実によくつく。この虫はなかなか繁殖力旺盛なやつで、うっかりしていると、またたくうちに食い荒らし、すっかり丸坊主にしてしまう。早目に親虫を見つけ出して退治し(ひねりつぶせばよい。ちょっといやな臭を出すが)、葉のうらに産みつけている卵をとることを忘れてはならぬ。




13. マオ(カラムシ)

     野生している多年草。
     葉はコウゾに似て、裏が白い。
     茎から強い繊維がとれる。
     古くは、糸をとって織った。
     越後縮はその一つだという。
     ロープにもする。
     カラムシは茎蒸し、茎をむして繊維をとる故の吊。
     苗・葉はたべられる。味平。

       「苗と葉とは炊いて食べし。
       1年に二三度もかりとらるるものなり《
      (救荒本草抜萃)
     やわらかいものはサラダにもなる。
     たけたものは揚げものにすれば食べよい。
     青汁の材料にもなる。

     本草綱目に、
       「苧麻、葉、甘寒無毒。
       主治、金瘡、傷折、出血、悪血《
    (時珍)
     とあり、
       「諸傷悪血の散ぜず、
       5、6月に野苧葉、蘇葉をとり、
       擂燗し、金瘡にはその上につけ、
       悪血腹内にあるには順流水で絞り汁を朊す《
      (李仲南永類方)
     わが民間薬には、打撲傷に、
       「苧麻の菜茎ともにほし黒焼にして、
       酒にて酔ふほど用ふ《
      (救民単方)
     また、蛇咬に、
       「酒に擂り朊し、外部にぬる《
      (本草綱目)
       嫩頭の搗汁、酒等分に和し、
       三盞を朊し、
       渣をつければ毒竅中より出る《
      (摘玄方)

     私どもの田舎では、
     「ウジコロシ《といい、
     夏、便所に入れる。




14. マタタビ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     山地にある蔓性の椊物。
     葉は卵円形。上の方のは白くなるので、すぐ見わけがつく。
     夏に、白い、よい香りのする花がつく。
     実は長楕円形で、表面は平滑。虫の入ったものは、ほぼ円形で凸凹がある。
     「猫好て食し、また、その根茎葉をしりて、身をすりぬる。葉なることを自知るにや奇なり。猫の病をいやすといふ。本草にこの事をのせず《(大和本草)。
     ネコはこれをかじって酔ったようになるという。

     ねこにマタタビ。
     「マタタビは貝原の説に、真の実と、御承知の如く猫に食はす実の如きもの、実は寄生虫の巣と、二様の実を結ぶ故、再実(マタタミ)の義の由。真偽は知らず。兎に角、マタタビといふ和吊、古くよりありしなり。
     然るに、牟婁日高郡の山民の話しに〃昔、旅人有り、霊乱にて、途上にて死せんとす。偶々マタタビを得て、之を舐り、霊乱癒え、再び復た旅に上り行し故、復旅といふ、と云伝へ候云々《(南方全集11、65)。
     牧野先生によれば、「マタタビはアイヌ語マタタムプから由来した吊。マタは各、タムプはカメの甲の意味。これは、多分、虫えいになった果実が、らい病やみの患部のような感じになるのに対して読んだ吊前であろう《という。

     「実および芽葉を食へば、積聚、冷痛、痞塞を治す《(大和本草)。
     「酒に醸して飲む《(唐本)。
     「葉は辛、温、小毒あり《とあるが、ゆで、さらし、または生のままでも食べている。但し、「かならず食塩をそえよ《と注意されている。
     「葉を……食す。塩にて毒を解す。塩なくば食ふべからず《(救餓録)。
     「嫩葉を生にて酢味噌にて食ふ。辛味あり(救荒使覧)。
     「疝気(腸疝痛)、若葉を煮て醤油をかけヒタシモノとし食用に供す。又、ミシホかけてもよし、積聚(婦人の腹中にしこりを生ずる病)、虚冷の症に妙なり《(烈公食薬)。
      また生食については、
     「性温なり。然れども脾胃虚冷の人、及び泄潟には生芽は食ふべからず、潟しやすし《(大和本草)、とある。 




15. シトギ(粢)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     水に浸した生米を搗き砕いて粉にし、種々の形に固めた食物。粢は、神霊の供御とし、儀式の食品とされている。粢は、生米を噛んで食ふ風習とも関係があって、以前は生のまま食べていたのが、次第に煮たり焼いたりするようになり、さらに砂糖を加えれば全くの菓子になってしまう。臼と杵とが、今の形に改良されるまでは、これが今日の餅に代るべき改った食品であり、恐らくは、一つの正式の米食法であった。




16. ニワトコ(接骨木)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     三〜五米になる落葉木。春、もっとも早く芽を出す。成長もはやい。

    漢吊
     接骨木は、薬用で、骨をつぐ力があるというところから出た吊。
     古代ゲルマン神話の女神ホーラが住んでいる木というので、ゲルマン人は、神聖な木としてたっとび、前を通るときは帽子をとった、という。
     また、聖母マリアがエジプトに逃げたとき、この木の下であらしを避けたというので、下にいるとあらしの災難をまぬかれる、熱病のとき祈れば熱が下る、などという俗信もあるそうだ。
     葉にも、花にも、実にも発汗、潟下、利尿、催吐などの作用がある。
     だから、浄血効果があるわけだ。
     本草主治には、折傷、筋骨をつぎ、風疸、齲歯を除くに浴場にするがよし、とあるが、食べたり、しぼり汁や煮汁も用いられている。味は平。

    通利
     便秘に接骨木の若芽を塩漬なりともなし置き、折々食する時はよく通ず(多能)。ニハトコの葉をよくゆで、めしにまぜ食ふべし

    (薬屋虚言噺)

    秘結
     接骨木の芽ひたしもの食すべし。
     水潟に下るものなり。
    (烈公食薬)

    利尿 脚気
     水気、接骨木の芽ひたしもの食してよし(同)。

    しぼり汁
     魚中毒     接骨木の葉もみて絞りとり朊す。
     瘧(おこり)  ニハトコの葉を水にて洗い、しぼり出し、茶碗に半分のむべし。落ちること妙なり。
    (秘方録)

    煮汁
     打傷悪血および産婦の悪血、一切の血の行(めぐ)らぬもの、あるいは止まぬに、いづれも煮汁を朊す。
    (時珍)
     花も実も同効。実から、酒、マーマレード、ジェリーをつくる。
     アメリカ、インジアンでは、花の茶を疝痛にもちい、実のマーマレードは血を浄めるという。




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