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7-1. 病気にならない食事学 ニンニクで夏バテ防止

    新宿医院院長 H.A. 

     暑くなると、「夏バテ防止に、ニンニクはどうでしょう」とよく聞かれます。
     その場合、私は「けっこうですよ。おおいにおいしくとって下さい」と答えています。
     ニンニクは、夏バテ防止によい食品とされてきました。
     その一つの事実として、大昔、エジプトで、ピラミッドを建設する際、炎天下で労働者たちがニンニクを食べながら働いたという話は有名です。
     それでは、ニンニクのどんな成分が効果をあげるのでしょう。
     一般にスコルジニンとアリシンだといわれています。
     まず、スコルジニンについては、全薬工業会社のスタッフらが、大変興味ある実験を行っています。10匹のネズミを二群に分け、一群の餌の中にはスコルジニンを入れ、もう一方の一群のネズミはこれが入っていない餌を与え、4日間、35−40度Cの高温環境(夏の最高温度)の中で飼育し、どちらが早くバテるか、調べてみたのです。
     その結果、スコルジニンを与えなかったネズミの方は、たちまち食欲がなくなり衰弱し、5匹中、2日目に1匹、4日目に3匹が死亡していました。
     一方、スコルジニンを与えたネズミの場合は、多少、食欲が落ちましたが、元気で1匹も死亡例は見られなかったのです。
     この成績から、ニンニク成分スコルジニンは、肉体的ストレスを軽減し、暑さに対する抵抗力を高めるといっています。
     さらに、次のような実験を行っています。同じくネズミを二群に分け、一群の餌にはスコルジニンを入れ、ほかの一群にはこれが入っていない餌を与え、一定距離の坂道を走らせてみたのです。その結果、スコルジニンを与えたネズミは、与えなかったネズミに比べて、その走行距離は2倍以上にも達し、明らかに、抗疲労体力増強作用がみられたのです。
     次に、ニンニク成分アリシンですが、これはビタミンB1とくっついて、B1自身より、より強力な働きをするニンニクB1を作ります。
     一般のビタミンB1は、いくらたくさんとっても、体が必要とする一定量以外はどんどん体外に排せつされてしまいます。
     ところが、ニンニクB1になると違います。ふつうのB1の10倍以上も腸から吸収されるのです。しかも、長時間体内にとどまって、B1としての効果を発揮してくれます。
     ご存じのように、夏はビタミンB1が不足しがち。そうなると、食欲は減退し、胃腸の働きがにぶって、消化不良が起こります。
     疲れやすく、だるさでスタミナもなくなって体重も減ってきます。
     さらにひどくなると、心臓も弱くなってきます。こうした状態の時に、ニンニクB1はスコルジニンとあいまって大変効果的だというわけです。
     また、ニンニクはおいしさを作る素晴らしい香辛料です。
     焼き肉、ギョーザ、マーボー豆腐・・・あのおいしさを作るのはニンニクなのです。
     どうせとるなら、料理に上手に入れて、おいしくたくさんとるようにしましょう。

    (59・8・8サンケイ)


7-2. 日本人の長寿の支え 米、大豆、魚のタンパク質の再発見

    健康保持に植物性
     日本が世界でも指折りの長寿国になったということが、アメリカなどで注目されています。
     そして、その理由の一つとして、日本の食事がよいものをもっているのではないかということが考えられています。
     また、研究も行われています。その結果、でてきたのが、大豆、米、さらに魚のタンパク質です。
     タンパク質は、動物タンパクと植物タンパクに大別されます。
     そして、動物タンパクの方が、植物タンパクよりも、栄養的に優れていると考えられてきました。
     ある意味ではこれは今でも間違いではありません。しかし、動物タンパクだけよりも、植物タンパクも加わった方がよいということがわかってきたのです。
     まず、植物タンパクの中でも、もっとも注目されたのが大豆です。
     これは、血管に対して、弾力性をもたせることが分かったからです。血管が弾力をもてば、たとえ、血圧が急に上がったとしても、血管の弱っているところが破れるということが防げます。
     また、血栓などで詰まりそうになったときも、それを防ぐことができます。というのは、血管に弾力がありしなやかであれば、血圧が上がったときも血管がふくらんで、事故につながらないからです。

    発ガン防止の効用
     さらに、最近は、大豆タンパクの中に、発ガンを防止する因子のあることが発見されました。
     こんなこともあって、アメリカではちょっとした大豆タンパクブームになっています。
     そして、ブック・オブ・ザ・トウフ、つまり豆腐の本といったものがベストセラーを続けています。
     これは、豆腐が大豆タンパクの代表として取り上げられたもので、大豆タンパクの健康に対することが書かれています。このような豆腐の人気で、豆腐ステーキをはじめ、豆腐のサラダなどもよく食べられるようになってきました。
     これは、厚揚げを油抜きした後、さいころ状に切り、他の野菜などとともにしょうゆドレッシングをかけて食べるのです。
     豆腐のままではこわれるので厚揚げを使うところなどちょっとしたアイデアだと思います。
     大豆のほかに注目されたのは米のタンパク質です。
     これは、アメリカでは今にはじまったことではなく、第二次大戦後すぐに米のタンパク質の価値を認めていました。
     それが、研究が進むにつれて、これも植物タンパクとして非常によいものであることがわかってきたのです。 動脈硬化の予防に そらから魚のタンパク質です。これは、やはり、動脈硬化を防止する何かがあることも知られてきました。
     こういったタンパク質は、各種の実験により、動脈硬化の予防とともに、血管をしなやかにすることで、動脈硬化に付随する疾患を防止する働きのあることが知られてきたのです。
     タンパク質の栄養的価値を示すタンパク価という数字では、これらのタンパク質は必ずしも一般の動物タンパクより高いというものではありません。しかし、別の面でこういったタンパク質をとることが必要であることが知られてきたのです。つまり、動物タンパクも大事だが、植物タンパクも、質のよいものをとる必要があり、魚のタンパク質をこれに加えることが非常によい結果をもたらすことがわかったのです。
     日本人が長寿である原因の一端がこういった日本で今まで食べてきた食品中にあるということが知られるようになるとともに、とくに動脈硬化による疾患の多いアメリカなどでは、それにとびついたということです。
     食品はいろいろ多種類とった方がよいということは、タンパク質食品にもいえることなのです。

    (河野友美)
    (56・12・11 サンケイ)


7-3. 質問箱 リンゴを入れると


     リンゴを入れるとビタミンCがこわれるそうですが?


     リンゴにはCをこわす酵素があり、一緒にすりつぶすとナッパのCもこわれます。ニンジンやキウリにも同じ酵素があります。


7-4. 繊維

     医学博士 遠藤 仁郎 

     繊維ことに植物繊維の大切なこと、現在の邦食には非常に乏しくなっていることは、今ではもうよく知られていると思うが、参考までに、主な植物性食品の繊維量を日本食品成分表(4訂)からぬき出してみた。
     なお、望ましい繊維の1日量は、総量20〜30gといわれている。

    パセリ1.5%
    大根葉1.1%
    カブ葉0.9%
    ミツバ0.9%
    ワケギ0.9%
    京菜0.8%
    コマツナ0.8%
    ホウレンソウ0.8%
    ネギ0.8%
    セリ0.8%
    キャベツ0.6%
    ハクサイ0.4%
    チシャ0.4%
    青汁0.26〜0.29%
    ヨモギ2.2%
    ナズナ1.1%
    ヨメナ0.5%
    ワラビ1.3%
    タケノコ0.7%
    フキ0.6%
    トマト0.4%
    エンドウ0.8%
    ソラマメ0.8%
    サツマイモ0.7%
    サトイモ0.5%
    ジャガイモ0.4%
    玄米1.0%0.4%
    半搗0.6%0.3%
    0.3%0.1%



    ゴボウ1.4%
    ニンジン1.0%
    ラッキョウ0.8%
    大根0.6%
    カブ0.5%
    タマネギ0.5%
    カボチャ1.0%
    ピーマン0.8%
    ナス0.7%
    キウリ0.4%
    小麦粉0.2〜0.3%
    食パン0.1%
    ウドン0.1%
    押シ麦(七分搗)0.7%
    ハッタイ粉1.5%
    ソバ粉(全層)1.0%
    ソバ0.2%
    トウモロコシスイートコーン1.2%
    モロコシ(玄)1.7%
    〃(精)0.4%


7-5. (初期の旧稿から) 疎開児童の保健指導(2)

     一番大きな問題は食のこと。
     どんなものを、どれだけ、どう食わせるか。
     食糧不足の折柄ではあるが、子供は頑健にそだてねばならぬ。食養の合理化が真剣に検討されねばならぬ。

    熱量・蛋白質
     主食330gでは、熱量は玄米でも白米でも精々1200カロリー。
     蛋白質20〜25g。
     脂肪玄米7g、白米2g。
     勿論何れも充分とはいえない。
     雑穀を補えば、熱量を増し蛋白質・脂肪も幾分増加せしめることは出来る。
     しかしながら、穀類の蛋白質は質的に劣っている。
     重要アミノ酸の含量が少ない。
     ために相当大量を摂らなければこれを充すことは出来ぬ。
     もっとも、大豆・落花生は蛋白質も優れ脂肪も多い。
     生物学的に優れている動物蛋白を以てすれば、肉類100gで蛋白は概ね20gを増し、脂肪5〜8。多いものでは25g。熱量また100〜150。脂肪に富むものでは300カロリーに達する。

    無機質とビタミン
     所が、注意しなければならぬのは無機質及びビタミンで、発育旺な学童にとって大切なものは、決して従来力説されていた熱量や蛋白質ばかりではなく、無機質就中石灰、ならびにビタミン等の充分なる供給が不可欠である。

    石灰
     石灰の重要性は、骨骼の大部分が燐酸石灰より成る点からも理解されよう。
     あたかも壁土の如きで、石灰が充分なれば堅固な壁となるが、これが不足すれば脆弱なるを免かれないと同じである。
     石灰の吸収利用は、食餌中の石灰対燐酸比が1:2なる際最も良く、燐酸の過多は石灰の利用を不良ならしめることは注意せねばならぬ。
     通常成人で石灰1g燐酸1.5gとされているが、発育ざかりの学童では更に多量が必要である。
     所が玄米330g中の石灰は0.175g。
     白米で0.125g。燐酸は玄米2.544g、白米1,386gで、石灰は絶対量の少ない上燐酸との比率が不利なため吸収は不良。
     更に塩基には乏しいし、殊に白米ではビタミンB欠乏による含水炭素の酸性中間産物も与って、血液は甚しく酸性に偏り、ために石灰喪失を増すこととなり、石灰の欠乏は甚だ著しい。
     この関係は雑穀類でも同様である。
     動物食では、例えば牛肉の石灰0.009に対し燐酸0.516g。
     鶏肉で石灰痕跡、燐酸0.360g。
     イワシ0.218に対し0.47g。
     マグロ0.373に対し0.811。
     獣鳥肉では穀物と殆んど同様。魚肉は稍よろしい。
     殊にワカサギの如き小魚で骨ともに用いうるものでは石灰1.055に対し燐酸1.554で、非常によい。
     で、食わすなら小魚に限るということになる。
     なお、石灰の作用は、石灰対苦土比によって影響され、その間に一定の比率あるを要する。
     もっとも、その確実な数字はあげられておらぬ。
     乳児の最良唯一の食品である乳汁では石灰8〜9に対し苦土1であり、血液では3:1である点から、少なくとも苦土は石灰より少なきを可とすると考えられる。
     米では、ラーマンによれば(もっともこの数字は余り確でないようであるが)、石灰0.0268、苦土0.1092。
     獣肉で0.0308対0.0351。
     鳥肉0.0439対0.0560。
     魚肉0.2442対0.0627で、魚肉ではよいが他は何れも苦土が多い。
     卵は石灰に乏しく(雛の発育には卵殻から摂る)、燐酸大(0.093対0.588)、石灰・苦土比0.1222対0.128。
     乳汁は動物食品中石灰に富む唯一のもので、石灰0.185、燐酸0.243。
     石灰・苦土比0.1645対0.0186。
     ただし石灰は加熱処理により難溶性となり、利用を妨げられる点注意を要する。
     また、穀肉食では塩基が欠乏しているが、生体の諸機能は、体液が微アルカリ性なる際最も活溌に行われるもので、これが酸性に傾く場合、代謝は不完全となり、酸性分の中和に要するアンモニアを生成するため過剰の蛋白質が分解され、その特殊力学効果のため爾他栄養素の消費また亢進することとなり、甚しい浪費が行われる。
     すなわち、穀肉食では大食せねばならぬ結果となり、大食すれば、その量による害はもとより、蛋白質過食は腸管内及び組織内で多量の有害分を生ずる。
     他の栄養素からも中間有害産物が出来る。
     また、酸過剰の直接影響として貯蔵アルカリたる骨質内の石灰が奪取されることともなる。

    ビタミン
     ビタミン殊にA・B・C・Dが発育旺盛な児童に極めて大切なことは言を後たぬ。
     もっともDは日光直射を受けさえすれば特に補給の要はない。
     穀物にはA・Cは殆んどない。
     Bは全穀を用うれば充分の量があるが、精白するだけ減ずる。
     米では玄米飯ではまず必要量がある。しかし白米飯には甚だ乏しい。
     雑穀類また同様。肉類でもA・Cはまず皆無に等しい。
     Bはあるが大したものではない。卵はA及び殊にDに富むが、Bは少なく、Cはない。
     乳汁にはすべてのビタミンがあるが、絶対量が少なく、加熱によってCは概ね失われている。
     かような次第で、通常所謂栄養食として児童によろこばれている穀肉食は、意外にも甚しく不完全。
     従って、不健康食であることがわかろう。
     すなわち、熱量に富み、蛋白質・脂肪も充分であるが、無機質は絶対量の少ない上に、石灰は甚だ乏しく、燐酸及び苦土との比が不利であり、塩基に乏しく、ビタミンまた甚だ不完全である。

    (つづく)


7-6. ビタミンE

     医学博士 遠藤 仁郎 

     動脉硬化を防ぎ、延命効果があるとか、制癌的にもはたらくというので、いまや小麦胚芽ブームといったところなので、少々古い本だが昭和31年版の「ビタミン学」でしらべてみた。
     一般に食物油に多く、とくに多いのが小麦胚芽油と大豆油。動物性脂肪には少ない。主食品 米麦とも精製品ほど少ない。

      芋類
         ジャガイモには少ないが、サツマイモには主食品中もっとも多い。

      蛋白食品
         獣鳥肉には少なく、ウナギには多い。
         牛乳には少なく、卵にはやや多い。

         落花生
           かなり多い。
         大豆
           記載がないがその油に多いのだから豆にも多いにそういあるまい。

      果物
         一般に少ない。

      野菜
         有色菜ことに緑葉類に多く、ことにケールはずばぬけている。


     右のうち、ケール、サツマイモに多いことは、とくに注目されてよかろう。ケールには、小麦胚芽の約1/4、サツマイモには1/8あるのだから、ケール100gには小麦胚芽の20g、サツマイモには10gに相当することになる。
     また、大豆にも相当あるだろうから、サツマイモ・大豆・ケールのイモ・マメ・ナッパ食は、この点からも、すぐれているし、青汁の材料としてのケールはやはり第一級といってよいわけだ。
     なお一日所要量は30mgといわれている。(58・1)
     
     ビタミンE   (mg%)  
    小麦胚芽油 150〜420  
    大 豆 油 120〜180  
    米 糠 油  91     
    玉蜀黍油   88     
    落花生油   22     
    胡 麻 油  18     
    菜 種 油  11     
    オリーブ油   7     
    ヤ シ 脂   3     
    マーガリン  30     
    ラ ー ド   7     
    バ タ ー   2.4    
    米   白   0.4〜0.57 
      玄     2.4    
    小 麦 粉   1.2〜3.4  
    歩止り 70   1.7    
     〃  90   2.7    
    小麦 胚芽  27.0〜30.5
    大   麦   3.2〜5.2  
    ジャガイモ   0.06〜0.1
    サツマイモ   4.0    
    牛   肉   0.63    
    豚   肉   0.71    
    鶏   肉   0.25    
    ウ ナ ギ   4.8    
    牛   乳   0.02〜0.12
    鶏   卵   2.0〜3.0  
    大   豆  ―      
    落 花 生   9.3〜9.5  
    オレンジ    0.24    
    バ ナ ナ   0.40    
    リ ン ゴ   0.74    
    カ   ブ   0.02    
    ダイコン    0.04    
    ニンジン    0.45    
    タマネギ    0.20    
    ト マ ト   0.36    
    キャベツ    0.11    
    ダイコン葉   0.85〜1.08
    ホウレンソウ   1.7    
    カ ブ 葉   2.3    
    パ セ リ   5.5    
    ケ ー ル   8.0    


7-7. 書無きに如かず

     医学博士 遠藤 仁郎 

    四日市の中山さんから、

    「最近ケールを配達してもらって、青汁を飲みだしましたが、青汁に関した知識を得たいと思って本屋をのぞいています。そのうちに、バーバラ寺岡さんの生野菜に関する本の中に、“アクは体によくないこと、毒として作用すること”。また、“キャベツ(ケール)にはベンツピレンとかいう発癌物質があって、生で食べない方がよいこと”、などが載っていました。このことについて簡単に説明していただけるなら幸いです。」
    という手紙がきた。
    「大デタラメです。少しも心配ありません。」
    と簡単に返事しておいたが、55年出版の拙著“生涯青汁”にのせている、これらに関する記事(アクについては169ページ、発癌性については170ページ)は次のようだ。

    「アクのこと」

     青汁にはアクがあるからよくない、という人があるが、という質問にたいする私の答。
     先年、銀座のクッキングスクールの校長先生がとなえられた「青汁有毒説」も、アクが強いからというのだった。ところで、このアクなるものだが、その本体ははっきりしない。ただ料理するにあたって、いやな色や味が出ると、それを、なんとのうアクとよんでいるにすぎないようだ。
     青汁のばあいも、材料によって、かなりアクがつよいと感じられるものがある。
     しかし、もともと毒のないものばかりを材料にしているのだから、それから出るアクだけに毒があろう筈はない。現に、動物は、生涯そういう草を食っていて元気でいる。
     人間は、それを、すったり、もんだり、しぼったりするので、出てくるアクが気になるのだが、このアクもこめての草全体が、自然からあたえられた大切な栄養食品なんだ。ただ、見た目や舌の感じだけから、有害だ、有毒だときめつけるのは、妄説も甚しい。
     アクは、決して「悪」ではなく、むしろ「善」だ(大切な成分の一部だから)といってよいだろう。
     アクの強いものでも少しも差支ないし、アクぬきする必要ももちろんない。
     青汁にしてアクが気になれば、葉そのままを食べればよい、チシャやシソの葉など、そのよい例だ。

    ケールに癌の危険はない

     さいきん、ケールには硝酸塩が多いので癌になる危険があると、どこかの大学教授が発表されたという。まことにショッキングなニュースが2、3の新聞に出た。
     その切り抜きとともに、これについての私の見解をもとめる手紙が数通とどいたが、なかには、惜しいことに、青汁を飲むのをやめたとか、せっかく立派にそだっているケールを切り捨ててしまった、とも書いてあった。

     食べ物の中の硝酸塩は、そのままでは別に何の害もない。しかし、それが還元されて亜硝酸塩になると、アミン(動物食品や薬などにいくらでもある)と結合してニトロサミンができ、その中には発癌性のものがある。
     そこで、硝酸塩の多いものを食べると癌になるおそれがある、ということになる。
     ところで硝酸塩は、硝酸塩肥料や窒素肥料をつかった農作物には、野菜・果物その他のすべてに多いので、決してケールだけに限られてはいない(24D[除草剤]でも多くなるというから米にもきっと少なくないだろう)。

     また、動物食品、ことにその加工品には、肉の発色(たとえばハムの淡紅色を出すため)や、殺菌(ことにポツリヌス菌にたいし)の目的に添加されている。
     そして、ハム、ソーセージはもとより、チーズ、塩蔵魚介、タラコ、乾物や燻製品などにはニトロサミンさえも検出されている。

     しかし、たとえ硝酸塩があっても、これが還元されて亜硝酸にならなければ、発癌の心配はないわけだが、この還元作用は、食品を冷蔵することと、ビタミンCとで妨げられることがわかっている。
     すなわち、2〜4度の低温では亜硝酸への還元作用がとまるので、発癌性ニトロサミンもできない。
     欧米先進国で胃癌がへったのは、そういう性能のよい冷蔵庫や冷凍食品が普及したためだ、といわれている。

     ビタミンCにも、おなじ作用があるので、Cが多いだけでもこの心配がなくなるわけだが、すべての食品中もっともCにとんでいるのは良質ナッパ類だ。
     だから、硝酸塩があっても、Cの多いケールその他の良質ナッパのばあい、Cの少ないその他の農作物や、全然Cのない穀・肉・魚・乳製品などのばあいにくらべ、亜硝酸、したがって発癌性ニトロサミンのできる可能性は、ずっと少ないか、全然ないともいえよう(後略)。

     さて、この硝酸塩の問題は実際にありうることだが、バーバラ先生のいわれるベンツピレンはどうだろう?
     ベンツピレンは、タバコの煙や焼魚、焼肉のコゲなどにある有力な発癌物質の一つだが、本当にキャベツやケールにあるのだろうか?
     私にはどうも信じられない。また、たとえあるとしても、この発癌性が、ケールその他の生野菜汁で消えるという実験的証明のあることを、バーバラ先生ともあろうもの、ご存じない筈もなかろう。
     だのに、“生で食べない方がよい”、といわれるにいたっては、まさに噴飯もの。大デタラメもいいところではなかろうか。それはともあれ、いかに言論自由の世の中とはいえ、こういう書物が堂々まかり通っていることは、まことに迷惑千万な話。全く、“悉く書を信ずれば書無きに如かず(孟子)”だ、とつくづく思う。
    (62・5)


7-8. ゲルマニウム中毒に注意

     ゲルマニウムは、健康に対する影響に関して、その良い効果も悪い効果も十分な科学的根拠がないまま、健康増進や滋養強壮剤として使われ、いわゆる“健康食品”として、市販されている。
     その成分は、酸化ゲルマニウム、有機ゲルマニウム、およびスピルリナ藻体成分に大きく分けられ、現在のところ、わが国だけで約60社が、飲料水、ドリンク剤、錠剤、カプセル、粒子、顆粒、粉末、水溶液として市販しており、愛用者はかなり多数にのぼると推定されている。
     最近、このようなゲルマニウム含有健康食品を長期間服用したことによると思われる腎不全を主症状とする中毒例が、日本各地から、少しずつ報告されるようになってきた。
     男女、年齢を問わず、主症状は原因不明の腎不全、筋力低下および筋萎縮、食欲不振、嘔吐、体重減少、るいそう、および貧血を共通して示し、そのほか全身倦怠、末梢神経障害、四肢のしびれが高頻度にみられる。

    (日本医師会雑誌 昭和63年3月1日号より)


7-9. 質問箱 青汁をつくるとき泡が……


     青汁をつくるとき泡がたくさんできます。あれは飲むんですか、捨てるんですか?


     飲んでもよし、飲まんでもよし。お好きなように。まあビールの泡みたいなものです。多少成分もありますから勿体ないといえば、いえないでもありませんが。


7-10. 大豆食品の成分

     大豆納豆黄粉豆乳豆腐オカラ 
    熱量417180200437467789カロリー
    蛋白質35.316.616.535.53.66.84.8
    脂肪19.09.010.023.42.05.03.6
    糖質23.97.69.826.42.90.86.4
    繊維4.52.12.34.60.23.3
    カルシウム24070901201003.3mg
    9.42.03.39.21.21.41.2
    ビタミンA0000000国際単位
       B10.830.220.070.760.030.110mg
       B20.300.090.500.260.020.030.04
       C 0000000
    備考  糸引  木綿  


7-11. 虫歯予防のためだけではない

    大阪・アップル歯科医 Y.T. 

    大切なカルシウム
     カルシウムというと、骨や歯のことを思いうかべる人が多いことでしょう。
     たしかに、体内のカルシウムの99%は骨や歯の中にあります。しかし、残りの1%が血液や軟らかい組織の中できわめて重要な働きをしていることは、残念ながら、あまり知られていないようです。
     そのひとつは筋肉への影響です。カルシウムの不足によって子宮の発育が抑制されると共に、不妊や、流・早産の原因にもなる、これは子宮筋への影響の結果です。
     同じように眼の水晶体を調節する筋組織にカルシウム不足が影響して、最近の子供に多い近視を誘発するとも言われています。
     神経組織への影響は更に深刻です。カルシウム不足は精神を不安定にします。
     戦前、日本の刑務所では食事の中にカルシウム剤を混入していたそうで、これにより囚人間の無用の抗争を少なくすることが出来たといいます。
     ネズミを使った実験で、カルシウム抜きの餌で飼育しますとたいへん凶暴になり、手を出すとかみついてくるそうです。
     数年来、社会問題となっている家庭内暴力や校内暴力、いじめなどは、子供たちの食生活が原因の中の大きな部分をしめているのではないでしょうか?
     横浜と大阪で、中学生が浮浪生活者をおそうという、まことに後味の悪い事件が続発しましたが、いらいらと落ちつかず、歯をむき出してかみついてくるカルシウム不足のネズミとイメージが重なってくるようです。
     一体、この中学生たちはどんなものを食べ、飲んでいたのでしょうか?
     虫歯、骨折、近視、側彎(そくわん)、無気力、無関心、暴力、いじめなど、現代の子供たちを特徴づけている諸問題を食べものとのかかわり合いの中で考えてみると、一見、多様な問題のようでありながら、根本的には同じ問題なのだと思わざるを得ないのです。
     虫歯がこわいので、かわいそうだが甘いものを制限するという消極的な考え方ではなく、心も体もすこやかな成人をめざす積極的な育児に取り組めば、自然と虫歯をよせつけない強い歯も育つことでしょう。

    (61・12・13 サンケイ)


7-12. ウマ味元と元気元

     医学博士 遠藤 仁郎 

     いまの食べものは昔のものにくらべマズい。
     もの本来のウマ味がない。
     それを調理でゴマかし、口あたりをよくして食べている。
     そこで、いまの人の味覚は、それに馴されて鈍り、狂い、ゆがめられて、もの本来の自然のウマ味を知る能力を失い、上手に味つけされてさえあれば、何でもよろこんで食べている。
     しかし、まだ人工的のつけ味に荒されていない幼児は、昔ながらの健康自然栽培の野菜やくだものならば喜んで食べるが、いかに見かけは立派でも、一般市販のものには見向きもしない。
     自然のウマ味を知る能力、正しい味覚がまだ残っているからだろう。
     今の野菜やくだもののマズサが、不自然不合理な栽培法――浅耕と化学肥料・農薬の乱用による土壌の荒廃――によるものであることは、このマズイ野菜・くだものも、昔ながらの自然農法――深耕と堆肥を主とする有機肥料――によって簡単にもとの味をとりもどすことができる、ことからも明らかだ。
     この自然のウマ味のもと(ウマ味元)は何だろうか。

    ウマ味元
     自然の土壌は、大地のミネラルと、そこに育った植物、および、それを食う細菌はじめすべての生物の排泄物や遺体の腐殖、分解されたものからなりたっており、堆肥はそれを模倣したものだから、ウマ味のもとはそこにあるにそういない。
     それは、いま、最先端農法といわれている水耕栽培をかんがえてみると、よくわかるような気がする。
     これでは、大地の自然からもはなれてすべて人工的。
     科学的分析によって必要とされるすべての成分が完全に配合された肥液に培われ、環境その他の諸条件また科学的に整備、調節されている。
     そして、事実、外観(大きさ、形)といい、色つやといい、まことに見事な作物が、時をえらばず、しかも大量に生産されるという理想的の栽培法ともてはやされており、やがては、何もかもこうした工場生産になってしまうかも知れない、という勢のようだ。
     だが、作物の生命というべき肝心の味はまったくダメ。
     本当のウマ味はまるでなく、化肥栽培物よりもさらにマズい、といわれる。
     これらのことがらは、自然の本当のウマ味元が自然の健康土壌にあり、しかも、科学的に完全とされている人工配合肥料からはしめ出されている未知の成分であることをしめすものといってよかろう。

    健康のもと(元気元)
     さて、これとよく似通った興味はある事実が医学方面にある。
     その一つは保健薬としてミネラル剤やビタミン剤をのんだり注射されるが、これは化肥栽培にあたるもの。しかし、これだけではどうしても本当の健康はえられない。
     いま一つは、科学的に完全な栄養剤としてさかんに行われている点滴注射栄養。これは水耕栽培にあたるものだが、外傷や手術あるいは食糧不足など急場の栄養補給には、たしかに素晴らしい効果をしめしている。
     けれども、長期にわたるときは、体重や血液など計測できる物量的要素は正常に保たれているに拘らず、だるい、しんどい、疲れやすいなど活力・気力・元気(本当の健康感)といった科学的に計量できない感覚的要素(味に相当する)に欠陥を生ずる。
     ところが、このいずれのばあいもが青汁をのむことによって、いとも簡単に解決し、爽快感あふれる元気いっぱいの健康体になる。
     この事実は、つまり、ナッパ・青汁の中に、科学的に明らかにされている、したがって薬にもなっている栄養素のほかに、まだわからない、しかも本当の健康のもとになる成分、元気元があることをしめすものではないだろうか。
     すなわち、ウマ味のもと(ウマ味元)は、緑葉からできた健康土壌の中の、そして、本当の健康のもと(元気元)はナッパ・青汁の中の、いずれも未知成分とかんがえられるわけだが、この二つは、どうも、同じものでないか。
     またナッパ・青汁の毒消し効果や、大量の奇蹟的効果のもとも、やはりそれでないのか、という気がしてならない。
     昔から“うまいものは身につく”といわれているが、これは、もちろん、つけ味のうまさではなく、自然のうま味をいうのだが、これこそ、まさにウマ味元と元気元との関係をいいあらわしているのではあるまいか。

    (62・11)


7-13. 質問箱 ビタミン過剰


     青汁を多量にのんでビタミン過剰にならないか


     青汁を飲んで過剰になる栄養素はビタミンAとCとですが、Cはいくら多すぎても、残余は腎臓から排出されてしまうので、全然問題はありません。
     しかしビタミンAはすぎると有害だといわれます(ビタミンA過剰症)。
     けれどもそれは、次のような特別の場合を除き、私どもの普通の食物からは、まずありえないことです。

     北極グマや北極ギツネの肝臓を食べると起こるそうです。
     これらの動物の肝臓の中にはものすごく大量のビタミンAがあるからです。
     エスキモー人はけっして食べないのですが、探検隊の人が彼らの忠告を無視して食べて中毒したことがあるそうです。
     こういう例外を除き一般の食品でそれほど大量に含まれているものは、まずありません。
     普通に見られる中毒例の多くは、高単位のビタミンAのはいった糖衣錠などを、子供がお菓子とまちがえて食べたとか、神経質な母親が弱い子どもを早く丈夫にしようとして、むやみに与えた、とかいうような場合に限られています。
     また、過剰症が心配されるビタミンAは、純粋のビタミンAのことで、カロチン(これはプロビタミンAといって、ビタミンAの前段階のもので、体内でビタミンAになるもの)では、いかに大量にとっても過剰症は起こりません。
     ところでケール青汁の中のビタミンAは、このカロチン(プロビタミンA)なのです。
     ですから、青汁をいくらたくさん飲んでも、けっしてビタミンA過剰症になる心配はありません。


7-14. 傷の治りと亜鉛

     痕跡成分の亜鉛は皮膚に多いが、不足すると傷の治りが悪くなり、出来る瘢痕はよわく、傷つきやすい。
     治りにくい慢性の傷のあるものについて調べてみると、亜鉛の不足しているものが少なくない。
     亜鉛が不足するのは、土壌の荒廃、耕転不十分、化学肥料の乱用、飼料の不自然などのため、食品中の含有量がへって来ていること。
     その食品の加工(精製や調理)によって、たとえば、精白・製粉で歩留りが少なくなっていること、分厚く皮をむくこと、皮や内臓を捨て煮汁を捨てることなどで、さらに乏しくなっていること。
     また、亜鉛メッキの水道管や容器の使用が少なくなったこと。
     などによるといわれている。


7-15. 大豆食品の成分

     大豆納豆黄粉豆乳豆腐オカラ 
    熱量417180200437467789カロリー
    蛋白質35.316.616.535.53.66.84.8
    脂肪19.09.010.023.42.05.03.6
    糖質23.97.69.826.42.90.86.4
    繊維4.52.12.34.60.23.3
    カルシウム24070901201003.3mg
    9.42.03.39.21.21.41.2
    ビタミンA0000000国際単位
       B10.830.220.070.760.030.110mg
       B20.300.090.500.260.020.030.04
       C 0000000
    備考  糸引  木綿  


7-16. むかし話(初期の旧稿から) 緑葉の活用

     医学博士 遠藤 仁郎 

     お手紙有難う。緑葉療法に就てのご意見至極ごもっともと考えます。
     しかし、田舎だから、食糧に困っておらぬから、その食養が正しいとは言えない。
     倉敷や私の郷里での経験は明かにそれを示しているし、当地(も山の中だが)での観察でも同様で、農家に於ても多くの人々の食は不完全であって、緑葉の活用は、食糧不足勝ちの都市は勿論のこと、田舎でも同様重要であることを痛感しています。
     また、緑葉療法の効果も同様極めて顕著なものがあります。
     同じ言葉を繰返すようですが重ねてその所以を記してご参考に供します。

     疾病の原因には内外両因があり、すべて疾病が発生するためには、外因の他に必ず同時に内因が存在する。
     内因の由来は先天性素質と後天性要約であって、後天性要約はそれのみでも、よく病的現象を招来し得るし、少なくとも先天性薄弱を増強し、その病的変化の進行を促進する。
     而して斯る要約は畢竟するに代謝異常による体液の変調と考えることが出来る。
     体液変調などと言えば如何にも古典的であり、不明確・非科学的・遁辞的表現なるかの如く考えられ勝ちであるが、この想定は多数の疾患の発生病理の理解のために止むを得ぬ仮説である。

     一例を示せば、京府大飯塚教授が糖尿病の原因として未知の有毒物質の存在を想定しておらるるが如きはすなわちこれである。
     而して同様の事実は、すべての病的素因の原因として考えることが出来る。
     勿論、その原因及び物質は、恐らく極めて多種多様で、既知のものの他、未知物質また少なくないであろう。
     兎も角、かかる有毒因子の存在により、諸組織・諸臓器の機能減弱、遂には器質的変化を来し、その結果たる代謝・解毒・排泄機能の低下は、更に有毒物の生成・蓄積を齎らし、一層体液変調を増強し、いよいよ生体活力・抵抗力を減退せしむることとなる。

     これが実証的表現の一として赤血球直径の変化がある。
     例えば糖尿病で、症状顕著なる際、直径は増大し、軽快とともに縮小、正常に復す。
     同様のことはその他の病的状態でも認められている。
     従って、諸病的状態の治療に当って、かかる体液変調の軽減・是正を図ることが根本的意義を有すること。
     旧医方病理の原理が悪血、お毒にあり、その療法の基本たる所謂攻撃(汗吐下)法の排泄療法は、この意味において極めて合目的的と謂うべきものなることも理解されよう。

     また、運動・皮膚刺戟・肝臓機能(正しくは網内系機能)の促進等の治効的意義も同様理解される。
     かく治病の根本は体液変化の整調にあり、体液整調の根本は代謝・解毒・排泄機能の促進改善にあり、而してこれが機能運営の根本はこれにあずかる諸組織・諸臓器の正しい栄養にある。
     正しい栄養は、有害分の摂取を除き、主菜養素の完全なる利用を可能ならしめ、ために一般細胞機能は円滑に行われ、旺盛なる代謝能により有害産物の生成を減じ、強力なる解毒能・排泄能は生成せる有害分を速かに解毒・排泄し、以て、体液状態を改善し、可及的正常に保持せしめる。
     すなわち、栄養の合理化は体液整調、従って治病の基本をなすものと称することが出来る。
     正しい栄養は、必要なる熱量・維持蛋白・脂肪量を充し、この主栄養素を処理・利用するに足る充分なるビタミン及び無機質を具有するを要する。

     大体の標準は、平均軽業者にて、

       総熱量2000〜2400カロリー、
       蛋白質50〜60g、
       内少なくとも30%は動物性なること。
       脂肪20〜25g。
       ビタミンA4000〜5000国際単位。
       B11.0〜1.5mg、
       B21.0〜2.0mg。
       C40〜50mg。

     無機質には特に酸・塩基平衡と石灰(カルシウム)並に石灰対燐酸及び苦土(マグネシウム)との関係が重要な意義を有している。
     食餌中の酸基(P・S)・塩基(Na・K・Mg・Cn)平衡は稍塩基の優越を必要とする。
     生体諸機能は体液が稍塩基性なる際最も活発に行われるのであるが、この平衡は代謝・排泄機能によって調節される他、摂取物の酸・塩基含量に左右されることが著しい為である。
     なお酸性食では栄養素が浪費され、熱量・蛋白質ともに多量を要し、また石灰を喪失することが著しい。
     反之、塩基性食では栄養素は節約され、石灰の利用がよい。
     石灰の吸収利用は石灰対燐酸比1:1−2なる際に最も良好。
     食餌中には石灰1g燐酸1.5gを適当とされている。
     また、石灰の作用発揮に対しては石灰対苦土の関係が問題であって、明確な数字はあげられていないが、乳汁中の比は8−9:1であり、血液中の比は3:1であることから見て、すくなくとも苦土は石灰より少量でなければならないと考えられる。

     斯様に、栄養は決して従来考えていた様に主栄養素の量的問題でないことは勿論、質的に完全であるとともに、正しい比率・正しい組合せが必要で、所謂釣合いのとれた食物であることが肝要なのである。
     ところが一般の主食をなす米は、熱量に富み、蛋白質も相当であるが、重要アミノ酸量殊にリジンが乏しいため(人間蛋白100g中のリジン0.65gに対し米蛋白中には僅かに0.86g)可成多量を食わなければ充分でない(農家の一升飯の必要なる所以)。
     また脂肪が乏しい(玄米で約2g白米では0.56g)。
     ビタミンにいたってはA・Cは全然なく、Bも白米では殆んど皆無に等しい。

     無機質では塩基に比し酸基に富み、
     石灰量は甚だ少なく(玄米0.053 白米0.038)、
     燐酸は著しく大量 (玄米0.771 白米0.420)。
     苦土また多く、石灰との比は甚だ不均衡である
    CaOMgOP2O5はLahmannの表によれば
      0.03680.10920.5298
     もっともこの数字は余り正確ではないと言われている。しかし概況を窺うことは出来よう)。

     兎も角、米を主に食うときは蛋白・脂肪は乏しき他、酸性度強きため栄養素の浪費を免かれず、相当大量を摂らねば充分でない。
     しかもビタミンは不足乃至欠如も、石灰の欠乏また著しいというわけで、甚だ不完全極まる食物なることが知られる。

     若し米に不足する重要アミノ酸及び脂肪の給源として動物食(肉)を摂るとすると、熱量また相当増加するが、ビタミン・無機質の関係は殆んど大差が無いのみならず、石灰・燐酸並に苦土の比は一層不利となる。
      (肉のCaOMgOP2O5
        0.03080.03510.4648
       卵では0.12280.01280.4218
     従って、一般に栄養食として賞用されている穀肉食は、熱量・蛋白質・脂肪には有利であるが、ビタミン不足、無機質不均衡は一層高度となり、これまた甚だ不完全である。

     乳汁は動物食品中唯一の完全食品で、すべての栄養素を有し、塩基性、石灰も比較的多いが成人に対しては充分でないし、加熱処理のため溶解性を減じ、ビタミンをまた多く失われる。
     果物・蔬菜類は穀物肉類に不足するビタミン・無機質の補給源であるが、果物・果菜類は一部のものの比較的A・Cに富む他、一般にビタミンが少なく、根茎菜も人参を除き、Aは殆んど無くB・Cも少ない。且つ何れも石灰量が充分でない。
     ところが、葉菜殊に緑葉菜類はすべてのビタミン(A・B・Cは勿論・E・K等も)を有し、石灰量多く燐酸・苦土は反之比較的に少ない。
     しかもその蛋白質は含量こそ少ないが重要アミノ酸の関係は動物蛋白に比して些かも遜色がないという優秀性をしめしている。

      Ca0Mg0P2O5
      林檎 0.02000.04260.0670。
      胡瓜 0.02700.01530.0739。
      大根 0.09290.03740.4350。
      玉葱 0.16190.03290.1228。
      菠薐草 0.24530.13160.2115。
      蒲公英 0.38600.16200.1516。

      リジン 態 窒素 魚肉 7.3%、
       アカザ 9.42%、
       菠薐草 9.55%、
       唐チサ 8.65%、
       白菜 8.11%、
       大根葉 9.69%)

     故に穀食または穀肉食に配するに充分なる緑葉菜を以てすれば、能く主食に不足するビタミン・塩基・石灰を補い得るのみならず、優良アミノ酸の補給源としての意義も重要である。
     しかし、一般での野菜の食べ方を見ると、多くは果・茎・根菜類を嗜好し、葉菜を摂ることは極めて少なく、しかも調理の不合理から有効分の損失の少なくないのが通常であって、折角優秀食品たる野菜類に恵まれている農家でさえ、誤りたる栄養観念に禍され、わざわざ不完全食品となして摂っているという実状である。
     これが補正には、充分の緑葉殊に生鮮葉を用いねばならぬ。生鮮葉には上記の他、諸種の酵素及び未知の有効分の存在も想像され、一般細胞機能の上に及ぼす影響甚だ大なるものがある。

     もっとも緑葉類は元来、粗繊維に富み難消化性であるから、充分咀嚼しなければ有効分の利用は困難である。そこで、調理による破壊、咀嚼不良による損失を伴わない生鮮汁としての利用が最も適当している。
     要之、現在一般の栄養観念はいまだ熱量・蛋白質偏重説にとらわれ、幸い近来ビタミン学説の普及を見たるも、無機質に関する知識は殆んどこれ無きにひとしき有様にて、依然、不完全なる食養を免かれず、体力減弱の因をなしていると考えられる。

     従って生鮮汁の応用は、理論的にすべての疾患によい筈であるが、今までの経験から、最も効果の顕著なのは化膿性疾患(敗血症様のものにもよかった)、創傷治療・肺炎・麻疹・チフス等の急性感染。結核性疾患殊に外科的結核。
     所謂悪血性疾患、老人性疾患、高血圧、動脉硬化、新陳代謝疾患、ロイマ、神経痛、ビタミン欠乏症。所謂戦争浮腫(食餌性浮腫・栄養失調症様症候群)、胃炎・潰傷、便秘、肝疾、腎疾、月経不順。珍らしい経験としては目下観察中で明かには言えないが、青年性の進行性筋萎縮症に試みかなりの効果をみている。

     神経系のみならずすべて退行性変化を伴う慢性疾患は何れも悪血性と称すべきで、体液正常化によって効果をあげうるものと信じている。細菌または寄生虫感染の懼れのない青葉(蔬菜類の他すべて食用し得るもの)を清洗し、摺りまたは搗き潰し、圧搾汁とし、少量の油脂を加え、適宜調味(通常その要なし)して、直ちに用う。
     量に制限は無く多量なる程よいが、通常1回量50〜100g1日1〜数回。
     乳汁・面湯等に混ずるのも便利である。
    (20・6・23)人吉東間校にて


7-17. 科学的完全食と自然の完全食

     医学博士 遠藤 仁郎 

     健康のもとは正しい食、完全食。
     必要な栄養素がすべてそろい、その間に正しい調和がとれている食。
     それに、科学的の完全食と自然の完全食とがある。

     科学的完全食は、栄養学によって完全とされているもの。
     それは、大体、

        蛋白質           75g、
        脂 肪           25g、
        糖 質          400g。

     そのカロリー約2000にたいし、
        カルシウム      1.000g、
        ビタミンA(カロチン)    3mg、
           B1          1mg、
           B2          2mg、
            C        100mg
     で、うまくバランスがとれている。
     つまり完全食だとされている。

     自然の完全食は、自然の野生の動物の食。
     そのうち、われわれの体制にもっとも近いものは草食獣の食。草木の緑葉。
     かれらは、それを終生食べ、ほかにはなにも食べない。
     自然のもっとも正しい完全食。

     この緑葉は栄養的にどんなものだろうか。
     斉藤道雄氏著飼科学(昭23年版)によると野草の栄養価は(原著にはトンであらわされているが、便宜上トンをgとすると)、
       生草 300gの栄養価は、
        蛋白質           10.2g、
        脂 肪            2.5g、
        糖 質           50g、

        カルシウム      1.130g、
        カロチン          43mg、
           B1          2mg、
           B2          9mg、
            C         31mg。

     科学的完全食の数字に近づけるため、7.5倍してみると、
        蛋白質           76.5g、
        脂 肪           18.75g、
        糖 質          375g

     となり、そのカロリーは殆んど同じ2000。
     これに対し、

        カルシウム      8.500g、
        カロチン         322mg、
          B1          15mg、
          B2         675mg、
           C         233mg。

     これでみると、同じカロリー、蛋白質にたいするミネラル・ビタミンの量に大変なちがいがある(もっとも少ないものでも5倍、多いものでは100倍以上)。

     同じ完全食なのに、なぜ、これだけちがうのだろうか。

     一つには、食構成によるのだろう。
     われわれの科学的完全食では、カロリー・蛋白質にとみ、繊維に乏しい、穀・肉・糖などにかたむいているが、自然の完全食である草木の緑葉はミネラル・ビタミンにはとんでいる上、繊維が多い(約10%)。

     そこで必要なカロリー・蛋白質をみたすためには、いきおい食量が多くなる。それだけミネラル・ビタミンは多くなるわけだが、かれらが草を食うこと自体については、なんら特別な理窟があってのことではない。
     強いていうならば、かれらが地球上に現われた時、そこに草があった。
     いや、それしか食うものがなかった。
     その草が、たまたま非常にミネラルやビタミンにとんだものであった。というだけのことにしかすぎないだろう。

     では、なぜ、草にミネラル・ビタミンが多いのか。
     それには、それぞれ理由のあることであろう。

     それはともかく、同じ完全食でありながら、ミネラル・ビタミンの大量(栄養のバランスをとるためにしては、あまりに多い)をとっている動物のたくましい生命力・健康力に反し、ミネラル・ビタミンの少ない科学的完全食をとっているわれわれが、病気の器といわれるほどに不健康であり、病気の多いこと。
     しかも、それが、ナッパ・青汁食によって防がれ、あるいは、その大量によって、現代医学の力のおよばぬ難病にたいし奇蹟的の効果をしめすこと、などの事実からすれば、バランスをとるだけの科学的完全食にくらべ、自然の完全食の方がはるかにすぐれ、なにか、神秘的な自然の力といった超科学的の力があるにそういないとかんがえられること。

     したがって、われわれも、もっとナッパをとり、ミネラル・ビタミンに十分余猶のある食、すなわち、自然の完全食に近づけることが望ましいことを教えているのではないだろうか。
    (平成2・8)




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