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3-1. 植物性脂肪の効用

    脳卒中・心臓病、植物性脂肪で防げる
     国立栄養研実験で常識破る。コレステロール急減、治療にも手がかり。脳卒中や心臓病など、動脈硬化が原因の病気は、米などでんぷん過多で起きる。
     しかし、こめ油など植物性脂肪を食べると発病が防げるばかりか、治療効果まである。わが国死因のトップをいく脳卒中や心臓病とその食生活との関係を調べた研究が、このほど厚生省国立栄養研究所でまとまった。
     これは、昭和30年から行なった各地の実態調査と、動物や人体実験のデータをまとめたもので、脂肪食がいけないといわれてきた脳卒中や心臓病のこれまでの“常識”を打ち破るもの。
     狭心症の発作を起した人がこの油だけ毎日食べ、2ヶ月足らずでなおった例もあり、脳卒中・心臓病・高血圧症に対する新しい食事療法のキメ手としてこの研究は注目されている。

     脳卒中は昭和25年ごろから結核を抜いてわが国死因のトップになり。昨年は17万2129人がこのために死んだ。心臓病も、同じく33年からガンについで死因第3位になり、昨年の死者は74720人。不思議なことに、わが国では食生活の進んだ都市部より農村部の方が死亡率が高く、山形・秋田県など東北地方と、長野・山梨県などの死亡率は東京や大阪などより2倍以上の高率を示している。

     国立栄養研究所では、こうしたナゾを解くため、毎年東北各県と長野・山梨県の農村に出張、合計約2千人の人たちの栄食と病気の関係を調べた。
     この結果、これらの農村では、主食偏重のため、たんぱく質やビタミンなど、でんぷん以外の栄養素が不足し、労働が激しいこともあって、農民の多くが外見も身体そのものも早く老化し、年齢以上に動脈硬化が進んでいることがわかった。

     たとえば、岩手県のある部落では、一日一人当り全カロリーの8割以上を米食などのでんぷんでとっており、山形県の調査では、20代の青年が50代の人より血液中のコレステロールが多くひとつの老化の目安である副腎ホルモンは、40代の壮年の人が都会の健康な60代と同じ値だった。
     また、こうした農村部で多食されるでんぷんは、体内で牛の油(ヘッド)と同じように、飽和脂肪酸の多い堅い脂肪に転化し、このため、さらに動脈硬化を起しやすい体質にさせていることが、実験で確認された。

     一方、研究所の実験室では、あらゆる脂肪摂取を極力制限した動脈硬化症の病人食が、事実適当なのかどうか、細い実験を行なった。
     方法は、十人以上の健康な女子に、各種の食用油を毎日60グラムずつ一週間与え、血液中のコレステロールの増減を調べるというもの。この実験が、7年間にわたり続けられた。この結果、この油、コーンオイル(とうもろこしからとった油)、サフラワーオイル(紅花の実からとった油)、小麦胚(はい)芽油、サンフラワーオイル(ひまわりの実からとった油)など、植物性食用油を食べた人は、1週間で血液中のコレステロールが10%から17%も減り、大豆油やごま油、植物性マーガリンも若干コレステロールを減らす効果があるとわかった。
     しかし、反対に、天然バターやラード、動物性(ほとんどが鯨油)マーガリンは、17%から25%もコレステロールがふえた。またシロネズミを使った動物実験では、しいたけを毎日5、6個食べたネズミは血液中のコレステロールが12%減り、こんにゃくの粉を5%混ぜたえさを食べたネズミはコレステロールが半分以下となった。

     このほか海草の成分のアルギン、リンゴやミカンの皮に含まれるペクチン、くるみなどの木の実からとった油、各種の食用キノコなど、山の中の“仙人”が食べるような食物性脂肪は、確実に血液中のコレステロールを減らす効果があった。
     これらは、いずれもリノール酸のような不飽和脂肪酸を多量に含む脂肪で、実際に、こうした植物性脂肪を狭心症の発作が起きた人に2ヶ月間毎日与えたところ、はじめ血液中のコレステロールが100C.C.中300ミリグラムあったのが、日本人の標準である200ミリグラムに下がり、症状は消え血圧も目立って低くなったという。

     現在、脳卒中や心臓病など、動脈硬化症の治療法としては、病院でも、患者も安静にさせて、コレステロールの血管付着を防ぐ薬品を与えることなどが行なわれているが、一般には「完治は不可能」という意見が強い。
     こんどの研究は、こうしたむずかしい成人病の治療にひとつの手がかりを与えるもので、栄養研究所の鈴木慎次郎栄養生理部長は、「完全になおるまでには時間がかかるが、いまの段階で、食事療法が最も有効であることは確かだ。30歳を過ぎたら動物性脂肪から植物性脂肪へ食生活を変えてほしい」と言っている。

    (日経 43・8・23)



3-2. 大腸菌と腫瘍

     急性白血病やリンパ肉腫の治療につかわれているものにアスパラギナーゼがある。アミノ酸の一種アスパラギンを分解する酵素。この酵素が腫瘍にきくことがわかったのは、モルモットの血清は、マウス(南京ネズミ)の移植リンパ肉腫の発生を阻止する作用のある、ことが知られたことがきっかけで、その後、モルモットの血清にアスパラギナーゼが大量にあることがわかった、ことに出ている。
     アスパラギナーゼが、なぜ腫瘍にきくかは、まだ明かでないが、腫瘍細胞の栄養源であるLアスパラギンが分解されるためであろう、とされている。
     ところで、この酵素は大腸菌から大量に生産される、という。とすると、正常の腸管に大腸菌が十分にいることは、こうした意味で有利であり、抗生剤や殺菌剤で大腸菌をなくすることには、考慮を要するのではなかろうか。


3-3. 脂肪

     医学博士 遠藤 仁郎 

     バター
     風味はよし、消化はよし、およそ脂肪のうちで、もっとも良質というわけで、その消費量は、近年、ぐんぐんのびているようだ。
     しかし、食べすぎると、血液コレステロールが増し、動脉硬化ことに心臓の血管(冠状動脉)の硬化をおこす。
     また、色をよくするため着色されているし、酸敗その他変質を防ぐために薬剤も添加されている。

     マーガリン
     バターの代用品。
     乳の脂肪以外の食用油脂を乳化し、バター様に硬化させたもの。
     もともと動物脂(牛・豚・鯨など)が主につかわれていたが、しだいに植物油脂(ヤシ脂・大豆油・落花生豆・綿実油・菜種油など)が多くなり、最近では、殆んど植物油脂ばかりでつくられるようになっている。
     風味はバターには及ばないが、ビタミン添加などで栄養的にはバターにくらべ遜色のないものが出来るようになっているらしい。
     しかし、色をつけたり、薬剤(乳化剤、酸敗防止剤など)の添加されていることは同じ。
     また、過ぎれば血管ことに心臓の血管に変性を招くことも同じ。
     元来、マーガリンの主原料である植物油は、ヤシ脂(バターと同じく不飽和脂肪酸に乏しく、血液コレステロールを増す)を除き、不飽和脂肪酸にとんでおり、血液コレステロールを増さないばかりか、むしろ、下げるはたらきがある。
     したがって、動脉硬化をおこす心配がないばかりか、むしろ、それを防ぐ力があるわけだが、液状の油を硬化するための操作(水素添加といって、不飽和の脂肪酸に水素を加えて飽和脂肪酸にかえる操作)によって、バターと同じ性質をおびて来る。
     もっとも、近頃では、マーガリンのこの欠点を除くため、ヤシ脂(飽和脂肪の多い)の量をへらし、液状油(不飽和脂肪酸にとむ)を増したものが出来ているそうだ。
     たとえば、スエーデンでは、もとのマーガリンにはヤシ脂が45%で、不飽和脂肪は6〜8%にすぎなかったが、今では、標準マーガリンで15%、ソフト・マーガリンで30%、液状マーガリンは60%もの不飽和脂肪を含んでいるという。

     牛豚脂
     栄養的には、バターに比べずっと劣る。
     しかも、すぎれば動脉硬化を原因することは同じ。
     旧約レビ記に、「牛・羊・山羊の脂はすべて汝等これを食うべからず」とあるのは、そのためだろうか。
     なお、脂溶性の農薬(DDTなど)がたまっているかも知れない。

     植物油
     ゴマ・大豆・ナタネ・糠・オリーブ・綿実・トウモロコシなどからしぼった油。
     栄養的には脂肪だけで、ビタミンもミネラルもない。
     しかし、これら植物油には、大切な脂肪酸(不飽和脂肪酸)が多くて、動脉硬化の原因とされる血液コレステロールを増さず、まるいは、むしろ低下する作用があることは上記のとおり。
     だから、これら植物油は大いに利用すべきだ。
     しかし、これでも問題が全然ないではない。
     それは、やはり色だが、この場合は着色でなく、色ぬきだ。
     また脱臭にも。子供のころ、神棚や仏前に供える燈明には菜種油をつかっていたが、かなり褐色のつよいものだったし、特異の油臭があった。
     それが、今では、どの油もまるで水のように澄み、色はあっても、ほんの僅かだけだし、臭も全然ない。
     色も臭もがぬいてあるだけだが、問題はその脱色、脱臭法だ。
     現に、昨年おきたカネミの米糠油事件は、脱臭につかわれている薬品が洩れこんでいたためだった。
     脱色でも、骨炭だけでの脱色ならば、問題はないが、実際には危険な薬品がつかわれている疑いがないではない。
     もっとも、たとえそうだとしても、それは極めて僅かだけだろうから、そうやかましくいう必要はない、というのかも知れない。
     けれども、ありとあらゆる食品が加工され、また、あらゆる薬品が加えられている今日のこと。
     たとえ、箇々の食品にある有害分の量は少なかろうとも、少しも安心は出来ない。
     そこで、しぼりとった油よりも、これら油の原料をそのまま、つまり、ゴマ油でなくて、ゴマ。大豆油でなくて大豆。その他、クルミ、ペカン、ナンキンマメ、ナッツ類、カヤの実、松の実、南瓜子、ヒマワリ子などといった、脂肪にとんだものを、そのまま利用することだ。
     むかしから、ゴマ、ナンキンマメ、クルミなどが和え物としてよくつかわれている。
     これを復活することだ。
     雑多な混ぜものがないだけでも、どれだけ安心か知れない。
     それに、脂肪だけでなく、蛋白質もあれば、ミネラル、ビタミンもあるのだから、栄養的にもずっと有利といったものだ。
     なお、最近20年間のアメリカにおける油脂の消費では、バターや動物脂肪がへって、それだけ植物油がふえて来ている。
     そのあぶれ食品がわが国へ輸入され、舶来のバターだ、マーガリンだ(ソフトや液状ものならばともかく)、ラードだ、ヘッドだと、有難がって食用され、昔ながらの健康食は惜気もなく捨てて、欧米流の食(しかも流行おくれの)に転向。
     欧米流の病気(たとえば心筋梗塞=こんな病気は少くとも20〜30年まえまでは殆んど無かった)の急増に悩まされているというのは、何とも馬鹿げた話ではないか。


     また、欧米人に多い大腸癌にバター・マーガリン・牛豚脂といった飽和脂肪酸にとむ脂肪と関係があるらしいし、日本やスエーデンに多い胃癌には、高度に不飽和な脂肪酸にとむ植物油が関係しているのではないか、ともいわれている。
     このごろ、わが国の習慣食の改善のために、もっと脂肪を、という声がたかいようだが、動脉硬化を招く動物脂肪はもとより、その心配のない植物油とて、あまり食べすぎることには問題がないとは、必ずしもいいきれないのではないか。


     熱量蛋白質脂肪カルシウムビタミン 
    B1B2
    バター7210.681.610200.124000.010.03 
    マーガリン7190.281.1100.2Φ××強化したもの
    約4500
    牛脂9010.399.70.42000.070.05 
    植物油884100 
    ゴマ56419.750.963085016.00.500.10 
    キナコ42638.419.21905009.00.400.15 
    ナンキンマメ(炊)57126.348.2573801.90.200.08 
    クルミ62623.160.3932902.40.500.08 
    ペカン69011.072.0452701.90.180.41 
    松の実63414.660.8155506.20.160.40 


3-4. ソテツ

     ソテツの実にも葉にも発癌性がある。
     それはシカシン(Cycasin)という成分があるため。このシカシンは、強力な発癌物質のジメチール・ナイトロサミンと、化学構造がよく似ており、それと全く同じ性質をもっている。
     なお、神経をおかす作用もあり、胎生期の神経系の発育に重大な影響をもっており、筋萎縮性側索硬化症という病気の発生に関係がある、と考えられている。


3-5. 大気中の発癌物質

     工場や暖房のスス、煙、自動車ことにディーゼル車や航空機ことにジェット機の排気ガス(タバコの煙にも)には、強力な発癌物質ベンツビレン、ベンツアントラセン、ナイトロサミンなどがあり、最近の肺癌多発の有力な原因とみなされている。
     原水爆実験の結果生じた発癌性の放射能塵は成層圏にちらばり、しだいに降下している。
     また、山野、田畠に容赦なくふりまかれる農薬のうちにも発癌性のあるものがある。
     例えばDDT。これらは大気だけでなく土壌と水を汚染し、飲料水あるいは農産物から直接に、また、それを飼料とする家畜の供給する食品(乳・卵・肉)、あるいは魚介・海草などを介して人体にとり入れられる可能性がある。


3-6. なま大豆

     大豆には、蛋白分解に関係する酵素が5〜6種類ある。
     その一つに、トリプシン(蛋白分解酵素)の作用を妨げるものがあり、そのため、生大豆をあたえると、実験動物の成長が妨げられる。
     そして、熱をあてると、このはたらきが無くなるので、大豆の栄養価値がたかまる。
     つまり、生の大豆よりは、煮た大豆の方がよいわけで、それには、含水量が20%のばあいは15分蒸すとよいし、含水量60%以上(夜通し水につけた場合)だと、5分間の煮沸で十分だという。
     だから、味噌や納豆や豆腐の造り方は、全く、理窟にかなっているわけだ。
     このように処理した豆乳は、牛乳と同様に栄養価のたかいよい食べものだという。
     また、生大豆には甲状腺腫をつくる作用のあるものがあるが、これも、加熱するか、ヨード添加で防がれる。
     これは、甲状腺のホルモンの生成に干渉して、ヨード必要量が増すためだという。
     その他、生の大豆には、カロチンを酸化し破壊する酵素がある。
     また、生大豆粉または大豆の蛋白は、豚や鶏にセムシを原因するが、これも、加熱でなくなり、ビタミンDを加えてもさけられるそうだ。いまのように、加工食品氾濫の反動として、自然食の必要がやかましくいわれ出して来ると、何でも、生食の方がよいように感じられるが、大豆に関するかぎり、どうも、却って手を加えたものの方がよいようだ。


3-7. 不飽和脂肪酸と癌

     不飽和脂肪酸は、血液のコレステロールを下げ動脉硬化を防ぐ、といわれているが、果して本当かどうか。従来の食と、その脂肪の大部分を不飽和脂肪にかえた食との比較実験が、方々で大々的に行われている。しかし、どうも、はっきりした成績は出ていないようだ。
     また、いかにも、それによって血液コレステロールは下り、心筋梗塞の発生や、それによる死亡もへるけれども、全死亡率には差がなかった、というデータもある。
     これは、不飽和脂肪群に動脉硬化以外の死亡が多いことを示すもので、それには、気管支癌(つまり肺癌)による死亡率が、対照(ふつう食の)群に比べ高いことが与っていたという。
     なお、不飽和脂肪については、日本やスエーデンに胃癌の多い原因との関係もいわれている。


3-8. 袋入り豆腐(包装豆腐)

     材料は大豆油抽出後の大豆粉。グルコノデルタラクトンという薬剤でかため、フリルフラマイド(ニトロフラン化合物)という殺菌剤が入れてある。それで、保存性を延長することが出来るようになった、と得意がっている学者もあるようだ(臨牀栄養 昭45・8月号)。
     しかし、ラクトン系や、ニトロフラン系の化合物には発癌性のあるものが少くない。それに、フリルフラマイドはわが国だけで許可されている、といういわくつきのものだと聞くと、何とも気味が悪い。
     時たまには差支もあるまいが、しょっちう食べるのはいささか問題だろう。


3-9. 痕跡成分

     医学博士 遠藤 仁郎 

     われわれの栄養には、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルなどが、うまくそろい、調和していることが大切であるが、このミネラルには、カルシウム、燐、鉄のほかに、亜鉛、銅、沃素、弗素、バナジウム、マンガン、クローム、モリブデン、コバルト、セレンその他の痕跡成分の必要なことが明らかにされて来ている。
     これらは、いずれも組織内で酵素として働らいており、正常の発育、正常の機能、したがって、健康の維持のために欠くことの出来ない成分であり、その必要量は極めて少く、殆んど有るか無いかの痕跡程度の微量にすぎない(痕跡ミネラル、痕跡成分)。しかもそのある一定(適)量の存在は必要だが、少なすぎても、多すぎてもよくない。

     たとえば、動物実験で、それらを増して行くと、初めは発育も機能も、ともにしだいにさかんになる。
     しかし、さらに増すと、逆に、しだいに衰えはじめ、ついには、停止してしまうようになる。
     なお、銅の作用は亜鉛・鉄・モリブデン、硫酸基によって減殺され、亜鉛の作用と銅・モリブデン・鉄との間にも同様の関係があるし、沃素とコバルトの間には協力関係があるなど、痕跡成分同志の間にも複雑な相互関係がある。
     さて、これら痕跡ミネラルの不足の影響について、従来から知られているものには、

      鉄不足による貧血、
      沃素不足による甲状腺腫、
      弗素不足による小児のウ歯と女性の骨多孔症
    などがある。

     しかし、

      貧血には鉄のほかに銅やコバルトの不足、
      甲状腺腫には沃素のほかコバルトの不足、
      ウ歯には弗素のほかモリブデン・硼素・ストロンチウム・リチウムなども関係すること。
      銅不足で動物の脳や脊髄の変性、
      セレン不足で動物の筋変性、
      亜鉛不足で傷の治りの悪いことと発育不全(小人症)、
      クローム不足で糖代謝の異常(糖尿病傾向)やコレステロール代謝の異常があらわれる

    などの事実も知られている。
     つまり、動物や人間の病気のうちに、痕跡成分の不足ないし欠陥に関連のあるものが少くないことがわかって来たわけだが、こうした関係については、多くの学者によって、さかんに研究されているので、やがて、より詳しい、また、より多くのことがらが解明されるだろう。
     また、このようにはっきりした病変は出ないまでも、抵抗力や体活力に影響をおよぼすだろうことは、痕跡分の欠陥で一般的機能の減衰を来たすことや、癌の多いところには痕跡成分の不足が考えられる、といわれている事実などからも、極めてありそうなことであり、また、現代人の健康度低下とのつながりをしめすものでもあろう。
     いずれにしても、われわれの食べものには、ほかの栄養素とともに、これら痕跡成分が十分(適度)にあり、かつ、正しいバランスが保たれていなければならぬわけだ。
     ところが、どうやら、今日の日常食には、不足がちになっているらしい。
     たとえば、傷の治りにくい患者のうちには亜鉛の不足しているものが少くないそうだが、この不足は、水や食品の亜鉛含量が少くなっているためだという。
     すなわち、水では、亜鉛メッキの水道管や食品容器がつかわれなくなったので、亜鉛のとけこむ機会が減って来たため。(同じことは、鉄や銅についてもいえる)。
     また食品については、農耕(土壌、肥料)や飼料の関係から。
     というのは、食品のミネラルは、その育成される土壌によるわけだが、地質的にある種のミネラルの甚しい不足といった特殊の場合をのぞき、ふつう一般の自然の土壌には、必要な痕跡成分はすべて十分にある。
     しかし、耕地の多くでは、すでに長い間の耕作の結果、栽培物によってとり去られたり、雨水によって流れ去り、あるいは地中深く沈下することによって、表土の痕跡成分はかなり不足して来ており、ために地力低下の原因ともなっている。
     そこで肥料がつかわれるが、むしろ乱用気味の化学肥料には、痕跡成分の乏しいものが多いこと、
     と同時に、酸基(硫酸・燐酸・硝酸基など)が過剰であるため、いっそう痕跡成分の不足を来す結果となっているようだ。
     したがって、そこに育成される植物食品にも、
     また、それを飼料とする動物の供給する食品(肉・卵・乳)にも、
     ともに痕跡成分が乏しくなっている(海産物には豊富)。
     また食品による利用の難易もあり、たとえば、穀類の亜鉛は、それに多いフイチンが吸収を妨げるので、動物食品の亜鉛より利用されにくい。
     イランの小人症は亜鉛の不足によるのだが、かれらの食っているパン(小麦や玉蜀黍の)の総量は西欧なみだ。
     しかし、フイチンのため(また食土の習慣の影響もあるようだが)吸収される亜鉛の量が異常に少いからだ、といわれている。
     精製、調理によっても減る。
     穀類ではミネラル分にとんでいるのは糠の部分やフスマの部分だし、
     芋類や果菜(南瓜・胡瓜などや果物)根菜(大根・蕪・人参・牛蒡など)では皮の部分だがこれらは、いずれも精製あるいは調理の際にとり去られてしまう。
     動物食品でも、ミネラル分は皮膚や内臓・骨に多いのだが、これまた大抵は捨てられる。
     煮汁へ出るミネラルも少くないが、これも多くは捨てられ、ダシは純粋の化学調味料ばかりになってしまっているし、砂糖も塩も精製品ばかり。こうしたところにも痕跡ミネラル不足の原因はあろう。

     けれども、さらに重大なのは、ミネラルのもっともすぐれた供給源である良質ナッパや海藻のとり方が一般に少いことであろう。
     なお、工場・鉱山などの廃水や粉塵によるカドミウム・鉛・水銀などの汚染にも影響される、という。
     つまり、食糧の生産方法や食べ方の近代化・都市化・工業化といった人為的の環境変化(公害ともいえよう)生活様式の不自然化によって、大切な痕跡成分を失っているわけで、おそらくこれが、われわれ現代人の健康を害しているかくれた原因ではあるまいか。
     そこで、これに対処するには、まず、痕跡成分にとんだ食品を生産すること。
     すなわち、耕土はなるべく深耕し、あるいは客土し、また堆肥(山野草木や海藻を主とした)を十分に施す、という自然健康農法に切りかえること。
     そうして得られた農産物と、それを飼料とする家畜、水質汚染のない水域の水産物、といった良質食品をうまく組み合せ、栄養学的に完全な食とすること。
     とともに十分の良質ナッパ(海藻も)をそえること。
     そして、すべての食品はなるべく全体を、しかも、つとめて加工(精製・調理)をさけ、自然のままか、自然にちかいかたちで食べること、が合理的なわけであり、これが、イモ・マメ(大豆・小魚)・ナッパ・青汁といった食べ方で、時には奇績ともいいたいほどの効果をあげることができる所以ではないか、と私どもは考えている。


3-10. 虫歯と痕跡成分

     医学博士 遠藤 仁郎 

     痕跡成分弗素には虫歯を防ぐ効がある。
     飲料水に1PPMの弗素があると、虫歯は半減するという。
     同じく痕跡成分のモリブデンにも同様の効がある。
     ハンガリーに、非常に虫歯の少いところがあるが、そこの水には0・1PPMのモリブデンがあると報告されている。動物実験でも、水に0・1PPMのモリブデンを加えると虫歯が減る。
     また、ニュージーランドにも、同じように虫歯の少いところがあり、そこでは10PPMものモリブデンを含む野菜を食べている。土壌中に特に多いわけではないが、土壌がアルカリ性で、モリブデンが植物によく吸収されるため、だという。その他、硼素、ストロンチウム、リチウムなどの痕跡成分が、土壌や水・食品に多いところでも虫歯が少いという。
     虫歯の原因は、まだ十分解明されていないそうだが、自然食を食べていると少なく(わが国でも戦時中には少なかった)、現代式のいわゆる文化生活、ことに贅沢な精製食品ばかりとっていると、虫歯はしだいに多くなるという事実。
     痕跡成分といわれる微量のミネラル分が、精製によって減りがちだという事実。
     などからすると、ただ栄養のバランスの乱れだけでなく、こうした痕跡成分のあずかっているところが少なくないのではないだろうか。
     ところで、茶葉には弗素が多い。
     ふつう100PPMふくまれている。
     1杯の茶には0・1〜0・2ミリグラムあるから、茶好きの人は、毎日かなりの量の弗素をとっていることになる。とすると、コーヒーをやめてお茶をのむようにしたら、子供たちの虫歯がかなり防がれるのではなかろうか。


3-11. 繊維と血液コレステロール

     医学博士 遠藤 仁郎 

     動物(白ネズミ)にコレステロールを与えると、血液や肝臓のコレステロールが増加するが、セルロース(繊維素)を20%加えると、コレステロールの増加が著しく抑制されるという(Sundaravalli 1971)。
     Shurpelekar らは、これを小児(10〜12才)で追試しているが、1880カロリー(その72%は糖質、18%は脂肪、10%は蛋白質)の対照食での血液コレステロールは137.5ミリ%。
     コレステロールを1日4グラム加えると226.3。
     さらに繊維素(粉末)1日100グラム加えると170.3。
     という結果が出た(Nature誌 232 : 554. 1971)。

     この効果が何によるか、また明かにされていないそうだが、ともかく、繊維にとんだ食をとることは、機械的に便通をよくするというだけでなく(ふつう、それ位の意味にしか考えられないようだが)、血液コレステロールを下げる、したがって動脉の変化を防ぐという意味でも大切なわけだ。


3-12. 「アク」のこと

     医学博士 遠藤 仁郎 

     青汁にはアクがあるからよくない、という人がありますが? という質問にたいする私の答。

     そうです。先年、銀座のクッキングスクールの校長先生がとなえられた「青汁有毒説」も、アクが強いからというのでした。ところで、このアクなるものですが、その本体ははっきりしたものでありません。ただ、料理にあたって、いやな色や味が出ると、それを、なんとのうアクとよんでいるにすぎないようです。
     青汁のばあいも、材料によって、かなりアクがつよいと感じられるものがあります。しかし、もともと毒のないものばかりを材料にしているのですから、それから出るアクだけに毒があろう筈はありません。
     現に動物は、生涯そういう草を食っていて、元気でいます。
     人間は、それを、すったり、もんだり、しぼったりするので、出て来るアクが気になるわけですが、このアクもこめての草全体が、自然からあたえられた大切な栄養食品なんです。
     ただ、見た目や舌の感じだけから、有害だ、有毒だときめつけるのは、妄説も甚しいものです。
     アクは、決して「悪」ではなく、むしろ「善」だ(大切な成分の一部かも知れないから)といってよいだろう、と私は思います。
     アクの強いものでも少しも差支ないし、アクぬきする必要も、もちろん、ありません。
     青汁にしてアクが気になれば、葉そのままを食べればよろしい。
     チシャやシソの葉など、そのよい例です。


3-13. 海草と血管

     宮崎市 渡辺 忠夫

     東北大の竹本常松教授はコンブからラミニンという降圧成分を分離したが、これはカジメ、マツモにも含まれている。
     また、同大学の金田尚志教授によると、アサクサノリ、アオノリ、ヒトエグサは血液コレステロールを下げるが、コンブ、ワカメ、ヒジキ、オゴノリなどには、ほとんどこの効果のないこと、そして、その門下阿部重信氏はこの成分がβホモベタインであることを証明した。
     ヒトエグサは青海苔といわれ、フリカケにつかわれているもの。
     海苔の佃煮もこれがつかわれている。

    (臨床栄養 47.・12月号より)

     つまり、海草の中にはいろいろ(おそらく、まだまだあるにちがいあるまいが)、血圧を下げたり、動脉硬化を防ぐような成分があるようだ。


3-14. 繊維食と便通

     西欧人は、ふつう、繊維の少ない食をとっている。
     これに繊維にとむ食をあたえてみたところ、
     便秘がちな(腸内通過に時間のかかる)ものでは、たしかに便通がよく(通過時間が短く)なった。
     しかし、反対に、通過のはやすぎるもの(過敏性大腸)では、かえって、通過時間がのびた。
     つまり、繊維食は便通の悪いものにも、よすぎるものにも有利。すなわち、腸のはたらき(便通)を正常化するわけだ。(Haweyら、Lancet, 1973.6.9号)


3-15. 繊維食

     緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食の特長で、いま一つ見のがされないものは、繊維にとんでいること。もっとも、青汁では粗繊維は除かれている。けれども、軟い繊維は残っているし、ナッパを中心とする野菜、山菜、海草、果物はもとより、穀、豆、芋にしても、自然食あるいは自然にちかい食べ方ではかなり繊維は多い。
     さて、繊維の多いものは食べにくい。口あたりもよくない。そのうえ、殆んど消化されないばかりか、大切な栄養分の吸収さえも妨げる。そこで、いろいろ手を加えて(精製・調理)とり除くよう工夫されており、現在の習慣食にははなはだ乏しくなっており、また、なりつつある。しかし、この繊維にも、実は、なかなか効用がある。

    便通がよくなる
     よく知られていることは便通がよくなること。繊維をよくかんで食べると、便はやわらかくなり容積がふえるので、大腸を刺戟して運動をたかめ、うまく通じがつく。小麦粉のフスマを食べるだけでも、便秘がなおり、下痢にもよい、という。

    腸内細菌の健常化
     繊維が多いと、大腸の中の細菌がふえ、その性質が健康的となり、いろいろのビタミンが合成され、吸収利用される。また、異常細菌の繁殖がおさえられ、有害な異常分解産物の出来方がへる。

    大腸の病気
     虫垂炎(俗にいう盲腸炎)、憩室炎(腸壁にできた出っ張りの炎症)、痔、潰瘍性大腸炎、大腸癌などの大腸の病気が、繊維の少ない肉、脂、穀(精製した)、糖食の欧米人に多く、繊維にとんだ、自然食にちかい菜食のアジア人やアフリカ人に少ないのは、そのためだといわれている。
     わが国でも、これらの病気が、食の欧米化とともにしだいにふえて来ている。

    大腸癌
     大腸癌が欧米人に多いことについては、腸内に異常細菌が繁殖し、脂肪や胆汁酸の分解が高度にすすみ、発癌性の分解産物が出来やすいこと、便秘傾向のため、発癌物質(食べものとともにとり入れられるものもある)との接触時間がながいこと、のためと説明されている。

    肝臓への影響
     繊維にとむ自然食では、ミネラル(痕跡分もくるめて)やビタミンにとんでいること。また腸内で合成されるビタミンの利用もあって、完全食がえられやすいこと。便通がよくなり、腸内で発生する有害産物が少ないため、これら有害物の解毒にあたっている肝臓の負担がかるくなること。など、ともに肝臓の機能にとって有利。
     これに反し、繊維の少ない、高度に加工(精製・調理)された食では、ビタミン・ミネラルに不足した不完全食であるうえ、便秘にかたむき、腸内異常分解産物によって肝臓の負担はいやがうえに過重され、機能にとって不利にはたらく。

    妊娠中毒症
     妊娠中毒症が繊維にとんだ自然食をとっているところに少なく、精美食をとるところに多い、といわれているのも、同じ理由からであろう。

    肥満を防ぐ
     繊維食はよくかむ必要がある。それだけ唾液や胃液の分泌が多く、胃の満腹感も腹もちもよいので、いきおい少食になる。また、繊維にとんでいるものは比較的熱量が少ないし、腸内の通過がはやいと栄養分の吸収効率がへる。
     そこで、栄養過剰に陥るおそれが無いか、少ない。(繊維が少ないと、つい食べすぎになり、消化・吸収もよいので、どうしても栄養過剰になり、運動不足と相俟って肥満になりがち。)肥満症が、繊維食をとっているアジア人やアフリカ人に少なく、欧米先進国に多いこと、わが国でもさいきんめだって来たのも、そのため。

    成人病の予防
     栄養的に不完全な精美食の飽食は、代謝の異常、ひいては血の濁り(?血)をまねき、動脉硬化、高血圧、糖尿病、痛風、結石症、癌など、いわゆる成人病の原因になっていると考えられる。
     そして、自然食、あるいは自然にちかい菜食では、代謝は円滑におこなわれ、血の濁りをおこすことがないか少ないので、これら成人病の予防・治療効果も期待されよう。

    血液コレステロール
     動脉硬化ことに冠状動脉の硬化、あるいは胆石との関係がいわれている血液コレステロールも、繊維にとむ菜食で減る。これは、繊維によってコレステロールの吸収が妨げられること。また野菜、山菜、海草、果物などに、いろいろ、血液コレステロールを下げる作用のあるものがあることにもよるのであろう。

    歯の鍛錬
     繊維をよくかめば、歯の鍛錬になり、子供では頭脳の発達のためにもよいという。また歯みがきをつかわなくても歯は自然にきれいになるだけか、歯も骨も丈夫になるらしい。
     そのほかにも、まだまだ効能はあろうが、ともかく、カスとか、ジャマモノとして嫌われ、捨て去られている繊維も、けっしてカスでもジャマモノでもなく、多くの現代病の予防や治療にとってたいへん大切であり、必要なものなのだ。
     食べものは、すべて、自然のままか、なるべく自然にちかいかたちで、よくかんで食べるようつとめよう。また、勿体ないことに、捨ててしまうか、家畜の飼料か肥料かにされている青汁のしぼりかすも、せいぜい利用しよう。
     小麦粉かソバ粉の少量をつなぎに入れ、団子にし、蒸す、焼く、あげるなど。また、うす板にのばして焼く(センベイ、クラッカーのように)と、食べよくもあり、おいしくもある。

    (49・3)


3-16. 味と嗅(にお)いと痕跡成分

     銅、亜鉛、ニッケルなどの痕跡成分の不足で、味覚や嗅覚の異常がおこり、それらの微量をあたえることで正常になる。

    (Henkin,Br.M.J.1971.11.27号)




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