健康と青汁タイトル小
 成分についてインデックス

成分について(1)
成分について(2)
成分について(3)
成分について(4)
成分について(5)

成分について(6)
成分について(7)



5-1. 空っぽの食べもの

    在米 H.H. 

     いまアメリカでは、インプティ(空っぽ)カロリーといって、栄養のない悪い食品(砂糖など代表)のことをいっています。
     娘なども、クリスチャンハイスクールで教わっていますので、私など、ついウッカリ料理すると、いろいろと悪いものを注意してくれますので助かります。ありがたいことです。
     神よりあたえていただいた生きた正しい健康食品を、何だかんだと、みな栄養を空にした無の食品にして、おいしいうまいといってよろこんで食べ、人間が人間をダメにしてしまう今の世の中。
     ほんとうに栄養のない食品で生きている人間は、中身もカラッポのよわい人間になりますネ。


5-2. エンプティ・カロリー(からっぽのカロリー)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     アメリカでは、高等学校あたりで、エンプティ・カロリー(empty calory)を摂るな、とおしえているそうだ。(前号広兼さんの記事参照)。不完全食をとるなということで、私どもにとっては、いまさらあれこれいうほどのことではないのだが、エンプティという表現がおもしろいので、すこし考えてみよう。
     エンプティ・カロリーとは、からっぽのカロリーということ。カロリーはエネルギーのもと。からだのすべてのはたらきの原動力だから、たしかに大事な栄養分(一般に栄養そのもののことにも使われているほどに)で、十分とらなければならない。
     しかし、それだけの、からっぽのカロリーではいけない。というのは、カロリーだけが栄養の全部ではなく、カロリー源である糖質、脂肪、蛋白質からエネルギーが出るためには、それらが体内でうまく燃え(代謝され)なければならないが、それにはミネラル(アルカリことにカルシウムその他)や、ビタミン(A・B1・B2・Cその他)がなければならない。
     そして、それらがうまく釣りあっている必要があるからだ。この釣りあいがみだれると、血のにごりを生じ、からだのすべてのはたらきがうまく行かず、体力・健康力・生命力をよわめ、体調がくずれ、病気しやすく、また老化をおこしやすくもなる。だから、なるべく全部の栄養分のいっぱいそろったカロリー(フル・カロリー、いっぱいのカロリーとでもいうか)をとれ。カロリーだけいかに多くてもミネラルやビタミンがそろっていなければよくない、却って害になる。からっぽのカロリーではダメだ、というのだ。


     グラフで説明してみよう。このグラフは、理想的のバランスと考えられる、カロリー(K)2200、蛋白質(P)75g、カルシウム(ミネラルの代表という意味でM)1.5g、ビタミンA(A)5000国際単位、B1(B1、B2(B2)2mg、C(C)100mgを基準としてあらわし、左からK、P、M、A、B1、B2、Cの順に配列してある。つまり、Kの高さに横線をひいて、おのおのの柱がつまっていれば完全(フル・カロリー)食品。つまっていなければ、すき間の多いだけエンプティ・カロリー(不完全)食品というわけだ。日常よく食べているカロリー食品をしらべてみると

    主食
     白米と小麦粉。ともに熱量は多い。蛋白質もかなりある。しかし、カルシウムはごく少なく、ビタミンB1・B2も僅かでCは0、からっぽの所が多い。小麦粉の方がマシではあるが。





    蛋白食品
     牛肉、鶏肉、サバ、イカともに蛋白質は多いが、ミネラルは殆んどなく、ビタミンも少ない。そして、からっぽの度合は牛や鶏の方がややつよいようだ。








     それらにたいし、鶏卵、ことに牛乳は、ずっとすき間が少なく、よい食品だということがわかる。





    調味料
     カロリーの多いものは砂糖と脂肪類だが、砂糖も植物油(マーガリンも)は全くからっぽのカロリー。まさにエンプティ・カロリー食品の代表。









    嗜好品

      菓子
       もなかとショートケーキを出したが、殆んどカロリーばかり。ミネラルもビタミンもないか、ごく僅か。





      ジュース(粉末)
       完全にからっぽ。ミカンジュースもCが僅かあるだけ。酒もからっぽ。
       






     こう見てくると、現在一般に、栄養豊富であり、食文化的にもハイレベルとかんがえられている多くの食品は、ほとんどエンプティ(からっぽ)・カロリー食品ばかり、といっていいようだ。
    (つづく)


5-3. エンプティ・カロリー(2)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    よりよいもの
     そこで、よりよいものとしていろいろいわれている。

    主食
     白米はよくないから玄米にしよう。
     小麦粉はフスマもすりこんだ全粒粉にしよう、ということになる。
     ここには玄米と小麦とソバを出してみたが、その他の雑穀類もほとんど同じで、全粒だと白米や精製小麦粉にくらべ、ビタミンBやカルシウムの多い(玄米には多くない)点はたしかによい。しかし、まだスキ間だらけのカロリー食であることに変りはない。









     アズキその他の雑豆類では、カルシウムやB1がさらに多くなっているし、蛋白質にとんでいることがめだっているが、スキ間はやはりかなりある。

    イモ類
     カロリーは少ないが、カルシウムもややあり、ビタミンB1や、ことにCの多いことが注目される。Aはジャガイモにも白いサツマイモにもないかごく僅かしかないが、カロチンイモ(黄色いサツマイモ)にはすごく多い(グラフでは霞線であらわしてある)ことなど、穀・豆類にくらべ、ずっとスキ間が少ない。





    蛋白食品
     卵や乳がすぐれていることは上記した通りだが、小魚もよい食べものだ。
     たとえばイワシではスキ間がかなり少ないし、全体(骨・内蔵とも)食べられるワカサギにはからっぽの所はほんの少しだけ(ビタミンAとC)。





    大豆
     イモとともに私のすすめている大豆には、蛋白質とともにカルシウムとビタミンBが多く、牛肉・鶏肉などにくらべ、からっぽの度が少ない。



    調味料
     精白糖の代りに黒砂糖、糖蜜、ことに蜂蜜がよいといわれている。
     いずれも白糖にくらべ、たしかにいろいろのものがある。
     しかしこのグラフでは、糖蜜がいちばんスキ間が少なく、蜂蜜がもっともからっぽのようだ。
     おそらく、蜂蜜にはこれ以外に、栄養分析だけではつかめない大切なものがいろいろあるのであろう。







    埋め草食品
     このように、カロリー食品に共通して多いスキ間はミネラル(アルカリ・カルシウムなど)とビタミン類だ。
     このうちアルカリの不足だけは、アルカリ性の果物・野菜・山菜・海藻などで埋められる。
     しかし、その他のミネラルことにカルシウムやビタミン類のすべてもが、これら果物・野菜類でみたされるかというと、決してそうではない。

    果物
     リンゴ、バナナ、ミカンを出しているが、いずれもビタミンC以外には、ミネラル(カルシウム)も、ビタミンA・Bもほんの僅かしかない。したがって、それ自体かなりからっぽの食品だし、からっぽのカロリー食品のミネラルやビタミン(Cを除いて)を埋めるにはほとんど役に立たない。







    無色菜
     キウリ、ダイコン、キャベツも、同様、ビタミンC以外にはほとんどなく、あってもごく少なく、とてもカロリー食品に不足するカルシウムやビタミンを埋めることはできない。







    黄色菜
     そこで、有色菜でなければならぬといわれるが、その一つ黄色菜はどうだろうか。トマト、カボチャ、ニンジンなど、ごらんの通り、やはり多いのはビタミンC(ニンジンにはAも)だけで、カルシウムや、その他のビタミンを埋めることは、とてもできそうもない。







    緑葉菜
     残るは緑葉(ナッパ)類。良質ナッパの代表として大根葉を出した(ケールその他の良質ナッパ類みな同じ)。カロリーこそ少ないが、その他の栄養分はすべてそろっており、それ自体完全な食品であるだけでなく、カロリー食品に欠乏するカルシウムやビタミンことにA・B2・Cなどズバぬけて多い(B1はやや少ないが、これはカロリー食品には比較的多いもの)。



     つまりナッパ類はすべての栄養分のそろった完全食品であり、同時にカロリー食品に不足がちなミネラル・ビタミンのいずれにもとんでおり、それらのもっとも有力な供給源だ。
     したがって、これさえ十分にとれば、どんなエンプティ・カロリー食品でも、完全なフル・カロリー食品にかえることができる。
     たとえば、白米には3倍、半搗米・小麦粉には2倍、玄米・雑穀・豆には同量、イモには半量、肉・魚の切身には2〜3倍のナッパでフル・カロリーになる、といったぐあいだ。
     ところで、現在一般に好んで食べているものは、菓子・ジュース・酒類はもとより、白米飯・白パン・肉・魚のおいしいおかずにしても、そのほとんどがエンプティ・カロリー食品ばかりであり、さらに有害有毒な、農・畜・水産用薬や各種の添加物に汚染されたものばかり。
     しかも、この傾向はますます甚しくなりつつあり、そのために招かれた血のにごりによって、からだのすべての機能がそこなわれ、これが、現代人の体力・健康力・生命力のおとろえのもっとも重大な原因であろうと考えられる。
     この物騒な時代に対処するには、なるべく安全な食品をえらぶよう心懸けることと、エンプティ(からっぽ)カロリー食品をへらすこと。
     そして、埋め草食品としてミネラル・ビタミンの宝庫である良質ナッパをできるだけ多く、むしろ多すぎるくらい十分に食べ、青汁にして飲むべきだ。
     アメリカでも、エンプティ・カロリーをなおすにはこれしかないと、おそらくやがてナッパ・青汁食の必要性がやかましくいわれだすにそういないと思う。
    (56・5)


5-4. エンプティ・カロリー(3)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     いそがしいサラリーマンや学生諸君の朝食は、パンと牛乳、パンと目玉焼、米飯・味噌汁といったところが多いのではないかと思うが、グラフにしてみると、
    エンプティカロリー

      パンと牛乳
       食パン100g、バター、ジャム10gづつ、牛乳1本分として、その栄養分は表のようで、グラフではかなりカラッポだ。
      パンと牛乳

      パンと目玉焼き
       食パン、バター、ジャム右と同じ。それに卵2ケ。
       これでもカラッポさに大したちがいはない。
      パンと目玉焼き

      米飯・味噌汁
       白米飯2杯、300g、味噌汁、豆腐、味噌各10g、ほかに卵1ケとして、いっそうひどいカラッポ食だ。
      米飯・味噌汁

       これらのバランスのみだれは、結局、野菜類とくにミネラル・ビタミンにとんだ良質ナッパの不足のためだ。その理解のために、わが家の朝食イモナ汁(サツマイモ、大根葉各150g、卵1ケ)をごらんいただきたい。
      イモナ汁
       カロリーはやや少ないがバランスは完全にとれ、ミネラル・ビタミンに十分の余裕がある。


5-5. 戦後は36年。青汁は38年!!
 「健康と青汁」創刊300号記念に贈る
  当時の遠藤先生の論文(その2)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    緑葉ノ利用ニ就テ

     皇国ノ興廃ヲ賭スルコノ決戦下、戦力培養ノ源泉タル国民栄養ノ確保改善ホド重要ナル問題ハナイ。由来本邦食ノ欠陥トシテ動物性食品ノ不足ガ指摘サレテヰルガ、ソノ度特ニ甚シイ今日、優良蛋白質並ニ脂肪ノ補給ヲ如何ニスベキカハ、果物・蔬菜類ノ供給不円滑ニヨル「ビタミン」・無機質不足ノ解決トトモニ刻下ノ緊急課題デアル。
     栄養学ノ示ス所ニヨレバ、邦人標準成年男子軽業者ノ1日所要熱量2000〜2400「カロリー」、蛋白質60〜100、場合ニヨッテハ30〜50、大体40〜70瓦、内少クトモ30%は動物ナルコト、脂肪25〜30瓦、含水炭素ハ残余ノ熱量ヲ充セバヨイ。
     「ビタミン」A 4000〜5000国際単位、 
          B1 1.0〜1.5瓱、
          B2 1.0〜2.0瓱、
           C 40〜50瓱
           D 0.01瓱
     通常特ニ補給ノ要ハナイ。
          石灰1.0(所要量ハ当瓩10瓱ナルモ吸収量ヲ考慮シ)、
          燐酸1.5瓦(石灰利用ハ石灰・燐酸比1対2ナル際最モ良好)。
     苦土亦石灰ト一定ノ均衡ヲ保ツヲ要スルモ明確ナ数量ハ与ヘラレテ居ナイ(大約石灰ノ1/3以下ガ適当トイフベキカ)。酸塩基関係デハ稍塩基過剰性ナルヲ必要トスル。
     コレヲ目下ノ主食米ノ配給量2合3勺(330瓦)ニ就テミルニ(表1)、

    表1−米成分

     絶対量ノ不足ハ勿論、各栄養素ノ相対的関係ニ於テモ頗ル不完全デ、蛋白質ハ重要「アミノ」酸殊ニ「リジン」等ノ少キダメ(表3)

    表3−重要「アミノ」酸含量

     量的ニ不足セル現況デ、甚ダ不完全デアリ、脂肪不足ハ白米ニ特ニ甚シク、「ビタミン」A・Cハ全ク欠如シ B亦白米ニハ甚シク不足シ、無機質ハ一般ニ特ニ白米ニ乏シク、石灰不足著シク、燐酸・苦土トノ均衡ヲ欠キ(表2)、酸過剰性。

    表2−石灰:苦土:燐酸

     代用食タル雑穀類ハ若干ノ優劣ハアルガ何レモ概ネコレト趣ヲ同ジウシ、豆類ハ蛋白質ニ富ムガ質的ニハ大豆の他ハ劣リ、脂肪亦大豆・落花生以外ハ乏シイ。「ビタミン」・無機質ノ関係ハ禾穀ト殆ド撰ブ所ガナイ。薯藷類ハ蛋白質少ク脂肪ハ殆ド欠如シ「ビタミン」・石灰ニ乏シイガ、塩基過剰性ナル点ハ有利デアル。

     従ッテ現在主食或ハ代用食トサレテ居ル禾穀・菽豆・薯藷類ノミヲ以テシテハ何レモ完全デナク、蛋白質ハ量的ニ不充分ナルノミナラズ質的ニモ劣リ、脂肪乏シク、「ビタミン」ハ或ハ欠如或ハ不足シ、石灰ハ一般ニ少ク、多クハ酸過剰性デアル。
     動物性食品ノ主要部分ヲナス筋肉ハ獣鳥魚ヲ問ハズ蛋白質ハ量的質的ニ優レ、脂肪亦豊富デ蛋白質並ニ脂肪ノ給源トシテハ優秀デアルガ、「ビタミン」ニ乏シク、石灰不足シ燐酸量甚シク大、苦土亦多ク且ツ著シク酸過剰性デアル。
     タメニ肉食ヲ主トスル際ハ勿論、穀肉混食ノ場合モ、「ビタミン」・石灰並ニ塩基ノ不足ハ益々増大シ不完全度一層顕著トナル。尤モ内臓、骨骼トモニ用ヒ得ル小魚類ノ如キハ余程完全ニ近イ。
     卵ハ蛋白質・脂肪ニ富ミ、「ビタミン」Dハスベテノ食用中第一トイハレルガ C欠キ石灰乏シク酸過剰性。
     乳汁ハ蛋白質・脂肪トモニ優秀「ビタミン」ハ何レモ存シ(尤モCハ加熱ニヨリ多ク失ハレル)石灰ニ富ミ、塩基過剰性デアル。シカモ乳汁ハ愚カ諸他動物性食品ノ利用モ、現今ニ於テハ特殊ノ事情ニアルモノノ他ハ殆ド不可能ニ近イ。
     主食品並ニ動物食品ニ不足乃至欠如スル「ビタミン」類・無機質殊ニ石灰・塩基ノ有力ナル給源ハ果物・蔬菜類・措テ他ニコレヲ求ムベキモノハ無く、主食或ハ動物ノ増スニ従ヒソノ要求量ハ愈々増大スル。R.Bergガ肉ニハ5〜7倍ノ馬鈴薯ヲ、「パン」・豆・卵・穀粉食ニハ7倍ノ青物ト果物ヲ食ヘト唱ヘテヰルガ如クデアル。
     カク果物・蔬菜類ハ何レモ「ビタミン」・無機質殊ニ塩基ニ富ムガ、果物・果菜類ハ一部ノモノノ比較的A・C量大ナル他 概シテ「ビタミン」ハ少ク 茎・根菜デハ人参ヲ除キAハ殆ド含有サレズ B・C亦一般ニ乏シイ。且ツ何レモ石灰ニ貧弱デアル。コレニ反シ葉菜類殊ニ緑色葉菜類(表4)ハスベテノ「ビタミン」ヲ有シ殊ニA・Cニ富ミ、無機質多ク石灰含有量ハ植物食品中随一デアリ、燐酸・苦土ハ比較的少イ(表2)。

    表4−緑葉成分

     即チ「ビタミン」・石灰・塩基ノ給源トシテ緑色葉菜類ニ過グルモノナクハ、シカモコレハ葉菜ノミナラズ一般緑葉ニ共通スル特質デアル。

     ナホ緑葉類ハ、ソレ自体ガ完全ナル栄養食品デアルコトハ、多クノ草食動物ガコレノミニヨッテ完全ナル健康ヲ維持シテヰルコトカラモ首肯サレルガ、殊ニ注目スベキハソノ蛋白質ノ優秀性デアッテ、重要「アミノ」酸ノ含有多ク(表3)、ソノ栄養価ハ動物性蛋白質ニ比シ些カモ遜色ガナイ。従ッテ充分ノ量ヲ摂レバヨク主食ニ不足スル蛋白質ヲ補ヒ得、蛋白給源トシテノ動物性食品ノ要ハコレ無キコトトナリ、シカモ如何ニ大量ヲ摂ルモ動物食ニ見ル如キ「ビタミン」不足、無機質ノ不均衡ヲ招来スルノ危険ヲ伴フコトハナイ。実ニ理想的ノ蛋白給源デアル。
     更ニ看過シ得ナイ事実ハ、塩基ニヨル栄養素ノ体内利用促進ノ結果ソノ要求量ノ節約サレルコトデ、R.Bergニヨレバ、酸性食ノ場合蛋白所要量ハ漸次増大シ遂ニハ1日140瓦以上ニモ達スルニ反シ、塩基性ナラシメバ僅々10日ニシテ24瓦マデニ低下スルニイタルトイフ。

     Voit Rubner Atwater ソノ他ノ多蛋白説ガ肉食ニ基クモノデアリ、Cittenden Hindhede等ノ低蛋白説ハ何レモ採食ニヨルモノナルコトモ亦之ニ一致スルモノデアル。コノ事実ハヒトリ蛋白質ノミニ止ラズスベテノ栄養素ニ認メラレル所デ、R.Bergハ充分ナル塩基サヘアレバ軽業者ノ1日所要量総熱量ハ1800〜2000「カロリー」ヲ超ユルヲ要セズ、蛋白質30瓦、脂肪25瓦デヨク、重業者ト雖モ300「カロリー」、蛋白質40瓦、脂肪30瓦デ足リ、窮乏時ニ際シテハ1200「カロリー」ニテヨク耐ヘ得ルト主張シテヰル。
     コレヲ邦人ニ就テイエバ軽業者1500〜1600「カロリー」、蛋白質25瓦、脂肪20瓦、重業者2400「カロリー」、蛋白質30瓦、脂肪25瓦、非常時ニハ1000「カロリー」ニテ足ルコトトナル。コレニハ恐ラク塩基ノミナラズ豊富ナル「ビタミン」ノ存在モ与ルデアラウガ、兎モ角コノ事実ハ現今ノ如キ食糧事情下極メテ重大ナル意義ヲ有スルモノトイハネバナラヌ。即チ充分ナル緑葉サヘアレバ動物食ノ欠乏ハモトヨリ、果物・蔬菜類ノ不足モ意ニ介スルノ要ナク、主食不足亦憂フルニ足ラヌノデアル。
     緑葉中ノ蛋白質含量ハ葉菜類ニ就テミレバ、一般ニ貧弱デ概ネ1〜3%内外ニ過ギナイガ、唐辛子葉5.95%、蓼ノ葉7.54%、薺7.71%等ノ如ク相当多量ニ含有サレルモノノ存在注目ニ値スル(表4)。

     蛋白質所要最低量ヲ50瓦トシ、30%(15瓦)ヲ緑葉蛋白質ニテ充ストスレバ、含量大ナル緑葉デハ200〜300瓦デ足ルガ、多クハ1000〜1500瓦ヲ必要トスル。仮リニ1瓩ヲ用フルトスレバ、「ビタミン」・無機質ハ多クハ無条件ニ足リ、熱量増加亦相当ノ数字(100〜800「カロリー」)ニ上ル。タヾ脂肪ノミハ尚ホ不充分ナルモノガ多ク、シカモ「ビタミン」A利用ノ上ニモ不可欠デアルカラ、多脂性食品(大豆・落花生・胡麻等)ヲ用フルカ或ハ少量(5〜10瓦)ノ油脂ヲ添ヘネバナラヌ。

     但シ緑葉ハ元来粗繊維多く不消化物デアリ、咀嚼不充分ナル時ハ利用ノ完全ハ期シ難ク胃腸障碍ヲ招クノ懼レ無シトシナイ。シカシコレヲ磨リ潰シ或ハ粉末トスレバ容易ニコノ難点ハ除クコトガ出来、老・幼・病者ト雖モ顧慮ナク摂取シ得ル。

     コノ目的ニ対シ曩ニ提唱シタ緑葉末油煉ハ最モヨク合致スルモノト考ヘル。即チ生鮮緑葉ヲ短時間加熱後、乾燥粉末トシ、食用油ヲ注加(100瓦ニ対シ5〜10瓦)シタモノデ、約10倍ニ濃縮サレテ居リ、主要栄養素ハモトヨリ、「ビタミン」A・Bノ保存ハ藤田氏等ノ乾燥葉ニ於ケル成績ヨリ想像サレ、Cも少量ナガラ存在スル。従ッテ50〜100瓦ヲソノ儘用フルコトトスレバ、「ビタミン」Cノ稍不足スル他概ネ所要栄養素ヲ充スコトガ出来ル。尤モ煮炊スレバC不足ハ一層甚シクナルヲ免レナイ。少量(50〜100瓦)ノ生鮮緑葉ヲ併用スル必要ガアル。生鮮緑葉ニハ酵素ソノ他未知ノ有効因子ノ存在モ想像サレルコトデアリ、一定量ハ常ニ生食スルコトガ合理的デアラウ。尚凋萎葉ハ水ニ浸シテ短時間直射日光ニ曝「活」ヨキ状態トナシテ用フルノガヨイデアロウ。吉田氏ノ実験ニヨレバ1〜3時間ノ日光曝射ニヨッテ「ビタミン」Cハカナリ著明ニ増加スルトイフ。
     緑葉ハ生鮮蔬菜トシテノ供給ガ最モ望マシク、蔬菜殊ニ葉菜類必要ナルコト今日ホド大ナル時機ハ無イノデアルガ、労力不足耕作面積減少ノ現況デハ生産量ニハ自ラ限度ガアリ、輸送難ト相俟ッテ到底円滑ナル供給ヲ許ナイ。従ッテ、ヒトリ蔬菜類ソノ他栽培植物葉ニ限ラズ、広ク山野自生ノ草木緑葉ヲ利用スベキデアル。資源無尽蔵デアル上、有効成分ハ却ッテ栽培物ニ比シ優ルモノガアリ、糞便汚染ノ懼レ少ク生食ニモ適スル。真ニ天与ノ恩恵トイフベキデアル。
     問題ハ油脂デアルガ、脂肪不足ガ邦食ノ最大欠陥デアリ、結核多発ノ原因トサレテヰル点カラモ是非トモ確保サレネバナラナイ。コレニハ一方玄米ヲ主食トシ、他方原料植物栽培、子実採集ヲ奨励シ増産ヲ図ルトトモニ、含脂量大ナル緑葉ノ調査・利用ガ考慮サルベキデアル。唐辛子葉1.14%、パセリ1.17%、蓼葉1.86%ノ如キ含量ハ看過シ難い示唆ヲ与ヘルモノトイフベキデアラウ。

     要スルニ栄養ノ根本ハ単ナル量的ノ問題ノミデハナク、各栄養素間ノ調和均衡並ニ質的完全ニアル。現下ノ食糧不足ニ対処スル当事者ノ献身的努力ハマコトニ感謝ニ堪エナイ所デアルガ、タダニ主食タル穀・菽・薯類の増産ノミヲ以テシテハ国民栄養問題ノ根本的解決ハ不可能デアリ、マタタトヘ動物性食品ヲ若干増配シ得タトシテモ、ソノ結果ハ蛋白質・脂肪ニ於テハ有利デアルガ「ビタミン」・無機質ノ面ニ於テハ却ッテ不利トナリ、一層不完全食タラシメルノミデ決シテ改善トハナシ難イ。コレハ既ニ前世界大戦当時「ドイツ」ガ嘗メタ苦杯ノ一デアッタコトハ人ノ知ル所デアル。結局残サレタ途ハ唯一緑葉ノ利用ノ他ニハナイノデアリ、食糧不足ノ現況ニ於テモ緑葉ノ活用及ビ少量ノ油脂添加ニヨッテ、容易ニモ量的ニモ完全ナル栄養ヲ得ルコトガ出来ルコト、マタ緊迫シタ情勢下ニ於テハ可及的労力ヲ要スルコトナク、シカモ優良ナル食糧ノ豊富ナル供給ガ要望サレテ居リ、コレニ対シテモ一般緑葉ノ食用化ガ最モ適当シテヰルコトヲ重ネテ強調スル次第デアル。

    (20.2.5)


5-6. イモ・カボチャ納豆

     医学博士 遠藤 仁郎 

     納豆はよい食べものだがあのネバがどうも気になる。イモやカボチャと混ぜると食べよい。

    イモ納豆
    ジャガイモ、サツマイモを軟くたき、納豆をまぜ、適宜味つけする。

    ジャガ納豆
    C B2 B1 A M P K
    ジャガイモ200g、納豆50gのジャガ納豆では、カルシウムが少なく、ビタミンAは0という欠点はあるが、その他はかなりそろっており、チシャ(50g)でくるむと(チシャマキ)グラフのように、カルシウム以外全部うまく釣り合ってくる。チシャをふやすか、コマツナ、ダイコン葉、CO、ケールまきにすればさらによくなる。

    jaga-nattou

    カロチン納豆
    C B2 B1 A M P K
    サツマイモ200g、納豆50gのサツマ納豆では、ジャガイモのばあいと余り変らないが(表)、カロチンイモにすると(グラフ)、それだけでもカルシウムが不足する以外には、完全にバランスがとれている。
    karotin-nattou

    カボチャ納豆
    C B2 B1 A M P K
    カボチャ200、納豆50のカボチャ納豆では、ビタミンB1だけは不足だが、ほかはかなりバランスのとれたものになる。
    kabocha-nattou

    ジャガ納豆同チシャマキサツマ納豆カロチン納豆カボチャ納豆
    カロリー254   262   336   336   204   
    蛋白質12.1 12.7 10.9 10.9 10.5 
    カルシウム56   84   9.4 9.4 134   



    0   600   6   6000   660   
    B10.240.270.340.340.07
    B20.340.370.360.360.31
    30   37.5 60   60  40   


5-7. 戦後は36年、青汁は38年!!
 「健康と青汁」創刊300号記念に贈る
  当時の遠藤先生の論文(その3)

     医学博士 遠藤 仁郎 


    緑葉療法

     穀食ヲ主トスル邦食ガ不完全デアリ、穀肉食ハ更ニソノ度ヲ増大スルコト、而シテコレガ矯正ニハ緑葉ガ最モ適当シテヲリ、緑葉ノ充分ナル利用ト少量ノ脂肪ノ添加トニヨッテ合理的ナル完全食トナシ得ルコトハ曩ニ指摘セル如クデアル(1)。
     合理的完全食ガ健康維持上ニ必要ナルコトハ言フマデモナイガ、病的状態ニ於テハ更ニヨリ一層重要ナルコトモ亦容易ニ理解サレル。即チ内因性疾患ハモトヨリ感染ノ如キ外因性疾患ニ於テモ、決シテ病原体ノ侵入ノミニヨッテ発病スルモノデハナク、常ニ内因タル抵抗力減弱ノ存在ヲ必要トスル。

     抵抗力低下ノ原因ハ、一方ニハ先天性後天性ニ獲得セル体質的薄弱ニアルガ、他方不自然ナル日常生活、就中不合理ナル食養ニ基ク異常代謝産物ノ成生蓄積或ハ負担過重ノ結果、元来抵抗薄弱なる諸組織並ニ諸臓器ガ機能的ニマタ遂ニハ器質的ニモ障碍サルルニヨル。
     従ッテ保健上食養ノ合理化及ビ食餌ト代謝能殊ニ運動並ニ諸臓器機能トノ調和ガ重要ナル意義ヲ有シ、コレ等代謝諸臓器ノ機能ニ変調乃至不全ヲ伴フ病的状態ニ於テ得ニ食養ノ合理化ガ強調サレル所以デアル。

     合理的栄養トハ質的量的ニ完全ナル栄養ノ謂デアッテ、諸栄養素ノ調和的配合ト同時ニ各病的状態ニ於ケル代謝能並ニ消費ノ状況ニ適応セルモノデナケレバナラヌ。
     然ルニ現在ノ実状ニ於テハ、腎・肝疾患・糖尿病等ノ治療食ニ見ルベキモノアル他、多クノ病者ノ食餌ハ一般健康者ニ於ケルヨリモ遥ニ不完全デアッテ、所謂栄養食ハ白米飯ニ肉・乳・卵ノ飽食ニアルカノ如ク考ヘラレテヨリ、庇護食ニ至ッテハ乳汁・面湯・「スープ」ニ限ラレテヰルト言フモ大過ハナイ。

     勿論病者ニヨッテハカカル濃厚食或ハ淡白食ヲ嗜好スルモノデアリ、病状ニヨッテハ止ムヲ得ヌ場合モアリ、マタ一時的ニ有効ナル場合モアリ得ルガ、概ネ誤リタル栄養観念ニヨル指導マタハ習慣或ハ嗜好異常ニ出ヅルモノデアッテ、決シテ当ヲ得タルモノトハ為シ難イ。
     極言スレバ最モ完全ナル食餌ヲ必要トスル病者ニ最モ不完全ナル食ヲ給スルノ不合理ヲ敢テシテヰルトイフ状態デアル。

     穀食マタハ穀肉食ノ是正ニ蔬菜類ノ必要ナルコト、特ニ緑葉ノ適当ナルコトハ既述(1)ノ如クデアルガ、緑葉ハソレ自体完全ナル食物デアッテ、

    • ソノ充分ナル利用ハタダニカカル栄養素間ノ不均衡ヲ除キ完全食タラシムルニ資スルノミナラズ、
    • 有力ナル「ビタミン」(A、B、C)・酵素・無機質(特ニ石灰・塩基)ノ給源ナルコト、
    • 優良蛋白質ノ存在ニヨリ有害代謝産物源タル動物性食品ノ摂取ヲ不要ナラシムルコト、
    • 従ッテ無刺戟性ナルコト、
    • 豊富ナル塩基及ビ「ビタミン」ニヨル代謝促進ノ結果、諸栄養素需要量ノ節減サルルコトト相俟チ諸組織並ニ諸臓器ノ負担ヲ著シク軽減スルコト等、
     ヨク諸多病的状態ニ於ケル要求ヲ充タシ、ソノ応用ハ極メテ広範囲ニ亘ル。

     従来既ニ多クノ疾患ニ、動物性食品中最モ完全ナル乳汁トトモニ所謂乳菜食トシテ賞用サレテヰル所以モ亦ココニアル。
     要スルニ緑葉ノ利用ハ保健上ニモマタ治病上ニモ基本的意義ヲ有スルモノデアッテ、真ノ健康ハコレニヨッテ始メテ期待サレ、多クノ疾患ハ単ニコレノミニヨッテヨク治癒セシメ得ベク、マタ多クノ疾患ニ於ケル特殊療法二対シ有力ナル支持ヲ与ヘルモノデアル。
     ナホ腎疾・糖尿病ニ対シテモ特殊ナル治療食ノ要ハナク、何レモ緑葉利用ニヨル合理的完全食ヲ以テヨクソノ目的ヲ達シ得ベシト考ヘル。
     原則的ニ主食(穀粒・粉)ニ対シ約3倍量(飯ハ略3倍量トナル、故ニ飯ト同量)ノ生鮮葉ヲ用フ。

     一部ハ咀嚼・消化能並ニ嗜好ニ応ジ適宜調理シ、或ハ乾燥葉(主食ノ1/3量デ足ル)、或ハ多少ノ根・茎・果菜ヲ以テ代用スルモ差支ナイガ、「ビタミン」・酵素等ノ供給ヲ目的トシテ、常ニ若干量ヲ生食スル。

    • 生鮮緑葉ノ生食ハ本療法ノ眼目トスル所デ多量ナル程ヨイ。
    • 最小限1日100瓦トシ病状ニ応ジ適宜増量スル。
    • 浄水ニテ清洗後、磨リ潰シ或ハ圧搾汁トナシ少量ノ油ヲ加ヘ適宜調味(果汁果肉最適)スレバ青臭味ヲ減ジ食シ易イ。
    • 勿論伝染病・寄生虫感染ノ危険ヲ考慮シナケレバナラヌ。

     生産方面ニ於ケル然ルベキ措置或ハ適当ナル消毒法ガ望マシイガ、差シアタリ糞便汚染ノ懼レナキ山野ノ緑葉ヲ用フルコトモ一策デアラウ。
     動物食ハ得ニソノ必要ハ認メナイガ、優秀ナル蛋白質並ニ脂肪ノ給源デアリ、消化良ク味亦佳デアル。平素嗜食セルモノ、貧血・衰弱、或ハ食思振ハザル病者ニシテコレヲ欲スルモノニハ大ニ賞用スベク、決シテカノ所謂菜食論者ノ如ク極端ニ嫌悪排斥スルニハ当ラナイ。
     但シ穀類同様充分ナル緑葉ヲ配伍シナケレバナラヌ。

     乳汁・卵ハ何レモ幼若動物ノ唯一ノ栄養物デアッテ、理想的食物トミナサルベク、事実乳汁ハ動物性食品中最モ優秀デアルガ、加熱ニヨリ多クハ「ビタミン」Cヲ失ッテオリ、卵ハ「ビタミン」並ニ無機質得ニ石灰含量ニ劣リ何レモ緑葉附可ヲ要スル。
     面湯・「スープ」ソノ他ノ流動食ニ至ッテハ何レモ不完全極マル食物デアリ、シカモカカル食餌ヲ要スル時ハ特ニ豊富ナル「ビタミン」・無機質並ニ諸栄養素ノ合理的供給ヲ要スル場合デ、正ニ緑葉生汁ノ最適応症ト称スベキデアル。

     緑葉ノ供給ニ関シテハ既説(1)(2)ノ如ク蔬菜類ノミナラズ広ク一般草木ニ求ムレバ冬季ノ若干期間ヲ除キマヅ困難ハナイデアラウ。
     マタ冬枯ノ端境期ニ対処スル方策トシテハ乾燥葉(緑葉末油煉)ノ貯蔵ヲ励行スルトトモニ越年性野草類又ハ麦・豆類等ノ促成栽培ヲ行ヒ或ハ「モヤシ」ノ利用ヲ図ルコトモ亦一法デアラウ。
     ナホ食養上注意スベキハ食べ方デアッテ、タトヘ質的ニ完全ナル食餌モ摂取法ヲ過マレバソノ効ハ著シク減殺サレル。

     食ベ方ハ古人ノ所謂飢エテ方ニ喫シ飽カズシテ已ムデ食事ノ回数・時刻トモニソノ消化並ニ代謝能ニ応ズベク徒ニ型式規則ニ拘ハルベキデハナイ。
     邦人ガ一般ニ過食ノ傾向ニアルハ周知ノ事実デコレハ従来ノ不完全食ニ於ケル必要上止ムヲ得ザルノ習慣ニ発シ遂ニ飽食ヲ以テ栄養維持ノ必須要件ナルカノ観念ヲ生ジタル結果デアルガ、完全食ニアリテハ勿論ソノ要ハナク、殊ニ緑葉利用ニヨリ遥ニ少量ニテ足ルコトハ既述ノ如クデアル(1)。

     所謂腹八分目ガ標準デアッテ、常ニ若干ノ余力ヲ残シ、稍々食ヒ足ラザル程度デ、食後元気充溢スルヲ覚エ次ノ食前爽快ナル空腹感アルヲ度トスル。
     咀嚼ハ充分ニ、調味ハ淡白ナルヲ原則トシ、食品本来ノ持味ヲ保存シ、過度ノ附味殊ニ甘・鹹味ハ避クルヲ宜シトスル。飢エテ後食ヘバ特ニ調味ヲ要スルモノデハナク、コレ亦病者ニ於テモ同然デアル。
    (文献省略)(20・3・12)


5-8. エンプティー・カロリー(4)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    夏バテ予防食
     暑くなると、多くの人がバテる。それを防ぐによいと、土用の丑の日にウナギを食う。これは、ふるい時代からあったことらしく、

      痩麻呂にわれもの申す夏やせによしというなりウナギ獲り召せ

     という歌が万葉集にのっている。暑さのために食欲がなくなり、アッサリした白米飯ばかり食べる。そのため栄養がひどく偏ってきて体調のくずれるのが夏バテだから、脂こいウナギを食って、少しでも米の偏食を直そうというのだろう。

      茶漬ヶ飯

       白米飯300グラムに、キウリ・ナス100グラムづつそえたものと


      ウナギ飯


       白米飯200グラム、カバヤキ100グラム、とをくらべてみると、
       表やグラフのように、なるほどウナギ飯の方が、いくらかよくなっているかに見える。しかし、まだまだカラッポのところが多い。それにずいぶん値がはっているから、そうそうしょっちゅうというわけにもゆきかねる。


    冷汁飯
     いまはどうなっているか知らないが、九州の郷土食に、夏バテに常用された冷汁飯というのがあった。少な目の飯の上に、生のシソやネギを細かく刻んでウンとのせ、それに、味噌を冷水にとかした汁をかけて食べる、というのだ。

      冷汁飯1

       白米飯200グラムに、シソとネギを50グラムづつにしてみると、まだ完全とはいえないまでも、スキ間はずっと少なくなっておりバランスはよほどよくなっている


      冷汁飯2

      (ナッパが多ければいっそうよくなり、100づつにすれば殆んど完全になる)。


     これを毎日食っていれば、たまにウナギを食うよりははるかに効果的にそういない。(57・6)グラフには、左からカロリー(K)、蛋白質(P)、カルシウム(M)、ビタミン(A・B1・B2・C)の順に出してある。


    エンプティカロリー4表


5-9. エンプティー・カロリー(5)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    弁当くらべ

    日の丸弁当
     むかしよく食べた日の丸弁当。
     白米飯300グラムに、梅干1ヶ 10グラム。

    日の丸弁当



    ソバ、ウドン
     ユデソバ、ウドン、いずれも300グラム。
     臭味として葉ネギ10グラム。(グラフはソバ、ウドンは省略)


    寿司
    アナゴとマグロの寿司、各5ヶ。
    一箇分の飯は大体25グラム、魚は約10グラムのようだから、全体で飯250グラム、魚100グラム。
    寿司



    サンドウィッチ
    新幹線の日本食道のサンドウィッチ。
    1ケースに6ヶはいっていて、1ヶの目方20グラム。
    うち、パン15〜6グラム、ハム5グラムだったから、全体でパン100グラム、ハム30グラムというところ。
    サンドウィッチ

     その栄養価は表やグラフのようで、日の丸弁当はもとより、ソバ、ウドンでは、殆んど原料穀そのものの養価にすぎない。寿司、サンドウィッチでは魚や肉の養分だけふえている。しかし、そのいずれにしてもカラッポ食品であることに変りはない。

    イマナ弁当
     それにひきかえ、いつも総会の昼食に出るイマナ弁当――ジャガイモ、サツマイモ各100グラム、大豆30グラム、ケール、コマツナ、チシャ各50グラムという組合せだが――がいかにうまくバランスがとれており、カルシウムにもビタミンにも十分余裕のあるか、とくに注目されたい。
    イマナ弁当

    (57・5)

     日の丸
    弁当
    ソバウドン寿司サンド
    ウィッチ
    イマナ弁当 
    熱量436353350497354353カロリー
    蛋白質6.310.08.028.913.617.3グラム
    カルシウム1536.521.58513.4312ミリグラム
    ビタミンA0333326003200国際単位
       B10.070.190.130.130.240.56ミリグラム
       B20.040.100.040.090.050.41ミリグラム
        C03300260ミリグラム


5-10. 肝油と青汁の併用

     医学博士 遠藤 仁郎 

     「宅ではこどもに肝油をのましている。それに青汁を併用したらビタミン過剰症にならないか」
     との質問をうけた。
     ビタミンのうち過剰症のおこるのは脂溶性のAとD。
     なるほど、肝油にも青汁にもビタミンAは多い。けれども、その併用によって過剰症のおきることは絶対にない、といってよろしい。
     そのわけは、
    1. 過剰症のおこるのは純粋のAの大量をとるばあいだが、ふつうの肝油のA量はさほど高単位ではないから、むやみに大量をのまない限りその心配はない。
    2. 青汁の中のAは純粋のビタミンAではなく、カロチンというビタミンAの前段階のもの(プロビタミンA)で、体内ではじめてAになる。しかし、その分量には自ら限度があるから、過剰症は全然問題にならない。
    3. なお、A過剰症はビタミンCによってある程度防がれるが、青汁の中にはそのCがすごく大量にある。だから、肝油と青汁の併用では過剰症になるおそれがないばかりか、その予防にもなるといったものだ。
    (57・12)


5-11. 大切な野菜繊維

    有害物解毒 栄養効果高める
     動物の腸の中には、さまざまな細菌群があって、食物の消化や吸収を助けたり、有毒物を中和・分解したりして、その動物の栄養効果を高めている。
     人間でも同様に有益な細菌群が済みついて、草むらみたいなものをつくっている。

    ▽菌叢(そう)
     そして、胃腸の具合が良く、消化・吸収がうまく行なわれているときには、一定の細菌が多くなる。
     健康人では、普通、ビフィズス菌が優勢で、ウエルシュ菌は劣勢であるが、“腹具合”のよくないとき(下痢、便秘、胃腸病など)には菌叢は逆転する。

     この腸内細菌は私たちの健康にとって重大な働きをしており、腸内の有害産物を中和・解毒するほか、栄養物質の消化を助け、吸収を調節し、さらにある種のアミノ酸やビタミン類の合成をする。

     ネズミをビタミンB1を除いたエサで飼っても、B1欠乏症(カッケ)は起こらない。
     だが、このネズミの食糞(ふん)を取り除くようにしておくと、数日後には、カッケの症状を現すようになる。
     これは、この食糞の中にB1があり、その一個を食べると、B1の錠剤のような効果を持つのである。このような実験から、ネズミは、その腸内菌が、ビタミンB1、B2、B3、パントテン酸、ビタミンK、B12などをつくって、その恩恵にあずかっていることがわかった。
     動物によって腸内菌のつくるビタミンは異なるが、人間でも、ある種のビタミン類は多少とも、腸内菌によってつくられるらしい、
     といわれている。
     腸内菌の効用がよくわかるようになったのは、近年“無菌動物”の飼育ができるようになってからである。
     生まれた時から細菌にさらされない実験動物は、無菌でない動物に比べて発育がきわめて良好で、内臓(腸や肝臓、ジン臓など)も大きく、からだ全体の栄養状態も非常によく見える。
     だが、この無菌動物は、抵抗力がきわめて悪く、寒さ、暑さにすぐやられ、飼料もやわらかい特別なものでないと、すぐ下痢する、病気にも感染しやすい、寿命も短いなどの害がある。
     これは、バイ菌に対して、全然免疫性がないためでもあるが、腸内菌がいないために、飼料も、特別食でなければ育たないとも考えられる。
     人間や動物は、菌叢を腸内で育てて、これを共存共栄している宿主であるとも考えられるのだから、この細菌たちの発育する条件も大切になるわけである。
     それには、野菜の繊維のようなものをよく摂取するのも必要であろう。栄養学説からはセンイはカロリーにならず、栄養的価値はゼロだ、などともいわれるが、実はそうではないのである。
     繊維質そのものは、胃腸の運動をうながして、直接に消化・吸収を助け、また細菌叢の繁殖をうながして間接に栄養を助けているのだから、私たちの健康にとって栄養的価値は大きい。
     こう見てくると、将来の栄養学説は、生物体全体の“栄養の動き”つまり、全身の健康という立場から考え直すべきであろう。
     栄養とは食べ物のことだけではない。

    (杉靖三郎・東京教育大名誉教授)
    (56・3・10 山陽)


5-12. サツマイモ 意外?!に美容食なんデス

    整調作用、ビタミンCもたっぷり
     秋、サツマイモの季節です。
     飽食の時代にあって、“太るからいや”と敬遠ムードもあるようですが、サツマイモは意外に美容食なのです。
     栄養効果を見直して、ちょっと食べ方などを工夫してみませんか。
     サツマイモは戦後、次々と品種改良され、現在市場に出回っているのは14、5品種もあります。
     代表的なものは、表皮が白く粉質で糖度の高い黄金イモ、表皮の赤い金時、紅小町、高系14号など。
     生産量は昭和30年の718万トンをピークに減少し、昨年は138万4000トン。
     ちなみに、ジャガイモの昨年の生産量は、377万5000トンです。
     どうしてサツマイモはこんなに不人気なのでしょうか。
     甘しょとも呼ばれるように、サツマイモは糖分を多量に含んでいます。
     さらにアミラーゼの作用で、加熱により甘味が増すという特性があり、「この甘みが敬遠される原因」と国立栄養研究所室長の辻啓介さん。
     「それ自体、味のないジャガイモは、どのようにも味つけ出来ますが、甘みの強いサツマイモは、料理にあまり向きません。
     戦後の食糧難をサツマイモで過ごした世代には、飢えをしのいだ苦難の思い出がこびりついていていや、というムキも」

     しかし、サツマイモの成分を知ると、決して飢えをしのぐための食べ物だけではなかったと気が付きます。
     成分のなかで、よく知られているのは繊維質ですが、これには整腸作用があり、便秘を防ぐ働きをします。
     また、最近では大腸ガンを防ぐことも分かってきました。さらにコレステロールを抑制し、糖尿病を防ぐとも言われます。
     また、忘れてならないのがビタミンC。
     サツマイモ100グラム中の含有量は30ミリグラムです(ジャガイモ23ミリグラム)。
     成人男子が1日に必要なビタミンCが50ミリグラム。
     サツマイモは、ビタミンCの有効な供給源といえそうです。
     例えばこれをサラダに付きもののレタスに比べてみると、レタスのビタミンCの含有量(100グラム中)は6ミリグラム。
     レタスだけで1日に必要なビタミンCを摂取しようとすれば、至難のわざです。
     その点サツマイモなら、100グラムや200グラムはペロリと食べられます。
     ビタミンCに加えて、ジャガイモと同程度のビタミンB1も。
     カロリーはジャガイモよりも高いものの、それでもご飯やパンよりは低値。
     太るからと敬遠してしまうには惜しい食品なのです。

    (58・10・5 サンケイ)




クリック 引き続き、成分について(6)へ






ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 青汁 健康と青汁 上の階層へ
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法

Copyright 2011 05 田辺食品株式会社