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1. 夏にそなえて 南洋野菜をおすすめします

     宮崎市 渡辺 忠夫

     日本人は一体にセッカチで、季節に先駆けたものを欲しがります。
     農家の野菜の栽培も、如何に季節に先んじて、言わば季節外れのものを作って出す事に熱心で、園芸の指導も殆んど、此の点に主眼を置いています。
     しかし、昔から言われている通り、天の時を得たものが一番順調な繁栄を示すもので、天の時に従わない行き方には、万事無理が伴います。
     ビニールハウスや農薬等の近代的な智恵を働かして、無理を通す事が、あだかも園芸技術そのものの様に考えられていますが、真の天の時を忘れて仕舞うと、大きな矛盾に突き当る事が多いです。
     南洋野菜の栽培について言いますと、エンサイ(甕菜)は立夏(本年は5月6日)が播種適季です。
     バイアムは夏至(6月21日)頃から、立秋(8月8日)が播種適季です。
     エンサイは一度播いて育てれば、秋の冷気が来る迄続けて毎日でも収穫出来ますが、バイアムは播種後20〜30日ぐらいで幼植物が20糎ぐらいに育ったとき収穫して食べて下さい。
     大きく育ったバイアムは青汁にするなら兎も角として、サラダや油いため等の料理にするには硬過ぎます。
     バイアムは、夏の炎天の太陽エネルギーを迅速に野菜の形に変える、特徴のある南洋野菜です。南洋野菜は、一体に素朴な風味ですが、青汁としてケールの補いに、又銷夏食料として是非作って頂き度くおすすめします。
     序にケールの採種について一言。
     早く花の咲いたもの、種子の早く熟したものから採種しますと、此の様なセッカチの採種を毎年繰り返す事に原因して、ケールの品質を劣化させます。むしろ開花の遅いもの、品質の優れたものを撰んで採種すれば、多汁巨大なツリー・ケールに近づいて、優良系統のケールに近付け得るかと愚考致している次第です。
     日本人が既に徳川時代から実行して、ケール(当時オランダナと呼ばれたもの)から美しい、ハボタンを育種した技術、ケール類の挿木による無性繁殖と併せて、二年子を採種する方法等、ケールの品質向上に応用される事をおすすめします。

    (日南市サボテン公園技師長)


2. 大地の恵みを生かす自然農法

     宮崎市 渡辺 忠夫

     最近の風潮として、「考える農業」の提唱が普及したのは宜しいが、金銭欲ばかり考え度がって、労力を惜しむので、農業が大地を離れ人工的農法に変って仕舞った。
     稲の収穫が終り次第、一日でも早く出稼に行って収入を得度いと、稲葉を焼き棄てる。その様な事だから堆肥等は殆んどつくられなくなった。
     化学肥料に依存するばかりで、地力は衰える一方だ。その代り肥料は進歩して窒素、燐酸、加里の三要素ばかりでなく、微量要素等も配合し、作物の必要とする肥料養分の総てが配合されたものも出来た。
     進歩した肥料を用いた水耕栽培、或いは礫耕栽培が、新しい農法として脚光を浴び、化学肥料だけに頼った農法が一般的傾向となったが、大地の地力を無視したやり方だから、どうしても病虫害の発生が多くなる。従って、防除の為の農薬を多く使用しなければならぬ事となった。
     
     農薬の人体に及ぼす害毒は単に農業従事者ばかりでなく、農作物たる食物を通じて全国民の健康を脅かしている。
     「自然農法」は此の現在の農業の行き方を反省して、化学肥料を使わず、耕地に有機物を還元して、土壌中の微生物の活動を旺盛にし、活きた土壌の地力に頼って丈夫な作物を育て、農薬を一切使わずに、安心して食べられる食物を生産しようとの反省農法で、逆戻り農法とか、古臭い農法とかの悪口を言う方もあるが、古来行われて来た農法の真髄に復帰する農法である。
     夏は昆虫の活動も活溌で、病菌も蔓延する季節だが、エンサイとバイアムは南洋野菜の特質として、此の自然農法に最適のものだ。大地の恵みを生かし、真に健康に役立つ自然食品として作って頂き度い。

    (延才会幹事)


3. (智慧) バラの水揚げ

     ニ 三 一

     私は花が好きだ。机上の花瓶になにか花を入れてないとものたりない。
     それで庭のせまい地所に花をつくっている。
     月の出ているときに、汐がみちてる時に、花を切って水切りなどして花瓶に入れると、ひらきかけたツボミが開くと言う・・・それでバラのまだ蕾のひと枝を右のようにして花瓶に入れてみたのだが、どうしたものかうまくいかない。
     いつだったか夫婦万頭を買いにいった店で見た水盤に活けてあるバラの三輪ほどが見事にひらき咲いているのに心を誘われ、おかみさんにたずねてみたら、水切りしたあとで切口を十文字に鋏で切り込んで置くと蕾のバラがこんなに完全にひらくのですよ、と教えられた。
     近頃になってその効果の本当であることを歓んでいる。


4. 健康土つくり(痕跡要素の補給)

     植物の生育に必要な肥料成分には、いわゆる主要成分(窒素・燐・加里・石灰・苦土など)のほかに、痕跡成分(痕跡要素)といわれるミネラル分がある。
     これは、ごく微量――あるかないかの痕跡程度にしか必要ではないが、これ無しには植物は満足にそだたない、というもの。
     ふつう、鉄・銅・亜鉛・マンガン・モリブデン・硼素などがあげられているが、植物に見出されるミネラルは60種以上にも上っており、その1/3は必須だというから、まだまだ多くのものがあり、それら同士の間にもまた複雑な相互関係があるようだ。
     そして、これらは、同時に動物(人間をくるめて)にとっても、同様、大切であることが、しだいにわかって来ている(鉄・亜鉛・銅・沃素・バナジウム・マンガン・クローム・モリブデン・コバルト・セレンなど)。

     ところで、これら痕跡成分は、現在、わが国の耕地の多くで不足して来ている、という。
     というのは、痕跡分が栽培作物によってとり去られること。雨水とともに洗い流されたり、地中にふかく沈下してゆくこと(約一米の深さのところに集積している)。などのため、表層耕土にはしだいに乏しくなり、ために地力の低下をもたらす結果となっている、というのだ。

     そこで、肥料が問題になるわけだが、以前よくつかわれた糞尿(人糞、牛馬鶏糞)・油粕(ナタネ油粕、大豆粕)・魚粉などの有機肥料では、窒素・燐・加里などとともに痕跡要素も含まれているので、それらが施用されている間には、痕跡成分の目立った不足を招く心配はなかった。
     それが、さいきんのように化学肥料が主になって来ると、これらが、いずれも、殆んど主要成分だけに限られているため(いくぶんの痕跡分の配合されたものも無いではないが)、その使用がさかんになるにつれて、痕跡成分と主要成分の間にアンバランスを生じ、耕地は肥沃になりながら、作物には病的徴候があらわれる、といったことになって来た。

     すなわち、そこに出来る作物は、外観はいかにも立派だが、質的には劣り、栄養分ことにミネラル・ビタミンが乏しくなり、味もよくない上に軟弱で、病害虫害をうけやすい。
     そこで、強力な農薬が必要となり、その汚染もさけられない。
     さて、動物の健康は、その飼料の生ずる土壌のミネラル分に直接つながっているのであり、こうした、ミネラル分の不足した不健康な(質的に劣るのみならず、あるいは有害であるかも知れない)作物で飼養される家畜は、本当に健康ではありえないし、その供給する食品(肉・卵・乳)また同様。
     あまつさえ、食品加工のすすむにつれて痕跡成分の失われる度合は、しだいに増す傾向にあり、したがって、これら不健康的農・畜産物に依存するわれわれの健康上にも、不利の影響はまぬかれない道理。
     そのうえ、農産・畜産・水産に使用される薬品。
     加工・貯蔵で添加される薬品類、あるいは医薬品の乱用、さらには、水にも空気にも危険(公害)がいっぱい。

     たとえば、粉塵や水によってとり入れられるカドミウム・鉛・水銀の量また、工業化の進展とともに増大するといわれているが、このカドミウムが痕跡成分の作用に妨害的にはたらくなどの点からも、条件はますます悪化しつつあるわけだ。

     かように、食品そのものが劣質となり、あるいは有害化されている上に、その摂り方また甚しく偏っており、全体として不完全きわまる栄養ともなっている。
     これでは、健康を維持することだけさえも困難で、医学のめざましい進歩にも拘らず、難治〜不治の慢性疾患がふえ、あるいは新しい、しかも診断・治療とも困難な病気まであらわれる始末で、国民健康の危機といっても少しもいいすぎではない状態になっているのも、あながち不思議ではない。

     いまやわが国は未曽有の繁栄を誇っている。しかし、それと同時に、多数の病弱者と尨大な医療費(昭和44年の医療費は、実に、国民総生産の5%にあたる2兆圓もの)をかかえているのだが、はたして、これで本当に幸せといえるのだろうか。
     また、このままで、はたして、いつまでこの繁栄をつづけることができるだろうか。ふかく顧みなければなるまい。
     これに対処する方策も、いろいろ考えられているようだ。しかし、ただ、申訳だけの公害立法や、医療機関・福祉施設の拡充整備、もしくは新治療法の開発といった、姑息的な施策だけでは、到底、根本的に解決しうるものではない。
     何としても、まず、国民全体の健康化がはからねばならぬ。しかも、その前提となるものは健康(良質安全)食品の供給であり、その根底となるものは土壌の改善。ことに痕跡要素の補給による健康耕土つくりでなければならぬ。

     さて、この意味での地力回復方には、従来、篤農家の間で行われていた

      1)深耕(一米内外の天地返しによって、沈積しているミネラル分の掘りおこすこと)、
      2)客土(ミネラル分にとむ山の赤土ことに処女土、または池・沼・溝・湖・海の沈泥を入れること)、
      3)緑肥・堆肥と草木灰の施用、

     などがある。
     いずれも有力な総合的ミネラル供給法であるが、人手不足の甚しい現在の農家では、1)・2)ともに不可能。
     いくらか可能性のあるのは、精々3)だけであろう。
     しかも、薪や炭のつかわれなくなった今では、木灰の使用もまず不可能にちかい。

     さて、緑肥・堆肥には、山野の草や若木の小枝、落葉、田畑の境界や畦畔の草、あるいは海・河・沼・湖の藻などが施用された。
     山野の、ことに処女地の草木は、栽培物よりもミネラルにとむこと。
     ことに根の深い草木は深層のミネラルをも吸収していること。
     痕跡ミネラルは植物の種類によって含まれ方がちがっていることなどから、栽培物(稲わらなど)よりも山野自生の草木を種々とり合わせる、という昔の人のやり方は全く合理的であったわけだ。
     また海藻は、すべてのミネラルにとむ海水中にそだつものだけに、あらゆるミネラルの良給源だ。
     なお、これら緑肥・堆肥は、草木灰が単にミネラル補給に限られているに反し、同時に、土壌菌の繁殖をさかんにすることにも役立つので、より有利であり、主要成分源として糞尿・油粕・魚粉などが併用されれば、さらに有利なわけ。

     以前(少なくとも30〜40年まえまで)は、肥料といえば、すべてこうしたものばかりで、その他には、石灰を施すだけ。化学肥料といったものは、少しもつかわれなかった。しかも、作物の出来はいつも上々。味もよかった(養分にとむ証拠)し、病虫害にも強かったので、今日のような猛毒性の農薬をつかう必要は、さらになかった。
     そして、それを食べる家畜も人間も、頑健そのものだった。
     これに戻すのだ。もっとも、その実行には莫大の量の材料を必要とし、小規模の家庭菜園はともかく、ひろく一般の実施には、ことに近接した採草地のないところでは、材料供給の点からだけでも容易なことではない。
     けれども、国土の3/4は山であり、四面は海だ。もし国をあげて遊休山林原野の草木や海藻の利用をはかるならば、決して困難でも不可能でもあるまい。

     粉砕し、細菌処理によって促成腐熟堆肥とし(粗材は動力源の燃料としその灰も利用)、適宜に圧縮、団塊にすれば輸送にも便利だ。
     こうした堆肥を大々的に、かつ安価に製造、供給する機関の設置こそ目下の急務というものではないだろうか。

     そして、いま一つ。少なくとも一米の天地返し可能の耕耘機を全国に配置し、全耕地に周期的(3〜数年に1回)の深耕を実施すること。
     ともかく、こうして地力を回復強化し、化学肥料・農薬依存の、増産のみを目的とする不健康農法から脱却し、真に健康的な自然農法を復活、安全かつ良質の食品を供給しない限り、また、空気・水の公害にたいすると同様、すべての食糧についても(食品公害)、健康優先の方策(行政的にも企業的にも)が講じられない限り、わが国の運命は、やがて、国民の健康崩壊という破局に逢着することもさけられないであろう。 
    (45・8)

    おことわり
     本文は本紙185(47・1月)号に掲載したものですが、希望により再録しました。 (係)


5. お化けケール

    徳島市 B.H. 

     幹の長さ3メートル、葉のたての長さ45センチ、横の長さ(幅)35センチ。おそらく、日本一のケールでありましょう。ケールを栽培しはじめて、20年近くになるが、こんなにすばらしい出来ばえは、はじめてです。
     同じ場所で、同じ土で、どうして、こんな異常な生育をみたのだろうか、その原因は、私には、判らない。しかし、ただ、一つ考えられることは、昨年春、苗を移植する前、土を掘り起し、草木やわらのくずなど、堆肥を、土中深く、埋めたこと。鶏糞と科学肥料を一切使わず、少々高くつくが、油かすと石灰を半々に混ぜた肥料を、1ヵ月に約1回のわりで、たっぷりと施肥したことであった。
     今は、緑の葉は、凋落しているが、3メートル余りの上空で、花火が、開いたように、種子をつけた茎が、四方に手を広げている。
     今年も、このような成果が、得られるか、どうか。やっと、育った10センチほどの苗を、せっせと、移植をはじめている。


6. 立派なケール畑

    盛岡市 T.S. 

     青汁も土つくりよりはじまり、今では立派なケール畑を作れるようになりました。
     寒い土地で、今年などは土も見えないくらい雪にうづもれています。
     青汁もケールより、といいますと、なかなか大変なことがよくわかりましたが、12月一杯まで、家族全員、毎朝1合づつのみました。畑は山の頂をチョンぎったような場所で、土が大変悪いところでしたので、堆肥つくりにはげみました。今では写真のように立派なケールがつくれるようになりました。素晴しい風景のもとでせっせと育てています。(写真の背景は岩木山)


7. ケールの顔

     田辺 光正 

    ピロサンの材料ケール

     私が20数年前、青汁を始めて間もなく、遠藤先生にツリーケールとチキンケールの種をいただいて、試作したのがケールを知った最初でした。ツリーケールは、オバケ野菜といえる程大きくなり、青汁の材料にうってつけでした。今では先生の配布によって、日本中に広がっています。チキンケールは葉が小さくて、縮んでいて、収量が少なく、見捨てられました。
     その後、私が大阪に出て、種苗会社から求めたケールは別の種類で、小さく、5月末頃の気温に根本から腐ってなくなってしまいました。なお、中南米には、細葉の小さいケールや、台湾には口を食べるものもあるようです。
     ケールは、寒い所から暑い所にまで、非常に多種類がありますが、その中から、遠藤先生が選択されたツリーケールは、生長力、収量、緑野菜としての美味しさ、また、四季を通して採取できること、それに最近特にさわがれる安全性の問題にも、すべてに最適のものでした。その上、昔から永い間、人々が野菜として多量に食べてきたという歴史がありました。
     先生が、長年の経験から、青汁の材料として最高のものをと求められた結果の選択であったろうと、今更のように感心しています。この安全性の確かなケールの恩恵で、青汁が実行され、多くの人々が助けられています。今後も青汁をより安全に実行してゆくためには、ケールの栽培や改良に力を注がねばと考えています。そこで小さな体験ですが、乾燥青汁「ピロサン」の製造工場の設定地の計画からケールの栽培の実際を報告したいと思います。
    ケールの栽培地選定

     今度のピロサンの製造工場は、日本で一番栽培条件のよい所にしたいと考え、日本地図を何度となく開いて眺めました。
     先づ早魃、雨量、日照時間を見当にして、和歌山県南部と九州南部を調査しました。その結果、自然条件は今の日南が理想的でしたが、台風銀座の異名のある所でもありました。川の水は冷く感じる程よく澄んでいて、小魚や小えびも住んでいるし、長たにしや、手長えび(現地ではだくまえびと呼ぶ)も沢山います。5・6月頃には、源氏蛍が飛びかい、都会では忘れられた美しい光景が見られます。また年の瀬頃には、川を稚えびが蟻の列のようになってのぼると聞きます。これらは、自然がまた汚されていないことを目で確められる証拠だ、と考えました。事実、先進農業地より、農薬使用の頻度ははるかに少ないようです。だが、これを裏返して考えれば、ケールの害虫もまた多いだろうと、予測できるわけでした。
     しかし、日南の農家は刈草や農産物を主に飼料として和牛を飼っています。このことから堆肥が沢山有ることを知り、害虫や台風との闘いは、承知の上、自然条件のある日南に、理想の堆肥栽培・無農薬を実行するケール栽培地と決めたのでした。
    無農薬ケール日南の地に育つ

     私は日南地方に知人は全くありません。そこで、農協や農業改良普及所をたずね、色々指導をお願いしました。ケールの珍しさから、初めは、農協も協力的でしたが、技術段階になって、「農薬を使わないで菜っ葉ができるものか」と、全く相手にされなくなり、困ってしまいました。これでは、直接、農家に協力をお願いするしかないと考えて工作中、地元の高橋さんのご協力で、やっと11人がケール栽培の説明会に集って下さいました。
     皆、一応、趣旨がわかって集った人達も、改めて「農薬は絶対に使わないで下さい」、というと、大きな溜息をついて、「青虫が葉を食べて穴だらけにしてしまう」、といわれました。そこで、私のいうようにして、穴だらけになったケールも出荷して下さって結構です。穴のないケールはできないはずです。穴もない、虫もいないケールは受取れません。私がこれからつくるピロサンは、ケールを何十分の1にも濃縮したエッセンスです。これを利用するのは、体の弱い人が多く、ことに腎臓や肝臓等のむづかしい病気の方々が毎日沢山のピロサンを使っています。また、医者に匙をなげられたような病気の方も大量に使うことがあります。もし、原料のケールに農薬が使われていたら、その何十倍もの影響が体の弱った人々にかかります。そのために弱い体がより弱っては大変です。農薬の使用は絶対に困ります。と説得して、自然の味方が天敵である話を続けました。

     青虫の大敵に青虫コマユバチがいますと、そのマユを見てもらいました。皆、初めて見た様子で、他にも青虫コバチもいれば、クモ、足長蜂、小鳥類、青蛙、ハンミョー等、数え上げると切りがない。これらが活躍できれば農薬など使わなくてもできますよというと、それでできるなら高い薬を使わなくてすむ、やって見るといって、協力して呉れることになりました。
     私の経験は誠に貧弱なものでしたので、指導に自信は全くありませんでしたが、どうしても成功させなければ、多量のピロサンや粉末を人々にすすめることができません。必死の思いで指導に当って来ました。

     最初の年、2月に白い蝶が舞い始め、この寒いのに今から青虫につかれてはと一瞬とまどい、指導したことで大丈夫かな、と心細い感じがしたものです。もし指導があやまれば、協力者の農家の人々もケールから手を引いてしまいます。一度失敗すると二度と協力は望めません。私にはそれをくい止める方法はありませんでした。
     指導はしたものの日南に於けるケールのことも、また虫のことも、実際、初めてで何一つわかっていません。農家の人に会った時は自信満々でなければなりません。農家は私の依頼でケールを契約栽培しています。指導に間違いがあれば私には破滅となります。そこで何とか農家から問題を提起される前に指導することが必要となり、ケール畠を丹念に見廻りました。

     ある日、畑で作業中の人に会うと、「田辺さん青虫がいますがどうしましょう」と困り顔で云われました。そこで、自然に、「目に見えたらつぶした方がいいです」と答えて通り過ぎました。今では、5・6月頃になると虫取りをしている姿をよく見かけますが、本当に御苦労様ですと頭のさがる思いです。
     これからのケール作りが楽になるよう共々考えて行きたいと思っています。例えば自主駆虫法の研究、植物の並植や器具の研究。いま一番面白いと考えているのはケール畠にヒヨコを放し飼いにすることです。このヒントは、私の長女が死にそうに弱ったヒヨコを近所でもらったことがありました。これに青虫をあたえ、3羽とも元気に成長して鶏になり、知人に差上げて食べていただきました。この鶏を思い出しての夢ですが、実際は色々問題があります。ヒヨコの敵となる猫・犬・いたち・蛇等地上の生きものの他、空からはトンビ、タカなども害を加えるでしょう。しかし、一石二鳥になることだし、どうにかして実現出来ないものかと農家の人にも提案しています。以上が農薬を使わない為に実行したり考えたりしていることです。
    肥料の実体

     現在の農業は、化学肥料に頼りすぎて、土地が死んでいるとまでいわれている状態です。そこで、生きている土でケールを作りたいものと思っていました。
     ケールは肥料によって少しづつ色が違ってきます。尿素の場合は葉の表面が幾分白味を帯びています。アンモニヤの場合は、葉の表面を洗い流したようになり、石灰窒素は黒味を帯びた緑色にと、少しづつケールの顔色は違ってくると、私は思っています。
     そこで、農家と契約の時、ケールの栽培に化学肥料を使うと病気が出やすくなって具合が悪いから、堆肥と石灰を充分使って作って下さいとお願いして来ました。けれども、初めの中は、畠を廻って見ると色の違うケールがありました。畠で作業をしている人に、「これは色が違うようだが肥料は何をやりましたか」とたずねると、「ちょこっと尿素をやりました」と正直な返事が返って来ました。そこで、「化学肥料は病気に弱いケールにします。せめて鶏糞にするとよかったですね」という具合でした。

     畠に堆肥を多く入れる程ケールは沢山取れるといっています。現在では、10アール当り5トン位の堆肥を原肥として一作のケールを取り終っているようです。堆肥の状態は、牛舎にのこくず又はもみがら、わら・草等を入れて、牛糞と混ったものを積んで置いて腐らせたものです。この地方の牛飼いは、農家が和牛を農作物や刈草等の自給飼料で小規模に育成してできた廐肥なので、より安心でした。大規模飼育や乳牛には濃厚飼料が使われていて、絶対心配なしとはいえない点があったからです。こういう意味で、調査中の自然条件の中に日南の堆肥を考慮に入れていたのです。ケールの顔色にもう一つ大切なことがあります。下葉が黄色になり、元気の良いはずの葉も黄緑色になり、さらに赤色が表面に出て来ます。この状態が進むにしたがってケールの成分も、また急に変化して来ます。澱粉と燐が多くなり、目的のビタミンやミネラルが減って1/5以下になるものと思われます。

     また、このようなケールには亜硝酸が増えているのではないかと気になります。一口にケールといっても大変な違いとなるのです。これは肥料切れの場合ですが、排水の悪い時や、石灰分の不足した時にも同様な状態がおこります。石灰と排水に注意する必要を感じています。昨年の2月中頃だったと思いますが、ある農家が、「堆肥を充分入れてあるのに黄色になって来た。この度はもう駄目だから尿素を使わせて下さい」、といって来られました。私はすぐ畠を見に行って「石灰はどれ位やりましたか。」と聞くと「10アール当り三俵くらい」とのこと。「それでは石灰を、またやって見なさい。元気になるかも知れませんよ。」というと不思議そうな顔をしていました。
     その後、15日くらいたってその人に会った時、「石灰もきくものですね、元気になって来ました。」と喜んでくれました。色々なことがありますが、今のところ指導が的中して安心して私の話を聞いて下さる感じで喜んでいます。しかしこれから先もっと難かしい問題が出て来たらどう切りぬけたものかと内心びくびくしています。

     去年の春のことでしたか、「ケールに硝酸塩が。」と報道されたことがありました。さんざん調べて見ましたが結局、問題はないと納得できました。遠藤先生のお勧めもあって、ピロサンの亜硝酸塩の分析を機関に依頼しましたが、結果は、「亜硝酸塩は検出せず」との報告を得まして安心いたしました。それも、化学肥料に頼らず、手はかかっても堆肥で作り、農薬も使っていないからこそ、どこから横槍が入っても胸を張っておられるのだと、晴々とした気持です。これひとえに農家の方々のご協力のおかげと、心から感謝しているしだいです。

    (田辺食品研究所々長)


8. 死んだ土

    山形県 H.H. 

     十数年まえから、青汁を少量づつのんでおり、ケールは、拙宅の裏畑につくって、自作の種子で栽培しておりました。
     肥料は、便利なため、化学肥料のみ使っておりました。
     一昨年、気づいた時には草丈は一尺くらいにしかならず、病気になりやすくなっていました。
     驚いて、昨年、今年と、堆肥を入れたり、石灰を入れたりしましたが、一旦死んだ土地は仲々うまく生きかえらず、今年も背が小さく、病気にかかっております。
     また、自作の種子はまずいかと、東京で市販のものを使いましたが、これもよくありません。
     思いあまって本部の種子をお願い申しあげます。

     種子のせいではありません。何といってもまず土つくりです。


9. 質問箱:ケールのベト病

    福岡県 S. 


     ケールのベト病に悩まされています。よい方法はありませんか。


     やられたものは焼きすてる他ありません。
     薬にも適確なものはありません。
     株間をひろくし通風・水はけをよくすること。
     堆肥を主とする有機質肥料を十分に施すこと。
     次々に播種して、わかい元気のよい後つぎをつくっておくことです。


10. 丹誠こめていたのに

    大分県 E.S. 

     その後、ケールはすくすくと成長して来ました。
     小さい時、油虫が沢山でき、全部を、手にて、1枚づつつぶし、虫もすっかりいなくなり、青虫も見つけしだい殺し、この害からも守ることが出来ました。
     今は、大きいのは60センチ程になり、青々と元気よくそだっています。
     1週間ほど前から、大人3人で飲みはじめました。
     朝食前にのみますと、前に一度お通じがあっていても、朝食後すぐに又あり、青汁の少しまじったような、やわらかな便が出ます。
     ほかの者も、少し下痢するようだ、といっています。
     私は、1日に2回、計1合5勺のみ、一番多いせいか、昨日、湯上りに、体が熱くて、私一人、扇風機にかかりました。
     仕事にも疲れないようです。
     ところが、こんどは、15坪の畑にベト病が出はじめ困っています。
     何かよい方法はないものでしょうか。

    (かかったのは焼き捨てるほかありません。
     堆肥を多くし、風通し水はけをよくして下さい)


11. 質問箱 アブラムシの退治法


     アブラムシの退治法をおしえて下さい


     農薬にはニコチンものがありますが、タバコの吹いがらを、濃い番茶くらいに煎じ粉石ケンを少しとかして、ぬるのも同じ理窟です。しかし、もっとも安全であり確実なのは、指でつぶすこと。


12. 質問箱 ケールの種子とり

     4月になるとどんどんトウがたちはじめ、黄色い花がいっぱいつき、6月にはうんと種子がとれる。
     ところで、この種子とりの大敵のアブラムシ(アリマキ)がはびこると、養分を吸いとって枯らし、種子はとれなくなってしまう。
     しかも、花のつきはじめから、花のあいだ中はもちろん、花が散ってサヤだけになってからも、ずっと悩まされる。
     まずつくのは、きまってトウのとっさき。
     初めは2〜3匹しかいないのでつい、うっかり見おとす。
     ひどい繁殖力で、翌日はもう、うんとふえ、群がりついている。
     だから、1日とて油断はできない。
     株によって好き嫌いがあると見え、ほとんど全部の枝につくのと、さほどでないのとがある。いったいに、風通しの悪いところや、かげになったところにつきやすいので、小枝の繁る株には、よほど気をつけないと見落してしまい、枝全体にまぶれついているのに驚かされることがある。ともかく、毎日こまめに点検して退治しておくことが肝腎だ。退治方には、薬剤もないではないが、指でつぶすのがいちばん簡単で効果的だ。


13. 質問箱 寒さでケールがすっかりやられて


     この冬はきびしい寒さでケールがすっかりやられてしまいました。よい対策はありませんか。


     古いケール(前年秋まきや春まき)はやられても、若い(8〜9月まき)のはシャンとしています。「ケールの作り方」に、1年に3〜4回まくよう書いてあるのは、こういう不測の事故にそなえるためです。


14. ケール雑考

    徳島市 B.H. 

     遠藤仁郎先生から種子をいただいて、栽培をはじめて、かれこれ、25、6年はなるだろうか。栄養価は、もちろんだが、1年生であり、うまく栽培すれば、2年生ともなり、常時、飲用が、続けられるという利点が大きい。
     しかし、欠点も、ないではない。

    軟腐病(腐敗病)
     6月より7月にかけ、幹が、腐り枯死する。最初、苗を移植するとき30センチほど、床を掘り、一番底に、荒い堆肥を、たくさん敷き込み、その上に、石灰を、撒布する。終ると、更に、その上に、油かすをまぜた細い堆肥を敷き、最後に土をきせる。
     支柱を立て、なるべく浅植えにする。そうすると、水はけと通気が、よくなり、根腐りの防止と吸収根への酸素の供給量が、増加し、健苗となり、病気にかかりにくい。
     どんな植物でも、移植する前、床も、深くたがやし根の延びるところを、柔かくし、通気と水はけを良くしておくことは、きわめて大切です。鉢植の原理と同一です。

    青虫
     春と秋と2回、紋白蝶の被害に、泣かされない方はないだろう。
     消毒すると、他の葉に、消毒液が飛散するし、さりとて、一々、つぶして廻るのも、毎日、大変な作業です。
     子供が、蝶をとるための竹の柄のついた網、2百円ていど。
     これを買って、見つけたら、蝶をとらえ、すりつぶすのです。しばらく続けると、蝶が来なくなります。蝶にも、生命保護の本能の上に、更に危険を予知する霊感が、あるのであろうか。不思議と、来なくなることは、事実です。

    アリマキ(アブラ虫)
     6月の終りごろ、花が散って、実のさやが、つきはじめると、アブラ虫が、沢山つき、養分を吸い取り、種子の収穫が、できなくなる。
     繁殖が、旺盛で一々つぶしても、すぐ全面に広がる。
     虫が、つきはじめると、さやのついている穂先に、30センチほどのビニールの袋をかむせて、元を軽くしばっておく。
     実が、熟して、褐色になると、収穫する。
     桃や梨の防虫のための紙袋の袋掛けからヒントを得たのです。

    冬の飲用
     酒をカンする容器で、人肌ていどに、温めて飲む。
     味付けは、黒ざとう、蜂みつ少々。 


15. オクラ発芽させるコツ

     オクラは北アフリカ原産で高い温度を好み、温度が低いと発芽まで日数がかかります。
     25−30度あれば1−2日、20度ぐらいで3日、15度で9日かかります。
     畑に直まきするのは中旬以後が安全です。
     オクラは種をまいてから花が咲くまで60日くらいかかりますので、早く収穫するためには、地温を上げるよう工夫します。
     簡単な方法はビニールはちにまく方法です。
     直径7−8センチのビニールはちに肥え土を入れ2−3粒の種をまき水をやります。
     ビニールはちはトロ箱に並べて入れて、上にビニールをかぶせて、南向きの日あたりのよい縁側に置いておきます。
     発芽してビニールを持ちあげて来たころに、ビニールを取り除き本葉2、3枚までに畑に植えます。


16. 紫色の葉になった

    栃木県 N.Y. 

     ケール並にピロサンを愛用して健康を保っておりますことを常に感謝いたしております。
     今冬は厳しい寒さなので、日蔭のケールが枯れてしまいましたが、日当りのよい処は元気で、1枚1枚大事に頂いております。
     実はそのケールが、自家採取の種を播いておりましたら、昨年秋にまいたものの殆どが紫色の葉になりまして、丁度観賞用の花キャベツの色です。
     グリーンのものも少し出ておりますが育ちが悪く採取出来そうもありません。

    (59・2)

    ○ケールはキャベツの原種で、これからキャベツやカリフラワー、ブロッコリ、ハボタンなどが出たのですから、あるいは、そういう変種かも知れませんが、寒さのためだけでも紫がかって来るものです。


17. 天敵利用の無農薬自然農法

     宮崎県 渡辺 忠夫

     夏にはエンサイ、バイアム、冬にはケールと小松菜と濃緑粗朴な、強健な蔬菜を農薬を一切使わないで、自給栽培しましょう。
     小鳥やトンボ、カマキリ、クモの類やガマ蛙、トカゲの類等害虫を喰べて蔬菜を守ってくれる天敵を可愛がってうまく利用しましょう。
     菜園のスス払いをしてクモを殺すのは害虫のお手伝をした事になります。
     ガマ蛙やトカゲは夜の菜園を守って蝸牛(かたつむり)夜盗虫等夜行性の害虫を捕食しますから、形がみにくい故をもって、いぢめて追払う様な事をしない様に願います。
     農薬は害虫も益虫も共に殺し人間の健康を害しますから、一切の農薬を使わずに天敵任せにしたらよいと主張するものです。
     『あなたはそれでも良かろうが、自分達は生活が掛っているから左様には行きません』と農家の方から反論されました。
     皆私達が学んだ農業には賀川豊彦の立体農業論とか、多角経営の晴耕雨読自活論とか、農園芸自体に理想が在って『商工従業者並みの金銭収入が目的だ』とか、金さえ儲かれば自他の健康や生命を多少無視しても、法律で許された範囲の農薬を使って何が悪い、と言った金儲け萬能主義の農園芸はありませんでした。
     間違いだらけの日本の農政に混迷を深めている農家に言っても無駄ですから、せめて延才園芸の家庭菜園だけでも、完全な無農薬で天敵動物愛護に徹して頂き度いと念願します。


18. 芯喰い虫と根くらべ

     愛媛県 越智廓明

     ケールを十年以上も栽培しています。
     青虫は左程にないのですが、近年、夜盗虫のはげしい喰害と、大きく成長したケールの芯をおかされるのには閉口しています。
     この春の苦い経験から、今秋は負けじと取りくんでおります。
     隣の畑のさつま芋の収穫を終えた10月初旬より、昼間ケールに夜盗虫が見つかるようになりました。
     1日に2回位捕りましたが、捕っても捕っても出てきます。
     とうとう数日前(10月23日)より夜の捕虫にかかりました。
     とても楽に捕虫ができ、多い日は70匹位。その翌日は20匹。
     昼間は芯の中にたくみにかくれているのをみかけますが、いないケールが多くなりかけ、成果があがってきたと思います。
     村人はキャベツ地帯だから異常発生すると云っています。
     そら豆、豌豆などもこの虫のわく原因と聞きました。
     作物の根元へまく薬もあるそうですが、捕殺で頑張っております。

    (61・10)
    愛媛県 曹洞宗大通寺住職 越智廊明(74歳)




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