健康と青汁タイトル小
 栽培方法インデックス

栽培方法(1)
栽培方法(2)

栽培方法(3)
栽培方法(4)
栽培方法(5)
栽培方法(6)
栽培方法(7)



1. 特集 ケール栽培の基礎知識 座談会

     青汁の普及に伴なう根本問題は、材料の確保である。青汁材料の栽培は、普通の野菜栽培と、いささか様子が異なる。自家用栽培をするにも、事業として栽培をするにも、それ相応の知識が必要である。
     在来の常識で栽培すると、栄養保健上、青汁飲用所期の目的を達成しかねる恐れがある。青汁飲用の奨励を試みた、ごく初期においては、普通の青野菜や野草や木の葉などを材料にしていたので、青汁は容易に普及しなかったが、ケールを栽培するようになってから、ようやく普及し始めた。
     ところが最近は、急速に青汁が普及し始め、材料確保が緊要の課題となってきた。まず遠藤青汁協同組合(最近遠藤青汁友の会に改組)においては、材料不足で霜要に十分応じきれなくなっている。
     また家庭で青汁を作ろうとする向きには、材料を十分供給することは殆んどできない状態である。いうまでもなく、材料栽培が、事業として、まだ普及していないからだ。
     さらに自家栽培については、どこも苦労しているようである。
     そこで、遠藤青汁の会は、ケールの栽培について、去る2月11日、約3時間座談会を開き、とくに、多年実地に研究を重ねて、ケールの栽培事業に道を開いた、一部もよりの方にお集り願い、その苦心談をかわして頂いて、読者のご参考に資することにした。
     参会者は、倉敷市の栽培家長山卯吉、木村寿一、福山市の藤井一郎、この集団栽培を指導している伊藤清の四氏と、遠藤仁郎、貝原邦夫、宇田伝一、友成左近の四氏。
     他に、岡山県一宮町中山小学校の富山校長ほか三氏が加わった。(一宮町においては、三小学校と一中学校の四校に青汁を給食する共同施設を作るため、すでにケールの栽培用地と栽培業者を確保して、目下植付準備中)。発言は、理論的実際的に、また業者むき自家用むきに、極めて多面にわたっているので、限られた紙面で、これをすべてお伝えすることは容易でないので、いくつか主要問題点をあげて要約することにした。発言者に深謝すると共に、ご了承をお願いする次第である。

    (友成左近)


1-1. 青汁材料の要件

     青汁飲用の目的は、毎日の食事に著しく不足している緑葉を、生のまま、できるだけ多量に、毎日摂取して、完全栄養食をはかることだ。従って、青汁材料はそれ相応の要件を備えたものでなければならない。

    良質であること
     第一に、栄養上優秀な性質を備えていることだ。各種のミネラル(とくにカルシウム)とビタミンを、豊富に含有しており、それが最もよく吸収され利用される性質のものであり、決して副作用を引き起こすようなものを含有していないことだ。

    味がよいこと
     第二に味がよいことだ。栄養上優秀であることと、味がよいこととは、だいたい表裏する。普通の野菜は味つけをするので、それ自身の味は、それほど重視しなくても、すまされよう。だが青汁は、味つけをしないので、材料自身の味がよくなければならない。

    周年栽培できること
     第三に、年間通じて栽培し収穫できることだ。とくに冬季、それから夏季に不足しないことだ。

    収穫が多いこと
     第四に、坪当たり収穫が多く、栽培収穫に手数が少なく、また洗浄し易い性質のものであることだ。

    安全清浄であること
     第五に、これは品種ではなく栽培に関することであるが、危険な農薬や人糞などは一切使わず、また、そうしたものに汚染されないように栽培した、安全清浄なものであることだ。これは、青汁材料に絶対不可欠な要件である。普通の野菜果物でも同様であって、たとえ毎日とる量が少なくても、やがては慢性中毒を引き起こす危険がある。だが青汁は、なにぶん毎日多量にとるので、容易に中毒を引き起こす恐れがある。

    ケールは最適
     青汁といえばケール、と連想されるほど、ケールは重宝されている。まさにケールは、品種として、こうした要件を最もよく備えているからだ。ケールは、本来飼料用作物である。わが国では、カキハカンラン、ハゴロモカンラン、チキンケールなどと呼ばれて、専ら養鶏用に利用されているもの、欧米では、広く家畜の飼料として最も重視されているものである。
     前述の要件を十分備えた品種であるからだ。また成分表をみても、極めて優秀である。だが、これは、センイが固いので、そのままでは人間の食用には不向きである。けれども青汁は、その固いセンイは取り除いて、栄養分だけを汁にして利用するのだ。
     ケールには、わが国の在来種以外に、ツリー(木立ち)ケール、ポルトガルケール、チヂミケールなどがある。これまでの経験では、ツリーケール、それからポルトガルケール、あるいはその配合種が栽培に最も適切であるようだ。


1-2. ケールの性質

     作物の栽培には、作物それ自身の性質を、とくと心得てかからねばならない。

    温帯性植物である
     まず第一に、ケールは温帯性植物である。わが国では、温度や日光の関係上、北陸、東北以外の地方ではだいたい周年栽培ができる。だが、冬季は霜がれてはしまわないが、成長は殆んど停止する。苗も温室を利用しなければ育たない。夏季は、成長がにぶる。苗もうまく育たないことがある。従って、年間通じて一定量の収穫をあげるには、この性質を考えて、四季に応じて、作付面積や収穫を調整しなければならない。

    好気性植物である
     第二に、ケールは好気性植物である。根に空気を十分与えないと、うまく成長しない。このため、用地は砂質土であり団粒組織であることが必要だ。
     粘土質であり単粒組織であると、水分は十分保っても空気が少ないので、栽培がむつかしい。客土したり、土壌改良剤で土質を改め、緑肥堆肥を十分施こし、耕作に格別努力を払わなければならない。

    適度の水分が必要
     第三に、ケールは水分をそう必要としない。だから畑作をするわけだ。水はけが悪いと成長がにぶり、ベト病にもかかり易い。だが何分、葉面積が広いので、水分の発散がはげしいため、つねに土壌に適度の水分がなければならない。
     このため、砂地や粘土質では栽培がむつかしく、砂質土であることが必要だ。また緑肥堆肥を十分施こすことが必要である。

    連作はそう嫌わない
     第四に、ケールは連作をそう嫌わない。土壌の老朽化防止と衛生に注意すれば連作できる。
     それには、有機質肥料と石灰を十分に施こすこと、いったん作ったケールは、葉も茎も根も、すべて必ず畑の外に出すことが必要だ。とくにベト病にやられたものは、決して畑に残してはならない。
     だが、もし作付面積に都合がつけば、適度に休ませることが望ましい。
     毎年、約2割程度でよい。休ませるといっても、ケールや、これと同種の作物以外の作物は作ってもよい。できれば肥料作物とくに豆科のものが望ましい。
     緑肥がとれ根粒菌ができ、空気中の窒素を固定して供給するようになるからだ。

    トウだちは、4、5月
     第五に、ケールの寿命は比較的長い。いつでも発芽するが、トウだちは4、5月だ。春まきは翌年の春にトウがたつ。秋とくに10月下旬以後に、まいたものは、翌々年の春にトウだちする。
     もっとも、遺伝や肥料の関係で、翌年の春にトウだちするものも少しはある。けれども、播種して収穫できるまでの期間は、季節によって異なるが、4ヵ月ないし7ヵ月と、比較的長い。また、収穫は、トウだちするまで長期間できるが、一定期間すぎると少なくなる。


1-3. 栄養成分と味をよくするには

     ケールは、本来、栄養成分が優秀であり、また味もよいのだが、作り方が悪いと劣ってくる。
     栽培には、それ相応の工夫が必要である。

    日あたり水はけのよい砂質土であること
     第一に、日あたり水はけのよい畑に栽培して、適度の水分を保つことが必要であるから、日照時間6時間以上で、砂質土の傾斜地が望ましい。だが、自家栽培とくに家庭菜園では、そうはいくまいが、とにかく日あたり水はけをはかり、適当の水分を保つように最善を尽くすことだ。

    基肥として有機質と石灰を十分に施こす
     第二に、肥料は、緑肥、堆肥、厩肥、鶏糞、油粕、などの有機質肥料と石灰とを、基肥として十分に施こすことである。毎年、反当四―六百貫は入れる。
     少なくとも、一反ワラ(約一八〇貫)に、その他の有機質と石灰窒素を加えて作った堆肥三百貫は入れる。
     とくに粘土質の場合は、緑肥その他の積肥を十分に施こす。
     石灰分は、毎年、反当一五貫は必要である。
     ケールの反当総収量は約四千貫(だが青汁材料として利用できるのはせいぜい、その半分)であり、、カルシウム含量は0.3%である。毎年、土壌から一二貫のカルシウムを吸い取っているわけだ。
     ロスもあるので、反当一五貫必要となるのだ。このため、有機質を反当五百貫やれば炭酸石灰なら一五貫、消石灰なら一〇貫ほどやればよかろう。この石灰分が十分あるかどうかが、有機質が十分あるかどうかと表裏して、栄養成分と味の優劣を決定する。それだけではない。成長がよく、収穫期間が長くなり、また病害虫にもおかされにくくなる。

    家庭菜園では
     ところで、家庭菜園ではどうするか。
     台所から出る厨介、庭の落ち葉、抜き草、ワラギレなど、とにかく有機質のものは残さず入れる。木灰も同様だ。成熟堆肥にして入れることができなければ、未熟のまま積肥とし、その上に石灰をばらまいて、土をかけたらよい。いつかは立派な堆肥となる。
     ただし、ケールは、朽ち葉も、茎も、根も、青汁のしぼりカスも、いったん堆肥にして醗酵させてからにしないと、連作がむつかしい。とくに病害をうけたものは、必ずそうする。ここがケール作りの一つのコツだ。いったい、これが、どれ位の重量となるかは、その家によって異なるわけだ。
     計ってみることは、いうべくして不可能に近い。そこで、ケールの育ち具合や味によって、不足しているようであれば(冬分アマ味が少なく、春はアオ臭さ、夏はニガ味シブ味カラ味が強くなる)鶏糞や油粕などを買って、然るべく追加したらよい。
     だが石灰分は、それでも不足するので、買って入れねばならない。坪あたり、五〇匁(二〇〇g)だ。

    新しい用地には
     ところで、庭を畑に開いたり、原野や山林を開墾した場合は、有機質と石灰分を、これよりウンと多量に入れる必要がある。

    追肥を度々やる
     第三に、これだけ基肥を入れておけば、だんだんときいてきて、半年以上はもつが、さらに時期をみて、追肥をやる必要がある。
     追肥は、少量ずつ度々やることが望ましいが、これには手数がかかる。少なくとも2、3度以上はやる。追肥は速効をはかるためであるから、成長前は化成、成長後は尿素や硝安が適切である。もちろん成熟した堆肥や、水にとかして腐熟した鶏糞や油粕も適切だ。硫安は望ましくない。
     これをやると、葉の成長はすばらしいが、病害虫にやられ易くなり、味も劣ってくる。また土壌に硫酸根が残って厄介である。窒素肥料は常に必要であるが、冬に向っては、とくにカリ肥料が必要である。
     寒さに耐えさせるためだ。冬の青汁にアマ味があるのは、寒さに耐えるため、糖分を貯えているからで、それにはカリが必要なのだ。だが、リン肥料は別にやらなくてもよい。これは、とくに実を結ばせるために必要なものであるからだ。

    活着後と成長期にやる
     追肥の時期は、定植後根が十分はってきた頃と、成長して葉がグングンついて収穫する頃だ。冬の間は、活動がにぶっているので、追肥をしても、あまり意味がない。それより、ワラなどで根元を被覆してやる方が適切である。
     トウだちする前はウンと肥料を吸い取るので、この頃追肥をやるのは損だ。追肥の量は、反当、化成一俵と尿素または硝安二、三俵が目安である。
     こうした追肥は、ウネの上に万遍にバラまいて、土をかける。でないと空気中に逃げていく。また、基肥に有機質が十分はいっていないと、土壌内にうまく保たれない。

    深耕して本床を作り中耕を怠らないこと
     第四に、こうした肥料をうまくきかせるには、深耕して本床を作り、その後の中耕を怠らないことが大切である。これは、栄養成分と味に関係するだけでなく、収量に深い関係があり他面、労力にも係わることある。


1-4. 安全清浄栽培と病虫害対策

     青汁材料は必ず、安全清浄栽培をしたものでなければならない。だから、肥料についても、病虫害対策についても、また用地の選定についても格別の知識が必要である。

    人糞は使わない
     第一に、人糞は決して使わないことである。十分腐熟したものであれば、回虫卵などは死滅しているが、人糞を使うとなれば、ついどんな手違いで、まだ十分腐熟していないものを使わないとも限らない。

    人間以外の動物の糞尿は大いによい
     人間以外では、どんな動物の糞尿を使っても差し支えない。鶏糞や家畜の厩肥は大いによい。ただ豚舎の厩肥は、醗酵し腐熟した後に使うようにした方がよい。豚に寄生する回虫、人体内で約3ヵ月は寄生するからだ。

    農薬は一切使わない
     第二に、土壌の消毒のためにも、除草のためにも、病虫害の予防駆除のためにも、農薬とくにホリドールなどの浸透性農薬は一切決して使わないことである。接着性農薬であれば、苗の間は、マアマアといえないこともないが、どんな手違いが起こらないとも限らない。というのは、この頃、除虫菊やデリス根などに、純粋なものは極めて少なく危険な化学薬品を加えた製剤となっているからだ。

    付近の田畑でも使っていないこと
     第三に、こうした安全清浄栽培をするには、用地の選定が重要である。
     その用地では一切人糞や農薬を使っていなくても、付近の田畑で使っておれば、水と共に流れてきたり、風にふかれてきたりして、汚染される危険がある。寄生虫卵の方は、洗いおとすことができないでもないが、滲透性農薬となると、全く処置なしだ。

    果樹園や水田の付近でないこと
     そこで、ケールの栽培用地は、付近に、人糞や農薬を使う田畑がない場所でなければならない。今日では果樹園や水田では、まず必ず農薬を使うので、こうした田畑より数百米はなれた場所であることが大切だ。
     従って、ケールの栽培用地は、集団的に広範囲に確保することが適切である。なお、これまで下肥を使っていた畑を転用する場合は、少なくとも1ヵ年、清浄栽培をした後でなければ安心できない。
     農薬については、まだデーターが十分なく、簡単な検査法もないので、なんともいえない。が、これも、約1ヵ年以上、一切農薬を使わずに、青汁材料以外のもの(肥料作物が望ましい)を安全栽培すれば、一応安心であろう。
     土壌内にとけこんだものが、作物に吸収されて分解し、また土壌内の水と空気で分解して無毒化するからだ。

    害虫対策
     第四に、農薬を一切使わないとすれば、病虫害の予防駆除はどうするか、今日の常識では重大問題となる。
     ケールにつく主な害虫は青虫、黒虫、アマコ、シンクイ虫、根切り虫である。
     運んでくるのは、チョウ、ガ、アリなどであるが、これを防ぐことは、まず困難だ。

    有機質と石灰を十分やって丈夫に育てること
     対策の根本は、まず第一に、深耕して、有機質と石灰とを十分やって、ケールを丈夫に育て、成長力を旺盛にすることだ。

    株間を十分あけること
     つぎに、株間を広くあけて風通しをよくすることだ。春から夏の間のものは少なくとも、ウネ間二尺三寸、株間一尺八寸以上とする。秋から冬の間のものは株間を今少の狭くしてもよい。

    下葉をグングン取る
     さらに、風通をよくし、成長力を盛んにするため、下葉をグングン取ることだ。1本に10枚以上も葉をつけておかない。

    虫のついた葉は早めに取り除く
     害虫のうち最も多いのは青虫だ。虫くいのアトがある葉の裏側を見ると、たいがい小さな虫いる。まずその葉を取る。序に、その付近の葉の裏を見て、卵がうみつけられていたら、おとしてしまう。
     つぎがアマコだ。空気が乾燥している時につき易い。雨がふると、うまく落ちることがあるが、ほっておいてはならない。僅かであれば、一度指でもみつぶしておく。それでもふえるようであれば、その葉を取ってしまう。
     序に付近の葉もよくみる。種をとるためトウだちさせたのについたら、指でよくもみつぶさねばならない。
     シンクイ虫がついたら、全く処置なしだ。早めに見つけて、株ごとぬきとる以外に手がない。

    根切り虫は、早朝丹念にみつける
     根切り虫は、夜間、土から頭だけ出して、根元から汁を吸う厄介ものだ。定植後十分成長したら、くいつかないが、苗の間に、まだ定植後間もない間にくいつき、いったんくいつかれたら、株全体がやられる。
     朝方、やられたケールの根元を掘って見つけ出して踏みつぶす以外に手がない。
     あるいは、一度やられた辺りにワラなどを沢山かけておくと、日中でも出てくるので、そこを見つけてやっつける。
     とにかく根気よく丹念にしらべて根だやしするようにすれば、当分出なくなる。
     こうした害虫が出るのはその種類によって、多い時と少ない時の相異があるが、だいたい4、5月から9、10月の間である。
     この頃は、ケールの成長力も盛んであり、育苗も定植もし易い時であるから、こうした手を打っても、畑に育ったケールが乏しくなることはない。成長力の衰える冬の間は、幸い殆んど害虫は出ない。

    鳥の来襲には打つ手なし
     が、冬の間に困るのは、群棲する鳥だ。森や林に虫や、木の実が欠乏してくると、時にケールに襲来することがある。アッという間に、シンまで食ってしまう。カスミアミをはることも実際上むつかしく、今のところ、よい対策がない。

    常に丈夫な苗をもっていること
     いずれにしても、害虫駆除には、できるだけ早めにやられた葉を、さらに、その株全体を取り除くことだ。ぬいたあとには、新たに苗を植えつける。ケール作りには、毎月のように苗を育てて、常にほどよい丈夫な苗を確保しておくことが大切だ。

    家畜を飼っていること
     ところで、こうして取り除く葉は、けっこう青汁にして差支えない。いな、虫くいのあとのある葉こそ、安全栽培のしるしでもある。だが、一度に沢山とって、その日その日の需要量以上となることも少なくない。そこで、これを食わせるために牛、豚、山羊、鶏などを飼っておくことも、ケール作りに必要だ。
     厩肥や鳥糞ができ、乳や卵もとれ、耕作にも使える。

    家庭菜園では
     だが、家庭菜園の場合はこういうふうに、おしげもなく、虫くいの葉や株を取ってしまうわけにもいくまい。根気よく丹念に虫をとらねばなるまい。とくに虫のつき易い時期には、朝夕よく見廻って、早め早めに取ることだ。
     あまり沢山ついて、手におえなくなったら、その葉を、その株を取り除くわけだ。今のところこれ以外に妙手がない。

    病害対策
     第五に、病害対策であるが、ケールの病気は主としてベト病である。だいたい7、8月の、風のない、むし易い頃に起こる。ある種のカビが茎について腐らすのだ。アッという間に株全体がやられる。

    やられたものは株ごと残さず畑の外に出す
     この対策の原則は、ベト病にやられたものは、ぬきとって、葉も茎も根も、すべて残さず畑の外に出し、病源体を畑に残さないようにすることだ。
     いったん堆肥に入れて醗酵させ、完全に腐熟させない限り、決して畑に帰さないことだ。

    水はけ風通しをよくする
     それから、水はけをよくすることだ。丘の上の傾斜地でも、雨ふりのあと、水はけに気をつけなければ、やられることがある。また株間を十分とり、下葉も早めに取って、風通しをよくすることだ。また、採取のとき、茎に傷をつけないように、薬を折り取ることも一考であろう。


1-5. 周年栽培するには

     青汁材料を栽培するには年間通じて、毎日、一定量の収穫をあげることができるように工夫しなければならない。

    冬の用地は春秋の5倍夏は3倍
     第一に、用地の運用法であるが、主として春秋に収穫する用地に対して、夏に収穫する用地は3倍、冬は5倍とする必要がある。というのは、最もよく成長して盛んに葉がつく季節が春つぎが秋であり、夏は成長力がにぶり、病害虫に最もひどくやられ、冬は、病害虫にはやられないが、それ以上に成長せず新しい葉もつかず、やっと霜枯れに耐える程度であるからだ。
     で播種と定植をよほどうまく計画しないと、春秋にはあまり、夏冬には不足する。

    冬季の補助作物CO
     そこで、補助作物としてケール以上に耐寒性と耐暑を備えたものを栽培すると用地が能率的に使えるわけである。
     だが今のところ、冬季ではCOが、夏季では冬季のCOに代わるものが見つかっていない。
     バイアムは、成長旺盛であるが、葉がうすくて汁が少なく、採取期間も短かい。
     その上味がパッとしない。COは、ケールと同種の飼料用作物であり、作り方もケールとほぼ同様だ。
     反当収穫はケールより少ないが、冬季、成長力が強く、あまり霜枯れない。それに若葉の間は、そのまま生食でき、アマ味が強くて非常にうまい。
     青汁にしても同様である。だが、青汁がジェリー状になる。ほどほどにケールにまぜて使えばよい。
     だが、このCOは、耐暑性が弱い。それに、冬季以外では、青汁にすると水が分離し易い。ケールにまぜても水分を分離させることがあるので、青汁にいやな外観を与える。が、別に変質したのではない。

    日に一合とすれば百人分に二反
     第二に、必要な用地の広さであるが、これまでの経験では、学校給食の場合、日に1合とすれば、百人分として、少なくとも二反の用地が必要である。それも立派な用地を、長年の経験で、最高に管現した場合のことだ。これを逆算すると、反当約1500貫のケールがとれるわけだ。
     すなわち、1合に約60匁が必要であり百人分で6貫となり、約240日給食するので、年間約1440貫となるわけだ。だが、学校では暑中その他の休業日が多いので、かなりのロスが生じる。友の会や家庭配達の場合は、このロスが少なくなるので、反当約2千貫は利用できる。

    反当有効収穫2000貫
     もっとも、これまでの経験では、最高の条件で、反当約4千貫の葉がつく。けれども、病害虫駆除のため、また春秋では需要量以上に採取しなければならないため、実際に商品化できる有効収穫はせいぜい、その半分となる。(こうしして生じるロスは、今のところ、家畜の飼料に利用しているわけであるが、冷凍乾燥して食用に保存できるようになると、ケール栽培も、よほど能率的となるのだが。)

    家庭菜園では
     こうした数字を自家栽培、家庭菜園の場合に換算し、また、これまでの経験を考えてみると、だいたい、日に1合とすれば、一人あたり、約7坪の用地が必要である。もっとも、うまく運用すれば、2、3坪でも、どうにかやっていける。
     もっとも、ケールの購入ができる場合は、狭い用地にムリをして、強いてケールだけを栽培する必要はなかろう。
     カキハダイコン、CO、コマツナ、シソ葉、パセリ、ニンジン葉など、栄養成分が優秀で、そのまま生食もできるものを栽培して生食し、一部を青汁材料にするのも一考である。

    播種、定植、収穫の計画化
     第三が、播種、育苗、定植、収穫の計画化である。
     ケールは播種後収穫できるまでの期間が、季節によって異なるが、かなり長い。
     このため、いったん成長したら、できるだけ長もちさせて、長期間収穫できるように、播種定植期を計画化する必要がある。だがある程度以上に成長すると葉のつきが衰える。
     とくにトウだちする前は、肥料を沢山吸い取るが、葉はサッパリつかない、それに味がトミに悪くなる。
     いつまでも畑に残して収穫すると、トンダ非能率となる。そこで、およそ、つぎのように計画すればよい。

    秋まき
     10月下旬に種をまいて、翌年2、3月に定植する。そうすると、だいたい4、5月より収穫でき、翌々年の4月まで収穫できる。

    春まき
     3月下旬に種をまいて、6月中旬に定植する。そうすると、だいたい8月より収穫でき、翌年の4月まで収穫できる。この春秋2回まきが基本であるが、これだけでは、晩春より秋にかけては十分収穫できるが、冬から初春にかけて不足する危険がある。

    夏まき
     そこで、8月下旬に種をまいて、10月上旬に定植して、12月より翌年の4、5月まで収穫できるようにする。10月中旬以前にまいたものは、だいたい翌年の春にトウがたつ。ところで、収穫できる限り長期間収穫するのは、用地の利用上不経済である。

    秋まきの主な収穫期5−8月
     そこで、秋まきは、主として5月から8月の間に収穫する。そして、その半数以上は、9月以後ぬきとって夏まきの定植地とする。残りは、冬の間に、だんだん抜き取って、秋まきの定植地にあてる。

    春まきの主な収穫期7−11月
     種まきは、主として7月より11月の間に収穫し、また病害虫にやられなくなる10月中旬より、葉をタップリつけて冬を迎えるようにする。そして、冬だんだん抜き取って、秋まきの定植地にあてる。

    夏まきの主な収穫期12−5月
     夏まきは、主として12月から5月の間に収穫し、秋まき、それから春まきのものを抜き取った後に抜き取り、春まきの定植地にあてる。


1-6. 播種から収穫まで

     ケール栽培の基礎知識はだいたい以上の通りであるが、観点をかえて、播種から収穫までの経過を追ってその要点をまとめてみよう。

    苗の育て方
     第一が、種をまいて苗を育てることだが、原則として苗床を利用する。

    苗床の利用
     苗床は砂質土であることが、ぜひ必要である。腐熟した堆肥を十分に施こしてよく耕し、土を細かく砕いて作る。
     でないと、根が十分はらず、また徒長する。最初、水分を十分やって、ごく薄くまき、ごく軽く土をかける。
     発芽するまで水はやらない。このため、乾燥し易い時は、軽くワラで被覆し、発芽したら取り除く。
     冬はビニールハウスを利用する。だいたい4、5日で発芽する。
    まぶくか仮移植する
     本葉が2、3枚ついたところで、適当にまぶくか、仮移植をして、苗の成長をはかる。
     時期をみて、堆肥や化成肥料を施こし、あまり乾燥しない程度に水をやる。
     水分が多すぎると徒長する。晩秋から冬にかけては、ワラなどで土面を被覆して保温をはかる。晩春から初秋にかけては、害虫がつき易いので、よく気をつける。

    直播もできる
     なお、苗床を利用せずに直播することも、やってやれないことはない。
     だが、種子が多量に必要となるから、直播場と苗床とを兼ねたらよい。
     徒長して風に倒れ易くなるので、土よせに気をつける。
     よほどよい土壌でなければムリだ。
    ワキ芽の利用もできる
     種をまいて苗を育てるのが面倒であれば(とくに家庭菜園で)ワキ芽を利用して苗を育てることもできる。
     トウだちするとき、トウを止めるるとワキ芽が沢山出る。
     春から初秋の間ではシンを止めるとワキ芽がでる。葉が5、6枚ついたところを、ツケネから、ちぎって、サシ芽にするのだ。
     夕方とって、下葉を2、3枚とり除いて、一昼夜、根元を水につけておき、夕方、よくほぐした苗床(または本床)にサシこんで、根元をよくおさえ、水分を一度だけ十分やっておき、夏はワラなどで根元を被覆して、活着をまつ。
     約1週間で発根して活着する。新たに葉が2、3枚出たところで定植する。

    定植の仕方
     第二が、定植だ。予め本床を作っておかねばならない。前作物を抜き取った後に、緑肥、堆肥、厩肥、鳥糞、油粕などの有機質と石灰をばらまいて耕しこむ。

    本床の作り方
     定植前に、基肥を十分施こして深く耕しておくことが、ケール作りに最も重要である。
     土がしまるのを防ぎ、水分と空気をほどよく保ち、根をよくはらせて丈夫に育て、病害虫を防ぎ栄養成分と味をよくするためだ。
     また追肥の効果をはかるためだ。耕す深さは、深いほどよいわけであるが、労力と深い関係があるので、だいたい7、8寸(大根を作る場合の深さ)でよかろう。
     粘土質の場合は、この程度の深耕も容易でなかろう。砂質土は、トラクターでよいが、粘土質は、スキでグレを作っておく方がよい。あまり細かく砕くと土地がしまり易いからだ。

    定植の時期
     定植は、苗が4、5寸となった頃がよい。下葉をとって、本葉3、4枚にして定植する。
     定植後一度だけ水をやって活着をまつ。

    株間のとり方
     成長と病害虫予防のため、ウネ巾2尺3寸、株間1尺8寸とするのが、およその目安だ。夏まきは、カブ間を1尺5寸位にしてもよい。

    定植後の管理
     定植後、乾燥し易い時はワラなどで根元を被覆しておく。
     根切り虫が出る畑では、晩春から初秋の間は、さけたがよい。
     晩秋から冬にかけては、保温のため被覆物が必要だ。カットしたワラを使えばあとで耕しこむのに便利だ。

    中耕、除草、追肥
     第三が、中耕、除草、追肥であるが、これは度々する方がよい。
     だが労力に深い関係があるので、だいたい2、3度、追肥と除草をかねて中耕する程度となろう。
     粘土質の場合は、もっと回数を増さねば、うまく成長しない。水はけのよくない場合は、雨ふり後、水はけをはからないと、成長がにぶり、ベト病にもかかり易くなる。追肥としてやるのは、だいたい化成、尿素、硝安や腐熟した堆肥、鶏糞、油粕など、硫安はさけた方がよい。やったら土をかけておく。時期は、活着後十分根をはった頃と、盛んに葉がついて収穫する頃だ。
     冬を越させるものには、晩秋、初冬にカリ肥料をやる。トウだちする前には、やる必要はない。

    病害虫駆除
     第四が、病害虫駆除であるが、苗を育てる時から種子を取る時まで、怠らずにしなければならない。
     度々見廻って駆除する。やられて見込みの少なくなったのは、早めに、その葉、その株をぬきとる。とくに雨ふり後むし暑い頃には、ベト病にやられるので、よく見廻って、見つけ次第ぬきとる。
     ここで大切なことは、病虫害にやられたものは、必ず畑の外に出すことだ。

    収穫の仕方
     第五が、収穫であるが、毎日、一定量ずつ採取するわけだ。だが、そこに調節が必要である。 5−10月の間は不要でもドンドン取る 5、6月前後は、植付けを加減していても、所定量以上に葉がつく。これにつぐのが9、10月だ。もったいないようでも、病虫害を防ぐため、下葉を取って1本に10枚以上はつけないようにする。

    10月下旬以後は葉を沢山つけておく
     だが、10月下旬以後、所定量以上にとってはならない。成長が停止する冬に備えるためだ。
     なお採取する時、根をゆすぶらないように、7、8月頃は、茎に傷をつけないようにする。

    採取、保管、運搬は安全清潔に
     なお、ケールの採取と保管と運搬に当たって気をつけねばならないことは、安全清潔である。ケールを取り扱うものは健康であること、とくに寄生虫や赤痢菌その他の病源体をもっていないことが肝要だ。
     下痢している時は、手出しをしない。保管中、運搬中は、必ず常に被覆をして汚染されないようにする。
     青汁はナマものであるからだ。

    堆肥緑肥の利用法
     第六に、堆肥、緑肥の利用法に一言ふれておこう。
     堆肥には、イネワラ、ムギワラ、古タタミ、青草、枯れ葉などに、鶏糞、油粕、ヌカと石灰窒素を加え、適度の水分をやって軽くおさえ、空気もはいるようにして、醗酵させる。下肥は入れない。
     基肥にやるのは、必ずしも十分腐熟していなくてもよいが、追肥にやるのは、腐熟したものが適切である。速効性があるからだ。石灰窒素を追肥にやる時は予め土にまぜて、ねかせておくことが必要だ。
     緑肥は、花ざかり前を利用するのが最もよい。実を結ぶと、緑葉の成分が劣ってくるからだ。
     従って飼料作物には、秋まいて春かり取って利用するものが多い。有機質肥料であれ化学肥料であれ、原則として、万遍にバラまいて、早めに土の中に耕やし込むことが必要である。

    ケール作りは辛苦を伴なう
     最後に一言ふれたいことは、ケール作りは辛苦を伴なう、ということだ。とくに採取作業がそうだ。いったん採取したら、時間と共に鮮度がおちる。とくに夏はひどい。いったん冷蔵庫に入れたら、あとが弱い。雨がふろうが、風がふこうが、雪がふろうが、暑かろうが、寒かろうが、他に用事があろうが、体具合が少々悪かろうが、どうしても毎日、畑に出て採取せねばならないのだ。
     われながら、ナンデこんな辛い仕事を始めたのか、と思うことが度々ある。やっとうまく成長したケールが、安全栽培なるが故に病虫害にやられて、全滅してしまうこともある。鳥に来襲されて食い尽くされ泣くにも泣けぬことがある。だが、こうした辛苦に耐えて、ケール作りの技術をここまで育てあげたのは、学校給食用に納めるものが多かったからだ。幼ない子供たちも、風雨をついて毎日通学しているからだ。


1-7. ケール栽培の経営

     さて、こうしたケール栽培は、事業として成り立つかどうか、という問題がある。
     これについても一言ふれておく必要があろう。これまでは、新しい品種、安全栽培、周年栽培という点から、また需要の不確定と流通の未組織という点から、全く辛苦の連続であった、といえよう。が、この頃では、どうやら栽培技術も明きらかとなり始め、需要も拡大し安定し始めたので、一応、経営成立の見込もつき始めた、とみることができよう。
     とくに学校や職場における青汁給食が普及し、また遠藤青汁友の会も拡大し始めたので、見込みは明かるい、ともいえよう。
     さらに、ケールの販売配達組織が拡充してくれば、なお明かるくなろう。
     だが、それには、それ相応の条件がととのわねばならない。

    適切な用地の確保
     第一が、用地だ。付近の環境上、安全清浄栽培ができること、日あたりがよく、しかも適当な落葉樹があって、夏、あまり温度と日射が強くないこと、水はけがよく、しかもカンガイの便があること、風通しがよく、それかといって風あたりが強くないこと、ほどほどに傾斜した砂質土であること、家からあまり遠くないこと、ある程度まとまった広さであること、といった条件を備えた用地を確保していることだ。

    専業を原則とする
     第二が、原則として専業とすることだ。水稲栽培などの片手間では、毎日採取して定時に出荷することができかねる。だが、これは用地の広さと深い関係がある。一町歩以上、少なくとも八反以上の用地を確保しておく必要がある。というのは、今のところ、学校納めで貫60−80円であり反当有効収穫2000貫あるから、一町歩で素収入約140万円となるからだ。

    家畜飼育をする
     第三が、必ず家畜を飼育することだ。春から秋にかけて商品化できないものが沢山出るので、これで牛、山羊、豚、鶏などを飼う。耕作にも使え、厩肥や鶏糞もでき、また乳や卵も副次的に生産できる。

    機動力をもつ
     第四が、機動力をもつことだ。トラクターも必要であるが、商品を運搬する自動三輪車やオートバイはぜひ必要である。 用地の集団化 作業の共同化 第五が、用地の集団化や作業の共同化だ。安全清浄栽培には、今のところ、用地を集団的に広域に確保することが必要だ。また、そうすれば、栽培や出荷の共同化、栽培技術の研究向上に便利である。さらに、販売組織の確立や経営の協同化を促進する。

    家庭菜園
     ところで、自家栽培とくに家庭菜園の場合は、どうであろうか。これは、採算というよりも、暮らし方に深い関係がある。「花よりダンゴ」という言葉がある。用地を利用して何ぞ作って楽しむ、というのであれば、花でもケールでも、そこは人その人の考え方で、同様に楽しいことだ。だが、今のところ、花は買うことができるが、ケールはまだ簡単に買えない。
     健康のことを考えれば、花よりケールを作る方が有利かも知れぬ。もしケールを買うことができれば、ケールよりも生食用青野菜を作るのも一考であろう。生食用青野菜は、今のところ市場に極めて少なく、また高価であるからだ。
     まだ例は少ないが、これまで見聞きしたところでは、花作りをだんだん少なくして、ケール作りや青野菜作りを拡げている向きは多く、いったん、そうし始めて、逆行する向きは少ないようだ。ロクに花も作らず、それかといって青野菜も作らず、なんとかいうクスリは、なんとかという病気によい、と知ったかぶりにオシャベリしている向きも少なくないようだが、人その人の考え方とはいえ、用地がモッタイナイ思いがする。

    (おわり)


2. 講座 健康栽培

     医学博士 遠藤 仁郎 

     質のよいナッパを食べること、ことに、その生食(緑葉菜食・青汁)の大切なことは、多年私どもの強調しているところですが、それは、ただ、質がよいといわれているナッパでさえあれば、なんでもよいのではありません。
     まず、下肥の心配のない清浄なものでなければならないし、農薬のおそれのない安全なものでなければなりません。
     したがって、栽培地の条件もむつかしくなれば、栽培家の人がら、栽培の方法も、問題になって来ます。

    1. 栽培地の条件
       日あたり、水はけ、風とおしのよいことはもとより他所からの被害のないところ−近くに下肥や農薬をつかう田畑や果樹園などのないところ−でなければなりません。丘の上、山裾などの開墾地。または、少くとも1年以上、下肥のつかってない、そして、保健所の土壌検査に合格したところ、ということを、私どもは条件にしています。


    2. 農家の人がら
       いかに土地の条件がよくても、耕作担当者が出鱈目では何にもなりません。下肥や農薬の害をよく認識しており、心から人々の健康をこいねがい、幸福を祈る、真面目な人物でなければなりません。


    3. 栽培の健否
       しかし、何よりも大切なことは、質がよい−吸収しやすいカルシウムに富み、ビタミン類もそろって多い−ナッパでなければならぬことです。それは、緑葉食青汁の主要目的が、邦食に不足がちのカルシウムやビタミン類を、十分に補給し、栄養のバランスをとろうというところにあるからです。また作物の成分は、栽培条件によって大いにちがって来るので、ただ分析表から良質というだけでなく、本当によいものでなければならぬからです。
       作物の良否が、栽培地の条件や、天候気候によって、左右されることはいうまでもありませんが、もっとも大きい影響をあたえるものは「土」の性質です。
       学者の説によると、水田の寿命は2800年、畑は700年といわれています。耕地の成分、ことに大切な微量成分は、作物によってとり去られるものもあれば、深部に沈下するものもあって、しだいに減少して来るのです。
       水田では、潅漑水によっていろいろの成分が絶えず補給されているから、寿命が長いのですが、畑地では、その他、雨水にとけて流れ去るものも少くありません。
       そこで水田はともかく、野菜作りの畑地の土壌はどんどんやせてゆきます。
       土壌が老朽化し、地力が低下すれば、作物の出来が悪くなります。
       そこで、化学肥料です。これだと耕作は楽だし、収量も、少くとも一時的には、多くなるので、農家からは大いに歓迎され、さかんにつかわれます。
       けれども、この化学肥料には、主要要素はもちろん十分にいや十二分にもありましょうが、肝腎の微量成分は問題外です。のみならず、肥料成分中の酸基が残留することなど土壌中のミネラルのアンバランスを招くこと、あるいは、土壌を硬化することなどのため、「土」の荒廃はいっそう甚しくなります。
       そして、そこに出来るのは、みかけだけはいかにも立派そうですが、質的(成分でも味でも)に劣っていますし、軟弱で病にもおかされやすい不健康作物です。
       そこで、こんどは、農薬がドンドンつかわれます。
       農薬の害は、ただに、作物の中に残留する農薬の直接の害だけではありません。
       農薬による作物自体の傷害−これは殆んど注意されていないようですが、即座にはないにしても、ながい間にはどんな影響があるかわかりません−も否定できないでしょう。
       また、農薬の乱用も、土壌の荒廃にさらに拍車をかけることになっているといいます。
       このように、
          (1)土壌の老朽化、
          (2)施肥の不合理、
          (3)農薬の濫用は、
       三つ巴となって際限のない悪循環をくりかえします。
       かくして、現在の耕地の多くは、すでに甚しく荒廃し、また荒廃の度を加えつつあり、作物は、しだいに質的に劣って来ているし、それを与えられて供給する家畜の肉、卵、乳の栄養価もおのずから低下をまぬかれない(不健康食品)という状態になって来ています。

       ◇ 

       健康であるためには、栄養が完全でなければならぬことは、誰れでも知っています。
       しかし、それは、ただ食品の組合せが合理的でさえあればよいのではなく、それを構成する個々の食品そのものが、本当に良質(健康食品)でなければならぬのです。
       つまり、私どもの健康のもとは健康な食品にあるわけです。
       しかも、健康な食品のもとは健康な作物(直接に、あるいは間接に食べている)にあり、健康な作物のもとは健康な栽培に、そして健康な栽培のもとは健康な土壌にあります。
       結局、私どもの健康は、実に「土」の性質にかかっているわけで、「土」がよくなければ、とうてい、本当の健康はのぞまれないのであります。

       ◇ 


       現在、一般の農法では、商品価値の大きい−値よく売れる−作物が沢山とれ、しかも、楽に出来れば、それでよいので、化学肥料と農薬をジャンジャンつかい、「土」がどうであろうと、そこに出来る作物が質的にどうであろうと、また、それを食うものにどういう影響を与えようと、そんなことは一向おかまいなしなんです。
       この不健康農法にこそ、現代の不健康のもとは胚胎している、といっても少しも過言ではないでしょう。


    4. 健康農法(土つくり)
       では、いったい、どうすればよいか。
      一つには深耕 雨水で流れ去るものはいたし方ないとして沈下する成分は約一米下に集って層をなしているといいます。
       ですから、深耕すればよいわけです。また事実、一米内外の天地がえしが耕地若返りの有力な手段であることはよく知られています。
       「屋敷のどこかに宝の壷が埋めてある」という祖先からの言い伝えによって、持畑くまなく掘りかえしてみたが、宝の壷はついに見つからなかった。
       しかし、それから毎年大豊作がつづいて、家運はたちまち立ち直った、という説話は、このことでしょう。
       これについても慨しいのは現在の機械化(耕耘機)農法です。
       そこばくの表土、ほんの2−3寸か、せいぜい5−6寸がとこを、バサバサとかきまぜるだけ。全くのお茶濁しにすぎません。
       以前の牛馬による鋤き方のほうがまだましだったでしょう。もっと深耕できる、性能のよい耕耘機が用いられないかぎり、わが国の農業はこの点からだけでも、やがて行きつまるのではないでしょうか。
       少くとも、これでは、成分的にすぐれた健康食品の供給は、とても期待できそうもありません。
      次は客土 失われたミネラル分、ことに微量成分にとんだ新しい山土や沈泥を客土し補給すること。
       これ、また、土壌若返りの良法として、昔から精農家といわれるほどの人はみな実行していることです。
       いま一つは、緑肥、堆肥、厩肥などの有機肥料の施用。
       これらは、ミネラル分の総合補給源としてすぐれているだけでなく、有機分を補い、土壌菌の繁殖をはかることでも、土壌の改善に大いに役立ちます。


    5. 家庭菜園では
       健康法として、私どもはケールその他の生食用野菜の家庭栽培をすすめていますが、その土つくりには、

        1. まず、よく掘りかえすこと。理想は三尺位ですが、それほどでなくてもよろしい。なるべく深く。

        2. 掘りおこした土は、こまかくくだき、「ゴモク」−適当にきざんだワラ切れ、古たわら、古むしろ、古たたみ、木葉や草、台所の残りもの、あるいは、それらを積み重ねて腐らせておいたものなど−を十分に混ぜこみます。(ゴモクの上に石灰をふりまけば、なお結構)また、条の間や根もとにしっかり敷き草をしておき(夏分は乾燥や雑草を防ぎ、冬分はいくらか保温にもなり、ながい間には腐って来ます)、中耕あるいは次の掘りおこしの際に混ぜこみます。なお、すべての作物は毎年連作するよりは、巡ぐりに輸作するほうがよいのですが、3−4年か4−5年ぶりには、根の深いゴボウをうえることです。成分がとくによいわけではありませんが、根をとるために、深耕の機会があたえられるからです。

         ◇ 

         このようにして、深耕と有機質肥料の施用をくりかえしてゆくと、土の性質はしだいに改善され、そこに育つ作物は、出来や味がよいばかりでなく、成分もすばらしくすぐれています。
         また抵抗力がつよく、早害、冷害にもよくたえ、病虫害にもおかされにくいので、農薬の必要も減り、あるいは、なくなります。
         その上、さらに有難いことには、作物の吸い上げる放射能物、たとえばストロンチウム90の分量が、そうでない場合にくらべ、少くなるというのです。
         ◇ 

         いずれにしても、私どもの健康は食べ物で左右され、食べ物のよし悪しはその栽培法によります。
         そして、栽培法の根本になるものは、実にその「土」の条件です。本当に健康な土と健康な農法なしには、本当に健康な作物はつくれず、本当に健康な作物なしには、本当の健康は望めません。
         しかも、その健康土つくり、健康農法たるや、少しもむつかしいものではなく、要は、昔から、私どもの祖先がやっていた、もっとも自然的な農法にほかならぬのです。
         化学肥料と農薬とによる、ただ増産さえすれば、という今日の農法は、このあたりで、ジックリ考えなおしてほしいものです。。




3. 都市素人の堆肥

    東京 T. 

     安全有効で近所迷惑にならぬ家庭菜園用堆肥作りとして、私のやり方は次のようです。
     せまい庭の木の下でできます。
     ビール4ダース入り箱位(又は大型果物箱の如きもの数個)の底を抜き、半分位まで沈む穴に押し込み、蓋を作る。
     落ち葉、わら屑、台所屑など何んでも腐るもの。但しぬかみそは塩ぬきしてから少し宛に限る。
     鼡の糞尿や巣のあったわらなどは不可(鼡、台所油虫、蝿は細菌性食中毒や経口伝染病仲介の大親分で、毒素の中には、素人の堆肥発酵熱くらいでは破壊されないものもあるようです。こんなわらなどは灰にして使います)
     鶏糞(よく天日に乾してくだき、なるべく長く安全貯蔵のもの)青汁の粕、油かす、米の白水、草木灰、石灰チッソなど手元に有るものを段々にふみ込んで蓋をし、おもしをのせておく。但し秋口以后の雑草は実が生えて大変になるから、干して灰にする。堆肥は1ヶ月以上たつと冬でも腐熟を始めるから、発酵熱がさめてから、箱を引きぬいて、広げ天日にさらし、よくまぜ合せて、箱を復旧して、不熟のところが下になるように再び箱にふみ込む。
     落葉の頃から始めると、大体2月寒あけ后に取り出して一応乾燥させ、ケール1本に中バケツ1杯位の見当で、元肥に入れ1−2寸土をかけ、2月下旬から3月始めに、10月中旬まきのケール苗を植込む。
     石灰はこの直前に草木灰や化成肥料(チッソ、リンサン、カリの等量くらいのもの)などと一しょに入れておきます。
     苗は3月10日頃から本気になって伸び出します。牛、馬、豚、犬、鶏も鼡、ゴキブリ、ハエと同様に伝染型食中毒菌の毒素を仲介し、100度で15分の過熱でも毒素が破壊されないものもある由ですから(サルモネラ菌)病畜の糞尿などは敬遠に如かず。
     又堆肥は細菌の発生の少ない、落葉の頃から、厩肥は充分天日干し、長期安全保存のものを使うべきでしょう。
     追肥用堆肥も、箱があけば、つづいて作るわけです。
     春の雑草はよい材料です。
     化成肥料については信用あるメーカーの適当な銘柄をえらびます。




クリック 引き続き、栽培方法(3)へ






ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 青汁 健康と青汁 上の階層へ
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法

Copyright 2009 12 田辺食品株式会社