健康と青汁タイトル小
 農薬の害インデックス

農薬の害(1)
農薬の害(2)
農薬の害(3)




1. 農薬一切使わず 「おかやま土と健康の会」

     医学博士 遠藤 仁郎 

     農薬、化学肥料をいっさい使わないで堆(たい)肥など有機肥料で育てた野菜の“産直”が岡山市でも始まった。岡山県食品の安全を守る会(岡山市野田屋町、小坂豊会長)が主体となり、発足した「おかやま土と健康の会」(仮称)がそれだ。岡山県内の農家十数軒に契約栽培してもらった野菜や卵を各会員の間に届ける仕組み。同会では「今月いっぱいで配送ルートの整備など終え“産直”の輪を広げていきたい」と意欲を燃やしている。



    陽春四月!!
    有機農法安全野菜のおすすめ


     「最近の野菜には、どんな有害な農薬が使われ、含まれているかわからない」
     と不安をもらす家庭の主婦は多い。それというのも45年に農薬取締法が改正されるまでは水俣病の原因となった水銀を含んだ農薬や、母乳にまで残留して問題になったBHCが野菜づくりに使われていたからだ。
     最近ではあまり毒性の強い農薬は姿を消したが、それでも今も農薬はふんだんに使われている。そこで農薬をいっさい使用せず、堆肥やきゅう肥などの有機肥料だけで“安全”に栽培された作物が注目を集め、岡山県食品の安全を守る会では一昨年秋ごろから細々と有機農法で生産した野菜の共同購入を続けていた。
     当初はごく一握りの農家や会員が作ったものを全員に配るという程度のもの。
     会員間の要望が強いため昨年10月から赤磐郡吉井町、勝田郡勝田町など県北部の有機農法を行っている農家で組織する「愛農会」のメンバーと提携、とれた野菜は毎週金曜日に岡山市三浜町、津島、雄町など市内6ヵ所に運び、希望者に配る形にした。
     これは大々的に“産直”するための実験段階。
     この間に得た“教訓”をもとに始めたのが「おかやま土と健康の会」。
     2月1日から会員募集を始めたが、すでに出資金は予定額の150万円以上集まっており、会員も160世帯ほどが加入している。同会ではすでに850キロ積みのワゴンを購入、今月から配送を始めている。生産農家も岡山県愛農会が中心となり、農家十数軒、養鶏農家二軒と契約しており、一農家最低一作目以上ということでトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、キャベツ。ホウレン草、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモなどの作付けが決まっている。
     このほか主力の卵は週に500キロ程度、みそ、しょうゆ、塩、洗剤、塩干物など加工食品なども会員の希望に応じて共同購入する。価格は岡山市中央卸売市場の卸値を参考にし、卸値の上限価格に10〜15%程度の運送費、人件費など諸経費を加えたものとする。
     「多少、割高となるがしかたがない」という。
     配送方法は会員を10人単位でグループ化、そのグループの班長が注文を取り、配送責任者に連絡する。責任者は生産農家に連絡、必要数量を運送。各班ごとに配達するというもの。
     ここで一番問題なのは野菜類は天候に大変作用されやすい点。大量に余るほど出来た時とか逆に出来が悪かった時、農家の経済的な補てんはどうするのかなど難問も多い。が、配送専従者となった三垣允人さんは「有機農法を育てるためには生産者と消費者がお互いに理解し合い、手をつないでいかなくてはいけない。こうした運動が少しでも農家が農業や化学肥料を使わない方向に向いてくれれば…」と話している。(52・4・7 山陽夕刊)



    畜産農家と連係プレー ―鳴門―

     有吉佐和子の小説「複合汚染」以来、消費者の間で化学肥料をやめ、有機肥料を使った“自然野菜”を求める声が高まっているが、逆に農家の方からは「人件費の高い現状で数十倍もの労力がいるたい肥づくりは事実上不可能」「化学肥料を使い、余った時間でアルバイトしないと食べて行けない日本農業の構造こそ問題」など反発の声が出ている。
     しかし、鳴門市の畜産農家と野菜農家が連係プレーで畜産公害をなくし、自然野菜を生産するという方法を思いついた。それは「有機肥料工場」の建設。来年3月に運転開始をめざしていま、5つの農協が共同でその設計に取り組んでいる。この方法は

    1. 畜産農家が畜舎の敷きワラのかわりにオガクズを敷きつめ、ふん尿をしみ込ませる
    2. 飽和状態になると畜舎から取り出してたい肥舎などへ積み、発酵させ一次処理をする
    3. ある程度発酵すると肥料工場のトラックが回収
    4. 大型パネルに特殊発酵菌を加えて高温で二次発酵し、乾燥させると粒状の肥料に変化、袋詰めにして農家へ渡す

    というやり方。
     いま、各地で普及しはじめたパネル発酵法を大型にし、集団参加で大量生産するものだ。
     鳴門市では、オガクズにふん尿をしみ込ませた「オガクズたい肥」だけで、サツマイモとダイコンを栽培するといった有機農業復活への動きがここ数年前から高まっており、鳴門農業普及事務所がサツマイモを対象に化学肥料などを使った普通畑とオガクズたい肥の畑との生育比較試験をした結果では、オガクズたい肥をやった畑の収量が普通畑の1.56倍の増収になった。また、色つやも良く病虫害にも強いこともわかり、有機肥料への期待が農家の間で高まった。
     鳴門市内には130戸の農家で乳牛700頭、肥育牛2500頭、豚1200頭が飼われているが、そのふん尿の始末が悩みだったが、これをそっくり工場で二次加工し、粒状肥料にすると年間ざっと1万トン生産できる見込みという。同市はサツマイモ、ダイコンの生産地として知られ、のべ1000ヘクタールで栽培されているだけにこれらの肥料は十分消費できる。
     工場は同市里浦町の海岸50アールに7千万円で建設、肥料1トンあたり1万円という安い値段で野菜農家に分配する。これで畜産農家からオガクズたい肥を回収する費用をはじめ生産費を十分まかなえるという。同市の5農協が共同出資し、共同で運営にあたる計画だ。(50・9・27 朝日)


2. 水俣反農連

     市販のミカン類には、最低2、3回も農薬がかけられている。
     そして、ミカン大豊作の翌年には奇形サルが発見されるが、これは、出荷しきれずに残ったミカンがサルの餌になるからだ、という。
     水俣病でくるしめられている水俣市袋地区農家は、大沢忠夫氏を中心に、農薬使用を強要する農協に反抗、反農薬生産者連合(反農連)を結成、ミカン、甘夏ミカン、大根、サツマイモなどを無農薬栽培し、また干イモ、マーマレードも手がけ、自主販売にふみきって、ことしで6年になるという。

    (高梁市 岡本隆夫氏発行「食べもの通信」による)
    (54・3)


3. −農滅び国滅ぶ−命を削る農薬万能“自然な生活”取り戻そう

     当世養生学 熊本・公立菊地養生園園長 竹熊宜孝  >下< 

    都会型の病気急増
     人間、食べなければ生きられないが、食べ間違えても長生きはできない。
     「病は口から」とはよく言ったものである。
     さて、その食であるが、それを生産するのは農業であって、今、その農業がたべものではなく、金を作る農業になってしまった。
     自分の食べるものさえ作らなくなり「百姓」と言われた時代は去り、百姓が二姓になってしまった。二姓になった百姓は、米と畜産、米と果樹、米とサラリーマンという具合に、食べものが自給できなくなり、百姓は生活ではなく仕事になり、もうかる農業を模索するようになった。
     農業青年の意識調査でわかったことだが、ほとんどが食べもののことは忘れていて百姓といわれることさえ抵抗があった。
     農村医学をやって来て、農村の生活と病気の移り変わりを見て来た。
     馬小屋がトラクターと化学肥料、農薬の倉庫になり、病気も肥満、糖尿病、心臓病、ガンといった都会型の成人病が急増した。
     何がそうさせたかは、農業に家畜がいなくなり、肥料が自給されず、土が衰え、その結果、農薬を必要とした。
     農薬は土と人々の健康をむしばみはじめ、直接、間接に人間の命を脅かしている。
     また農家が食べものを自給しないため、加工食品や商品化された農畜産物が農家の台所にあふれ、成人病に拍車をかけることになった。
     かつての日本の長寿村が短命村になりつつあるのは、日本の農村の典型的な縮図と言えよう。

    考え直したい農業
     私は現在、健診や一般診療のほかに食養生の指導をやり、その他休みや時間外を利用して農業をやっている。
     むろん一人ではやれないので、青年や近くの農業者の力に負うところが大きい。
     でも、たい肥づくりのための馬飼いは私と私の家族でやっている。
     医者の道楽だと陰口を言う人もいる。私はかつて、小・中・高校と百姓をやり、牛や豚の世話で明け暮れた。昔とったキネづかでまた百姓をこころみているわけだが、それには理由がある。自ら実践することにより農業の大切さとすばらしさを訴え、また、農業の中から医学を、自然の営みの中から農業の在り方を学ぶのである。
     ビニールハウスの野菜が農薬を必要とし、バタリ飼い(ゲージ飼い)の鶏が抗生物質づけになるのは、土壌や環境の条件の悪化によるものである。過保護の集団が流感にかかり、寝たきり老人が薬づけになるのと同じであろう。
     言うなれば入院中の野菜や鶏をわれわれの食卓にのせていることになる。
     卵だって、牛乳だって、病気の家畜からの産物ともいえる。

    次の世代のために
     わが庭には放し飼いの鶏がいて、風雨に耐えてヒナをかえし、そのヒナはたくましく育つ。
     犬・ネコ、馬との共存の中で、最後の掃除役を務め、時を告げる役割も演ずる。
     自然界は共存共栄であるが、人間は、邪魔者は殺せ主義で自然を破壊している。その行いは、医学でも農業でも、全く同じ方法でなされている。

     「農薬は農毒薬の略字なり。虫はコロッと、人間はジワッと殺される」
     人間は賢いようで大変愚かな動物ともいえる。家畜に与える牧草にはたい肥を入れ、農薬を使わず季節にあったものを作る。自分たちの食べる野菜や果物は化学肥料と農薬づけにし、季節はずれのワセものを好む。
     これは農業ばかりに限ったことではない。医学や食の分野でも首をくくるようなことを数多くやっている。医学に関してはやや緊急性を要することもあるので、やむを得ないこともあろうが、食と農に関しては、まさに墓穴を掘っている感が強い。
     自分たちより次の世代に目を向けねばならないのに、われわれは盲目の集団となりつつある。

    疲れきった人と土
     医者のくせに食や農に口出しするのはけしからんと言われそうだが、いのちを守るのが医者の務めであるならば、どうしてもいのちの根源の問題をさけるわけにはいかない。
     百姓から医者になり、農村医学を志向してその現実を知るが故に、あえて世に訴えざるを得ない。
      農業者には
      「百姓に帰れそして食べ物を自給し、自ら毒をなめることなかれ」

      消費者には
      「たべものをわが命と思い、その価値と農業の大切さを知ってほしい」と。

     農滅びて国滅ぶ。これは歴史の必然である。
     病がなければ、医者はいなくても生きられる。しかしその医者と病院は急増し、食は汚染し、またその多くを他国に依存し、農業では人と土は疲れきっている。
     いまや、いのちの食と農は忘れ去られた。3回にわたって、医、食、農の三視点から人間のいのちのことを考えてみたが、おそらく将来確実になるであろう混乱を予期して、現在、自治体の小さな診療所で、地域の人々と共に、医、食、農の三つの在り方を実践の中で問いかけているのである。
    (54・1・22 中国新聞)


4. 危険なお茶の残留農薬

    東京都 M.N. 

     日本人にとってお茶は欠くことの出来ないものになっているが、そのお茶に多量の残留農薬が含まれていることは、案外知られていない。
     放って置けば虫くいだらけになってしまう葉を守るために、多量の農薬を散布するのが常識となっている。
     それは、葉の色を覆ってしまう程の驚くべき散布量であるといわれている。
     そのため、茶所の農家は、自分の所で飲むお茶は、農薬を散布していない“安全なお茶”を飲んでいる例もあると聞く。
     とくに、お茶の場合、野菜類と違って洗って口にするものでないだけに、恐怖そのものである。
     摘みとっても、お茶の香りを大事にするために洗うこともなく、蒸して、そのまま市場に出してしまう。
     まさに“農薬茶”を飲んでいることになる。
     朝、昼、晩と食後のお茶は欠かせないだけに、体内に蓄積される農薬量を考えると恐ろしくさえなる。それにしても、なぜ厚生省は、お茶の残留農薬について、もっと真剣に対策を講じようとしないのだろうか。

    (52・4・8 サンケイ)


5.  カイコの大量死は空中散布  気流の変化で流入
  致死量超すスミチオン 業者まかせ県の姿勢に問題

     小田郡矢掛町でカイコ約20万匹が死んだ原因を調べていた県環境保全事業団は30日、県が松食い虫防除のため行った薬品の空中散布が原因と断定した。
     また新しく、井原市でもカイコ約10万匹が死滅。和気郡佐伯町ではパイロットの操作ミスからイチゴや野菜にも被害が出ていることがわかり、県の薬剤空中散布計画に問題があるのでは―という声がでている。

     矢掛町内田三谷地区で発生したカイコの被害原因を調べるため、県環境保全事業団が、被害農家5人のうち2人から桑500グラムを持ち帰ったところ、カイコの致死量0.04PPMをはるかに超える0.587PPMと0.812PPMのスミチオンが検出され、原因は空中散布とわかった。
     さらに29日、井原市西江原地区でも養蚕農家7戸、桑園2.37ヘクタールのうち、二戸の農家の桑園51アールが農薬をかぶり、カイコ約10万匹が死滅、約53万円の損害を受けた。

     同地区は24日午前5時過ぎから同8時15分まで散布されたが、農薬を散布した林から約500メートル離れている同地区が汚染しており、県では気流の変化で流れ込んだのではないかとみている。
     地元の人が25日異常なカイコに気づき29日、巡回してきた養蚕指導員に知らせてわかった。一方、和気郡佐伯町矢田地区ではパイロットの操作ミスで農家の畑の上に散布し、約20アールの畑に被害がでた。
     被害を受けたのは、販売用イチゴ9.5アール(損害20万円)と自家消費のエンドウ、トマト、キャベツ、ナス、バレイショ、タマネギ、里芋などで関係者は21人。

     同地区は28日午前4時50分から9時35分まで散布が行われたが、最初の散布のさい、パイロットが目的地へ約500メートル西で旋回したさい、誤って手がふれ、数秒間にわたってスミチオン20倍液を散布したという。真備振興局では、すぐ被害を受けた家を回ってわび、販売用イチゴは市販せず処分するよう申し込まれた。

     県は被害農家については、今年度から実施している「農作物等損害倍償責任保険」にまかせ、県独自では補償については何も考えてないといっている。松食い虫防除の空中散布で今回のように被害が出たのははじめてで、県の業者まかせの姿勢に問題がある一方、被害の速報と対処の仕方が遅い点が指摘されている。
     第2回空中散布は、6月10日から17日まで予定通り行う方針だが、県では、同月3日関係機関が集まって二度とミスを繰り返さないよう対策をたて直すことにしている。
     花房清人農林部長の話「事故を反省してこんごは立会人の増加、散布距離、場所の再検討を行う一方、巡回指導を強めて二度とこのような事故のないよう全力を上げる」

    (53・5・31 サンケイ)


6.  散布農薬

     ただ散布されるだけの粉剤農薬でも、結構、数百メートルも拡がるし、強い風があれば、その範囲は数キロにもおよぶ、という。
     まして、ヘリコプターともなれば、もっと遠くまでとんでゆく。
     そして、超微粒子となって、ながく空中にとどまり、一部は地球をかけめぐることになる。
     現に、そういう薬の散布されたことのない極地にいるアザラシ(北)やペンギン(南)にもDDTが蓄積しているし、エスキモーの皮下脂肪にDDTが相当たかい濃度に証明されている。いずれも、大気からの降下農薬による汚染によるものだ。


7.  PCB、DDT禁止10年

     人体に蓄積して健康を害する公害物質PCBや有機塩素系農薬BHC、DDTが禁止され10年たったいまでも母乳を汚染しつづけていることが、京都市衛生研究所の日高公雄研究員らの母乳調査で明らかになった。
     日高研究員らは46年から毎年、出産後3ヵ月の授乳婦(23−33歳)50−20人の母乳を分析。PCB、DDT、BHCの含有量を調べてきた。

       この結果、PCB含有量は、
       46年0.05PPM、49年0.036PPM、53年0.035PPM。
       またDDTは、
       46年0.095PPM、49年0.061PPM、53年0.078PPM。
       BHCは、
       46年0.12PPM、49年0.067PPM、53年0.073PPM。
     いずれも、禁止後3、4年でガタ減りしているが、その後はほぼ横バイ状態となっている。日高研究員は
     「PCBはサカナ、DDT、BHCはタマゴ、サカナ、肉を通して人体にとりこまれる経路が考えられる。ネズミなど動物を無公害飼料で育てた実験では、体内の蓄積量が半減するのは約1−2年となっていることから、10年前まで広範囲に環境を汚染した公害がいまだ残存し、食物連鎖を経て徐々に人体に入り続けているのではないか」
     と推察している。
    (55・9・8 サンケイ)


8. サルの手足に先天性奇形 複合汚染の犠牲?

     【名古屋】
     全国31地域52群中、15地域22群のニホンザルに裂手、裂足など先天性四肢奇形が見られた。水や食物が農薬などに複合汚染された結果ではないか―
     このほど愛知県犬山市の財団法人モンキーセンターで開かれた「第21回プリマーテス研究会」で「ニホンザル奇形問題研究会」のメンバーがこんな発表をした。人間に最も近いサルの世界にも、環境汚染の“犠牲者”が大量に出てきたわけで、参加者の注目を浴びた。同研究会は昨年8月若手研究者で結成、これまでに31地域52群(約5000匹)を対象に調べたところ、北は房総半島から南は大分県まで、15地域22群のニホンザルに奇形が見られた。その内訳は餌(え)づけ群は16群(32群中)飼育群3群(8群中)捕獲群2群(8群中)野生群1群(4群中)だった。
     大分県高崎山などでは餌づけ後2―3年で、京都・嵐山でも7年後に手足の指がない奇形が現れた。最も顕著な例は、兵庫県淡路島と長野県志賀高原の地獄谷。淡路島では、出産固体中に占める奇形固体の割合は45―46年には70%前後に達した(51年は20%に低下)。地獄谷では47年に50%の子ザルが四肢奇形で生まれ、現在も15匹が野園公園で生活している。
     同研究会メンバーの好広真一京大動物学教室研修員は「47年のミカン大暴落で淡路島の農民がミカン作りの意欲をなくし、農薬の量を半分に減らした結果だと思うが、その後先天性奇形ザルは減った」と、食物と環境汚染の“因果関係”を説明する。また地獄谷のサルについては、リンゴの除草剤が関係あるのでは、と推測している。同研究会の発表に対し「餌づけをしたため奇形子ザルの死亡率が減り、奇形ザルが増えた」とか“遺伝要因”を重視する反論も出た。しかし、あくまでも環境要因を重視する同研究会では「専門学者の協力を得て発生関係をはっきりさせたい」と強調。外から見えない内臓筋肉、骨などの先天性奇形については「将来全国のニホンザルの死体を集めて十分調べていく必要がある」といっている。(52・3・14 山陽夕刊)


9. 現代食べ物考 死招いたミカン着色剤

     店先にツヤツヤしたはだを見せている温州ミカン。
     色彩の乏しい冬場だけに、太陽の恵みを感じさせて食欲をそそる。だがその色つやは、本物だろうか。昨年11月1日、「ミカン着色促進剤の混合使用で3人死亡」−こんな事件が南国長崎県の島原半島で起きた。クスリづけ農業への“なれ”が生んだ事故だった。

    自慢がアダ
     ミカンのワックスには消費者の目が最近厳しくなっている。
    「ワックスをかけた皮は料理に使えない」
    「ワックスかけは経費がかかり、味が落ち、いたみが早い」
     などの声が反映されて、ワックスをかけずに出荷するところも出てきた。「ノーワックス」が宣伝のうたい文句になる一面もある。
     だがあの赤みがかった“ミカン色”を、傷のないはだの上につくり出すため、どれだけの手間とクスリがかけられているか、消費者が知る機会はほとんどない。
     痛ましい事故に遭ったその農家、伊藤家は島原半島南部の南高来郡有家町にあった。着色促進剤として石灰硫黄合剤と第一リン酸石灰を小屋の中で混合していて有毒ガスが発生、4人が倒れ、父親と三男の夫婦が死に、母親だけが助かった。
     あとに息子夫婦の子供3人が残された。事故後の伊藤家では、会社勤めの次男の家族が福岡から転居してきた。涙の絶えない母親と、両親を失った3人の子供たちを、いまその家族が支えている。
     家のすぐ裏に広がるミカン畑。薬剤保管と混合用に作った小屋。子どもたちに事故がないようにと、戸にはがんじょうなカンヌキがかけてあった。
     その密閉性が事故につながった。「おやじはいつもうちのミカンの姿、形を自慢していました」と次男の昌弘さん(39)はいう。
     石灰硫黄合剤も第一リン酸石灰も本来農業ではなく、肥料としてそれぞれ単独で使われるもの。石灰硫黄合剤は明治の末に開発されたが、温泉気分が出て体が温まるといって、ふろに入れる農家があるほど一般的だ。副次的に着色促進の効果があると信じられてきた。
     第一リン酸石灰も、ミカンの熟期が早まって色づくとする文献が20年ほど前まであって、それが一部に伝えられてきたらしい。

    代償の安さ
     各農家に配布された「温州ミカン病害虫防除暦」(54年版)という表がある。
     そこにあげられている対象病害虫名−かいよう病、そうか病、ハナムグリ、黒点病、黄斑(はん)病、天牛、ハダニ、ヤノネカイガラムシ、アザミウマ、サビダニ、ロウムシ類、小黒点症。なかでも黒点病、ハダニなどは初夏から初冬にかけて繰り返し名前があがる。
     このほか「早生の腐敗防止」「貯蔵病害」も対象になる。使用する薬剤名も20に近い。石灰硫黄合剤も、「着色促進剤として11月中旬までに2回以上散布」の注意書きを添えてあげている。
     非農家の人はこの防除暦を見て「こんなにたくさんのクスリをかけるのか」と驚く。だが農家にとっては不思議でもなんでもない。あげられた病害虫がどのミカン園にも全部発生するわけではない。重要度を指示してあるし、「多発園のみ散布」などの注意がある。
     だから実際にはこれよりずっと少なくなる、と農水省や長崎県の指導機関は強調する。
     石灰硫黄合剤については事故の後、長崎県庁も原因究明に当たり、「着色促進剤としての効果なし」と結論をだし、55年版の防除暦からは外すことになった。
     だが現地の4ヵ町農協共同の島原南みかん共同選果場の責任者は「私らは使います」。経験から「有効で無害だとわかっているから」だという。また伊藤家は農協へ出荷せずに商社と契約していたから、着色促進剤の混合をしたのだろうともみる。

    “豊作貧乏”
     ここと全く同じ原因で死者3人を出す事故が、48年10月、香川県観音寺市で起き、当時農林省が関係各県に混合使用の禁止通達を出した。
     だから危険性は周知のことのはずだった。だが、3人の命をかけてしまったミカンに対する代償はあまりにも安い。農家の手取り分は、今年1キロ当たり10円から30円。「ミカンはカネになる」と日本各地でミカン園が急増し、“豊作貧乏”が定着した。
     摘果の指導が徹底して、昔のような表年、裏年がなくなり、収量も安定した。
     そして今年は天候に恵まれて、長崎県の温州ミカンの生産量は25万トン。うち2万トンを捨てなければ値がもたないという。
     だが、値段が安くなればなるほど農家は量で取りもどそうとし、商品価値を高めるためにクスリと手をかける。手をかけたものを進んで捨てる農家がはたしてあるだろうか。

    (55・2・1 朝日)


10. 平和なオレゴンの田園地帯で 除草剤論争が燃え上がる
 心配される新生児の神経管欠損の多発

     〔ニューヨーク〕オレゴン州リンカーン郡は、少なくとも表面上は典型的な田園地帯である。海岸線のごつごつしたむき出しの岩には太平洋の荒波が砕け、崖の上には真っ白な灯台がぽつんと立っている。小さな町々には、画廊や土産物店、シーフード・レストラン、それにのんびりした田舎の生活がみられる。背後には森に覆われたコースト・レーンジズ山脈がそびえ、ひっそりと山陰に隠れた谷間では、人々が作物をつくり、家畜を育て、静かな生活を楽しんでいる。毎年、この海岸には何万という観光客がやってきて、それがこの地方の経済を支える最も重要な産業となっている。漁業が次に重要な産業。木材の切り出し、製材、その他の木材製品などが3番目の産業である。しかしこの美しく平和なリンカーン郡にもう一つの顔がある 森林のそだ類を除くため長年にわたって定期的に除草剤の空中散布を行なってきた結果、米国政府と木材会社に対する訴訟騒ぎが起こっているのだ。ニューヨーク州ラブ・カナルやミズーリ州タイムズ・ビーチほど知られてはいないが、リンカーン郡での闘いもこの小さな比較的隔絶された地域だけのものでなく、全国的な問題となっている。

    すでに健康上の問題起こる?
     除草剤の散布はこの地方に住む人々、特にコースト・レーンジズ山脈の森林地帯に住む人々に、すでに多くの健康上の問題を起こしている可能性がある。最も心配されるのは、新生児に神経管欠損――特に無脳症および水頭症――が通常より高率に発生していることだ、とアトランタの防疫センター(CDC)はいっている。CDCの先天異常部門では、神経管欠損と中枢神経系異常を合わせて統計を出している。
     次に示す総数は、リンカーン郡とその隣のベントン郡についてのものである。海岸地方やコースト・レーンジズ山脈地方の人々は、ベントン郡で治療を受けることも多いからである。


     リンカーン郡(1970〜1982年/出生数2,291例)では

                   無脳症   3例(出生1万例当たり13.1例)
                   二分脊椎  1例(    同    4.1例)
      中枢神経異常とのみ記されているもの  1例 の合計 5例(同21.8例)


     ベントン郡(1974〜1982年/出生数1万68例、1974年以前には症例なし)では
                   無脳症  12例(出生1万例当たり 8.4例)
                   二分脊椎 13例(    同    9.1例)
                   水頭症   7例(    同    4.9例)
                   脳ヘルニア 1例 ほかに、
      中枢神経異常とのみ記されているもの  7例 の合計40例(同28.1例)


     同じ期間の米国全体の数字では
                   無脳症が     出生1万例当たり 4.2例
                   二分脊椎              5.8例
                   水頭症               4.5例
                   脳ヘルニア             1.2例
                             合計     18.8例である。

     「理由はどうあれ、この発生率は高い。例えば、1982年にベントン郡で無脳症が2例みられたが、期待値は1例である」とCDC先天異常部門の疫学者Larry Edmonds氏はいっている。先天異常の発生率が高い郡はアパラチア地方などの東部に集中していることから、CDCがこれらの統計に初めて注目したのは、3年前のことだった。「この西部にもおかしな郡があることがわかった」とEdmonds氏はいう。CDCは1980年9月にEdmonds氏をオレゴン州都のセーレムに派遣し、州の林業、農業、保健関係機関、医師、消費者の代表と会談した。

    難しい研究の実施
     CDCは、除草剤散布が住民に及ぼす影響を評価するための予備研究を実施することを提案した。しかし各界の代表者は、批判が強くてまとまりがつかないため研究を実施しないことに決定した。問題の一つは、そのような研究の実施が難しいことにある。既存の散布記録からは、散布を受けたと主張する人々が本当に除草剤に被曝したかどうかを確かめることは困難だ。住民たちは問題がすでに軽減されたと考えているが、Edmonds氏は1982年に中枢神経系異常が4例も見られたことを指摘している。これより高い発生率が見られたのは、1970年の5例のみである。
     リンカーン郡と隣のベントン郡の最も散布濃度の高い地域では、流産率も通常より高かった。この観察結果から環境保護局は1975年に、森林に対する2、4、5‐TおよびSilvexの散布を全国的に禁止した。しかし、これらの除草剤は、農地や家庭の庭園では今なお使用が認められている。
     コースト・レーンジズ山脈地方、なかでも立ち木の多いサイアスロー国有林の中心にあたるファイブ・リバース地域の住民の健康に除草剤散布が及ぼす影響についての疑問から、米国地方裁判所のRobert Belloni判事は去る4月、米国森林局と米国土地管理局に対して、両局がこの地域における除草剤の使用が健康に及ぼす影響について研究を行なうまで、サイアスローの境界から25マイル以内で除草剤と殺虫剤の散布を禁止する命令を下した。対象となる除草剤は2、4‐D、Roundup,Piclo‐ramおよびkreniteである。Belloni判事はその禁止命令を1か月後に解除したが、5月にサンフランシスコの米国第9巡回控訴裁判所がそれを復活させた。同裁判所は近く審理を予定しているので、この夏に散布は行なわれなかったが、それによる木材会社への影響はなかった。

    “乱用はやめてもらいたい”
     除草剤について長年にわたって見られる他の紛争と同様、闘いは“強者”(政府機関や大手の木材会社。彼らは、経済的利益を守り市場価値のある樹木を育てるために、そだ類を除く除草剤の散布が必要だと主張する)と“弱者”(散布を受ける土地やその隣接地域の住民。彼らは水や自分たちの体が散布によって悪影響を受けるのではないかと心配する)との間で展開されている。
     両者の真ん中に立つ――ときにはどちらかの味方になり、ときには中立の立場をとる――のはこの地域の住民が、散布によって病気になったときに診てもらうリンカーン郡の医師たちである。1975年以来同郡で家庭医を開業しているChuckおよびRenee Stringham両博士は、除草剤散布の影響について、最も堂々と意見を述べてきた。「私は除草剤の全国的な禁止を求めているのではない。大々的な使用や乱用をやめてもらいたいだけだ」とChuck Stringham博士はいっている。両博士は開業当初、除草剤の話を聞いたこともなかった。1977年の夏、同郡の北部で木材会社所有地の除草剤散布に抗議していたグループが、除草剤を浴びた。20人全員が頭痛と悪心の症状を現して、Stringham博士の治療を受けにやってきた。(Medical Tribune 83・9・22)


11. 深刻化する除草剤問題

    山形県 S.S. 

     発癌性物質が取りざたされるなか、国内で大量に使われているジフェニールエーテル系の水田除草剤(商品名MO,NIP,X−52)の環境汚染が大きな社会問題になっている。
     米軍がベトナム戦で使い、催奇性や発癌性があることから使用禁止になった「枯れ葉剤」に含まれている史上最強の毒物、2・3・7・8TCDD(ダイオキシン)と同種類のダイオキシンを生産過程の不純物として含み、環境中に長期に残留するのがこの除草剤。
     枯れ葉剤に比べて毒性は低くて比較的安全、とされていたが、最近、このジ系除草剤も基礎的な毒性試験で、突然変異や奇形を起こし、発癌にも関与しているということが分かりかけているからだ。
     一部の農家では除草剤の使用をやめ、消費者団体は「公害防止の原則は、疑わしきは使わず」と除草剤追放の運動を展開している。
     また、研究者も「このまま放置すれば、環境汚染は続き、市民の健康は脅威にさらされる」と警告している。

    (モダンメディシン84・3)


12. 有機農業運動の発展を

     いま日本中で使用される農薬の量は、1年間に70万トンにのぼります。
     この散布される農薬は、野菜や米、果物などを汚染するだけでなく、土や川、池・海の水まで汚染してゆきます。それは私たちの食物の中に、空気の中に入りこみ、やがて人々の体内に侵入してきます。
     農産物を調べると農薬が残留しており田畑の近くでは農薬の臭いが鼻をついてきます。
     日本は農薬の使用量がずば抜けて多く、世界で1〜2位を争っています。
     この結果、先づ農民の中に農薬による被害者(病人)を増大させています。
     いち早くその危険な将来を見通した農家は、農薬から脱却するために、化学肥料を減らし有機肥料に切りかえて病害虫に強い農作物づくりに転換しているむきも増えています。
     少なくとも自家で食べる農作物には極力あるいは全く農薬を使用しない農家が、圧倒的に増えているという。
     早朝のラジオドラマや新聞の家庭欄でも有機農業へのとりくみをとりあげ、その重要性を知らせようと、各界識者も努力しています。
     しかし、市場の八百屋さんを見る限り、完全農薬づけ栽培が支配しています。
     どこに問題があるのでしょうか。虫をきらう主婦に合せて、販売店は見た眼にきれいな物を要求し、これを受けて中央市場は農協や生産農家に、さらに恰好のよい農作物を要求します。
     その結果は、農協の農薬使用奨励となり、製薬会社は金儲けとつながり、より強力な新農薬の開発と除草剤による楽な農業へ誘導してゆきます。
     これら流通機構関係者の責任は重大ですが、経済優先の時代にいかにして流れを変えるべきか?有機農家を守り、安全な農産物を供給する運動を発展させるしかないはずです。
     製薬会社や農協がいやな顔をしても、生命と子孫を守るために、この運動をみんなの力で拡げ、消費者を組織し学習の輪を育ててゆく気の長い運動として、次代にゆずり渡してゆかなければならないでしょう。

    (ケール健人の会会報)−伊藤伝一−


13. 輸入農産物の安全性が心配

    東京都 M.O. 

     アメリカの輸出している農産物が、わが国はもとより、アメリカ国内でも禁止されている毒性の強い薬品をふんだんに使って、処理されているのを私は知りませんでした。自国では使えない恐ろしく強いダイオキシンやDDTやその他の薬を、輸出用のものには使っているなんて、アメリカ国民は知っているんでしょうか。
     「あなたはこれでも食べますか」というビデオを見て、輸入自由化で牛肉が安くなると単純に喜んでいた私はショックでした。貯蔵庫に入っている米に、じかに薬剤を散布している場面や、牧草にたっぷりダイオキシンをまいて、それは輸出用の牛のエサで、国内用には使用禁止だなどという、ゾッとする説明。
     野にある時は、除草剤、殺虫剤、収穫したら防虫剤、積み出しの時は防腐剤、防黴剤と丁寧このうえない。しかも日本側の検疫も手薄で行き届かない上に、膨大な量の輸入物では、調べ切れないのは当然。日本政府は、強硬に抗議しなければならないのに、弱腰で、反対に安全性の確かめられていない薬剤まで認可する始末です。決して日本の農産物が安全ではないけれども、アメリカも輸入を強いるなら、自国で食べているのと同程度に、安全なものを輸出すべきです。


14. 農薬汚染から身を守れ

    大阪東京のグループ5人 毒性まとめた事典出版
    244種、3千商品紹介

     田んぼや畑はもとより、ゴルフ場、公園、学校と、いたるところで農薬が使われていることに危険を感じた大阪や東京の環境問題研究家、大学の先生らがデータを持ち寄って「農薬毒性の辞典」(A5判、365頁、2千円、三省堂)をまとめた。
     本では、農林水産省に登録された農薬の毒性試験結果が「企業の財産」との考えで公開されていない現状を指摘し「被害を被る恐れのある消費者側に伝えてこそ、健康を守るという目的の意義があるのに」と訴え、生活、自然環境の保護を強調している。
     辞典は、農薬に詳しい大阪大学理学部の植村振作助手がまとめ役。
     これまで農薬に関する情報交換などで見知っていた大阪府下の環境問題研究家や東京で反農薬運動を進めているメンバーら計5人が、それぞれのデータを持ち寄り、2年がかりで仕上げた。
     農薬は、農薬取締法に基づいて規制されている。
     だが、日常生活には、各種の殺虫剤をはじめ、殺菌剤、除草剤、衣類防虫剤など、含まれている成分は農薬とほとんど同じものなのに、規制からはずれているものも多く、健康や自然環境へのさまざまな影響が案じられている。
     このため、グループは「農薬は、生物に対する毒作用を綱渡り的に利用したもの、使い方を誤れば人も死ぬ。
     すぐ死にいたらなくとも、慢性や遺伝毒性、発がん性などの影響が残ります」と注意を促す意味もあって事典をつくった。
     第一章の「農薬の毒性解説」と第二章「農薬の事項解説」に分けてある。
     毒性解説で取り上げた農薬は、244種類、商品名ではざっと3千種にのぼる。
     殺虫剤一つをみても、舌をかみそうな薬品名が並ぶだけで、果たしてどのような薬剤なのか、毒性はどうなのか、一部の企業が明らかにしているほかはさっぱりわからない。
     本では、商品名からも分かるように工夫し、つかめる範囲の毒性を解説、中毒症状なども添えた。
     例えば殺虫剤に「ピレスロイド系」というのがある。
     項目には、「除虫菊の花に含まれるピレトリンに類似した構造の化合物群のこと」と説明。
     毒性について「こん虫には神経毒として作用。
     人体の急性中毒症状として、悪心、おう吐、下痢、耳鳴り、重症になると、ひふ過敏症を起こすこともある」といった具合。
     さらに家屋内環境汚染として、奈良県衛生研究所の調査例も紹介。
     「家庭でスプレーの使用により、呼吸を通じて体内に取り込まれると共に、食品、食器への付着により口から、畳、紙の付着によりひふからも体に」と指摘。
     また、果樹、野菜の殺虫剤として利用されたこともある「砒酸鉛」(ひさんえん)の項では、薬剤そのものの解説のほか、関連の薬剤のよるヒ素ミルク中毒事件や公害と職業病が複合して発生した宮崎県の土呂久(とろく)公害といった問題も取り上げている。
     このほか、農薬の作用機構や使用方法、空中散布の実態、農地以外の公園や学校、ゴルフ場、河川敷、鉄道・道路沿線用地での使用例、住民らによる反対運動なども取り上げている。
     そして「農作物への残留と環境汚染」「農薬の人体への影響」「農業の生産と流通」とそれぞれページをさき、全体に図、表も多く入れている。

    植村振作さんの話
     殺虫剤を含め化学物質が身の回りでむとんちゃくに使われている。
     絶対ダメとはいえないが、出来る限り避けてほしい。
     農業に限らず、薬づけの生活を見直すことを願っています。

    (63・8・20 朝日新聞)


15. ゴルフ場農薬散布問題
  水源汚染の実態調査―環境庁―

     ゴルフ場で芝生などを維持管理するために使用する農薬で、水道水源の汚染が問題になり始めたことから、環境庁はこのほど、都道府県を通じて全国のゴルフ場での農薬汚染実態調査に乗り出した。各ゴルフ場は、きれいなグリーンが売り物だけに、使用している農薬の種類や散布量は“企業秘密”扱いで、ほとんど公開されていない。今回の調査はこれらを把握するとともに、水源汚染が明らかになった場合、農水省や厚生省などと協議し、安全性確保のための使用基準を作る方針。
     農薬汚染が問題となっているのは、三重、奈良、京都、兵庫などゴルフ場が密集している府県。このうち奈良県・山添村では、村民の7割が簡易水道として使っている取水口近くのゴルフ場排水から、劇物として田畑ではほとんど使われていない殺虫剤のEPN(有機リン系)が検出され問題となっている。
     同村では計画中のものも含めると面積の1割をゴルフ場が占め、建設中止の反対運動が起きている。また長野県・三水村では、主要な水源地にゴルフ場が計画されたが、汚染に反対する住民側が村長選で勝ち、計画の見直しが行われている。
     こうした農薬汚染問題への関心の高まりを背景に、埼玉県・小川町では7月、住民が新しくオープンするゴルフ場と、使用農薬の公開や損害補償などを盛り込んだ環境保全協定を全国で初めて結んだ。
     ゴルフ場で使用する農薬は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤。どういう種類が使用されているか不明だが、農薬を調査研究している大阪大工学部の山田国広助手らによると、約30種類が使われているという。これらのうち殺菌剤として広く使用されている有機塩素系のダコニールや、除草剤のシマジンは発がん性があると指摘されている。
     また猛毒のダイオキシンを含む除草剤のニップは、既に農薬の登録から外れているが、依然としてこれを使うゴルフ場もあるという。一方、ゴルフ場で芝生を維持管理している職員で組織している日本グリーンキーパーズ協会の角田三郎会長は「ゴルフ場では毒性がより低く、コストの面からも散布量は必要最低限にするのが原則。今後も会員にこの方針を徹底させたい」と話している。

    (63・9・11 産経新聞)


16. 救国の農法(2) 奈良県五条市 財団法人慈光会の主張

    理事長・医師 梁瀬 義亮l 

    3、農薬の害について
     最近、殺虫剤として低毒性有機燐剤が盛んに多用されています。
     低毒性を無毒性と錯覚している人が多いのですが、低毒性農薬は決して無毒ではありません。これは急性中毒が起こりにくいという意味にすぎないのです。
     実験動物群の50パーセントを急性中毒死させるのに、その動物の体重1キログラム当たり何ミリグラムの毒物(農薬)が必要であるか、その量をLD50(エルディ50)と申します。
     従ってLD50は数値が小さい程その農薬の毒性は激しいことになります。
     LD50が15ミリグラムまでの農薬を特殊毒物、LD50が30ミリグラムまでのものを毒物LD50が300ミリグラムまでのものを劇物それ以下を普通物と申します。
     そして可成り多くの劇物と普通物全部を併せて低毒性農薬と申します。
     これで分かる様に低毒性という意味は急性中毒死が起こりにくいというだけのことで、決して無毒ではありません。
     私の30年の臨床経験から、これらは急性死を起こさなくても頭痛や目まいや肩こりを起こし、徐々に慢性疾患――肝臓・腎臓の疾患、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、リューマチ、様々のアレルギー性疾患(喘息等々)、内分泌性疾患、自律神経異常、目耳等の神経の障害、白血病や癌等々を起こしてくるのです。
     又、奇形児をつくる作用(催奇形性)も報告されていますし、私もその例を経験しています。
     のみならず低毒性農薬と称されるものでも、その量や体の状態によっては急性中毒死を起こします。
     然もこれ等の農薬は農作物に浸透しますから、洗っても皮をむいても全部除くことは出来ません。
     かくの如く、脳、神経系、内分泌系、内臓諸器官を徐々に侵してゆく農薬を残留した有毒農作物を毎日毎日食べていては堪ったものではありません。
     16兆円もの医療費を使う進歩した医学を尻目に、癌、白血病等様々の慢性疾患、殊にリューマチや膠原病等々の難病奇病の多発の一つの大きな原因は農薬にあると信じます。
     除草剤はそれ自身極めて恐ろしい毒性がありますが、殊に催奇形性、発癌性の強いダイオキシンを含有したもの或は発生するものもあり、これ等が地表水や地下水に混ざって人体に入ってくることの危険性を良心的な学者は叫んでいるのです。

     さて、この地球上で最も生命力が強く、適応性、毒物抵抗性の強い草食性昆虫である害虫を毒物によって殺戮することにより農作物を人間が確保しようとする農薬のアイデア自身が誤っているので、農作物の確保はもっと他の方法によるべきです(後述)が、又雑草を敵と見なし、これを滅亡せしめようという考えの除草剤も全く誤ったアイデアであって、雑草の生えない土に農作物は出来ないのです。(後述)

    4、近代文明の破綻に思う
     人類の繁栄と幸福をもたらすものと信じ切られていた近代文明が次第に完成に近づくにつれて、それは決して人類繁栄のバラ色の文明ではなくて、人類滅亡の恐るべき「死の文明」であることが見えて来て心ある人々を絶望の渕に追いこんでいます。
     医学がいくら発達しても病気と病人は増える一方です。
     農学の発達にもかかわらず農作物はますます出来にくくなり品質は低下し作物は有毒農作物になってしまいました。
     又、世界中に飢餓が広がっています。工学の発達はすばらしい機械文明をつくりましたが、機械文明の目的である便利さは即ち時間的余裕をもたらすはずですが、これが得られぬのみかますます世の中は忙しくなり、人々は機械にはさまれ追いまくられて汲々とし、心身のゆとりと平和を失い、更に工業のもたらす様々の公害や恐るべき兵器や核の恐怖の中に人類滅亡の危機を感じさせられます。
     一時的な便利さと快適のつけは生命と平安の喪失となって現れました。
     教育学の発達と設備の完備にもかかわらず不良青少年や問題児が多発して教育の意義を疑わせます。
     又、経済学や政治学の発達にもかかわらず世界中に経済恐慌や戦争が多発しています。
     人間の叡智の結晶である科学に裏打ちされ推進されて来たこの近代文明が、何故かくの如き悲哀の逆結果になったのでしょうか。
     それは科学を文明の進歩に応用するに当たって、人間は生存の最も基本原理である次の事実を見落としたからであると、私は信ずるのです。
     「人間は大自然に生かされた生命体である」という事実。
     そして今一つ、「そして同じ大自然に生かされる数限りない他のあらゆる生命体との密接な相関関係の中に於てのみ(すなわちこの地球上の生態系の一員としてのみ)生存が許される」という事実。
     この事実を無視して、人間至上の錯覚の下に人間中心を当然と思い上がり他の動植物を思いのままに駆逐殺戮し、慈母である大自然に挑みかかってこれを掠奪し破壊して人類の文明を築き幸せが得られると錯覚し(人間至上論)、生命という事実を無視してすべてを物質と物質の法則で割り切れると妄信し(唯物論)、数限りない他の生命体との相関関係によって生かされていることを忘れて殺戮をほしいままにし、更には人間同士すらも同朋であることを忘れて生存競争の相手と考えるようになってしまったこと(自他断絶の妄想)、これが近代文明の破綻の最大原因であると信じます


17. アメリカ産農作物

    強い発がん性農薬残留 米連邦研究会議で明らかに
     全米で生産されている農作物のうち、トマトや牛肉、ジャガイモなど身近な食品中に、発がん物質の強い農薬が多量に残留している―。
     こんな衝撃的な報告がアメリカ連邦研究会議の分析結果で明らかにされました。同会議では発がん物質の強い農薬、食品の種類など具体例をあげて、抜本的な改正案を提言しています。
     この結果について講演を行った東京都立大工学部助手の高松修さんは「輸入食品の安全性について見直す時期にきている」と警告しています。
     連邦研究会議は、全米科学アカデミー、全米技術アカデミー、医学研究所などで構成されています。

     今回は3年前、アメリカ環境保護庁から、「食品中に残留する農薬の許容基準の規制に関する研究」のテーマで諮問されました。
     現在、全米の農家で使われている農薬のうち、すでに環境保護庁が、潜在的に発がん性がある要注意農薬として指定しているのは53品目。連邦研究会議では、動物実験などによって、さらに研究をすすめ、53品目のうち、除草剤11品目、殺菌剤11品目、殺虫剤7品目の計29品目の農薬を、発がん性の強い順にリストアップ、使用基準の見直しを求めています。
     続いて、これらの農薬に含まれている発がん物質の強さと、作物中に残留する量をかけ合わせた数値で、リスク(がんにかかる可能性)を算出、要注意食品として15種類をブラックリストにあげました。

     最もがんリスクが高い食品として指摘されたのはトマトで、以下牛肉、ジャガイモ、オレンジ、レタス、リンゴ、モモ、豚肉、小麦粉、大豆、ニンジン、鶏肉、トウモロコシ、ブドウと続きます。
     さらに、FAO(国連食糧農業機関)調べによる1人当たりの年間消費量に対して農薬残留値を分析し、具体的な数字でがんリスクの程度を折ち出しています。例えばトマトの場合、アメリカ人1人当たりの年間消費量は29.9キロ。この量のトマトの中に残留している農薬は、殺菌剤のカビタホルが38%、クロロサニール12%、フォルペット9%。いずれの殺菌剤も、発がん性農薬として指定している29品目に含まれており、カビタホルは危険度8位にランクされている“大物”です。

     「例えば75歳まで生きるとして、このトマトを年間29.9キロ食べ続けていると、1万人中8.75人ががんにかかる可能性があるというから驚きです」と高松さんはいいます。同様の計算で牛肉では1万人中6.49人、ジャガイモが5.21人、大豆が1.28人という高い数値がでています。
     この3食品とも最も多く残留している農薬は、除草剤のリニュロンでした。
     これは、日本ではほとんど使われていません。アメリカ環境保護庁では大豆畑や牧草地での使用を認めていますが、連邦研究会議の報告では、全農薬中第2位の横綱級の発がん物質であると認定し、残留基準の取り消し(事実上の使用禁止)が必要、としています。

     こうした点について、高松さんは「大豆の場合、アメリカ人1人当たりの年間消費量は3.2キロ、日本人だと5.6キロ。日本の食事に換算すると、実に1万人中2.24人ががんにかかる可能性があるという計算になるんです。大豆の86.5%がアメリカからの輸入に頼っている現状を考慮すると、実に怖い。アメリカは農薬残留基準の洗い直しを早急にしてほしい」と語っています。

    (63・4・23 サンケイ)


18. 野菜の残留農薬が心配です

    横浜市 N.I. 

     健康によいとされるホウレンソウなどの野菜に付着している残留農薬が、子供たちの健康に重大な危険を及ぼす恐れがあるといわれる。
     これはニューヨークにある環境保護団体の天然資源保護協会が発表したもので、発がん性のある農薬が付いた食品を大人の何倍も食べていることが判明したという。子供たちは体が未成熟で有害物質を排除する肝臓の機能が十分でないため、こうした発がん性のあるものや有機リン系農薬といった神経障害にかかる恐れがあるものを食べると、当然発がんに対する危険率などが高まるといわれている。
     これでは子供たちに安心して「体によいから野菜をたくさん食べなさい」ともいえなくなってしまう。日本では農薬取り締まりの法体系は整備されているものの、基準が甘かったり規制物質が少なかったりで、その対策は万全ではない。将来の日本を背負っていく子供たちのためにも、関係当局は、残留農薬の規制強化を図るなどの対策をたて、野菜を安心して食べられるようにしてもらいたい。

    (元年3・24)


19. 将来が心配な日本の食生活

    下館市 S.N. 

     われわれの食生活は、そして未来ある子供たちはこれからどうなるのか不安になる。
     キュウリを買えばワックスがかかっているし、サツマイモを買えば染色してあるし、豆腐(とうふ)だって農薬漬けの外国産大豆だし、われわれの毎日の食卓をみても食品添加物だらけ。
     コピー商品もたくさん出回っている。昨日も、ウナギの蒲(かば)焼きだと思って買ったものが、イワシだった。もっとも、お買い得とだけ書いてあってウナギとは書いていないから、買った自分を責めるほかはない。
     先日もテレビで輸入食品のことをとり上げていたが、外国から入る大豆や穀類が長期輸送に耐えられるように、収穫後に多量の農薬がふりかけられているという。
     それもわが国で禁止されている農薬や除草剤が使用され、以前ベトナム戦争で問題になった枯れ葉剤も含まれているという。今後、米の市場開放が通れば、空恐ろしいかぎり。
     政府は、食品衛生面の早急な改善に力を入れてもらいたい。
     ある人がこう言った、「日本人を殺すには武器はいらない。農薬漬けにすればいい」と。主婦は家族の健康を守るため、賢い目を養わなくてはならない時にきていると思う。

    (2・9・17 サンケイ)


20. 農薬でない農薬

     妙な話をきいた。無農薬栽培を看板にしている、かなり大きなくだもの農場でのこと。
     そこでは、絶対“農薬”はつかわず、なにか、それに代る“農薬でない”薬で予防している。
     が、うちの人はそのくだものは食べないそうだ、というのだ。
     本当だとすれば、なんとも不届ききわまること。たとえ“農薬”ではないとしても、予防につかう薬なら、やっぱし農薬にちがいないではないか。
     しかも、うちわのものが食べないというのであれば、かなりの劇薬にそういない。
     こうしたことが、堂々とまかり通っているとは、ただ、おかしなこと、けしからんことだと、あきれているだけではすまぬおそろしいことではないか。
     儲けるためには手段をえらばない、人心の荒廃まさに極まれり、というほかない。まことに悲しむべき情けない世の中になったものだ。

    (平成3・1)




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