健康と青汁タイトル小
 農薬の害インデックス

農薬の害(1)

農薬の害(2)
農薬の害(3)



0.  殺人食時代! 安全食品の会をつくろう

     医学博士 遠藤 仁郎 

    ふえる農薬事故
     農薬の散布期に入って各地に中毒事故が続き、農薬自殺などもふえている。また昨夏、果菜やブドウのつや出し、茶や葉菜類の色を鮮やかにするためパラチオンを使ったりしたので、今年は各府県とも、夏果菜の出荷期を前に、目的外使用の防止に一だんと力を入れている。

    ・・・このほど奈良県五条市岡口東町梁瀬義亮医師が生野菜好きの妻みつさん(35)のひどい肝臓障害は野菜についた農薬によると診断、多くの臨床例をつけて内吉野保健所に報告したことは、一般に大きなショックを与えた。奈良県では5月下旬から1ヵ月間、農薬危害防止運動をくりひろげ、この問題をとくに重視して広報車を巡回させたり、農協を通じて農家に「使用後3週間たったものでなければ市場に出荷しないよう」徹底的に呼びかけた。云々


     これは去る6月23日の朝日新聞の記事です。私ども、わが国の習慣食の改善策として、緑葉食の必要を説き、青汁をすすめているものにとって、菜っ葉類の農薬汚染ほど困った問題はありません。全くおそろしい限り、にくみても余りある行為というほかありません。自然を相手とする農家にしてからが、すでに然り。世は正に殺人食時代です。市販の食品すべてに信頼がおけなくなってしまいました。出来あいの食品、煮物、漬物、瓶詰、罐詰、その他あらゆる加工、貯蔵食品などは、文化的の生活とは切りはなすことの出来ぬものなのですが、こうしたたべ物には、実のところ、何がは入っているか知れぬのです。色がつけてあります。防腐剤が、漂白剤が、軟化剤が入れてあります。人工甘味で味つけがしてあります。これらの薬品や色素の中には、肝臓をおかしたり、腎臓をおかしたり、貧血をおこしたり、カブレたり、ひどくは死ぬかも知れぬショックの原因になったり、あるいは癌を発生するようなものさえも、少くないのです。

     一例を菓子にとってみましょう。今ごろの菓子店の美しさはどうです。どの菓子もほんとうにおいしそうな色をしています。ある菓子屋が打ち明けました。「普通の材料だけでは仕上りの色が悪い。許されている色素でもも一つうまくゆかぬ。そこでやむを得ず――そうせねば他店にまけるので――全く背に腹はかえられず、悪いとは知りながら、色のよい、しかし有害なものをつかいます」と。
     その上、安くておいしくするためには人工甘味。砂糖だけでもよくないのに、サッカリンが入れられ、ズルチンが入れられます。サッカリンは純粋ならばまず害はないといわれていますが、ズルチンでは肝臓に癌が出来ることがわかっています。何というおそろしいことでしょう。しかし、これは菓子だけではありません。おそらくすべての食べ物、飲み物についていえることですし、容器(ビニールやポリエチレンなどの瓶や袋)さえもあぶないという有様です。

     こうして私どもは、毎日毎日、いろいろの物から、いろいろの毒をたべさせられているのです。このことは天野慶之先生の「おそるべき食物」という書物にも書かれ、新聞やラジオでも、やかましく警告されています。しかし、そうした加工食品や貯蔵食品は、無ければ無くて少しも構わぬものですし、とくに私どものいう食生活(緑葉食)では、全くしめ出してよい不要なものですから、少しも問題ではありません。
     けれども野菜や果物は別です。これらは私どもの食餌を完全にするには欠かすことの出来ないものです。それも果物や色のない野菜はさまで必要でもありませんが、有色菜、中でも大切なのは緑の菜っ葉類です。この菜っ葉までもが、今では危険なものになってしまっているのですから、まことに事重大です。昨年の8月の本紙(第24号)に「虫のついた野菜」を食べようと書きましたが、それもこのためでした。当時はただ農薬の危険を注意したまででしたが、今では、それが単なる杞憂でなく、悲しいことにも、事実としてあらわれて来てしまいました。
     そして、なおうらめしいことには、農薬によって、害虫の天敵である益虫益鳥までもいなくなってしまったので、抵抗力の出来た病害虫の跋扈はいよいよ甚しくなり、したがって農薬をやめることは絶対にできなくなったばかりか、一層さかんになり、また一層強力なものが使われるようになり、危険はいよいよ増大するにちがいないでしょう。農薬のうち、とくに恐ろしいのは有機燐剤のパラチオン(ホリドール)であることは、よく知られている通りです。そうした猛毒が、野菜や果物の「つや出し」に使われているというのですから驚きいったことです。しかも、やかましく騒がれるのはその急性中毒ですが、これは早く気がつくしすぐ施せば非常によく効く薬も出来ていますから、まだよい方です。けれども、たとえ少量(何の症状もおこさない程度の)づつであっても、それが長い間つづいてとり入れられるということは、それが気づかれないだけに、そしてまた、気がついた時はもう手おくれ、もはや施す術もないところまで進行しているかも知れないのですから、これほど恐ろしいことはありません。

     このことは、普通の食べ方では(野菜の量が少いので)さまで問題でないかも知れませんが、私どもの推賞する緑葉食、ことに青汁では(毎日かなり多量がとり入れられるので)、とくに問題は大きいのです。梁瀬夫人の場合もこれでなかったかと思います。聞くところによれば、市販の菜っ葉で青汁をつくって飲まれたらしい――前号の「ご注意」の所で砒素中毒と書きました(そう聞いたので)が、有機燐剤のほうが、ずっと「ありそうなこと」です。またDDTやBHCのように、人蓄無害といわれているものでも、少しも安心できません。天井にまいたDDTで愛児を2人までもなくしたという、あの悲惨な事故の原因は、DDTが含んでいた砒素でした。だいたいDDTに砒素などがある筈はないのですが(成分ではないのですから)、それが含まれていたというのは、原料として使われる粗製薬品の中に砒素が混っていたからです。それは、ちょうど、例の森永のドライミルクに添加された薬品の場合と同じことです。
     ですから、人工的に合成された農薬類は、たとえ無害といわれるものでも、果してそうかどうか、少しもあてにはなるものではありません。考えてみれば、ほんとうに恐ろしい限りで、私どもは、実際、いつ毒殺されるかわからぬのです。まったく殺人食時代という他ありません。当局もようやく事態の重大さにおどろき、指導や取締りに乗り出してくれているようです。しかし、お役所のお仕事はやはり所謂お役所仕事。とてもこれだけに頼りきるわけにはまいりませんから、私どもお互に自衛策を講ずる他ないと思います。

     それには、まずそういう危いものは一切買わぬ。不買同盟を結ぶことです。といって、加工食品や貯蔵食品はともかく、野菜果物類は食べぬわけにはまいりませんから、なるべく自給につとめましょう。戦時中にやったように、利用できる土地は家庭菜園として活用、菜っ葉をつくりましょう。(食糧事情はこうした点からみれば、今こそ戦時中より以上の非常時というべきです。)あるいは信頼できる農家に委托して栽培してもらいましょう。どうしても市販のものに頼らねばならぬ場合は、見かけのよいもの、は敬遠して、なるべく形のよくない虫つきをもとめましょう。菜っ葉なら虫喰いの穴だらけのもの。生きた虫がついているものはなお安心です。果菜や果物は形がいびつになっていたり、つらの悪いもの(虫の刺したあとが凸凹している)。そういう奴は値は安く、しかも味は却ってよろしい(虫はよく知っています。うまいものでなければつきません)。

     そして一方、同志を糾合して「安全食品の会」といったものを組織し、質がよくて清浄・無毒な「安全食品」の供給をはかり、危険な市販の「殺人食品」と絶縁したいものです。そうして一般市販品が売れなくなれば、いかに無責任な業者でも、やがてはその非を悟ることでしょう。それはともかく、事態は余りにも切迫しています。他人ごとではありません。火はもう足元についています。かれこれ論議している時ではなく、即刻実行にうつさねばならぬ時です。小さくてもよろしい。さしあたり私どもの周囲からまず自分だけを守ることから始めようではありませんか。そしてこのことはまた、自然食の大旆をかかげている私ども青汁党に課せられた使命のようにも感じられます。


1.  有機燐剤(ホリド−ルパラチオン)による恐るべき被害の報告(1)

     私たち遠藤青汁の会では、青汁の材料には清浄野菜であることは勿論、絶対に農薬を使用しないことを強調して参りました。ここに掲載します記事は、奈良県五条市の医師、梁瀬義亮氏が、奈良県五条市「健康を守る会」から発行せられたもので、青汁御愛飲の皆様に是非御熟読願いたいと存じます。(貝原記)

     梁瀬 義亮 

     ホリド−ル(パラチオン)は第二次世界大戦中独乙でつくられた毒ガスに若干の改良を加えた大へんな猛毒であります。植物に散布されますと体全般に浸透し其後約3週間植物体内に滞留し、植物の新陳代謝と共に次第に分解され無毒化されます。従って残効期間中は如何なる方法で洗っても又皮を剥いて食べても危険であり、又熱を加えても無毒化されません。冬期の植物同化作用の緩漫の時はもっと永く滞留する可能性が有ります。
     人間には消化器、皮膚呼吸器の何れよりも呼吸されて恐ろしい作用を示します。人間体内のコリンエステラーゼと結合してその作用を抑制して様々の恐ろしい症状を呈することはよく知られていますが今回の多人数の中毒により次のことが考えられます。

    1.  肝臓毒 血清膠質反応の変化、全身倦怠感、肝腫脹、悪心、嘔吐、肝の圧痛、亜黄疸乃至黄疸等の肝炎様症状
    2.  脳神経毒 中毒症状恢復後も永く耳鳴、眩暈、眼瞼痙攣、視力障害、神経痛、記憶力障害乃至神経病患者様症状等器質的変化を思わせる症状が永く残る
    3.  造血器に対する特性 貧血、白血球減少等
    4.  内分泌系に対する毒性 新陳代謝障害殊に副腎、甲状腺、卵巣の機能障害を思わせる様な症状此等の作用が考えられます。始めて使用された当時はその猛毒性が強調され、農民も恐れていました。

     然るに
    1. ホリド−ルの慢性中毒乃至は反復性潜在中毒が徐々に恐ろしい作用を人体に及ぼすことに対する知識がなかったこと。・・・即ち農民は使用している中に頭痛、眩暈、嘔吐、下痢腹痛、痙攣、死亡等 注意書に書いてある様な症状がすぐ起って来ないので次第にホリド−ル恐るるに足らずとの間違った信念に到達し全く無謀且大胆なことをやり出した。
    2. 取扱機関の放慢・・・ホリド−ルは法律により指導員の指導による集団防除以外は用いられないのに、いつの間にか農協、農薬店の取扱がルーズになり、入手安易で個人保管、個人使用が行われる様になった。
    3. 安価であって且90%の殺虫率を持ち、植物に対する薬害が少い。
    4. 稀釈液を野菜にかけると永く新鮮度が保たれるのて収穫間際に用いると価格が良い。

     以上の4項目の理由により益々ホリド−ルが乱用されてきました。3年前から私はホリド−ル散布中に起った中毒患者について軽重の別なく特に注意して視察し、その臨床症状について可なりの知見を持っておりました。然るに昭和33年の夏頃より市内の人々の中より肝炎症状、口唇炎、舌炎、歯齦炎、胃腸症状、精神神経症等ホリド−ル中毒症状を呈する人が多くなり不審に思っていました。11月頃より次第に増加し、昭和34年に入って益々患者が多くなり症状も顕著になりました。又飼育中の小鳥が死ぬと云う声を市内各処で聞き、私の家でも6羽中4羽が死亡しました。

     2月10日に至り白菜、キャベツ、に原因ありと気付きました。周辺の野菜産地の農村をたずねまはり又農村患者の言により多量のホリド−ルが消毒用むしろ新鮮度保持用に用いられていること、及び夏には茄子、トマト等に同様多量用いられたことを知りました。早速市内の私の御指導申上げている菜食の多い人をしらべて多くの同様症状の患者を見付け、直に野菜を中止せしめて経過を見ましたところ2〜3ヶ月来の症状の中急性症状、例えば腹痛、下痢、胸内苦?等は頓に恢復に向いました。尚続いて約20日間観察を続け、其后出た患者についても同様な結果を得ました。そこで保健所へ届けました。

    1. ホリド−ル中毒の症状を呈する患者が市内に多発している。
    2. 此等の患者はすべて白菜かキャベツの多食者である。
    3. 此等の患者は白菜かキャベツを中止することにより急に恢復に赴く。
    4. 周辺野菜生産地に於てホリド−ルが野菜に無謀に殺虫用よりむしろ新鮮度保持用に用いられている。
    5. 白菜、キャベツによる飼育中の小鳥がよく死ぬ。

     以上のことより白菜、キャベツに用いられるホリド−ルが中毒の原因と考えられる。


2.  有機燐剤(ホリド−ルパラチオン)による恐るべき被害の報告(2)

     梁瀬 義亮 

     私の発見した患者は70名以上に達しました。
     此れが大問題になりホリドールの取締が厳になり又慢性中毒に対する農民の自覚により昭和34年7月を以て五条市附近の野菜によるホリドール中毒問題は一応解決した様であります。
     然し他府県についての情況を聞き又私の家を訪れるホリドールの急性慢性の中毒農民患者の次第に多いことを見、又野菜、果実、穀物についてのホリドール使用量の膨大なことを知るにつけても事は極めて重大且全国的であり、国民の健康に対する重大な危機と存じます。

     農村に於て、引いては消費地たる都市に於てホリドールが(其他の農薬についても厳重な調査を要すと存じます)如何に破壊的な害毒を流しつつあるか私の如き一小開業医の窓口より見ても実に慄然たるものがあります。
     不知不識の中に肝臓胃腸神経系統、内分泌系統、脳造血器等を侵され徐々に癈人に近づきつつあります。

      例1 山○勇○ 30才男
       梨を栽培、年々50本位ホリドールを用ふ。ホリドール恐るるに足らずと殆ど防護装備をせず。34年8月25日最后に散布す。最近急に痩せ衰へ頭が重く、不眠症あり全く気力なしとて来院、診察するに痩せ衰え皮膚は汚穢、光沢なく亜黄疸色を呈す。口唇、舌端歯齦に典型的炎症あり、肝は硬く腫大す(約二横指)貧血著明。一見して心身荒廃を思わせる。

      例2 杉○正○ 29才男
       極めて頑健な人。ホリドール散布を無防護にて行っていた。2年前急性中毒を起す。以来精神病患者様状態がつづき2年位してやっと恢復してきた。

      例3 松○忠○ 39才男
       ホリドール指導員としての資格を持ち熱心に協同防除に参加す。勿論防護装備に充分注意して来た。昭和34年7月5日にホリドール共同使用に参加、それ以来全身倦怠感つよく食慾なく全く労働意慾を失いボンヤリとしている。次第に倦怠感、悪心、心窩部圧迫感、頭重、不眠、其他神経衰弱様症状著明となり死に対する誘惑感あり来院す。

      例4 宮○○○延 25才男
       ホリドール指導員として活躍、防護には相当注意す而も年々中毒症状が現れ本年7月は特につよく療養を必要とするに至る。

     後2例の如く教育をうけ防備に注意しても尚且中毒を逃れません。以上の如き例が実に多いのであります。農民はそして引いては一般国民は実に危険であります。最近肝臓胃腸障害が農村に、又都市に多く又原因不明の不健康な人の多くなりつつあるとのことをよく聞きますがその一つの大きな原因と考えられます。
     今一つ特に恐ろしいことはホリドールの急性慢性中毒の時は脳を侵されて精神が異常になり、生きる望とよろこびが無くなって死の世界から迎えられる様な気になることであります。(私も実体験者の一人でありますし多くの患者がその様に訴へます)近年何の理由もなく、或は些細な理由から自殺する農民が多い様ですがこれには確にホリドールが大きな役割をしていると信じます。
     例えば上述例3の松○君は常に死ぬことを考へ又彼の妻は恵まれた家庭であるのに、生きる希望が無いと云い出し、些細な理由で3人の子供を残してホリドール自殺をしました。元来劇毒薬は医師菌科医師薬剤師以外は扱ふ可きではないのであります。その劇毒薬の王とも云ふべきホリドールを農協や農薬店に保管させ、それを薬物の知識の無い農民に使用させることが如何に間違であるかは誰でも首肯出来ることであります。
     ホリドールの恐ろしさを知っている医師薬剤師ならばとてもホリドールの霧の中に立って散布することを敢えてしないでせう。人間の為の増産であるのに増産の為に農民を犠牲にすることは本末顛倒であります。法律で共同使用以外は禁じられていると云ひ乍ら実際は此の恐るべき毒物は安易に手に入り、個人保存をしています。これでは中毒自殺他殺の恐れ極めて大であります。ホリドール及其他残効性の農薬の製造中止を衷心よりお願い申上げます。又当局も化学肥料、農薬と云う危険な農法を再検討して下されたく存じます。私の地方でも有機肥料を主体にして農薬を用いず良い蔬菜を市場に出し又米作している篤農青年がいます。


3.  有機燐剤(ホリド−ルパラチオン)による恐るべき被害の報告(3)

     梁瀬 義亮 

     臨床症状 ホリドールは、経口経皮経気道何れの経路よりも吸収されます。多量のホリドールが体内に入った時は忽に症状が現れますが今回のホリドール汚染野菜による中毒事件の如くの微量ホリドールが続いて摂取された時はその含量により15〜30日位で徐々に症状が発現しました。

      頭…どうも近頃頭がぼんやりする。頭が重い様な感じがあり、殊に頸の後の方、項から後頭部にかけて、凝った様な重い感じがする。あれもしなければならぬ。これもしようと、心ばかり空まわりして、妙に実行力がなく根気がなく、さっぱり労働意欲や人生に対する興味がなくなってしまう。人間嫌いになって、人間の居ない静かな所へ行きたい。そのくせいらいらして常に不安で、じっとして居られない様な気がする。腹が立って仕方がない。夜眠れない。夜中に目が覚めたり、朝早く目がさめる。しかも昼間は睡くてぼんやりする。記憶力が頓に悪くなる。又すべてに悲観的になり暗いことばかり考える。一層のこと死んだ方がましだ等と思い出す。
      目…ぼおっとして仕方がない。よく目をこする。瞼がひくひくと痙攣することがある。
      耳…時々ピーンと耳鳴りがする。人によっては耳が聞えすぎて、物音がやかましくてたまらなかったり、又耳が遠くなったりする。
      口…舌の先や横が、原因もなくただれたり、神経痛様の痛みが出たりする。舌の先に紫がかった点状色素が沈着する。口が乾く。食事中によく唇をかむ。唇が乾いたり、又口唇のまわりに紫がかった色がついたりする。
      顔…色がどす黒くて光沢がなく、口のまわりや鼻のまわりに、紫がかった吹出物がよく出来る。又口角炎(俗にあくちがきれる)を起す。唇に水泡が出来て、後に紫色の色素が沈着する。又堀内歯科医の報告によると、歯牙や歯ぐきに、紫がかった色素が沈着したり、歯ぐきから出血したりする。
      鼻…鼻血が出る人がある。又大変風邪をひきやすい。人によっては嗅覚を失ったり、遂にありもせぬ変な臭いがするという。
      喉…女性に、喉がつまる様な感じがするという人が多い。
      胸…前胸部に圧迫感を感じ、しめつけられる様な感じがする。食物が通りにくいことはない。
      腹…ぼってりと重くるしい。みぞおちが圧えられた様で重い。食物は口にはおいしいが、すぐに満腹感が現れて少ししか食べられないことがある。又食べたものが仲々消化しない。時々悪心が(胸わるくなることが)あって酒の強かった人も、酔うと気分が良くなるより先に、吐気が現われる。腹がごろごろよく鳴る。便秘して、兎の糞の様な便が出る。而も時々原因もなく、軽い下痢がある。同様の腹痛もある。
      小便…小便の回数が多くなる。しかも毎回の量が多い。小便をこらえることが出来なくて、もらすことがある。一度尿意をもよおすと、こらえられない。
      皮ふ…全体に色が黒ずんで、光沢がなく、顔面に紫がかった吹出物が出たり、頑固な湿疹や蕁麻疹が出て、大変かゆい。殊に夜間に、背中や下腹部や腰の辺が大変かゆい。
      手足…よく冷える。しびれ易く、殊に夜間ふと気づくと、手がしびれている。又坐るとすぐに足がしびれる。時々下肢にぴりっと神経痛の様な痛みが出る。下腿がだるい。
      汗…夏は大変多く汗が出る。又盗汗(ね汗)が出る。
      月経…量が多くなったり期間が大変長くなったり又少くなったりする。
      全身…疲れ易い。だるくて、仕事が憶怯である。ひょいと立つと、くらくらっと軽い目まいがする。


4.  農薬の害

     梁瀬 義亮 

     一方農薬の害は、去る2月12日サンデー毎日にとり上げられてから、全国より様々の連絡があり、その恐ろしさは全く想像以上です。
     全国民が極めて徐々に廃人化の道を辿っていると思われます。
     燐剤、水銀剤がさかんに用いられて、米までが次第に危険になってまいります。
     私の地方でしばしばウンカの消毒と称して、穂のたれた早稲に、粉末ホリドールを散布しています。また酢酸フェニール水銀はもうどの野菜、また米にも用いられています。全く恐ろしいことです。
     土中に入って日光、空気の作用をうけることの少くなったホリドール、EPNデイプテレックス、エンドリン等は、一般にいわれるよりも5〜10倍くらいながく土中に残るのではないかと考えさせられる例が多いのであります。
     私たちの同志は、米の方は無消毒で出来る自信をつよめています。野菜も大体できます。果実はまだダメのようであります。

    (36・3・12、通信より)


5. 特集 農薬による国民健康の危機

     遠藤青汁の会では、さる7月19日、倉敷中央病院の定期研究会で、主題のような特別公演が催されたので、もよりの会員に案内して聴講しました。
     講師の梁瀬先生は、奈良県五条市で開業されている方ですが、昭和34年以来医業のかたわら、パラチオンなどの有機リン剤その他の滲透性農薬による慢性中毒患者が、農村はもとより都市においても、著しく増加していることを警告して「健康を守る会」を組織し、さしあたり、こうした農薬一切使わない野菜果物を作って食べよう、という運動を推進している方です。
     遠藤青汁の会は、お互いに、食事を栄養上完全なものにして、より以上の健康をはかろうと、青野菜の生食と青汁の飲用をすすめているわけですが、同時に、この青野菜・青汁材料は、人糞や農薬の一切かかっていない清浄安全なものでなければならないことを、常に力説しています。
     で、本紙は、パラチオンなどによる恐るべき被害についての梁瀬先生の報告が「健康を守る会」から発表されたので、早速さる3、4、5月号に転載させて頂いて、青野菜・青汁材料は必ず安全なものでなければならないことを訴えたわけです。が、この度、直接、先生の講演をきき農薬による慢性中毒が全国民におこる危険があり、いな現におこり始めており、国民一人一人はもとより、大部分の医師も、まだ、それと、はっきり自覚していない実状を知り、ことが極めて重大であることを痛感しました。
     とりわけ、青汁の飲用においては、なにぶん毎日多量の青野菜を摂取するので、もしこれが農薬を使ったものであると、ことは極めて深刻です。とくに、この頃のように、青汁飲用者が急速に増加している状況では、ついどんな手違いがおこらないとも限りません。
     で、ついこの間訴えたことではありますが、もう一度、梁瀬先生の講演から、農薬による被害と、その対策について、その要旨をお伝えして、青野菜、青汁材料は必ず安全清浄なものでなければならないことを、重ねて強調したいと思います。なお、こうした記事は、極めて専門的なものであり、また各方面に重大な意味をもってくると思われますので、もし聞きまちがいや誤解があってはと考え、念のため、梁瀬先生に目を通して補正して頂きました。
     このことも付記して、先生に謝意をあらわします。

    (友成左近)


     梁瀬 義亮 

5-1. 奇妙な症状の多発 原因は農薬による慢性中毒

     私は、五条という人口3万5千の田舎町で開業しているものですが、昭和34年来、医業のかたわら、パラチオンその他の滲透性農薬が広く使用されるに伴なって、それによる慢性中毒患者が全国的に発生していることを警告して、こうした農薬は一切使わない農法を推進しようとしているものです。こうした運動をおこすようになったのは、私自身にもトンダ失敗があったからです。


5-1-1. 野菜果物の多食をすすめていたところ

     私は、まえまえから、医師として、訪れてくる患者を診療している間に、病気を治療するにも、病気を予防するにも、その根本において、当人の体質を改善しなければならないと考え、体質の改善には、なによりもまず、食事を改めねばならない。日本人はもっと野菜果物を沢山たべねばならない、という持論をもっていました。
     で、土地がら、農家の青年諸君と語りあって、野菜の増産をすすめ、非農家の人々にも、大いに野菜を食べるようにすすめてきました。ところが、昭和32、3年頃より、私の医院に訪ずれてくる患者に、どうも、えたいの知れない奇妙な症状をもったものが、ふえてきました。
     アタマがボンヤリする、ヤタラに頭痛がする、よく眠れない、イライラする、耳なりや目まいがする、といった症状で、在来通りの治療をしても、うまく治らないのです。あるいは、顔にズズぐろいシミが出て、どんな治療や食改善をしてみても、ますますひどくなる。といった症状や、ふつうの治療では容易に治らない疲労、貧血といった症状や、口内炎、舌炎、胃腸カタル、肝臓炎、腎臓炎、ネフローゼなどです。
     そして、大いに野菜を作って食べようという私たちの仲間からも、やはり同じような症状をもったものがあらわれてきます。私自身にも、私の家族にも、同様どうもゲセない症状があらわれてきました。いったい、これはどうしたことか、ボンヤリしてきたアタマをふりしぼって考えている間に、昭和34年の2月、これは農薬による慢性中毒ではあるまいか、と思いつきました。
     それは戦時中、私は毒ガス教育に関係していたので、パラチオンなどの有機リン剤が使われ始めると同時に、その害毒について、人一倍強く意識して、研究していたからではあるまいか、と思います。


5-1-2. パラチオンのもとは体内にしみこむ毒ガス

     いうまでもないことですが、こうした農薬は、第二次大戦中ドイツで作られていた毒ガスに、ある種の改良を加えて、毒性を弱くしたものです。そして、この毒ガスは、鼻からも皮ふからも、またこれが付着し滲透した食物からも体内にしみこんで、神経とくに脳神経系統を犯すものでした。
     従って、こうした農薬を作物にふりかけると、その体内にしみこんで、定められた濃度のものであっても約3週間は、その体内にとどまって、作物につく病害虫をやっつけるのです。このため、従来使用されていた除虫菊などのように、ただ作物の表面に付着するものより、はるかに病害虫の駆除に効果が高いわけです。
     で、こうした農薬は、野菜果物だけでなく、すべての作物に広く使用されるようになったのです。が、ここに無知や悪徳が関連して、重大問題が発生したわけです。


5-1-3. 急性中毒にはあわてたが慢性中毒には無関心

     当時、新聞紙上でも盛んに報道されたように、こうした農薬を、定められた通りに(とくに十分な防備をして)散布しなかった農民に、あるいは、散布直後、付近の用水で遊んだ子供に、急性の中毒者があらわれ、その他いろいろな事故がおこって、重大な社会問題が発生しました。
     で、早速この取扱法の指導監督が改められました。が、こうした農薬は極めて強度な毒物であるのに、取扱法の規定は、全くもって不備であるため、いろいろな事故が絶えないことは新聞紙上の報道でも明きらかな通りです。
     ましてや慢性中毒の発生については、残念ながら、農家も非農家も、また監督機関も、全く無関心であったのです。(やっと最近になって、厚生省や農林省が関心をもち始めてきたようです)。


5-1-4. 無毒化してない間の野菜は処置なし

     こうした農薬は、作物の葉から、また果実からも滲みこんで、長い間その内部にとどまって、病害虫をやっつけるのですが、その間に、作物の新陳代謝によって、しだいに分解して無毒化するのです。(従って、冬期のように作物の新陳代謝が衰えているときや、いったん採取したものでは、それだけ長い間、分解されずに有毒のままとどまるわけです)。
     また、水の上や土の上におちた場合は(一部は作物の根から吸収されますが)空気と日光と水によって、しだいにうすめられながら分解して無毒化します。(従って、土の中深くはいったものは、それだけ長い間分解しないのです。たとえばDDTについては、15センチメートル以上深い土の中では、三年たっても、半分位しか分解していないという報告があります。
     で、今日では、土壌そのものが、もうすでに、農薬によって、かなり汚染されているものと推定されます)で、こうした農薬は、散布後、(その種類により、また濃度と量により、さらに、作物の種類や時季や天候などによって、その期間が著しく異なりますが、とにかく)一定期間すぎなければ、作物の内部に、無毒化されないままに、とどまっているのです。
     そして、いうまでもなく、この間はどんな洗剤を使って洗っても、皮をむいでも、煮ても焼いても、無毒化しないのです。全く処置なしです。


5-1-5. 微量でも連続摂取すると慢性中毒を引きおこす

     従って、こうした食物を食べれば、当然、農薬も、無毒化されないまま私たちの体内にはいってくるわけです。ただ、それが微量であるため、すぐ症状となってあらわれてくるような有毒作用は引き起こさないだけのことです。
     けれども、たとえ微量であっても、連続して摂取していると、そのうち必ず、慢性の中毒を引き起こすのです。決して無関心であってはなりません。ですが、これまでは、一般に、いわゆる中毒量以下の微量であれば、たとえ連続して摂取していても、大した害はあるまい、と常識的に考えていました。
     けれども事実は、そうでないのです。アメリカにおいても、細胞生理に関する最近の研究に基づいて、たとえ微量であっても、長らく連続して摂取していると、細胞の生理機能に重大な障害を与える、ということが叫ばれています。
     問題は、一回量や一日量だけではないのです。それだけではないのです。それが、たとえ中毒量以下の、ごく微量であっても、連続して摂取して、総量が多くなる、ということにも重大問題があるのです。


5-1-6. 農薬の無毒化している野菜は極めて少ない

     ところが、野菜は、苗の間はともかく、成長後となると、農薬散布後、二週間とか三週間と、一定期間すぎると、成熟しすぎてモノにならないものばかりです。どうしても無毒化されないうちに取り入れて、市場に出したり、みずから食用したりするようになります。
     また、無知というか悪徳というか、散布の翌日取り入れて市場に出すものもあるようです。
     (ラジオの「明日の農作業」も、むし暑い頃、雨のふったあとなどトマト・キュウリに農薬を散布するように、すすめています。そのためでもあるまいが、まれには、取り入れた手が荒れる位タップリとふりかけたものを市場に出しているものもあるようです)。
     それだけではありません。2千倍くらいのパラチオン溶液に、わざわざ野菜をしたして出荷するものもあるようです。
     (野菜の中に含まれている酵素をこわすので、鮮度が数倍もつようになるからです。が、この酵素こそ、野菜を食べる主たる目的であり、この酵素をこわす作用が中毒をおこす一つの原因なのです)。
     (なお念のため、云いそえておきたいことは、農薬を使わずに作ったものでも必ずしもすべて安心できない、ということです。付近の田畑で散布すれば、とんでくるからです。動力噴霧器で散布すると、風向きにもよりますが、100メートルはユウにとんできます)。ところで私たちは、毎日どうしても。相当量の野菜を食べねばなりません。がこの野菜はこのように農薬を使い、これが完全に無毒化していないものである以上、ごく微量ではあっても毎日毎日、農薬を摂取しているわけです。そして、これは積り積って相当な総量となるので、いつかは慢性の中毒におちいるようになるわけです。


5-1-7. 農薬を使わない安全野菜を食べていると治る

     そこで私は、慢性の農薬中毒ではないかと思われる患者に、農薬のかかっている疑いのある野菜果物を一切禁止して、農薬を全然使わない安全な野菜を沢山たべるように指導しながら、それそれ症状に応じて治療してみたところ、結果は予想通り極めて良好でした。たとえば、口のまわり、目のまわりに、紫がかったシミの出ていた婦人のシミがとれました。この婦人は相当裕福な方であり、その上美人であったので、美容には人一倍努力して、果物や野菜を毎日沢山たべていたそうです。が、これに農薬が含まれていたので、その慢性中毒の症状が、たまたま顔のシミとなってあらわれたわけです。それとは知らず、このシミを取ろうとますます沢山、果物野菜を食べたので、顔のシミがいよいよはげしくなっていたのです。また、精神分裂病と診断されて入院していた青年を引き取って治療したところうまく回復しました。この青年は、分裂病となるような素質や性格が全然認められなかった円満な青年でしたが、常識では判断できない、全く理性を失なった衝動的な行動をするようになっていたのです。さらに、ひどい貧血状態に陥って、少年らしい快活さを全く失っていた少年が再び元通りになりました。この少年は、非常に朗らかな元気もので、学校の成績もズバぬけていたのですがいつの間にか、元気がなくなり、青白くなって、勉強もサッパリできなくなっていたのです。その他、口内炎、舌炎、胃腸病、肝臓病、腎臓病、心臓病、皮ふ病などの治療が、農薬を使わない安全野菜を沢山たべることによって、目立って促進しました。はっきりしているものだけで、約400例ほどあります。


5-2. 農薬による慢性中毒の症状

     この頃の農法では、病害虫の駆除に、パラチオンなどの滲透性農薬を使うことは、いわば全く常識となっています。野菜果物などは農薬散布後、所定の期間がすぎないうちに取り入れ、まだ無毒化していないうちに出荷され食用されている場合が、極めて多くなっています。
     ところが、栄養と健康上野菜は、どうしても毎日、相当量たべねばならないので、誰でも、多かれ少なかれ、こうした野菜を食べているわけです。食べている以上、いつの間にか、その慢性中毒をおこす恐れは十分あるわけです。
     それがすでに症状となってあらわれている人々も、決して少なくないはずです。ただ、当人も医師も、まだそれと知らずに、すごしているだけのことかも知れません。この頃、トランキライザーなどの精神神経鎮静剤やグロンサンなどの強肝剤やその他各種の強壮剤や栄食剤が、異常な売れ行きを示しているのは、その背景の一つとして、まだ気づかれていない、農薬による慢性中毒が、多くの人々におこり始めているのではないかと思われます。
     それでは、この中毒が症状として、どういうふうにあらわれるかというと、私たちの臨床経験では、だいたい、こうです。(これはパラチオンの中毒を主としたものですが、他の農薬中毒の症状も、だいたい、これとよく似ています)。


5-2-1. 精神・神経作用に異常がおこる

     パラチオンなどの有機リン剤は、もともと神経とくに脳神経を犯かす毒ガスを改良したものですから、ほとんどすべての場合、まず最初に、精神神経作用に異常がおこってくるようです。

    • なんとなくアタマがボンヤリする。
    • アタマが重く、とくに後頭部から首にかけて、こったような感じがする。
    • 夜ねつきが悪く、朝早く目がさめる。
    • 夜中に度々目がさめ、容易にねつかれない。
    • ひる間ヤタラにねむい。
    • 目がボーッとしてピントが合わぬ。
    • よく目をこする。
    • マブタがピクピクとケイレンすることがある。
    • 耳なり目まい立ちくらみがする。
    • 人によって、耳がよく聞こえすぎて、物音がやかましくてたまらなくなったり、耳が遠くなったりする。
    • ハナがきかなくなったり、ヘンな臭いがするようになったりする。

     まず、こういった症状があらわれてきます。
     それから、やがて、

    • 気分がイライラしてくる。
    • あれもしなければ、これもしなければ、と気はあせるが、容易にとりかからず、根気がなく、いつも心ばかりカラまわりする。
    • 時々きつくプーンプーン、ピーンピーンと耳なりがする。
    • ヤタラハラがたつ。ツマラぬことによくおこる。

     事実、これまで仲のよかった夫婦、親子、兄弟、嫁姑、近隣、師弟などの間に、いさかいがおこっています。
     そして、いよいよ、

    • 理性の力が衰えて、非常に衝動的となる。
    • 全くクダラぬことでケンかをしたり、罪を犯したりする。
    • 危いと気づいても、ブレーキをふみ忘れて思わぬ交通事故をおこす。
    • 記憶力がトミに衰えて人と約束しても守れない。
    • 時間の観念がうすくなってショウもないことで、遠くまで歩いて出かける。
    • 被害妄想がおこったり、精神分裂状態になる。
    • 判断力がサッパリなくなり、およそ理性的に計画して行動することが、ほとんどできなくなってくる。

     最後には、

    • 働らく意欲が全くなくなり、人生に対する興味がうせてくる。
    • ひどく人間ぎらいとなり、人のいないところに行ったりする。
    • 万事に悲観的となり、暗いことばかり考え、いっそのこと死んだ方がましだと考えるようになる。

     事実原因らしい原因もなく自殺するものがふえています。


5-2-2. 内臓諸器官に異常がおこる

     脳神経についで犯され易いのが自律神経です。
     従って、内臓諸器官が犯されていろいろと異常がおこってきます。
     まず、自分でよく見える口腔内ですが、

    • 舌の先や横が、原因もなく、ただれたり、痛んだりする。
    • ヤタラに口や唇がかわく。
    • ノドがつまったように感じる。
    • 歯ぐきからよく出血する。
    • 食事中によく唇をかむ。
    • また舌の先や横や歯ぐきに紫がかった色素が沈着する。

     つぎに、誰でもすぐ異常を感じ易い胃腸ですが、

    • おなかがいつもボッテリと重苦しく、とくにミゾオチが圧えつけられたようである。
    • 食べるとすぐ満腹感がおこる。消化が悪くなり、悪心や吐き気がする。
    • おなかがゴロゴロなる。便秘する。が時々原因もなく下痢する。
    • 排便しても、すっかり出てしまった感じがしない。まだ残っているような感じがする。
    • オナラが多くなる。事実、慢性の胃カイヨウや十二指腸カイヨウまでおこしている場合が少なくありません。

     さらに肝臓、腎臓、造血器、内分泌系諸器官が犯されて、いろいろな症状があらわれます。全身的には、

    • 疲れ易い。
    • からだがだるい。
    • なにをするにもタイギである。
    • 手足がよく冷える。
    • しびれ易い。とくに下肢がだるく、神経痛のような痛みを感じる。
    • 胸がしめつけられ、おさえつけられるように感じる。
    • 血圧が異常に低くなったり高くなったりする。
    • 小便の回数が多くなる。
    • 一度尿意をもよおすと、こらえきれなくなって、もらすこともある。
    • ヤタラに汗をかく。ね汗をかくこともある。
    • 顔や肌が黒ずんできて、ツヤがなくなる。
    • 口や鼻や目のまわりに紫がかったシミが出たり、紫がかった吹出物がよく出る。
    • 口角炎が起ってアクチがきれる。
    • 唇が荒れ、小さな水泡がよくでき、あとに紫がかった色素が点状に沈着する。
    • しっこい湿疹が出て大変かゆい。
    • 月経の量が多くなったり少なくなったり、また周期が乱れる。



5-2-3. 殆んどすべての人が慢性中毒にかかっている

     このように、全く種々様々の症状があらわれるのですが、いうまでもなく、人それぞれ体質が異なるのでこうした症状のあらわれ方も十人十色です。
     私たちはこうした症状を訴えてくる患者を、一応慢性の農薬中毒のためではないかと考えて、それぞれ対症的な治療をしながら、農薬のかかった疑いのある野菜果物を一切やめ、安全な野菜を毎日多量にとるように指導しているのですが、うまく治っていく場合が非常に多いのです。
     こうした臨床経験から、私の地方では(他の地方も恐らく同様かと思いますが)殆んどすべての人が慢性の農薬中毒にかかっているのではないか、当人がまだ症状として自覚していないだけのことではあるまいかと思われます。
     (いうまでもなく、人それぞれ体質が異なり、農薬のかかっている野菜、果物を食べる量も異なるので、症状が早くはっきりとあらわれてくる人もあれば、容易にあらわれてこない人もあるわけです。が、無毒化されていない野菜を毎日かなり食べていることは事実ですから、決してあらわれてこないという保証はないわけです)。
     というのは、こういうわけです。パラチオンなどによる中毒では、典型的に、紫褐色がかった色素の沈着が歯ぐきや舌などの口内粘膜にあらわれます。ところが、友人の歯科医堀内君の調査によると、もうすでに小学生12%、中学生9%に、こうした色素沈着が口腔内にあらわれているそうです。
     私の臨床経験では、中毒患者と思われるもののうち約10%に、こうした色素沈着があらわれています。こうしたことから推定すると、恐らく殆んどすべての人々が、当人の症状自覚の有無にかかわらず、農薬による慢性中毒にかかっているのではないかと思われるのです。


5-2-4. とくに危険なのは神経の変性的変化

     ところで、こうした農薬による中毒がどうして起こるのか、というと、これまでは、コリンエステラーゼ(酵素の一種)の抑制作用であると考え、専ら血液中のコリンエステラーゼの消長のみを中毒の目安にしていました。
     すなわち、血中コリンエステラーゼ値は、有機リン剤中毒で、とくに著しく低下するのです。で、それが正常値になったら、それで中毒は治ったものとされていました。
     このため、相当はげしい中毒でも、二ヶ月位すれば、血中コリンエステラーゼは、ほぼ正常に復します(有機リン剤が、身体の新陳代謝によって分解して、コリンエステラーゼを抑制しなくなるから)。
     それで、有機リン剤による中毒は、2ヶ月たったら治る、と考えていたのです。従ってまた、微量による慢性中毒の場合は、コリンエステラーゼは、あまり変化しないので、蓄積作用はない、慢性中毒おこらないと考えていたのです。今でも、学者の中に、そう考えているものが多いのです。
     けれども、血中コリンエステラーゼの低下は、有機リン剤による中毒の一つの症状です。この消長のみで中毒が起ったとか、治ったとか、治っていないとか考えるのは誤りです。というのは、こういうわけです。パラチオンによる急性中毒の後、コリンエステラーゼが正常になって、なお数年たっても、健康が回復せず、精神病者とか廃人とかになっている例が多いのです。
     また明きらかな慢性中毒患者で、コリンエステラーゼに異常を認めない例も多いのです。すなわち、有機リン剤には、コリンエステラーゼの抑制作用以外に、神経とくに脳神経細胞に、ある種の損傷を与えて、変性的変化を引き起こす作用があるのです。
     それだけではなく、肝臓、腎臓、造血器などの細胞にも変性的変化を引き起こすのです。ここに、パラチオンなどによる慢性中毒の恐るべき危険があるのです。
     一回摂取量がごく微量でも、それ相応の損傷を与えるので、これが長い間連続していくと、重大な損傷となるからです。
     しかも、これは、神経とくに脳神経に著しい作用を与えるのですが、神経組織は、その他の細胞組織と異なって、いったん傷つけられると、容易に回復しない性質のものであるからです。
     なお、少し余談となりますが、この頃、小児マヒが流行するようになったのは他にも種々原因があるわけでしょうが、一つには、農薬による慢性中毒で、神経組織がいためつけられ傷つけられているからではあるまいか、と思われます(小児マヒのウイールスは神経組織を犯す性質のものですから)。
     いずれにしても、パラチオンなどの農薬による慢性中毒が現に広くおこっていることは事実です。で、その中毒作用の機序や治療法の研究が緊要であることはいうまでもありませんが、それよりも、こうした農薬による被害の防止法、いな、こうした農薬は一切使わない農法の促進が極めて緊要ではないか、と思います。


5-3. 危険な農薬は一切使わない安全栽培の提唱

     今日の農法では、農薬をフンダンに使うことが、いわば一種の流行となっています。そして、この農薬は従来から使用されていた除虫菊やデリスなどのように作物の表面に付着して病害虫を駆除する接触剤だけでは、とうてい間にあわず、作物の体内にしみこんで、しかも長い間とどまって、病害虫を駆除する滲透剤が広く使われています。


5-3-1. 危険なのは滲透性農薬

     ところで、接触性のものは、毒性も弱く、雨にあたれば流れおち、食用するときには洗いおとすこともでき、別にそう危険ではありません。危険なのは滲透性のものです。これには、今日、パラチオン、テツプなどのリン系のもの、BHC、エンドリンなどの塩素系のもの、ヒ素系のもの、水銀系のもの、フッ素系のもの、その他いろいろあります。除草剤のPCPなども滲透性のものです。
     こうした農薬は、それぞれ毒性に強弱はありますがいずれも人体に有毒作用を及ぼすことには変わりありません。で、これを散布すれば、散布する当人はいうに及ばず、付近に住む人々にも、鼻から口から皮ふから、しみこんで有毒作用を及ぼします。
     使い方を誤れば、急性中毒をおこす危険があり、所定通りに使っても、連続していると、慢性中毒をおこす危険があります。
     また、こうした農薬は、作物の内部にしみこんで、有毒なまま、とどまっている残存期間に、それぞれ長短がありますが、いずれも相当な期間がすぎなければ無毒化しないのです。従って、農薬を散布した野菜果物は、残存期間中は、どんな洗剤を使って洗っても、皮をむいでも、煮ても焼いても処置なしで、これを食べれば有毒作用を及ぼします。
     これが連続すれば、慢性中毒を引き起こす危険があります。
     (なお、この残存期間は農薬の種類により、散布する濃度や量や、時季や天候により、また作物の種類によって、著しく異なります。使用法に2週間とか5週間と定められてある残存期間、すなわち収穫前散布期間は、至って頼りないもので、実際は、それよりはるかに長い間、残存しています。しかも、こうした農薬が食物に残存しているかどうかは、微量であれば、唯今のところ、簡単には検出できないのです。また、こうした農薬を、ごく微量でも、長期間、連続摂取した場合に起こる慢性中毒については、まだ世界中どことも、十分な研究が行なわれていないのです)。


5-3-2. 危険な農薬まで使うのは化学肥料の使いすぎ

     では、なぜ、こうした危険な農薬まで、しかも多量に使うようになったのか、というと、病害虫がわいて手のつけようがないからです。
     では、なぜ、そんなに病害虫がわくのか、というと、堆肥その他の有機質肥料に代えて、化学肥料を多量に使っているからです。
     すなわち、有機質肥料が少なく、化学肥料を多量に使っていると、土壌の栄養成分が悪くなり、また土壌の中にいる有効細菌が少なくなって、土地がやせてきます。従って、作物はひよわくなって、病害虫におかされ易くなり、また病害虫がはびこるようになるのです。
     それは、こういうわけです。化学肥料には一定の種類の成分しか含まれていないので、専らこれにたよっていては、土壌成分の高度な調和を保つことができないのです。従ってまた、化学肥料中の有効成分は、有機質肥料中の有効成分より効き方が極めて不自然なのです。また、土壌中の有効細菌は、病害虫とくにウイールスを食い物にしているだけでなく、それ自体が肥料ともなるのであって、まことに自然の耕作者なのです。が、これは、病害虫よりも化学肥料に弱いので、化学肥料を使えば使うほど減っていくのです。(こうしたことは、私たち人間が、平素の食物の改善をマトモに考えずに、ヤタラに新薬を使って病気を治そうとしたり、丈夫になろうとすることについても同様です)。
     こうして、作物が病害虫におかされるので、いわゆる「人知」をはたらかせて農薬で病害虫を駆除するようになったのです。ところが、農薬を使えば、一時は病害虫が少なくなります。が、それ以上に、この病害虫の天敵である有効細菌その他の益虫が少なくなるのです(有効細菌は、病害虫より、農薬に弱いので)。
     すると、生き残った害虫はわが世の春とばかりに増殖してくるわけです。そこでまた農薬を使うわけですがそうなると、益虫はますますへり、害虫は農薬に対する抵抗力がついて、いよいよ増殖してきます。
     そこで今度は、ますます多量に農薬を使ったり、強い農薬を使うようになるわけです。全くもってイタチゴッコです。こうした悪循環がくりかえされてきたため、今日では、害虫の量と種類の多いこと、しかも農薬に対する抵抗力の強いことは、全く驚くばかりです。そして、農民も食費者も、意識するとしないにかかわらず健康と生命がむしばまれているのです。


5-3-3. 農薬は安全で健康のためのものであるはずなのに

     こうなってきたのは、そこに、いろいろな背景があることでしょうが、その根本は、有機質肥料にかわる地力の培養をマトモに考えずに、テットリばやく化学肥料を多量に使って、できるだけ多量の生産をあげようという数量意識が根強く働いているからではあるまいか、そして、その結果が自分たちに、また社会的にどんな影響を及ぼすか、深く考えようとしないからではあるまいか、と思われます。
     いったい、農業は、作業する農民にも、その付近に住む人々にも、また生産物を食用する消費者にも、まず第一に安全であり、栄養と健康に役立つものでなければならないはずです。が量産意識に禍いされて、この安全と健康が度外視されているのではないでしょうか。そこに無知や悪徳がはたらいて、この禍いが、さらに大きくなっているのではないでしょうか。


5-3-4. 農法の根本は土地をこやすことなのに

     また、いうまでもなく、農法の根本は、土地をこやすことです。
     既知未知を問わず、各種の成分が高度に調和するようにすると共に数限りない有効細菌を活用することです。それには、まずもって、深耕して堆肥その他の有機質肥料を十分に施こし、空気と日光と水を底深く通すことが肝要です。
     ところが、この頃では、あまり深耕しないばかりか、堆肥も非常に少なくなっています。全国平均で反当たり、明治中期には700貫であったのが、昭和初期には200貫、今日では70貫といわれています。おおざっぱな話ですが、水田では、米だけとって、ワラは全部堆肥にして返しさらに、なにほどか緑肥かなにかを追加すれば、地力は少しも衰えないそうです。(空気、日光、水の成分が加わってくるので)。
     が、この頃では、ワラは加工品にして全部は返さず、それかといって緑肥もあまり与えないようになっています。畑作に至っては、さらにはげしく、マルで土地から収奪しているようなものです。土地がやせてくるのは当然でしょう。そこで、その代わりに、化学肥料をやるわけです。これは、堆肥に比べて、手数も少なく、しごく便利です。けれども、一時は効き目も高いことですが、やがては作物がひよわくなり、病害虫もはびこって、これにおかされるようになります。
     そこで、農薬を使って駆除しようとするわけですが、前に述べたように、病害虫には抵抗力がついて増殖し、有効細菌はへっていくので、ますます多量に使ったり、強く新手の農薬を使うようになるわけです。(高知県や徳島県あたりでは、もうすでに、所定の5倍濃度のパラチオンでなければ、効き目のない二化メイ虫が出ているそうです。これでは、二化メイ虫よりも人間の方がやられる恐れがあります。青森県あたりでは、リンゴ園を通る学童は、防毒面をつけねばならないことがあるそうです)。


5-3-5. ウイールス性疾病の流行する背景の一つは

     余談になりますが、この頃、小児マヒが地域的に流行する傾向があるのは、前に述べたような背景の他に、いま一つ、農薬やきつい消毒薬を使いすぎたため小児マヒウイールスを食い物にしていた有効細菌がやられすぎて、細菌界のハーモニーがこわれ、ウイールスがバカに強くなって繁殖してきたことが考えられます。
     国体を迎えるに当って、市内外を徹底的に消毒した熊本市や、多量の農薬まで使って、カやハエをボクメツして、日本一の衛生都市として厚生大臣の表彰をうけた夕張市で、小児マヒが多発したことを考えれば、こういう推定も成立するでしょう。
     といって、生活環境の消毒が不必要というわけではありませんが、消毒薬のみにたよらず、もっと他の施策も必要と思われます)。まだ、この頃、とくに眼科では、ウイールス性のものが目立って多くなっており、その他の病気についても、ウイールス性のものが増加しているようですが、そこに、やはり同様な背景があるのではないか、と思われます。
     (もっとも、ウイールス性のものについては、その他の細菌性疾病のように、抗生物質やワクチンが、まだ十分に発達していないことも、その重大な原因でしょうが)。


5-3-6. 全国民の健康が損なわれる恐れ

     このように、細菌の農法では、でなくても有毒作用のはげしい農薬を、いよいよ濃度を高くして、広く多量に使用するようになっている次第です。
     が、こうして、生産数量は一応増加するでしょうが農民も消費者も、それだけはげしく有毒作用をうけるようになっているわけです。精神神経作用に異常をおこしているもの、内臓諸器官とくに口腔や胃腸や肝臓や腎臓に故障がおこって、どうもからだ具合がおかしい、というものが増加するのも当然です。
     ある部落では、大部分の人々に、多かれ少なかれ、アタマやカラダに、おかしな症状があらわれて、なにかのタタリがあらわれたのではないか、と大さわぎしたことがあります。


5-3-7. 微量でも積り積っていくから危険

     くりかえし訴えたいことは、こうした農薬は、たとえ、一度にはいってくる量が微量であり、さしあたり別になんとも作用が起こらなくても、これが積り積っていくと、やがては必ず慢性中毒を引きおこす恐れがある、ということです。
     一度や二度の摂取量のみが問題なのではなく、連続して摂取すること、その全体量が問題なのです。参考までに、一つの事例をあげましょう。
     富山県の神通川流域に住む人々に、中年をすぎると、骨がまがり、これをためそうとすると折れ易いという骨軟化症にかかる人が多いそうです。その原因は、最近あきらかにされたところでは、神通川の水に鉛やカドミュームが比較的多量に含まれていることです。


5-3-8. とくに野菜に農薬を決して使わないこと

     そこで、こうした危険な農薬は、これから一切使わないようにする必要があります。とくに野菜果物のように、どうしても散布後間もなく収穫し易い性質のものには、絶対に使用しないようにしなければなりません。
     が、これは、いうまでもなく、社会的に重大問題です。けれども、農民、消費者すべての健康と生命にかかわることです。農薬の使用禁止によって打撃をうける農民や製造会社に、社会的保障を与えても、危険な農薬を全廃するように、運動を推進する必要があります。


5-3-9. 農薬を使わなくても収穫に変わりなし

     ところで、問題は、こうした農薬を全廃しても、作物がうまくできるか、ということです。私たち仲間の経験では、野菜や米についてはできる(果物その他については目下研究中)。という自信をもっています。
     まず第一に、土地を深く耕やし、堆肥、緑肥、油粕などの有機質肥料を適当に施こして、地力を養ないます。
     第二に、石灰を適量やって、各作物に適した酸アルカリ関係を保ち、また水はけをよくして、各作物に適した水分を保ちます。
     第三に、病害虫の発生時期をそらして作物を作る(ある病害虫の発生時期には、その虫のつき易い作物を作らない)ようにします。
     こうすれば、化学肥料は使わず、農業も、ぜいぜい除虫菊乳剤やいおう剤程度のものを、苗の間に使い、滲透性の危険なものは一切使わなくても、病害虫に犯されることは殆んどありません。
     それは、作物それ自体が強く育つので、病害虫に打ち勝つからです。土壌に有効細菌が沢山いるので、土質がたえず改善され、またウイールスその他の病害虫をやっつけるからです。こうして、少しは病害虫にやられることはありますが、農薬を使った場合と同等の、いなそれ以上の収穫があります。
     いったい農法というものは、土地、作物、病源その他、天地自然の仕組みや理法を正しく理解して、どこまでも謙虚な態度をもってこれに従う以外に、妙手はないのです。化学肥料も農薬も(毒性のごく軽微なものであれば)、ことと次第によっては必要であることもありましょうが、専らこうしたものにたよって、天地自然に立ち向い、これを征服して、意のままにしよう、といった態度は、厳につつしまねばなりません。
     ある応用動物学者がいっているように、専ら農薬によって昆虫をやっつけることは不可能であり、有益動物によって駆除することが最も有効なのです。ダーウインがいっているように「自然界の均衡をこさないわことが望ましい」のです。


5-3-10. 危険な農薬全廃のために組織的な社会運動を

     私たちは、こう考えて、まだ至って小規模なものですが、「健康を守る会」を組織して、危険な農薬の全廃運動を推進しようとしているのです。
     すなわち、さしあたっての方策として、危険な農薬は一切使わない野菜果物を求める消費者をつのり、この需要に応じる農民をつのって、組織したものです。この結果、五条では、もう農民にも消費者にも、殆んどすべて、農薬が危険であることが常識となっています。
     が、過渡的に、まだ野菜果物に農薬を使っている農民も、こうして作った野菜果物を食用している消費者も、かなりいます。が、できるだけ早い機会に、危険な農薬は一切使わないようになること。そして、これが足がかりとなって、こうした運動が全国的にすすめられることを念願しています。

    (おわり)


6. 農林省厚生省 収穫前の散布期間厳守を指示

    大津市 Y.T. 

     昭和36年7月29日付の日本経済新聞は、要旨つぎのような報道をしています。

       最近、パラチオンなどの農薬を、収穫まぎわの野菜果物に散布すると、無毒化されずに残ったものが、くりかえし人体にはいり、肝臓障害などを誘発する恐れがある、という声が医師の間から出ている。
       このため、農林省では、厚生省と協議した結果、パラチオンなど三種の農薬について、散布期間を定め、このほど各都道府県に、両省共同で「収穫前の散布期間を厳守するよう」指示した。このほか、農林省では健康保持のため、その他の農薬についても散布期間を決め、農業による慢性障害の防止に乗り出すことになった。
       パラチオンは、2週間前を原則とするが、とくにキャベツ、白菜などの葉菜類については3週間前。メチルジメトン剤(みかん、りんごなどの果実用)は、散布は4週間前、塗布は5週間前。モノフルオール酢酸アシド剤(果樹用)は、4週間前。なお、こうした期間は、わが国では、まだ十分に試験データがないので、アメリカにおける調査資料に基づいて決めたもの。その他の農薬についてはアメリカにおいても、まだ十分な調査資料がなく、ねずみなどの動物実験でも、一つの薬品について結論を出すまでに、二年以上はかかるので、すべての農薬の散布期間を決めるには、相当長期間かかるわけ。

     ――さて、こうした期間が実際上厳守されるようにするため、どんな手がうたれるのであろうか、また、たとえ厳守されたとしてもはたして本当に慢性中毒をおこす恐れはないのだろうか、自分の健康と生命に、みずから責任をもたねばならぬ以上、一度も二度も考えてみる必要がありはしないでしょうか。



7. 未熟児つくる農薬

    助産婦さん 妊婦に悪いと発表

     【伊勢】三重県伊勢市伊勢会館で21日開かれた第17回日本助産婦学会で、香川県丸亀市中府町、助産婦国戸文子さん(48)−同県助産婦会教育委員−は

    「妊婦が農薬をまくと未熟児を生みやすく、しかも、このほとんどが農薬中毒特有の症状を起こして死亡するということが、研究結果にあらわれた」
     と発表、反響を呼んだ。
     国戸さんはさる33年、国戸さんの経営する助産院で生まれてすぐ死亡した未熟児の母親が農婦でその症状が農薬中毒に似ていたことに注目、同年秋からまる3年にわたり研究、データを集めたもの。
     同院で3年間に生まれた未熟児(体重2500g以下)は108人で、うち13人が死亡したそのうち7人の母親が農家の主婦で、しかも4人の妊婦が妊娠中に農薬をまいたことがわかった。
     国戸さんはこれが農薬散布と未熟児死亡に密接な関係があると確信を深め、未熟児を生んだ農婦30人に個々に面接し、農薬散布の有無と死亡児の病状について再調査したところ農薬をまいた妊婦5人が生んだ未熟児の4人が誕生後3日足らずのうちに死亡。
     残る一人も補育器に入れ手当の結果、やっと助かったことがわかった。
     これに対して農薬をまかない農婦が生んだ25人の未熟児の死亡したものは3人にとどまったことがわかった。
     またこの調査で妊娠初期に農薬をまくと流産しやすく後期に行なえば早産しやすい。
     しかもそのほとんどが死亡するということもわかり、これは呼吸やヒフから妊婦の体にはいった農薬が胎児に影響するのではないかという。
    (産経)





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