健康と青汁タイトル小
 食品の発癌・制癌性インデックス

 食品の発癌・制癌性(1)
 食品の発癌・制癌性(2)
 食品の発癌・制癌性(3)




1. ワラビを食べた牛の乳


     ワラビには骨髄や胃腸をおかす毒素があり、乳に出る。
     で、ワラビを食べた牛の乳を犢にのますとその中毒症状が出る。
     また、ワラビには発癌性もいわれているので、そういう乳をのむことは危険だ、と注意されている。
     (Evans ら Nature 1972. 5. 12)


2. こうしたら癌も防げるのでないか(5)

     医学博士 遠藤 仁郎 


    調味料

      食塩
       食塩がすぎると胃癌になりやすい。
       わが国に胃癌が多いのは塩からいもの(味噌汁、漬物、塩魚など)のとりすぎのため、といわれている。
       なお、味噌、醤油には、原料大豆粉、および添加物(着色料、調味料、保存料など)。漬物でも添加物に問題。
       せめて、漬物や味噌は自家製の安全なもの。
       また塩も、なるべくは、安全な海域でとれた天然塩にしたい。現在市販の食塩は、殆んど純粋のクロールナトリウムだが、天然塩には、その他、海水にふくまれるすべてのミネラルがそろっている。

      甘味料
        砂糖
         砂糖そのものとしては発癌性はない。
         栄養的には粗糖(赤・黒砂糖)や糖蜜(粗糖から砂糖の結晶をとった残り)、蜂蜜がよく、蜂蜜には抗腫瘍性(発癌に抵抗する性質)もいわれている。
         しかし、そのいずれにしても、すぎると栄養のバランスをみだすという点で、一般抵抗力をよわめ、発癌をたすけることにもなりかねない。
        人工甘味
         ズルチンもチクロも、発癌性の故に禁止された。
         サッカリンも、少々あやしいらしい。

      酸味料
       市販の食酢は殆んどが合成品。石油コンビナートでできる氷醋酸をとかして、調味し着色したもの。必ずしも良質・安全とはいいきれない。
       なるべく純粋の醸造酢、米酢。
       もっともよいのは、農薬に汚染されない果物酢。レモン、ダイダイ、スダチ、ナツミカンや梅酢など。

      脂味料
         バター、着色料、抗酸化(酸化を防ぐ)剤に問題はないか。
         マーガリンでは、さらに、液状植物油を固化する(水素添加)さいの、触媒につかわれるニッケルカーボニ−ル(肺癌を原因する)が残ってはいないだろうか。
         ピーナツバター カビ毒(アフラトキシン)混入のおそれがないではない。学校給食用には、それがため、禁止された、と聞いている。
         マヨネーズ 着色料、保存料はどうか。
         植物油 抽出溶媒ヘキサン(発癌性がうたがわれている)の残留。脱色、脱臭につかわれる薬剤(PCBその他)の残留。あるいは混入はどうか。

       昔ながらの、安全・純粋の圧搾油がほしいものだ。
       そこで、揚げもの用の油はともかく、サラダの調味用には、しぼった油よりは、むしろ、もとの大豆(キナ粉)、胡麻(いりゴマ)、南京豆(カビのつかない)、胡桃など、そのままをすすめたい。

      香辛料
       強烈なものは刺戟になるほか、発癌性もあるようだ。
       トウガラシは肝癌の発生をすすめるというし、胡椒の成分ピぺラジン(アミンの一種)からは、亜硝酸塩によって、胃内で発癌性ナイトロサミンができる。

      ダシ
       化学調味料に安全性に疑問があることは上記した。
       むしろ、昆布、椎茸(抗腫瘍性成分がある)、鰹節、ダシジャコなど、安全な自然物のダシにしたい。(つづく)


3. こうしたら癌も防げるのでないか(6)


    嗜好品

      果物
       嗜好品としては最高。ただし、問題は農薬と加工。たとえばミカンのワックス処理。パラフィンが塗ってあるわけだが、精製したものはよいが、不順な粗製品には発癌性がある。その他、色素もつかわれている。

      菓子
       菓子で問題になることは、
      1.  材料に危険なものがつかわれていないか。たとえばカビた材料。米では、黄変米その他カビのついた廃棄米。カビた落花生、アフラトキシンという発癌性の強い毒素をもっているかも知れない。漂白した小麦粉。こういったものが使われていないか。
      2.  添加物はどうか。発癌性のある人工甘味がつかわれていないか。色素には発癌性のあるものが少なくないが、そういう危険なものがつかわれていないか。香料はどうか。防腐剤やカビ止めに入れる薬品に発癌性のものがつかわれていないか。また、みかけをよくし、乾燥を防ぐために、表面に塗るパラフィンが粗製品ではないか。甘味の好きな人、ことに菓子の好きな人に癌が多いような印象をもっているが、一つには、栄養のバランスがみだれ、一般抵抗力がおとろえるだろうこと。また一つには、こうしたいろいろの発癌性の成分のとりこみがあずかっているのではなかろうか。

      コーヒー
       コーヒーの主成分カフェインには、染色体をこわす作用があり、ちょうど、レントゲン線ににているといわれている。しかしカフェインは茶にもあり、薬用されてもいるほどだから、まず問題はあるまい。が、焦がしたコーヒー豆には、有力な発癌性物質3・4ベンツピレンなどを含む煤がついている(この煤を吸入させたモルモット25頭のうち2頭に膀胱癌、5頭に悪性の損傷がみられた)。
       そして、南米に胃癌が多いのは、幼い時からコーヒーを飲んでいるためだとする説もある。また、膀胱癌とコーヒー飲用の関係をしらべたCole博士によれば、一日一杯以下のばあいに膀胱癌にかかる危険度は非飲用者と大差がないが、それ以上の飲用者では、男性では1.24倍、女性では2.58倍多い、という(ランセット誌、1971・7・26号)。
       これらの点からすると、コーヒーは飲まぬにこしたことはないが、飲むにしても、せいぜい一日一杯くらいにしておく方が無難といえそうだ。この点、茶、緑茶、番茶のほうが安全。癌によいという草茶ならなおよいだろう。


       アルコールそのものには発癌性はない。しかし、食道癌や胃癌には、酒好きの人、ことに強い酒のグイ飲みをする人に多いようだ。強いアルコールでは、直接粘膜の損傷がおこるし、それが慢性にながくつづけば、癌発生の下地をつくることにもなろう。
       南米プエルトリコに食道癌が多いのは、自家製のラム酒(サトウキビの汁を醗酵させてつくる酒でアルコール分は60〜80%)による、といわれている。
       また、酒の醸造につかわれる材料に発癌性のものがあったり、醗酵中に発癌性のものが出来、あるいは混りこむこともありうる。わが国をはじめ、米食人種には胃癌や肝癌が多いのだが、米につくカビに関係はないだろうか。米には、黄変米をおこすカビ(肝臓をおかし癌をつくる毒素を出す)だけでなく、アフラトキシン(南京豆に多いカビの毒で、同じく肝臓をおかし強い発癌性がある)様の毒素を出すカビがつく。そういう変質米がまぎれこむことはないだろうか。
       また、酒の醸造につかわれるカビ(日本酒やインド・南方・中国などの酒の醸造には、カビの糖化酵素が利用されている)はどうだろうか。その道の学者の研究によれば、わが国の醸造用カビにはアフラトキシンをつくるようなものは絶対にない、とのことではあるが。
       もっとも、動物の実験上からは、ふつうのコウジそのものにも肝毒性があるといわれている。アフリカや欧米のビールや、それを蒸溜したウイスキーの醸造には、麦芽の糖化酵素が利用されているので、カビ毒の心配はない。しかし、アフリカの土人、ことにザンビアに食道癌が多いが、これは、彼らが飲むビールその他の酒に、醗酵の際に生ずるアミン(いろいろのものが出来る)から、発癌性の強いナイトロサミンが出来るためだ、という。
       ウイスキーに発癌性がいわれているのも、同じことによるのだろうか。日本酒にも僅かにはあるが(5PPM以下)、この程度では特別の意義はおけないそうだ。
       なお、酒がすぎると、直接食道、胃、また解毒器としての肝臓を障害するだけでなく、食べものがとかく偏りがちとなり、全体としてのバランスがくずれ、ために体抵抗力をよわめることになりやすい。こうした点からも、発癌にたいして不利な条件をあたえることになろう。特殊の発癌物質があればなおさらである。禁酒にこしたことはないが、せめて、せいぜい節酒することだ。
       
      タバコ
       タバコの煙には、発癌性と、発癌促進性とがあり、直接には気道(喉頭・気管支)や肺を刺戟する。最近ふえた肺癌の有力な原因に数えられている。
       肺癌は、シガレット(紙巻)喫煙者に多く、シガー(葉巻)やパイプでは少ない。そして、喫煙歴のながいほど、ことに若い時から吸っているほど(幼いものほど危険)、また喫煙本数の多いほど、多い。
       口・咽頭・食道・胃・膀胱の癌にかかる危険があり、大腸癌は葉巻と関係があるらしい。なお、喫煙量が多いと、ただ癌が発生しやすいだけでなく、悪性度の強い癌が出来る傾向がある。発癌物質としては、ベンツピレン、ベンツアントラセンなどのほか、煙の中に数種のアミンがあり、唾液にとけて胃に入り、そこで、亜硝酸塩と化合して、発癌性の強いナイトロサミンが出来る、という。
       また、喫煙で、トリプトフアンの分解産物(発癌性のある)の尿への排出が増すことが最近わかって来たが、これは、膀胱癌発生との関連が考えられている。ニッケル、カドミウム、鉛などにも問題があるようだ。
       「人癌の多発原因に関する研究」をつづけている、国立癌センターの平山博士が、昭和45年6月25日、厚生省記者クラブで発表した中間報告によると、(日本医事新報、45・7・4)
       
         「喫煙者は非喫煙者に比べ、癌で死ぬ割合が倍も高い。特に肺癌はその差が著しく、7倍も水をあけられている。また、喫煙に、酒・肉類・熱い日本茶などの常用が重なると、癌の発生を促進することとなる」

       という。
       大気汚染による発癌は、喫煙と合併すると重大な意味をもつようになる(Lan et70.4.25)
       まさに百害あって一利なし。やめるか、せめて、つとめてへらすこと。最上は喫煙のくせをつけないことだ。
      (つづく)


4. フキの発癌性


     フキノトウやフキに、肝臓をおかし、腫瘍を発生する性質があるが、それが何によるかは、まだわかっていない。


5. ソテツの発癌性


     サイカシンという成分があり、経口投与で発癌する(腸管内の細菌によって分解され発癌性になる)。但し、水溶性なので、よく洗えば、とり除くことができる。


6. こうしたら癌も防げるのでないか(7)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    合理的完全食
    危険がいっぱい

     以上のべたところは、もとよりほんのあらましに過ぎない。
     要は、現在市販の食品には、安心して食べられるものは殆んどないということがわかっていただければよい。
     しかも、これら発癌物質の影響は、1回の摂取量によらず、その総量が問題であり、箇々の食品の中の含量はごく僅かで、とるに足らぬほどの微量であっても、あれこれと食べれば、総計は相当の分量になっているかも知れない。
     また、他にもいろいろのもの(汚染されたり添加されて)、がとり入れられているが(複合汚染)、それらは、直接発癌性はなくても、大切な臓器や組織をおかし、一般抵抗力をよわめて、間接に発癌をたすけるものもあり、それら同志が、食品の中で、あるいは体内で、互に相作用しあって発癌性が強められたり、あらわれたりすることもあり得る。
     したがって、これがつづいていれば、長い間には、発癌するにいたる可能性もあるわけだ。
     なお、これらの影響は、幼弱なものほどうけやすいので、幼時、ことに胎内にある頃から、ずっとさらされているとなると(胎生期に発癌物にさらされることによって、生後うける発癌物の作用が助長されたり、生涯の発癌の条件ができてしまうのかも知れない、といわれている)、ただ量が少ないだけの故をもって、安全とはいいきれない。

    食品の選択や調理
     そこで、癌を防ぐためには、すべての食品の選択や調理にあたって、ただ、栄養素の点だけでなく、同時に、安全性とくに発癌性の有無についても、細心の注意がはらわれなければならない。
     カビたもの、亜硝酸塩や硝酸塩の添加されたもの、塩蔵品、燻製品、化学肥料ことに硝酸肥料の多量に使用された農作物などはもとより、工場・鉱山の廃水、煤煙、粉塵、排気ガス、強力な持久性農薬、畜水産用薬剤、洗剤、あるいは危険な添加物などで汚染されていたり、そのおそれのあるもの。したがって、貯蔵食品・加工食品、中でも既成食品などはつとめて避け、なるべく、自然の安全食品をえらぶべきである。
     また、水質にも注意しなければならない。
     調理はなるべく簡単に。(手を加えるだけミネラル・ビタミンを失い、栄養のバランスをくずし、完全性に欠陥を生じやすい)。特に、発癌性を生ずるおそれのある調理法はつとめて避け、煮汁を捨てないこと。
     すなわち、米は玄米、小麦はフスマごと。芋・豆・野菜・果物や動物食品は、なるべく全体を利用すること。
     調味はうすく、自然のままか、自然にちかいかたちで食べ、調味料もなるべく自然の安全なものとする(自然食)。

    咀嚼
     よく咀嚼すること。
     かみ方が荒いと、栄養のバランスを乱すことになり、過熱食の害をうけやすい。
     火傷するような熱いものは、食道癌や胃癌の原因になる。奈良県に胃癌が多いのは熱い茶粥、キュラソウに食道癌が多いのは、熱いトウモロコシ粥のため。
     また、料理人に食道癌や胃癌が多いのも加熱食のため、といわれている。
     歯が悪ければスリバチでするか、ミキサーで粉砕し、それもよくかみ、十分唾液をまぜて食べる。

    緑葉食・青汁
     こうした意味で緑葉食・青汁、ことに、イモ・マメ・ナッパ・青汁食が適当でないか。

    イモ・マメ・ナッパ・青汁食
     イモ・マメ・ナッパ・青汁食というのは、主食にはイモを、蛋白食には大豆ものを、そして良質ナッパを十分添え、青汁をうんと飲もうというもの。その特長は、安全、ことに発癌物質の汚染がないか少ないこと。栄養的に本当に完全であること。そして、その他にも有利な条件があると思われること。

    安全性
     主食は、栄養的にも安全性にも問題のある米・麦とくにその精製品(白米飯・白パン・白メン類)は、なるべく避けるか控え、いずれの点でもすぐれているイモ類、あるいは雑豆・雑穀類にし、蛋白食も、同様、栄養的にも安全性にも劣っている肉類(獣鳥魚介の切身)はさけるか控え(卵・乳およびその製品も同じ)、いずれの点でも有利な大豆ものにし、副食には、安全かつ良質のナッパを主とする野菜・山菜・海藻・果物を十分そえ、うんと青汁をのむ(少なくとも2〜3合。5合でも6合でも、多いほどよい)。
     というのだから、安全性ことに発癌性に関しては、ふつうの食にくらべ、はるかにすぐれているわけだ。

    完全性
     栄養のバランスも完全にとれているうえ、糖質や脂肪のとりすぎのおそれがないこと。
     蛋白質は十分であり、ビタミン・ミネラル(痕跡分をくるめて)には、むしろ多すぎるほど余裕があるなど、ともに癌防衛にとって有利といえよう。

    蛋白質に不足はない
     緑葉食・青汁、ことに、イモ・マメ・ナッパ・青汁食では、とかく、蛋白質の不足、したがって、栄養失調に陥り、体力・抵抗力を弱めないか、と懸念される。
     しかし、ナッパには動物蛋白にまさるとも劣らぬ良質蛋白があり、大豆蛋白とともに、十分の蛋白を供給しうる。(ジャガイモ、サツマイモ各300、大豆100、コマツナ300、青汁4合=ケール葉1キロで、総蛋白約90、うちナッパ蛋白45〜6グラム。)また、ビタミン・ミネラルが豊富にあり、栄養素の利用がよく(節約効果があるので)、それらの不足した不完全食のばあいにくらべ、はるかに少量の蛋白質で足る。
     そこで、たとえ、摂取量が多少すくなくても、決して不足するおそれはない。
     まして、動物食品がいくらかでもあれば、(後述のように、この食養法では、動物食品の摂取を否定したり排斥はしない)、なおさらだ。

    ビタミン・ミネラルも十分
     ビタミン・ミネラルにも十分余裕がある。良質ナッパ(緑葉は食品中もっともビタミン・ミネラルにとんでいる)の量、ことにその生食が多いこと。その他の食品も加工(精製や調理)によるロスが少ないこと。繊維にとんでいるため、腸内細菌によるビタミンの生成もさかんであること。などにより、従来の習慣食のように、ビタミンやミネラルに不足するおそれは絶対にない。いや、それどころか、本食養のめだった特長は、大量のナッパ・青汁(4〜6合、もとのケール葉1〜1.5キロ)によってビタミン・ミネラルには十分の余裕があり、ことに抗癌作用がいわれているビタミンA・B・Cがずばぬけて多い。また、同様抗癌性の痕跡ミネラルにもとんでいると考えられる。
     事実、このイモ・マメ・ナッパ・青汁食によって、余命いくばくも、と危ぶまれていた癌患者が2〜3年といきのびたり、手術はできたが、再発はおそらく100%まぬかれまい、と思われたのが、5年、10年と元気でいる。あるいは、放射線や抗癌剤治療に良効があった。などといった例もかなり経験されている。

    (つづく)


7. こうしたら癌も防げるのでないか(8)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    細菌叢の健常化
     この食のも一つの特長は植物繊維にとむこと。
     食物繊維が多いと、

    • 腸管内の細菌叢が健常化され、ビタミンの生成がさかんになり、人間への補給にも役立つこと。
    • 便通がよくなり、肝臓の機能、ひいては一般抵抗力がたかめられること。
    • また、脂肪や胆汁酸(胆汁の成分)の分解がおさえられ、高度の分解で生ずる発癌性成分の生成が阻止されること。
    • 腸管内の滞留時間が短かく、発癌物質(腸内発生および外来性の)との接触時間が短かくなるなどの点も有利と考えられる。

     (肉食では、これに反し、脂肪にとみ、植物繊維に乏しいため、腸内細菌叢異常がおこり、脂肪や胆汁酸の分解が高度にすすみ、発癌性物質を生じやすく、しかも便秘し、それらとの接触時間がながくなるのが、大腸癌の原因ではないかといわれている)
     なお、十字科野菜、ことにケールの類には、腸管内の発癌物質分解能(細菌性)を著しくたかめる、という注目すべき事実もある。
     これらのことがらからすれば、緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食は、すべての栄養分(既知ならびに未知のものも)がそろった、本当に完全な食ということができよう。
     そして、それ故にこそ(また、安全食であることにもよって)、すべての代謝が完全におこなわれ、?血(血の濁り)を去り、すべての細胞、すべての組織・臓器の機能が完全となって、体力・免疫能、したがって、癌にたいする抵抗力(防衛力)も十分発揮されるのであろう(抗癌食)。
     自然食をとっているアイヌやインジアンに癌が少ないこと、自然食では加工食より癌防衛力が強いという動物実験データなども、これを裏づけるものといってよいであろう。

    なるべく早くから
     そこで、癌を防ぐためには、将来は知らず、少なくとも今日においては、発癌物質をつとめてさけ、自然的な食べ方、すなわち、天地の恵みを十分にそなえた自然食品の完全食を、自然のままか、なるべく自然にちかいかたちで食べるよう心がくべきであり、それには、緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食といった安全完全食を中心とすること。
     そして、同時に、日常生活諸般の合理化・自然化をはかるべきであろう。そうすれば、発癌物質のすべてはとても防ぎきれないとしても、ふつうの食、ふつうの日常生活のばあいにくらべ、癌にかかる率は少なくなり、あるいは、かからずに済むかも知れない。
     また、外科治療をうけ、放射線や抗癌剤治療にも、よく耐えられ、よりよい効果が期待され、再発も防ぎうるのではないだろうか。
     そして、なるべく早く、若いうち、幼いうちから、いや、もっと早く、妊娠中・授乳中から始めるならば、いっそう効果的であろう。

    融通無礙食
     ところで緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食といえば、いかにも窮屈であり、不自由きわまる、しかも、まことに味気ない、非現実的な食べ方のように思われがちだ。
     しかし、徹底してやってみると、決して、そういう堅苦しい、むつかしいものではない。
     私どもは、むしろ、かえって自由な、いわば融通無礙な食べ方ではなかろうか、とさえ思っている。
     というのは、この食べ方は、要するに、なるべく安全で良質のものを食べようということであること。
     イモ・マメ・ナッパを3本の柱にはしているが、それ以外は何も食べてはならぬというのではなく、ナッパ・青汁に十分の余裕をもたせてさえおけば、肉でも、魚でも、卵でも、飯でも、パンでも、また菓子・酒でも、安全性と分量に気をつけ、つねに合理的自然食の原則をみださない範囲内であれば、何を食べてもよいからだ。
     また、この食べ方に徹底すると、何を食べても美味しくなるので、単純な献立、簡単な調理、淡薄な調味でも、少しも苦痛も不満も感じられなくなるからだ。
    (つづく)


8. こうしたら癌も防げるのでないか(9)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    安全良質食品の供給
     残る問題は安全・良質食品の供給。
     すべての食品が安全・良質であるにこしたことはない。
     それは、現在、とても早急には望みがたいとしても、せめて、この食養法の中心になっている良質ナッパだけは、絶対に安全なものでなければならない。

    健康な土
     そのためには、まず土。
     健康な土つくり。
     すなわち、要素の完全にそろった健康な土壌がつくられなければならない。
     健康のもとは完全食(健康食)。
     健康食のもとは健康ナッパ(農作物)。
     健康農作物のもとは健康栽培(健康農法)。
     健康農法のもとは健康土壌。
     そして、そこに育成される作物は健康であり、病・虫害にも強いから、農薬の必要はなく、その汚染のおそれもないからだ。
     しかし、現在、耕地の多くは、多年の不自然・不合理な農法(耕耘不十分、化学肥料、農薬依存)の結果、大切な痕跡成分をうしない、甚しい地力の低下を来している。

    (痕跡成分は、作物のために奪い去られ、雨水のために流され、あるいは地下ふかく沈下するため、表層土壌にはしだいに欠乏して来ている)
     昔から、精農家が地力恢復のために深耕(いわゆる天地がえし)をやっていたのは、そのため。
     また、以前、肥料として用いられた糞尿(人畜糞)、油カス、魚粉など有機質肥料には、主養素とともに痕跡分も十分あったので、その不足はおきなかった。
     しかし、化学肥料(主養素のみで痕跡分は無いか乏しい)の使用が増すにつれて、その間のアンバランスがめだって来、偏った(不健康)肥沃土となってしまった。
     そこに育つ作物は、外観上にはいかにも立派そうだが、質的には劣り、ただミネラル・痕跡成分の不足だけでなく、ビタミンにも蛋白質にも欠陥を生じることとなった。
     そして、病・虫害に弱く、味もよくない。
     これを飼料とする動物は、当然、欠陥動物になり、それら欠陥植物、欠陥動物を食べる人間の健康も完全ではありえないわけで、癌にも弱くなる道理。
     なお、化学肥料には、それ自体発癌成分をもつものもあり(硫安にはベンツピレンがある)、窒素肥料ことに硝酸塩肥料では、作物の硝酸塩がふえ、亜硝酸となり、直物中で、あるいは摂取後、体内で、発癌性ナイトロサミンを生ずるおそれがある。
     癌は化学肥料の使用とともにふえている、ともいえなくもなかろう。
     それはともかく、これが解決には、健康土壌による健康栽培しかない。
    「癌は土と水とに関係する、土が唯一の原因ではないにしても、予防は土にはじまらなければならないし、土を忘れて癌を防ぐことはできない」
    (ヴォアサン土・草・癌)

    健康栽培
     耕地には、日当り、風通し、水はけのよい、そして農薬汚染や工場(煤煙・粉塵)、礦山(廃水)、ハイウエイ(排気ガス、鉛)公害などのおそれのないところ。
     なるべく深耕、少なくとも30〜40センチ以上。
     肥料には、化学肥料はさけ、堆肥を主とし、石灰(炭カル=炭酸石灰粉最適)、草木灰、鶏糞、油カス、魚粉など持久性有機質肥料。
     (人糞も十分腐熟したものは使用してよい。生肥は不潔であり、寄生虫の危険がある)。
     (堆肥、山野の若木・雑草、落葉、古ワラ(除草剤汚染のないもの)、台所の残りもの(厨芥)など。そのままか、腐熟したもの。材料としては、山野処女土の草木ことに根深いもの、あるいは河海の水藻などが最適だが、実際には、その供給が容易でない。私は、国民全体の健康をまもるため、国土の大部分を占める山野の草木や海藻を利用して、安価に供給する公的機関があって然るべきだ、と考える)
     私どもは、これを、健康農法とか、自然農法とよんでいるが、こうしてつくった野菜はきわめて健康で、病気しないし、虫にも強いので農薬は一切不要(つまり安全)。
     しかも、味はすこぶるよく、収量も多い。
     ほかの農作物(穀・豆・芋など)も、同じ要領で安全良質のものが得られる。
     また、こうした安全良質作物を家畜・魚介類の飼料にすれば、安全良質な肉・卵・乳の供給も決して不可能ではあるまい。
    (49・8)


9. 貯蔵食品と癌

     貯蔵食品で癌と関係のあるものに塩蔵品と燻製品がある。

    塩蔵品
     塩魚、タラコ、スジコ、塩乾魚、ハム、ソーセージなど。また漬物(塩・味噌・醤油・粕づけ)類。塩からいものの食べすぎは、わが国に胃癌の多い原因の一つにあげられている。

    • それは、食塩が濃いと、それだけでも胃をいため(胃炎・胃潰瘍になるなど)、胃の抵抗力をよわめること。
    • 食塩とともに亜硝酸塩や硝酸塩(これから亜硝酸塩になる)がつかわれていて、それがアミン類と結合して、発癌性ナイニトロサミンを生ずること。
    • また、食塩に不純物として硝酸塩があり、これが亜硝酸になって、同様、ナイニトロサミンを生ずること。
     などのためと考えられる。

    燻製品
    • 肉・魚・その他の燻製品は、煙でいぶしてあるため、煙の中の発癌物、ベンツピレン・ベンツアントラセンなどが付着していること。
    • 同時に、食塩や亜硝酸・硝酸塩が添加されており、塩蔵品と同様、ナイニトロサミンが出来ているおそれがあること。
    • また、煙の中にあるフェノール(防腐作用をもっている)からも、発癌性のあるパラニトロフェノールができる可能性もいわれている。

     ところで、煙の発癌成分や、亜硝酸添加で生ずる発癌成分はともかく、硝酸塩添加、あるいは、硝酸塩の多い農作物――硝酸塩肥料を乱用したり、24Dといった除草剤をつかうと、農作物中に硝酸塩が多くなる――のばあいは、低温に保存することで、発癌成分の発生が防がれるという。
     すなわち、この際の発癌性ナイニトロサミンができるには、まず、硝酸塩が亜硝酸に還元されなければならない。しかし、この還元作用は2〜4度Cという低温ではとまってしまうので発癌性を生じないからだ。
     欧米先進富裕国では、そういう性能のよい冷蔵庫がつかわれ出し、塩蔵品が少なくなってから胃癌がへった(貧しいものにはまだ多いそうだが)といわれている。
     これはふつうの野菜・果物の貯蔵についてもいえることなので、なんとか、こうしたすぐれた冷蔵庫がはやく普及してほしいものだ。
     なお、一般の貯蔵用食塩には、不純物の多い粗製輸入塩が主のようだが、国産の精製塩は殆んど純粋だから(それで味がよくないのだが)、この点だけからは、この方が安全というものかも知れない。


10. 貯蔵食品と癌

    ニトロソアミンの突然変異 野菜類が消す作用
    国立遺伝研の賀田部長発見

     ハムと魚肉をいっしょに食べるとできる発がん物質ニトロソアミンも、キャベツやダイコンがあれば大丈夫――。

     国立遺伝学研究所変異遺伝部の賀田恒夫部長はこのほど、世界的に問題になっているニトロソアミン類の発がん性が、一部の野菜類によって打ち消されることを見つけた。
     この事実は、4月の日本農芸化学会で発表されるが、注目されそうだ。
     ニトロソアミンは、魚肉や医薬品などに含まれるアミンという物質に亜硝酸塩が結びつくとできる。
     強力な発がん性を持ち、突然変異を起こすことが知られている。
     亜硝酸塩はハム、ソーセージなどに発色剤や防腐剤として添加されているほか、野菜やつけ物、タラコなど、天然に含んでいる食品も多い。
     このため、ニトロソアミンを完全に除外することは現段階では不可能で、実際の発がんとの関係や生体内での反応などの研究が各国で盛んにすすめられている。
     賀田部長は、遺伝子に傷をつけると修復する能力のないバクテリア(枯草菌)を使った突然変異検出法を利用し、逆に突然変異を打ち消すような物質があるかどうかを調べた。
     ニトロソアミンとしては、活性化型のNブチルNアセトキシメチルニトロソアミン(東京生化学研究所、岡田正志所長提供)を用いた。
     また、食品添加物の亜硝酸塩とソルビン酸塩(防腐剤)水溶液の混合物(ニトロソ化合物)が、かなり強力な突然変異誘起物質であることが最近確認されており、この混合液も用いた。

     加賀部長の調べでは、意外にも一部の野菜類が突然変異性を打ち消す作用を持っていた。
     そこで、ニトロソアミンなど1に対し、ミキサーにかけた野菜類のうわずみ液10を加え約百種類の野菜、果物類を次々に調べてみた。
     その結果キャベツ、カリフラワー、レタス、ダイコン、カブの根、ミツバ、アスパラガス、モヤシ、カボチャ、サヤエンドウが両物質の突然変異性を全く打ち消してしまった。
     また、果物やネギ類では、その作用は全く認められなかった。
     発がん物質のほとんどは突然変異性を持っており、実験は、ニトロソアミンなどがキャベツやダイコンの汁によって発がん物質でなくなったことを意味する。賀田部長は、野菜に含まれる酵素がニトロソアミンなどを分解するとみて、その物質を早急につきとめたい考えだ。
     「この物質が、熱や調理でどう変化するかは不明だが、生で食べるキャベツやダイコンが、多少は発がんを抑えているのではないか」という。

    国立衛生試験所食品添加物部・谷村顕雄部長の話
     初めて聞く話だが、現象は非常に面白い。
     野菜類がニトロソアミンを分解したと考えるよりはむしろ、発がん物質としての働きが何かの原因で阻害されたとみるほうがよいのではないか。
     ニトロソアミンは、強酸性下で紫外線をあてたりすると分解するが、通常は安定しており、分解しにくい。
     野菜の多くの成分のうち、作用を持つ物質を見つけ出すのは大変だが、分かれば大きな意義がある。

    (朝日 52・2・13)


11. あーら不思議

    たばこなどの発がん性
    野菜汁で消えちゃった


     焼き魚、焼き肉のこげ、たばこの煙などの発がん性が、生野菜の汁で消えてしまうことが分かった。
     まだ試験管の中での実験なので、野菜汁さえ飲めば、たばこをスパスパ吸ってもいいというところまではつながらないが、発がんのカラクリを知るのに重要な研究だと専門家は高く評価している。
     この研究をしたのは、さきにニトロソアミンの発がん性が野菜の汁で消えることを見つけた国立遺伝学研究所変異遺伝部・賀田恒夫部長ら。
     28日、名古屋大学農学部で開かれた日本農芸化学会中部支部会例会で発表された。

     賀田部長と、同研究所研究生の森田和良さん、井上正さんは、キャベツ、ダイコンなど野菜類の汁が熱でどう変化するか、ニトロソアミン以外の物質にどう作用するかなどを調べた。
     その結果、発がん物質を消す働きをするのは高分子物質であり、加熱すれば働きが弱まることなどが分かった。
     また、国立がんセンター研究所の杉村隆所長、長尾美奈子室長らが発見したたんぱく質の焼けこげ部やたばこの煙に含まれる突然変異を起こす物質に野菜汁を加えてみたところ突然変異を起こす力が弱まることが分かった。
     この突然変異物質の代表は「トリプP1」と呼ばれ、アミノ酸の一種トリプトファンを数百度に熱するとできる物質。突然変異を起こす物質のほとんどは発がん物質である。

     賀田部長らは、杉村所長らが突然変異を確認したのと同じサルモネラ菌を使った。
     まず、トリプトファンを加熱した物質と、キャベツをミキサーにかけたうわずみ液を作った。

      次に
    • 1、加熱したトリプトファンだけ
    • 2、加熱したトリプトファンに20倍量のキャベツ汁を加えたもの
    • 3、加熱したトリプトファンに、20倍量のキャベツ汁を加熱してから加えたもの
    • 4、キャベツ汁だけ、

     の4種類に分け、37度で30分間放置後、一定のやり方でサルモネラ菌の突然変異の量を測定した。
     その結果、
       1が500に対し、
       3は400、
       2と4は50だった。
     この数字は、キャベツ汁が突然変異作用を完全に打ち消したものと解釈できるという。

    極めて興味深い話
    国立がんセンター研究所・杉村隆所長の話

     極めて興味深く、自然界の複雑さを教えてくれる話だ。キャベツ汁などがあらゆる発がん物質を消してくれるわけではなく、ものによって、ある発がん物質の力を弱めたり、逆に強めるものもある、ということではないか。
     今後もっと力を入れて研究すべき問題だと思う。
    (52・5・30 朝日)


12. ワラビの発癌性


     ワラビの発癌性は、シダになったものより、ふつう食べる巻いたワラビの方が強い。
     ラット(白ネズミ)の実験で、若いワラビの乾燥粉末を1/3まぜた飼料では、4ヶ月で72〜100%、腸に腫瘍ができる。
     100%発癌率のものを5〜10分間アクヌキすると66%に、83%発癌率のワラビを木灰でアクヌキすると25%に、重曹でアクヌキすると10%に、また、塩漬けでは5%に、それぞれ発癌率が下った。
     ワラビの根には、もっと強い発癌性があるが、根からとったワラビ粉には発癌性はない。

    (岐大 広野巌 癌の臨床61集、昭51・1)


13. サンマと癌

     この4月のアメリカ癌学会で、ハワイ大学のMowerおよびWeislurger氏らが発表したところによると

       亜硝酸塩で処理したサンマには、細菌の突然変異による検査法で、ほかの魚よりつよい発癌性がみとめられる。だから、サンマを、亜硝酸塩の多い食べものと一緒にたべると、胃の中で発癌性物質のできる危険が大きいわけで、これが、日本人に胃癌が多いことと関係があるというのではないか、という。

    (AAC.R.Abstracts,19:89,1978)


14. 戦慄の恐怖 癌、ガン、ガン

     医学博士 遠藤 仁郎 

    食肉保存剤に発ガン性
    亜硝酸塩 米政府、対策に苦慮

    【ワシントン11日=AP】
     米政府は11日、食肉保存用添加剤としてソーセージ、ハム、ベーコンなどに米国で広く使用されている亜硝酸塩が動物生体にガンを引き起こし、人体に対しても発ガンの可能性があると発表した。
     これは米食品医薬品局(FAD)がマサチューセッツ工科大(MIT)に委託した3年がかりの研究成果として発表したもの。
     しかし米政府はこの研究成果から同添加剤の使用禁止に踏み切るかどうかは未定という。
     この理由として米政府は?亜硝酸塩が危険なボツリヌス中毒に対し有効であり、発ガン性と中毒防止が微妙なバランスにある?亜硝酸塩は米国の全食品の7%を占める食肉、魚肉加工品に使用され、禁止すれば食品流通機構に混乱をもたらし、長期間にわたりこれらの加工食品入手が不可能となる?亜硝酸塩はホウレンソウなどの葉野菜や飲料水に天然の状態で存在し、人体が摂取する亜硝酸塩の80%は、これら天然に存在するもの−を挙げている。
     しかし法律的には、発ガン性物質の食品添加は禁じられており、この問題を管轄するFADおよび農務省は、使用禁止の是非をめぐり困難な選択に直面することになった。
     これまでの研究で、亜硝酸塩は天然のアミノ酸と結びついて強力な発ガン性を有するニトロサミンとなることが知られており、この合成は例えば、ベーコンを強火で焼いた場合、引き起こされる。
     このため消費者運動の間から、乳幼児用食品などへの添加禁止を求める声が上がっていた。
     しかし米政府は、亜硝酸塩そのものは無害との見方から、この要求には応じていなかった。
     だが今回のMITの実験では、亜硝酸塩が動物のリンパセン(腺)に起こしたガンは、ニトロサミンによるものとは明らかに異なったもので、亜硝酸塩そのものにも発ガン性が実証されたとしている。

    (53・8・13 サンケイ)

    脂肪過多は大腸ガンを助長
    予防には繊維質を

    【京都】
     肉類など脂肪分を多く摂り過ぎると大腸ガンにかかりやすくなる−。
     米国ウェイン州立大医学部のN・ナイグロ教授はラットによる動物実験で、体内の脂肪分が直腸、結腸ガンを進行させる大きな要因で、これを防ぐには繊維質の多量摂取が有効なことを突き止めた。
     身近な食事が大腸癌の助長に一役買っていたことが初めてわかったわけで、同教授は27日、京都市での国際大学結腸直腸外科学会で発表した。
     直腸や結腸にできる大腸ガンはこれまで日本では比較的少なく、欧米に比べ約5分の1程度だった。
     しかし最近急激に増え始め、特に若い世代の発症が多くなっている。
     世界的にみると、欧米、オーストラリアなどの肉食国に多く発症し、アジア、アフリカ、南米などでは少ない。
     ナイグロ教授はこうした発生率分布の地理的不均衡に着目。
     大腸ガンと食生活との間には密接な因果関係があると考え、ラットで動物実験をした。
     他の栄養分を一定にしたうえ、脂肪分30%と繊維質10%のえさを与えたラットにアゾクシメタンという発ガン物質を皮下注射、4−5ヵ月後にラットの大腸を調べると、1匹当たり平均8.5個のシュヨウができていた。
     これに対し脂肪分5%のえさだけを与えたラット群で同じ実験をすると、シュヨウは平均4個に半減、さらに脂肪分なしで30%の繊維質のえさだけを与えたグループでは、平均2個のシュヨウしかみられなかった。
    (53・10・27 山陽夕刊)

    たばこに新発がん物質
    強力でしかも多量

     ガンセンター杉村所長は、火をつけたたばこから1分間に2秒だけ35ccずつの煙を吸い込ませる人工喫煙装置を考案。
     ガラス繊維でできたフィルターに付着した物質を、杉村所長らが開発したサルモネラ菌の変異株を使った発がん物質のチェック方法でテストした。
     この方法はサルモネラ菌が発がん物質にふれると突然変異を起こす性質を応用したもので、これまでの研究で、突然変異物質と発ガン物質はほぼ一致することがわかっている。
     普通、たばこには1本当たり17−20ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)のベンツピレンが含まれているとされている。
     ところが、この検査の結果たばこ1本分で、ベンツピレン220−370マイクログラム(1マイクログラムは百万分の1グラム)に相当する突然変異をサルモネラ菌に起こすことがわかった。
     つまり、ベンツピレンが肺がんに寄与しているのは全体の1万分の1以下で、あとはこれまで発見されていない未知の物質が関係しているというわけだ。
     喫煙と肺がんとの関係については、これまで、たばこを吸う人には吸わない人に比べて10倍も肺がんの発生率が高いなどの事実が出されており、これまで原因物質としてたばこのタール分に含まれるベンツピレンのほか、ニコチンの化合物、ニトロソノルニコチンがあげられている。
     このため日本専売公社では最近はタール分やニコチンの少ないたばこの開発に力を入れている。
     しかし、杉村所長らの指摘したナゾの物質が、これまで研究がかなり行われているタール分に存在するかどうかについては否定的な意見が強く、タール分だけを少なくすることで肺がんを少なくできるかどうかはあやしくなった、といえそう。

    杉村国立がんセンター研究所長の話
     まだ正体については見当もつかないが、ぜひ研究したい。
     タールやニコチンを減らす努力はむだではないだろうが、もっとほかの大魚を逃がしているという気がする。
    (50・10・2 朝日)

    サッカリンは発ガンを促進
    米科学アカデミー結論

    【ワシントン4日=AP】
     サッカリンの発ガン作用について研究を進めていた全米科学アカデミーは4日、
    1. サッカリン自体に弱い発ガン性がある
    2. サッカリンには他の物質の発ガン性を高める働きがある
     の理由から、「サッカリンは人間にガンを起こす可能性のある物質とみなすべきである」との結論をまとめた。
     この研究は米議会の要請で行われ、実験にはラット(ネズミの一種)が使われた。
     この結論について同アカデミーでは、サッカリン自体の発ガン性は他のよく知られた発ガン物質に比べると低いとしながらも、他の物質の発ガン性を促進する作用の方がずっと重要な意味を持つかもしれないと指摘。
     また米国の10歳以下の子供の3分の1はサッカリンを口にしており、非常な危険にさらされている、との懸念を表明している。
     サッカリンは米国で販売が許可されている唯一の人工甘味料だが、同アカデミーは政府がサッカリンについてどのような対策をとるべきかは提案していない。
     しかし食品、薬品担当の行政当局は、77年春ごろからサッカリン規制の方向に動いており、今回の結論でこれに一層拍車がかけられることになった。
    (53・11・16 サンケイ)


15. ビールにも発癌物質

     ハイデルベルグのドイツ癌研の科学者によると、ドイツ、イギリス、その他のヨーロッパ産のビールに、強力な発癌性のあるニトロサミンの痕跡が発見された。
     158銘柄について2年間調査し、その70%に証明された。黒ビールにはふつうのビールより含量が多かった、という。

    (Nature,277:250,1979)


16. 干し魚、つけもの、日本酒 常食は胃ガンに……

     胃ガンにかかわりがありそうな“危険な食品”は干し魚、塩魚、漬け物―ハワイの日系人を対象に、9年間にわたって調査した研究結果がこのほどまとめられた。
     “百薬の長”の日本酒も毎日飲んでいては赤信号。
     “胃ガン大国”の異名をとる日本だけに、純和食党にはいささか気になるデータだ。
     研究は食物と胃、大腸ガンとの関連を疫学的に調査したもので、東北大医学部公衆衛生学教室、アメリカ・国立ガン研究所、ハワイ大医学部がさる36年から45年にかけ、ハワイ・ホノルルの日本人病院「クワキニ病院」を舞台に行った。
     研究陣の一人、名古屋・瑞穂短大学長の瀬木三雄さん(67)=調査当時、東北大教授=によると、調査対象は、同病院を訪れた日系人の胃ガン患者220人と大腸ガン患者179人。発病前にどんな食物をどの程度食べたかをきいた。
     その結果、胃ガンにかかわりがあると思われる危険食品とでたのは、干し魚、塩魚、漬け物。干し魚では食べる回数が平均を上回る(月に3回)人は下回る人に比べ、1世2.0、2世1.7、平均1.8の相対リスクを示した。(相対リスク1.8とは、ガンにかかる危険が1.8倍という意味)
     漬け物もタクワンを月21回以上とる人は全くとらない人に比べると1世、2世とも2.7倍。ハクサイは1世3.4、2世1.7で1世がとくに高い。
     そのほかでは梅干しが月6回以上食べる人は、まったく食べない人に比べ、1世1.7、2世1.6。
     一方、安全食品としては、野菜がある。
     例えばトマトで月11回以上と3回以下の人を比べると1世0.31、2世0.49。セロリ、レタス、ネギ、トウモロコシといった野菜群は軒並みコンマ以下。
     野菜をたくさん食べている人には、胃ガン患者が少なかった。飲み物では日本酒だけを毎日飲む人は飲まない人に比べ、1世、2世とも2.2と高リスクを示し、どうやら毎日楽しんでいては「百薬の長」にならない感じ。
     また、ビールやコーヒーは、むしろ飲むほうが2世に限って“安全”という結果が出た。
     瀬木さんは「ハワイ移住後の食生活の変化が胃ガンから大腸ガンにとガンの発生傾向に影響を与えたのであり、食物とガンとの関連性を推定させるものだ」という。
     また、干し魚、塩魚それに漬け物類の高リスクについては、すでに亜硝酸アミンが胃ガンを発生させるという動物実験の結果が発表されており、「これらの学説を裏付けるものとなっている」と指摘している。国立がんセンターの平山雄・疫学部長の話「この調査は実に長い歳月をかけ、整理された数字で相対リスクをはじき出すなど貴重なものだ。今後の研究のためにも価値は高い」

    (50・4・29 サンケイ)


17. 癌とナッパ

     医学博士 遠藤 仁郎 

     癌の治療にあたってナッパ・青汁食を熱心にやっていると、手術での出血や痛みがかるく、術後の疲労や発熱がないか少ない。
     放射線や抗癌剤の治療でみられる副作用も少ないかほとんどない。
     したがって、体力の維持に有利であり、回復がはやい。
     また、手術のさいすでに転移があり、とても半年はむつかしかろうといわれたのが、10年もそれ以上も生きている例。飲んでいる間はよかったが、やめると急速に悪化したり、再発した例。あるいは、手術不能といわれたものによかった例など、癌にたいしても確かによいらしいことは、はやくから経験されていた。

    予防効果
     だから予防効果もあるにちがいないと考えられるが、確信をもって断言することにはいささか躊躇していた。それは、たとえ、そうしていて癌にならなかったとしても、それが、はたしてナッパ・青汁のためか、そうしなくてもならなかったのか、確めようがないからだった。
     ところが有難いことに、動物実験で、たしかに制癌効果があることが明かになった(本紙300号−56年8月−参照)。

    なぜよいのか
     では、なぜよいのだろうか。

      癌のおこり
       癌は、からだの細胞が癌原物にさらされて突然変異をおこし癌化することにはじまり、一旦癌化すると、その細胞は無制限に増殖しつづけ、ついに癌腫になる。

      からだの抵抗
       しかし、この変化にたいし、からだは決して無防備、無抵抗というわけではない。個々の細胞にも癌化に抵抗する力があり(抗癌能)、全身的には、それを厳重に監視し、変性した細胞をすみやかにキャッチし、捕捉殲滅して、そのバッコを防ごうとする機構(免癌能とでもいうべき免疫現象)がある。
       そこで、癌にたいする方策には次の二つがかんがえられる。
      1. 癌原物を遠ざけ、とり除くことと、癌原物の作用(癌原性、発癌性)をよわめたり、無くしてしまうこと。
      2. 抗癌能・免疫能をたかめて癌化にたいする抵抗力を強めること。

      癌原物を除く
       癌原物には、化学的のもの(化学薬品類)、物理的のもの(放射線)、および生物学的のもの(ビールス)などがあるが、主なものは化学的のもの。
       そして、これらは、大気中にも、水にも、土にも、飲食物にも、いたるところにいっぱい。
       まるで、それらにとり囲まれているようなもので、これを完全に遠ざけとり除くことはまず不可能といってよかろう。

      癌原性を除く
       癌原性をよわめ、あるいは消滅せしめる研究はさかんに行われており、野(山)菜、海藻などにそういう力のあることが知られている。
       また、ビタミンAやEに制癌能のあること、ビタミンCやカルシウム、痕跡ミネラルなどには癌原物の生成を妨げる作用のあること、繊維には癌原物を吸着し、とり除く能力のあることも知られている。
       そして、良質ナッパがこれらのすべてを豊富にもっている事実だけからも、ナッパ・青汁の抗癌作用はうなづけるわけだ。が、いま一つ細胞の抗癌能や、全身的の免癌能にたいしても、ナッパ・青汁は少なからず関与しているのではないだろうか。

      抗癌能・免癌能
       細胞の抗癌能や、全身的の免癌能・防衛能は、からだに自然にそなわった健康力・生命力そのものだ。
       この健康力・生命力は、全身のすべての組織・臓器のはたらきの結集されたものであり、それらのすべてをめぐる血のいかんによってきまる。
       血が正常であり、無害制であれば(有害有毒物ことに発癌物をふくまない)、つまり、にごっていなければ、すべてのはたらきが円滑かつ完全に行われ、体力・健康力・生命力はつよめられ、抗癌能・免疫能も旺盛になる。
       そして、もともと健全な細胞はいうまでもない。いくらか弱点(癌になりやすい素質、素因)のある細胞でも、こういう好条件の下では、そう簡単に変異をおこすことはなかろうし、そうした細胞は、すぐに捕捉され、殲滅されてしまい、癌にまで発展することはなかろう。
       また、条件しだいでは、癌も征服されうるであろう。

      浄血の主役はナッパ
       ところで、このきれいな血は正しい日常生活、ことに正しい食養――安全食品とバランスのよくとれた食――によってはじめて得られるのであり、その主役を演じているのは良質ナッパだ、ということからしても、ナッパ・青汁が癌に有効であることは理解できよう。

      つまり良質ナッパには
      1. 癌原性を滅殺する力があり、
      2. 栄養を正しくし、血のにごりを除いて、健康力・生命力をもりあげ、個々の細胞の抗癌性や、全身の防衛能・免癌能をたかめる力もあるわけで、
       これらの総合されたものが、その制癌・抗癌効果だ、とみてよいであろう。

    現在の癌対策
     さて、現在の癌対策は、早期診断・早期治療ということになっているが、ともに、けっして万全を期しがたいことは周知のとおりであり、予防法にいたっては、まさに暗中模索の域を出ていない状態だが、以上の事実をもってすれば、これらの解決にたいし、ナッパ・青汁はかなり貢献するのではないだろうか。

    癌の予防・治療に
     癌を防ぐにも、治療にあたっても、癌原物をできるだけ除き、遠ざけるべきことはいうまでもないが、それとともに、できるだけ血をきれいにして、体力・健康力・生命力をたかめ、抗癌能・免癌能の強化につとむべきだ。
     そのためには、まず、血のにごりの原因となっている、あまりにも不自然・不合理化している現代の文明生活の、ことに食のあやまりを改めなければならない(食を中心とする日常諸般の自然化・合理化)。

    食の自然化・合理化
     現行食のあやまりは、
    1. 癌原性のある有害有毒食品の氾濫していること。
    2. 精製穀・肉類・卵・糖・脂・アルコールにかたよっており、また、調理・調味にこりすぎていること。
    3. そして、熱量・蛋白質ばかり多く、それに釣り合わねばならないミネラル・ビタミン(繊維も)の不足した、いわゆるエンプティカロリー食といった不完全食になっており、しかも、それを飽食していることだ。
     これを自然化・合理化するには、

      自然(安全)化
       癌原性のあるもの、癌原物の付着したり添加されたものはもとより、加工食品・保存食品、出来あい食品など有害有毒物の汚染のおそれのあるものは、できるだけさけること。

      合理(完全)化
       主食品には、栄養的に劣り安全性に問題の少なくない白米飯をさけ、雑穀(全粒)、豆、むしろ芋類とし、蛋白食品には、同様問題の多い肉・魚の切り身類はさけ、小魚・肉・卵・乳、むしろ大豆ものにし、ともに控え目とし飽食をさけること。
       そして、ミネラル・ビタミン類(繊維も)の最優秀給源である良質ナッパを主とする野(山)菜、海藻類をうんとそえ、調理は簡単に、調味はうすくする。
       嗜好品にも十分注意し、癌原性・発癌促進作用もあるタバコは厳禁。酒類、コーヒー、菓子、ジュース類もやめるかつとめてへらすこと。
       要は、危険いっぱいの贅美食の飽食をさけ、良質ナッパ中心の簡易な自然食(緑養食、イモ・マメ・ナッパ食)にすること。
       そしてナッパは少なくとも1日1キロ(青汁にして約4合)。5合、6合と多ければ多いほどよい

      日常生活の自然化
       環境をよくし、適度の運動。精神的ストレスを去り、よく睡り、便通をよくするなど、日常生活にも十分気をつけること
       こうして血のにごりをできるだけへらすよう心がけていれば、おそらく癌は防げるだろうし、手術、放射線、薬剤などの治効もずっと上るだろう。
       とはいえ、こうやっていれば絶対大丈夫かというと、必ずしもそうとばかりはいいきれないだろう。
       それは、癌になるかならないかは、癌原物と体力・健康力・生命力とのバランスの問題(力関係)であり、素因や病態により、あるいは癌原物のとりこみ方によっては、いかんともなしがたいこともあろうからだ。
       いま一つ、念のため申しそえたいのは、癌の治療にあたって、たとえ青汁によって小康がえられても、断じて減量したり中止してはならない、ということだ。
       なぜかというと、青汁によって折角もり上ってきた抵抗能(抗癌力)が、減量あるいは中止によっておとろえてくると、それに乗じて癌の活動がぶりかえし、病状がふたたび悪化してくる。
       しかし、それにたいし、一旦落ちこんだ抵抗力はにわかには挽回しがたいため、癌は急速に進行するおそれがないではないからだ。
       事実、そうとしか考えられない経過をとった実例も2〜3経験されている。
       なお、青汁叢書第7輯(なんでも青汁)の「こうしたら癌も防げるのではないか」および第6輯(生涯青汁)の「こどもの癌」を併読されたい。
      (56・10)


18. ほとんどの癌は食事パターンの影響を!!

    (ワシントン)
     食事と栄養が癌に及ぼす影響について、これまで行なわれた最大規模の調査から、National Research Council(NRC) のパネルは「ほとんどの主要部位の癌は、食事パターンの影響を受ける」という証拠が増えている、と結論した。

    “リスクを低下できる”
     それによると、全般的な米国式食事を適当に変え、特に脂肪の摂取量を減らしビタミンA、C、Eを含む食物の摂取量を増せば、大腸、胃、乳房、前立腺、皮膚、肺、膀胱の癌になるリスクを低下できると同パネルは断言している。
     カリフォルニア大学(サンジエゴ)生物科学科のClifford Grobstein教授は、「我々の食べるものが、癌になる確率を左右することは、次第に明確になってきている」と述べている。

    緑黄野菜に保護効果
     NRCのパネルが明らかにした所見の主なものは次ぎの通り。

    • ビタミンAやその前駆物質を含む緑黄野菜の保護効果を認めた疫学データが、次第に増えている。
      しかし、その摂取量と肺癌、膀胱癌、喉頭癌が反比例するのは、カロチノイドのためかビタミンAそのもののためか、現在のデータではわからない。
    • ビタミンCの豊富な食物の消費量についての疫学的研究は、このビタミンが癌、特に胃癌と食道癌のリスクを少なくすることを示唆している。
    • ビタミンE(α―トコフェロール)は、アルコルビン酸と同様、in vivoでもin vitroでもニトロソアミンの形成を抑制する。
     また動物実験では、限られたデータではあるが、他の化学物質による腫瘍形成も抑制することが示唆されている。
     パネルは「食事中の線維にヒトの直腸・結腸癌に対する保護効果があるとの証拠は認められない」としている。
     食事中の脂肪と乳房、前立腺、大腸などの癌との関連は、しばしば示されている。
     「脂肪の摂取量が、重量にして食事の5%から20%(カロリーで10%から20%)に増えると、いろいろな組織での腫瘍発生率が高くなる。逆に、低脂肪食を与えた動物では、腫瘍発生率が低い。なお、全体の脂肪摂取量が低いと、飽和脂肪よりも多価不飽和脂肪のほうが、腫瘍形成を促進するようだ。しかし、総摂取量が増すにつれ、そうした差はあまり目立たなくなる」
     
     と報告書は述べている。

    脂肪を減らし野菜を多く
     パネルが示した当面のガイドラインは、

    1. 飽和脂肪と不飽和脂肪を合わせた一日の総摂取量を現在の総カロリーの40%から30%に減らす、
    2. くだもの、野菜、穀類など、特にビタミンCとカロチンの豊富なものを毎日多くとる、
    3. 塩物、塩漬けのピックルス、くん製食品をやめ、アルコールも適度に抑える

     パネルは、ビタミンAとセレンの補給を勧めていない。
     そのほか一部の野菜やくだものに天然に含まれる化学物質にも、保護効果が認められるかもしれない。
     ビタミンEとセレンは、必要量以上だと毒性を生じるとされている。
    (MEdical Tribune 1982.8.2号より)


19. コンブに制ガン効果

    直腸ガン 動物実験で確認
     【相模原】食用になる渇藻(かっそう)コンブが高血圧だけでなく直腸ガンなどにも効果がある−という研究結果が神奈川県相模原市北里の北里医科大学の山本一郎・衛生学教授(50)によってまとめられ、7日、札幌市の厚生年金会館で開かれる第40回日本ガン学会総会で発表される。
     同教授は15年前、中国の医学書にコンブなどの海藻がガンの予防薬、治療薬として紹介されていることに注目、市販のコンブを買い求め動物実験を始めた。
     まず発ガン物質を白ネズミ30匹に週1回皮下注射。
     このうち渇藻ナガコンブのエキスを

      1. 粉末にしたもの
      2. せんじたもの
      3. 透析内液

     の3種を固形飼料にまぜてそれぞれ7匹に与え、残り9匹についてはエキスを与えなかった。
     20週後に解剖したところ、エキスを与えなかったグループのうち7匹にしゅようが発生。
     これに対し、エキスを投与したグループでは、しゅようが発生したのは

      1. 粉末7匹中3匹
      2. せんじたもの同5匹
      3. 透析内液投与同4匹

     と発ガン率が低かった。
     この結果、粉末が一番ガンの発生を抑制しており、これはコンブの植物性繊維が腸管から動物の排せつを促したと考えられるとの結論に達した。
     また「マコンブ」「リシリコンブ」「アラメ」のエキス(フコイダン)を使った延命率としゅよう防止の動物実験では、ハツカネズミの腹腔内にしゅよう細胞と白血病細胞を移植、24時間後から1日1回、連続6日間それぞれのコンブのエキスを投与したところ、延命率でリシリコンブが最高で137%、次いでマコンブ、アラメの順で、かなり高い延命率になった。
     さらにガン一細胞を背部皮下に移植したハツカネズミに同様3種類のコンブのエキスを1日1回連続10日間腹腔に与え、35日目にしゅようを摘出したところ、ガンの阻止率ではアラメが95%、マコンブが83.9%と高い制ガン効果が表れ、逆にリシリコンブは41.9%と低かった。
     こうした実験結果から、同教授はコンブのエキス(フコイダン)に腸がんなどの抗しゅよう性が明らかに認められるとして今後さらに「ナガコンブ」をせんじた抽出物や透析内液との関連についての検討を重ね、腸ガンだけでなく各種のガンにたいしても同様の動物実験を試みたいとしている。
    (56・9・5・サンケイ)


20. フィルター付きたばこは発癌リスクの低下に有効

     患者を説得して喫煙をやめさせることで、現在多発している肺癌を減少できるのは確かだ。しかし、それがうまくいかない場合、低タールのたばこに切り替えれば発癌リスクに効果を与えるという証拠はあるのだろうか。スコットランドを含む欧州7か国の肺癌患者7804例と対照1万5207例についての研究は、完全に喫煙をやめられない人たちにある程度の安心感を与える結果を示している。

     全般的に喫煙は、肺癌のリスクを男子で9倍、女子で4倍高くしていた。まったく喫煙経験のない者は、対照の19.4%に対し、肺癌の男子では2.8%にすぎなかった。しかし、フィルター付きたばこを吸う者では、フィルターのないたばこを吸う者に比べ、発癌リスクが有意に低く、両切りたばこの喫煙者のリスクの半分にすぎない場合もあった。

     低タールのたばこでは、さらに肺癌のリスクが低下した。しかし、より安全な種類のたばこに切り替えるよりも、喫煙をやめる効果のほうがはるかに大きかった。禁煙後の年数が増すにつれ肺癌を生じるリスクは次第に低下、これは特に喫煙期間の短い男子で明らかだった。喫煙期間が19年以下の男子では、禁煙して10年後の肺癌のリスクは実質的に非喫煙者と同じだった。しかし、19年間以上喫煙した男子では、禁煙10年後でも発癌リスクはかなり高かった。

     喫煙をやめることが肺癌予防の第一目標、というのが結論である。しかし喫煙者の関心は、フィルター付きのたばこか低タールのものに切り替えることにあるようだし、最近の多くのたばこの低いタール含有量で究極的に肺癌による死亡率が低下するかもしれない。

    Int.J.Cancer 33:569,
    1984;Brit.J.Med.288:1953,
    1984(Medical Tribune 84.8.)


21. 緑黄色野菜に制がん作用

    サツマイモなど 薬剤上回る効果
     緑黄色野菜の汁を試験管内でがん細胞に作用させたところ、抗がん剤を上回る強いがん抑制作用を示すものがあることを東大医科学研究所付属病院外科診療科の佐丸義夫講師が突き止め、7日から東京・西新宿の京王プラザホテルで始まった日本癌(がん)学会総会3日目の9日発表する。
     これは緑黄色野菜を食べるとがんになりにくいという統計的データを裏付けるものともいえ、注目される。

       佐丸講師は、マウスの乳がんから培養した腫瘍細胞に、緑黄色野菜やキノコなど36品目の液汁をそれぞれ添加したものと、実際に治療に使用する濃度に相当する10種類の制がん剤を添加したものとを比較した。その結果、食品中で最もがん抑制作用の強かったのはサツマイモでがん細胞の増殖がほとんど見られなかった。
       次いでグリーンアスパラ、パセリ、ナス、セロリなどに抑制作用が認められた。これに対し、制がん剤では各種がんに総合的に用いられるアドリアシンが最高で、増殖を約半分に抑えるにとどまった。
       緑黄色野菜に含まれるカロチンにはこれまでもがん抑制効果があるとされていたが、今回の実験ではニンジンの抑制率が比較的よかったのに対し、同様にカロチン含有量の多いカボチャでは、むしろ増殖を促す逆作用を示した。

     これらの結果について、佐丸講師は、あくまで試験管レベルでの実験データなので、早計に結論づけられないとしながらも「今後、がん抑制作用があるといわれる食品について動物実験を行い、発がんとがん増殖を抑制する成分を究明していきたい」と話している。このような研究によって、ガンの予防、治療のための食生活の改善が図れるとともに、より有効な制がん剤の開発にも役立つものと期待される。
    (62・9・7 東京新聞)


22. 藻類に発がん抑制効果 ワカメやコンブなど6種


     緑黄色野菜にはがんの発生を予防する効果があるとされているが、ワカメ、コンブなど海藻類にも緑黄色野菜以上の発がん抑制効果のあることが、京大農学部食品工学教室(小清水弘一教授)の大東肇助教授らの研究で分かった。20日から東京で開かれる日本癌(がん)学会で発表される。
     正常な細胞が、がん細胞に変わるプロセスはイニシエーターと呼ばれるさまざまな発がん物質が細胞内の遺伝子に作用し、眠っているがん遺伝子の目を覚まさせるイニシエーションと、プロモーターと呼ばれる発がん物質が細胞のがん化を促進するプロモーションの二段階からなる。
     大東助教授らはふだん人間が食べている海藻や野菜類に、どれだけプロモーション作用を抑制する効果があるか調べた。抑制効果の判定にはラジ細胞という白血球の一種を使った。この細胞にはもともとがんウイルスの遺伝子が組み込まれており、プロモーターを加えて培養するとがんウイルスが活性化されて、細胞表面に特殊なタンパク質(早期抗原)が作られる。実験では、市販されている海藻の中から8種類を選び、それぞれ成分を抽出。この成分とプロモーター役の発がん物質TPAとを混ぜてラジ細胞を培養、抗原の出現数を調べた。この結果、6種類に発がん抑制効果がみられ、特にコンブとワカメはTPAだけで培養したのに比べ、抗原の抑制率は75%以上だった。(63・9・18 サンケイ)


23. ガン予防・・・・・・野菜が一番

    突然変異を抑える効果 旬のモノほど高率
     最近注目されているのは、野菜の収穫時期や品種と、突然変異予防効果との関係を調べた大阪市立大生活科学部助教授、江幡淳子さんの研究。
     微生物に突然変異を起こす物質(AF2)に、粉々に砕いた野菜の汁を混ぜ、ガンの引き金になる突然変異が、どの程度抑えられるかを比較した。
     その結果、7月下旬収穫のホウレンソウの抑制率は18%だったが、収穫時期が10月に入ると27%、さらに12月だと32%に上昇。
     キャベツ(内葉)でも同様の傾向がみられ、7月上旬の12%に対し、11月に入ると22%と倍近い。ゴボウも8月中旬の盛夏のころに抑制率が低下、7月と9月が高かった。
     品種による違いもばかにならない。
     たとえば、ホウレンソウの中でも「マルス」(交雑系)は突然変異を40%も抑えたが、「東湖」(東洋系)はわずか10%。
     西洋系の「ノーベル」は19%という具合。
     「いま食べている野菜は、人類の長い食生活の中で選ばれてきたわけで、それなりのメリットがあるはず。とくに、葉が充実して食べておいしい時期、つまり旬(しゅん)に抑制率が高いのは意味がありそう」と江幡さん。
     突然変異抑制効果の高い品種を吟味し、収穫時期もコントロールした“抗ガン野菜”などが実現するかもしれない。
     正常な細胞がガンになるのは、突然変異で細胞の遺伝子に傷がつく「イニシエーション」と、その細胞がガンにまで育ってしまう「プロモーション」という二つのステップがある。
     江幡さんたちはイニシエーションに対する抑制効果を調べた。
     野菜はプロモーションも抑える効果がある。
     調べているのは京大農学部(食品工学)教授の小清水弘一さんのグループ。
     ウイルスが感染した特殊な細胞を使って、これまでに121種類の野菜をチェックした。プロモーションを抑える物質を含む野菜は意外に多い。サニーレタス、カリフラワー、パセリ、シュンギク、カボチャ、サトイモ、レンコン、タマネギなどに含まれる物質が70%以上の抑制率を示し、50−70%がセロリ、ゴボウ、ニンジン、アオジソなど。30%以上抑制するものも含めると、リストはさらに膨れ上がる。
     突然変異やプロモーションを抑えるのは、野菜の中のどういう成分なのか。突然変異原物質を分解する酵素や、これを吸収してしまう繊維が有効といわれるが、プロモーション抑制作用は別の物質の作用らしい。
     まだ解明されていないことの方が多く、野菜の“奥”は深い。
     緑黄色野菜にタップリ含まれ、体内でビタミンAに変化するカロチンやビタミンCのガン予防効果も指摘されているし、事実、野菜をよく食べる人はガンになりにくいという統計もある。
     予防がん学研究所長の平山雄さんが、最近まとめたデータによると、ホウレンソウ、ニンジンなど緑黄色野菜をほとんど食べない人が胃ガンで死ぬ危険率一とすると、毎日食べる人では0.7に低下。
     腸ガンでも1対0.6と大きな差で、寿命も10年は延びるというから大変である。
     40歳以上の成人、約26万人を17年間追跡した結果だけに重みがある。
     間接喫煙の危険性や野菜のガン予防効果などの研究で、最近、アメリカ対がん協会賞を受賞した平山さん「ガン予防の観点から、食品を一つ選ぶとしたら、まず野菜だ」と言い切る。
     最近は、「ガン予防」を意識して野菜を食べている人も多いらしいが、20代の若い人はあまり食べない傾向もある。
     しかし、これだけデータがそろっている以上、やってみる価値はある。

    (元年1・13・ 夕刊読売)




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