健康と青汁タイトル小
 食品の発癌・制癌性インデックス

 食品の発癌・制癌性(1)
 食品の発癌・制癌性(2)


 食品の発癌・制癌性(3)


1. 危険な肉


     Nature 誌のワシントン通信(1971.7.23号)によると、
     アメリカでは、いま、家畜につかわれる薬剤が大きな問題になっている。アメリカで消費されている肉・卵・乳の殆んど80%は、薬剤(主に抗生剤とホルモンだが)を加えた飼料をあたえた家畜からのものだ。抗生剤は、現に、病院よりも農家の方に、より多く売られているそうだ。

     抗生剤の害は、主に、動物の細菌が、これらの薬剤にたいし耐性となり、それが人間にうつされることや、アレルギーの原因になることにある。また、ニトロフラン系の薬剤は、鶏のコクシジウム病の予防につかわれているが、ある種のニトロフラン剤には発癌性がいわれている。ホルモンでは、主に、合成女性ホルモンのジエチルスチルペストロールが用いられており、アメリカで屠殺される家畜の殆んど3/4にあたえられている。そして、家畜業者は、これで年9千万ドルの利益をあげ、この使用がとめられると、肉の値段は10%上るだろう、とさえいわれている。
     ところが、この合成女性ホルモンは、動物にも人間にも発癌性の明かなもので、多くの国で、その使用は禁止されているし、スエーデンや西ドイツでは、その残留の危険を考慮して、アメリカ産の肉の輸入を禁止している。アメリカの薬品食品局は、これらの物質のもっと鋭敏な検出法が開発されないかぎり、いかなる薬剤も、飼料への使用は許可すべきでないとの主張と、畜産業者と薬剤メーカーとの間にあって、苦慮しているという。
     わが国でも、もうつかわれているのであろうと思われるし、幸いにそうでなくても、大量の肉がアメリカから輸入されてることだ。よほど気をつけぬと、とんでもない「肉食ったむくい」をうけぬとも限るまい。おそろしいことである。


2. 文明が作る発ガン物質  防食剤・医薬品の化学物質と発色剤

     防食剤・医薬品の化学物質と発色剤
     体のなかで結合 西独学者警告


     ある種の防食剤や医薬品に含まれている化学物質(二級アミンやアルキルアミド)が、発色剤によく使われる亜硝酸塩と体内で結合すると、発がん剤のニトロソ化合物となって、がんをつくる――という詳細な実験例が、17日東京・パレスホテルで開かれている高松宮妃癌(がん)研究基金国際シンポジウムで、西独チューリンゲン大のJ・サンダー博士らから報告された。

     これらのアミン・アミド類と亜硝酸塩は、天然にも存在するが、文明によってつくり出されるものが非常に多く、その量が急速に増加しつつあることをサンダー博士は指摘し「このままでは、がんが急速にふえる可能性がある。人工のアミン・アミド類と人工的な亜硝酸塩を最大限に減らす努力を、いますぐ始めるべきだ」と強く警告した。

     この日、サンダー博士らが報告した動物実験では、たとえば0.5%ずつのモルフォリン(アミンの一種)と亜硝酸塩を含むえさを56日間与えたネズミは、9ヵ月以内に全部肝がんで死んだ。また0.05%ずつという微量のエチレンウレアと亜硝酸塩を5ヵ月間与えても、約2年でがんを発生した。同博士ら米ネブラスカ大のマービッシュ博士が、アミン・アミド類と亜硝酸塩だけで動物におこしたがんは、肝がんのほか食道、肺、じん臓、中枢神経、胃、鼻の穴などにおよんでいる。

     この強力発がん剤のモトとなるアミン・アミド類と亜硝酸塩は、どちらも、われわれの周囲にたくさんある。同博士の説明では、亜硝酸塩があれば、体内でがんをおこすことが動物実験で証明されたアミン・アミド類のうち、モルフォリンはカンなどの被覆材や防食剤にNメチルアニリンは四エチル鉛にかわるガソリン添加物として使用され、エチレンウレアは衣料の樹脂加工に広く応用されホコリにまじって空中に飛んでいる。また、殺虫剤のメチルカーバメートや、アドレナリン系列の医薬品も、同様に発がんの原因となっていることが、ほぼ確実だという。とくに薬は、そのアミン・アミド系物質だけで発がん必要量になりうる、と計算した学者もいるという。

     一方の亜硝酸塩も、肉やハムの食品添加物(発色剤)として広く使われており、また排気ガス中の窒素化合物もこの源となる。サンダー博士は、このほか鼻や口に住みつくバクテリアのため、硝酸塩が体内で亜硝酸塩に変ることを強調した。日、米、西独などで大量に生産されている硝酸肥料が、すでに飲料水に混入し始め、増加しつつある。この水を飲むと、亜硝酸塩からニトロソ化合物の経路で、がんに結びつく――とサンダー博士は心配している。アミン・アミド類も、亜硝酸塩も、天然に存在するため、われわれの周囲から完全に追放することはできない。それだけに、産業の発達によって増加しつつある発がん剤のモトだけは、人類の努力で早急になくすよう努力すべきだ――とサンダー博士は力説した。

    (46・11・18 朝日)


3. 肉の中の発癌物質

     医学博士 遠藤 仁郎 

     昨年の4月、アメリカ、マサチュセットの病院で、7名の、若い女性の膣癌が報告された。
     その後わかった例を加えると、今では、13名になっているそうだが、いずれも1946〜1953年の生れで、年令は15〜22才。(膣癌がこういう若い女性に出ることは極めて稀なことで、ふつうは、ずっと高年になって出る)
     これらの患者に共通していることは、かの女らの母が、その妊娠の初期に、流産を防ぐためにジエチールスチルベストロールで治療されていること。
     このスチルベストロール剤は卵巣ホルモンの作用のある合成薬剤で、発癌性があり、動物の実験で乳房や子宮に癌ができることがわかっている。
     それを、妊娠中に用いて、その娘に発癌したということは、この薬が胎盤を通って胎児にはたらき、後の発癌のもとをつくりあげていた、というわけだ。
     したがって、この薬は妊婦には絶対に用うべきではないし、そうすれば、将来、こうした悲惨な出来事は防ぐこともできよう。
     しかし、厄介なことに、この薬は、毎日われわれの食べている家畜の肉に残留している可能性がある。
     それは「危険な肉」として、さきに紹介した通りで(1月、185号)、わが国にかなり大量の肉を輸入しているアメリカでは、屠殺動物の3/4に、この薬がつかわれているという。
     わが国でも、外国のことなら何でも早速真似をしたがる国柄だけに、おそらくもう、それも少々ではなく、ジャンジャンつかわれているのではないだろうか。
     もっとも、肉の中に残っている量はごく僅かにすぎないから、ふつうのものがこれを食べても特別な影響はおこるまい。
     けれども、妊婦のばあいだけは別だ。
     というのは、胎児は母体にくらべ、甚しく発癌物質によわいからだ。
     現に、この膣癌の例にしても、この薬をつかった母体には、乳房にも性器にも異常はないのに、その娘には発生している。
     この事実は、いかに胎児が敏感で、おかされやすいかを物語るものだ。
     だから、たとえ肉の中に残っている薬剤の量は微量(今の検査法では検出できぬほどの)にしか過ぎぬとしても、決してなおざりにすべき問題ではない。
     そして、現在、妊婦食として高蛋白食がいわれ、肉食がすすめられているだけに、いっそう慎重に対処しないと、ながい悔いを残すことにもなりかねないだろう。

    (46・11)


4. サッカリンの発癌性

     サッカリンも大量をあたえると膀胱癌が発生する。
     しかし、ウイスコンシン校友会研究財団の2年間にわたる調査によると、ラッテに、毎日の飼料の20分の1に相当するサッカリン(清涼飲料水875本相当)をあたえると、発癌するというので、殆んど問題にするにあたらぬ程度のものと考えられている。

    (メヂカルトリブューン、47・3・30号より)


5. アフラトキシンの発癌性と栄養

     アフラトキシンは、強力な肝毒性と発癌性をもったカビ毒だが、Rogers氏らによれば、肝疾や肝癌の多い地域には、アフラトキシンと栄養の欠陥とが、ともにあり、蛋白の乏しい食では、アフラトキシンの肝毒性や発癌性がつよめられる。
     また、肝癌とカビ毒がともにある地域では、メチオニン(アミノ酸の一種)や、ビタミンB12などが、決定的に乏しいが、これらの成分の乏しい食餌をあたえた動物には、癌性変化がはやくあらわれる。
     という。

    (Rogers & Newberne:Nature.1971.1.1.)
     アフラトキシンといった強力な発癌性物質の影響でも、栄養のいかんによってかなり左右されることがうかがえるわけだ。


6. 原電近くのカイからコバルト60検出

     【福井】敦賀市明神町の日本原電敦賀原子力発電所の冷却水排水口付近の海からとれた「ムラサキイガイ」からコバルト60が検出された−と、26日、科学技術庁から福井県に連絡があった。
     科学技術庁ではごく微量で人体への影響はないといっているが、県では ▽コバルト60の発生源 ▽こんごの影響−などについて、2月8日に県民会館で開かれる県原子力環境安全管理協議会(会長、中川平太夫・知事)で報告するよう要望した。
     科学技術庁は昨年、水産庁の東海区水産研究所に敦賀原子力発電所付近の海洋生物調査を依頼したが、排水口付近の海でとったムラサキイガイからコバルト60が検出された。
     他のサカナ、カイなど生物に異常はなく、科学技術庁はムラサキイガイは ▽放射能を濃縮する体質をもっている▽ それでも極めて微量しか検出されていない ▽このカイは食べない▽−などから人体への影響は考えられないとしている。
     しかし、なぜ原子力発電所の排水口付近のムラサキイガイからコバルト60が検出されたか疑問の点もあるため、海洋生物調査のデータを放射線医学研究所や放射線の専門家に検討させているという。
     コバルトは鉄族の金属元素。放射能物質から出た中性子をあてると放射能をもつコバルト60になる。
     半減期は5・3年で、ごく微量はガンの治療に使われている。

    敦賀原子力発電所の話
    「コバルト60は原子炉の圧力容器の内部で発生するが、外部には絶対もれないようになっている。
     どうして排水口付近のカイから検出されたか見当がつかない」

    (46・1・27 サンケイ)


7. ピーナツバターから強力な発ガン性物質

     パンにぬるピーナツバターやピーナツチョコレートから強力な発ガン性物質「アフラトキシン」が検出され、厚生省は22日、メーカー2社に販売停止命令を出し各府県にも回収の徹底を指示した。
     食品からアフラトキシンが検出されたのははじめて。
     同省は来月早々にも食品衛生調査会に諮問して、安全基準づくりを急ぐ。販売停止命令を受けたのは、東京都墨田区緑1ノ2、ソントン食品工業会社(石川望社長)と東京都太田区多摩川2ノ19、カセイ食品会社(竹田育司社長)の2社。
     検査によると、ソントン食品工業の製品は57検体中29検体、カセイ食品の製品は28検体中5検体にアフラトキシンが含まれていた。
     大半はごく微量だったが、6検体の検出値は0.04−0.03PPM。
     WHO(世界保健機構)の許容基準の勧告案0.03PPMや米国食品医薬品局の指導基準0.02PPMをわずかながら上回っている。

    (46・2・24 サンケイ)


8. 煮干し(氷見産)に亜硝酸 富山県は出荷停止

     【富山】富山県はこのほど東京都衛生局から氷見市産の煮干しに発ガン作用のある高濃度の亜硝酸が添加物として含まれていると指摘されたので、この煮干しの分析をしていたが26日、3.7PPMから27.7PPMの亜硝酸を検出した。
     亜硝酸の含有許容量は、ハムとクジラ肉、魚肉ハムなどで決められているが、煮干しについてはとくに決められていない。
     だが、都衛生局はタラコ、スズコなどが5PPMを基準としているため、これにもとづき氷見産の煮干し販売は好ましくないといっている。
     富山県では25日から、この煮干しの出荷を停止しているが、どのようにして亜硝酸が添加されたのか、まだわかっていない。

    (46・1・27 サンケイ)


9. ゆでダコに工業染料 発ガンおそれる声

     ゆでダコの色づけに食品衛生法に違反する工業用染料の色素「ダイレクトブラウンM」が多量に使われていることが、15日の大阪府の調べでわかった。
     府は、さる1日から年末年始の食品取締りをしてきたが、15日までに調べた33店のスーパー、小売店のうち10店で、この染料を使ったタコを売っていた。
     府は、違反の店が3割にものぼり、仕入先がそれぞれ違うので、広くつかわれているのではないかとみて厚生省に連絡する一方、大阪市中央市場からも卸されていたので、同市衛生局へ検査するよう申入れた。
     府食品衛生課の調べでは、この染料は、木綿、羊毛の染色に使われ、毒性があるか、どうかははっきりしていないが、一部では発ガンの危険があると、指摘されているという。


10. タバコと癌

     喫煙家の癌(口腔・咽頭・喉頭)治癒例の203名のうち、喫煙継続者(122名)と禁煙者(81名)について、3〜18年平均7年の経過をみたところ。
     喫煙継続者には40%に再発したが、禁煙者では6%に止まった。
     そして、再発癌の死亡率は高かった。
     また、他の原因による死亡も、喫煙継続者には、より早くあらわれた。

    (C.Moore:JAMA 218.4.1971)


11. 魚肉加工品に発ガン物質  ハムやスジコに多い


     食器の中の発ガン物質を総点検していた厚生省国立衛生試験所は、このほど、市販のプレスハム、スジコ、冷凍ハンバーグステーキのほとんどが「ジメチルニトロソアミン」(DMNA)という強力な発ガン物質を含んでいることを発見した。DMNAはハム、ソーセージなどの発色剤に使われる亜硝酸塩が、魚肉の中などに自然に含まれている2級アミンと反応して出来るものなので、亜硝酸塩の使用を再検討すべきだという声もあがっている。

     国立衛生試験所の食品添加物部(谷村顕雄部長)は、ことしの7月から、魚肉ソーセージなど6種類のソーセージ、ロースハム、ベーコン、コンビーフ、イクラ、タラコ、くんせいニシンなど合計20種類の食品についてDMNAの検索を行なった。
     このうち、プレスハムは20検体のうち6検体までが15〜25PPB、スジコは同じく20検体のうち7検体が最高10PPB、冷凍ハンバーグステーキは、3検体のうち1検体が5PPBの濃度でDMNAを含んでいた。
     国立衛生試験所をはじめ、神奈川県、横浜市、宮城県の各衛生研究所などがこれまでに共同調査したところによると、もともと2級アミンの多い食品はニシン、マグロ、クジラ、タラ、タラコ、サケかん詰めなどの魚介類で、獣肉と野菜類には少ない。
     一方、発色用添加物である亜硝酸塩の残留基準は食肉製品とクジラ製品が70PPM、魚肉ソーセージと魚肉ハムが50PPM、イクラとスジコが5PPM以下と定められている。

     発ガン物質のDMNAが検出された3種類の食品は、いずれも2級アミンを多量に持つ魚肉に亜硝酸塩が添加されているものばかり。プレスハムはおもにマグロとクジラを原料にしている。
     それに対して魚肉ソーセージの原料はやはりジメチルアミンなどの2級アミンを多く含むタラであるにもかかわらず、発色剤として亜硝酸塩を使っていないため、DMNAがつくられなかったというわけ。タラの身は白いため亜硝酸塩では赤くならないのでズバリ赤色素を使っているという。
     「DMNAの発ガン作用」は、16日から3日間、東京のパレスホテルで開かれる第2回高松宮妃癌研究基金シンポジウムにおける最大のテーマで、17日には国立衛生試験所の石館(いしだて)守三所長が「日本の食品とDMNAの関係」について発表する。

    許容基準厳しく
     谷村顕雄食品添加物部長の話 DMNAの許容量はまだわからないが、プレスハムに表われた20PPBの濃度は危険量の100分の1程度ではないかと思う。しかし微量ずつでもなんらかの形で、〃蓄積〃することも考えうるので、亜硝酸塩の許容基準はもっときびしくするべきだろう。 (46・11・14 オカニチ)


12. ハムに発ガン物質

    国立衛試が分析発色剤の添加警告
     市販のプレスハムや冷凍ハンバーグステーキなどに微量の発ガン物質ニトロソジメチルアミン(DMNA)やニトロソジエチルアミン(DENA)がはいっていることが国立衛生試験所などの調査でわかり、17日東京・丸の内のパレスホテルで開かれている高松宮妃基金癌国際シンポジウムで東京生化学研究所長の石館守三博士から発表された。
     DMNAやDENAは、魚肉中の2級アミンと発色剤として加えられる亜硝酸塩とが反応して出来るもので、動物実験では2PPM程度でも連続して与えると肝臓ガンを起こす強力な発ガン作用があることが知られている。
     日本では魚肉を食べる機会が多いので食品中に含まれている恐れがあるとして2年前から国立衛生試験所・食品添加物部が中心となって市販の食品を抜き取り検査してきた。
     その結果、最近になってプレスハム20品目のうち、6種に、15〜25PPB(PPMの1000分の1)、冷凍ハンバーグ3品目のうち1種に5PPBのほか、すじこ(20品目中7種)、サンマの干物(3品目中1種)に極微量のDMNAやDENAがみつかったという。

    (山陽46・11・18)


13. 石綿など徴細な繊維 吸うとガン発生 ‖米の学者発表‖


     【ワシントン7日UPI=共同】米国立衛生研究所病理学研究室のマール・スタントン博士は7日、石綿は煙草に次いでガンの原因であり、その他の繊維も一定の大きさを持った微細なものはネズミにガンを起こさせる可能性のあることがわかったと発表した。
     スタントン博士は、石綿と石綿に似た繊維について、ガン発生の原因となる特性の有無を研究、フランスのリヨンで開かれる学会に石綿の生物学的影響に関する研究成果をすでに提出している。
     同博士の研究によると、中皮腫(しゅ)=肺と腹部の内側の膜にできるガン=は主として建築労働者のほこりにさらされる人に多いという。
     石綿繊維は肺に吸い込まれると、石綿沈着症や他の肺疾患として診断されるまで20年から40年もそこにとどまり、同博士がネズミに微細な石綿繊維を吸い込ませて調べたところ、58%から75%の高い率で中皮腫が発生していた。
     さらに石綿のほか、ガラス、サファイアの微細な繊維によってネズミに高い率で中皮腫が発生したが、石綿の太い繊維やガラス、サファイアの粉末ではガンはほとんど発生しなかったという。
     研究の発表に当ってスタントン博士は「石綿以外の繊維も危険であるとの確証は得られなかったが、動物実験の結果は、微細な繊維物質を吸い込んだり飲み込んだりするのは避けた方が無難であることを示している」と語った。(48・1・9 山陽)


14. 豆粕(大豆粕)

     油をしぼりとった大豆の粕、豆粕。以前、大きな円盤状にかためられたのが満洲から大量に輸入されていた。
     主に肥料用だったようだが、戦時中には、すぐれた蛋白源として配給されたこともある。
     これは、ただ、大豆を圧搾してしぼっただけのものだから、何の心配もなかった。
     しかし、現在のしぼり方は、大豆粉から、溶媒によって抽出するので、溶媒によっては問題がでる。
     一時つかわれたトリクロールエチレンでは、大豆の蛋白と結合して、一種の有毒分が出来、動物に再生不良性貧血をおこす、といわれた。
     今は、ヘキサンという石油製品がつかわれているそうだが、これには、発癌性のある多核芳香酸炭化水素が含まれているおそれが多分にあるという。
     ところで、この大豆粕は、肥料にもされるが、豆腐や味噌、醤油の原料になっているそうだ。
     もし事実とすれば、豆腐の味が少々おちるくらいは我慢するとしても、発癌物質を食わされているかも知れないということは、聞捨てできない。
     それを、当局が、承知の上で許しているのだとしたら、ただ、その無神経さにあきれるだけではすまされまい。


15. こうしたら癌も防げるのでないか(1)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     難病中の難病の癌。なろうことなら罹りたくない。しかし、現代医学は、そのめざましい進歩にもかかわらず、まだ原因は不明(ビールスらしいというデータはふえつつあるようだが)。予防にも適確なきめてを知らず、ただ、発癌物質(発癌因子、発癌促進因子)を除き、遠ざけるよう心懸けるほかあるまい、といっているにすぎない。

    発癌物質
     しかし、発癌物質は、化学工業のすさましい発展にともない、いたるところにまき散らされ、大気も、土も水も、食物も汚染されてしまい、薬剤(医療用・産業用・その他)にも、放射線にも危険いっぱい。まるで、発癌物質にとり囲まれているようなものだ。

    抵抗性
     癌は、ふつう、不治と考えられている。けれども、ごく稀にではあるが、自然に治るものがある。また丹毒にかかったり、ハシカその他のビールス感染で腫瘍がよくなることがあり、さいきんではBCG(弱毒性結核菌)その他の細菌やビールスの接種による治療も試みられていること。あるいは、乳児ことに、初乳から母乳をのんでいる乳児には癌が少ないし、経過も比較的よいといわれていること(母乳ことに初乳には免疫成分が多い)。など、ともに、免疫力の強化による効果を思わしめる。
     また、逆に、癌が老人に多いこと。食欲がよく、体力さかんな間は進行がおそいが、手術その他で、体力が衰えたり食欲がなくなると、急に悪化すること。免疫抑制剤で発癌率が高まること(たとえば、腎移植で免疫抑制剤をうけたものに、癌ができやすい)。など、いずれも、体力、免疫力の低下とともに、癌が進行したり、発生することをしめしている。

    条件しだい
     これらの事実からすれば、個体の条件のいかんによっては、癌に抵抗しうること――細菌やビールスの感染で、病原体の毒力と個体の防衛力(抵抗力、免疫力)のいかんによって、治・不治がきまるように――癌でもまた、体力・抵抗力・免疫力しだいでは、よくなったり、治ることもありそうに感じられる。

    文明国に多い
     また癌が自然食をとり、自然的生活をおくっている未開民族には少なく、工業化がすすみ、加工食品を多く食べている先進文明国に多いことは、産業廃棄物その他による環境や商品の汚染とともに、食糧生産方法の不自然(農薬・化学肥料、ハウス栽培。畜水産の薬剤依存など)。高度の加工(精製・調理など)、既成食品の氾濫。による食品の質的低下(栄養素ことにビタミン類・ミネラル類、とくに痕跡ミネラル分の損耗)。さらには、美贅食(精製穀・肉)にかたよった不完全食(熱量・蛋白質にはとんでいるが、ビタミン・ミネラルは甚しく不足している)の飽食。過度の喫煙や飲酒、甘味品摂取。放射線や医薬品の乱用、精神的ストレスの過剰、運動不足。また、感染症や外傷の減少、あるいはそれらの早期治療のため、免疫体生産の訓練ができなくなっていること。などによって、体力・抵抗力や免疫力の減衰をまねいている結果ではなかろうか。

    日常生活、ことに食の合理化、自然化
     そうだとすると、この業病をまぬかられるには、できるだけ発癌物質を除くよう、また、遠ざけるよう、つとむべきことはいうまでもない。が、それとともに、適度の運動、鍛錬。あるいは各種刺戟法を講ずるなど。また、日常生活の合理化、自然化をはかり、細胞や組織、臓器の老化を防ぎ、若がえりにつとめ、もって個体の全機能、ひいては、体力・免疫力をたかめ、癌にたいする防衛力・抵抗力を強化すべきであり、その中心をなすものは、何としても、まず、食の合理化、すなわち、完全化、安全化=自然化であろう。

    食の合理化

    1、完全食
     体力・抵抗力の維持・増進のためには、すべての栄養素がそろい、バランスがうまくとれている完全食でなければならない。
    熱量  十分の熱量。しかし、過剰、ことに糖質や脂肪の過剰はよくない。癌は、だいたい美食飽食家に多い。これは、ただ熱量が多すぎるためだけではなく、美贅食がとかく栄養的にかたよった不完全食になっており、代謝の不完全、ひいては、悪血(血の濁り)をまねきやすく、ために、体力・抵抗力をよわめる結果となっているからであろう。
    糖質  動物実験で、糖質の多い食では、その乏しい食にくらべ、癌の進行が甚しいという。米食地方に胃癌の多い事実と思いあわせ、糖質とくに砂糖や精製穀(白米飯、白パン、白メン類など)の過食はさくべきであろう。
    脂肪  欧米流の肉食では大腸癌が多い。これは、脂肪にとみ、植物繊維が乏しいため、腸内細菌叢に変化を生じ、脂肪や胆汁酸の分解が高度となり、発癌性の分解産物ができる可能性があるうえ、便秘にかたむき、発癌物質(腸内発生および外来性の)との接触時間がながくなるためであろう、といわれている。
     また、肉食は、とかく不完全食になりやすく、代謝が不完全となり、血の濁りをまし、体力・抵抗力に不利にはたらくからでもあろう。ともあれ、脂肪にとむ肉類やチーズ、バターや牛豚脂などの過食はつつしむべきであろう。
    植物脂肪  また、植物脂肪の過食もよくないらしい。現在、欧米先進国で最大の関心事は、心臓冠状動脈の障害(狭心症、心筋梗塞など)の多発だが、これが、動物脂肪の過食による血液コレステロールの増加のためとされ、その対策として、血液コレステロール低下作用のある植物脂肪(ヤシ脂を除く)がすすめられていることは周知のとおりだ。ところが、なるほど、そうすると、冠状動脈障害は減るが、癌死がふえて来る、という。だとすると、脂肪は、動物性、植物性をとわず、ほどほどにすべきで、あまり食べすぎるのは考えもののようだ。
    蛋白質  十分の蛋白質が必要であることはいうまでもない。不足し、栄養失調になると、細菌やビールスに対してだけでなく、癌にも抵抗力がおとろえる。けれども、かたよった蛋白過剰は、代謝を負担し、悪血(血の濁り)の原因となるし、腸管内で発癌物質のできる可能性もある。
    ミネラル  栄養のバランスをとり、代謝を完全にするためには、また、癌防衛力の強化をはかるためにも、十分のミネラルことにカルシウムが必要。(石灰岩土壌地域には癌がすくない)なお、痕跡ミネラルの適量に癌防衛的作用があるという、最近の研究は注目すべきであろう。
     微量のゲルマニウム、適量のセレン(多すぎれば発癌性)が、動物実験で、発癌を抑制すること。微量の銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、コバルトなどが、発癌物質ベンツピレンを分解する酵素の作用を促進すること(つまり発癌物質の分解をすすめる)。
     土壌中にモリブデンが不足すると発癌が促進されること(植物中に硝酸塩がふえ、これが亜硝酸になり、アミンと結合して、発癌性ナイトロサミンを生ずることで。後章参照)。
     そして、癌の多発地には土壌中の痕跡ミネラルの欠乏が考えられる、といわれていること。(また、カルシウムや痕跡ミネラルによって、水銀、カドミウム、鉛などの公害物質の害が、ある程度防がれる、ともいう。)
     これらの点から、ミネラル(痕跡ミネラルをふくめて)は十分に、むしろ、多すぎるくらいのほうが安全のように感じられる。(痕跡ミネラルは、あるかないかの極く微量だが、これなしには正常の機能は営めない。しかも、多すぎても少なすぎてもよくない)
    ビタミン  代謝の完全をはかり悪血を去り、体力・抵抗力の完全を期するためには、十分のビタミンが必要。
    Cと癌  ビタミンCは、発癌性ナイトロサミンの生成を抑える作用があるらしい。亜硝酸塩は、アミノビリンと、一定の条件の下で、ジメチール・ナイトロサミン(強力な肝毒性、発癌性がある)を生じ、肝臓を障害するが、その際、ビタミンCがあたえられると、それが防がれることが、動物実験で証明されている。ほかの発癌物や喫煙(タバコの煙には発癌性がある)でも、ビタミンCが減る。
    B2,A,Cと癌  アゾ色素による発癌を妨げる小麦の成分はビタミンB2だといわれているし、(後章米の項参照)さいきんアイスランドの研究では、胃癌とビタミンA・Cの不足との関係がいわれているなど、ビタミンにも発癌にたいし抑止的の作用があるらしい。いずれにしても、ビタミン類は、ミネラル類と同じく十分に、いや、むしろ多すぎるくらいにある方がよいようだ。
    バランスの
    あり方
     そこで、癌に対抗する完全食のバランスのあり方としては、熱量は、十分だが、すぎないよう。とくに、糖質や脂肪はひかえめ。蛋白質は十分。そして、ミネラルやビタミンには十分余裕のある、むしろ、多すぎるくらいの栄養が望ましいといえそうだ。

    (つづく)


16. 煙・煤と癌


     タバコの煙、工場や暖房その他の煙・煤。自動車や航空機(ことにディーゼル車やゼット機)の排気ガスなどには、強力な発癌物質(ベンツピレン、ベンツアントラセンなど)があり、吸入して肺癌多発の有力な原因とみなされている。また飲みこまれて胃にはいり、胃癌の原因にもなる。なお、煙や煤にあるフェノールは、亜硝酸塩と結合すると、パラニトロフェノール(強力な発癌性がある)になる可能性もあるという。煙でいぶしてつくる燻製品や、焙り焼きした肉(テキ、バーベキュー)にも発癌性があり、(燻製の羊肉1キロのベンツピレンの量はタバコ250本にあたるという)。
     アイスランドやフィンランドなど燻製の肉や魚をよく食べるところには胃癌が多い(アイスランドでは胃癌死亡率は35%以上だという)。ウエストマン島でも、胃癌が多く死亡率平均32%、女性は50%に及んでいるというが、ここでは燻製品は食べていない。しかし、飲料水は、煤をかぶった屋根からあつめた雨水なので、煤で汚れた水が原因だろう、といわれている。
     また、ユタ州の2ヶ所の軟(歴青)炭鉱山には、ユタの他の炭礦の3倍も胃癌が多いが、これは軟炭の煤にベンツピレンが多いこと、煙が微細な煤になって吸入され、のみこまれるため、と説明されている。ポーランドでも、工業地区に胃癌が多い(農村にくらべ2〜3倍多い)が、これも大気汚染に関係するものと考えられている。


17. パラフィン


     ミカン類、乾果物、菓子、チューインガム、チーズなど、見かけの美しい、つやつやしたものは、被覆剤としてパラフィンが塗ってある。このパラフィンは、精製品は無難だが、精製不十分な粗悪品には発癌性が残っている。もしや、そういういかがわしいものが、つかわれていないだろうか。


18. こうしたら癌も防げるのでないか(2)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    食の合理化

    2、安全食
     つぎに、食品はすべて、発癌性はもとより、あらゆる点で、安全でなければならない。
    食品の
    発癌性
     食品の発癌性には、自然にあるもの、食品の中でできるもの、体内でできるもの、および、生産・加工や調理の間に生じ、または付着、混入、あるいは添加されるものなどがある。
    自然にあるもの
     ソテツのほか、ワラビ、フキ、フキノトウなどにも、いわれている。しかし、これらが利用されている地方に、特に癌が多発するようでもないから、昔から行われている処理法さえ十分にまもれば、さほど問題ではないのであろう。
    食品の中でできるもの
     食品の中でできる発癌物質には、カビ毒とナイトロサミンがある。
    カビ毒  落花生につくカビの出すアフラトキシン。黄変米のカビのルテオスキリン。その他にも、強力な発癌性毒素を出すカビがある。これらのカビ毒は、煮炊しても破壊されないし(カビそのものは死滅するが)、飼料にすれば、家畜の肉や卵や乳に出る。
     農作物(穀・豆・芋やその加工品、餅・パン・メン類・菓子類、乾燥野菜や果物)、醸造品(味噌・醤油)、干魚類などには、梅雨時カビがよくつく。その多くは無害だが、中には有害、ことに発癌性のものがあるかも知れない。
     しかし、実際問題として、そのみわけは困難〜不可能。だから、なるべくカビないよう気をつけること。(昔は梅雨の晴れ間に日光にあてた。乾燥が目的だったが、日光で分解、破壊されるカビ毒もある。)カビたものは食べないこと。また、飼料にもしないこと。
    カビどめ薬  さいきんはカビどめ薬が添加されているが、その中にも発癌性のものがないではない(たとえば、ベータ・プロピオラクトン、フェニール・ビニール・ケトンなど)から、カビたものはもとより、カビないものにも注意が肝要だ。
     なお、各種醸造用のカビの安全性についても、つねに十分吟味され、監視されなければならない。
    ナイトロサミン  いろいろなものがあり、今では、それらによって、動物に、殆んどすべての癌がつくられるようになっている。それほどに強力な発癌性があるもの。しかも、このナイトロサミンは、一定の条件の下で、亜硝酸塩とアミン(蛋白の分解産物や薬剤などいろいろある)とから出来る。
    肉・魚類  もっとも問題になるのは、肉類や魚類、チーズなどに、防腐剤(とくにポツリヌス菌の繁殖を防ぐ)、発色剤(ハム・ソーセージの淡紅色を出す)として、亜硝酸塩や硝酸塩(これから亜硝酸塩になる)が添加されるばあい。肉類(ハム・ソーセージ、ベーコンなど)には比較的少ないが、魚肉、鯨肉,魚肉ソーセージ、ハム、スジコ、タラコ、あるいは乾物や燻製品などは、かなり濃厚にナイトロサミンで汚染されており、これらの消費のさかんな日本、チリ、アイスランド、フィンランドなどに多発している胃癌との関係がいわれている。(なお、ノールウェイ、アメリカでは使用は禁止されている)
    植物にも
    できる
     アフリカのトランスケイに食道癌が多いのは、土壌にモリブデンが欠乏しているため、植物に硝酸塩がふえ,それが亜硝酸になり(植物の中、または細菌の作用で)、ナイトロサミンが多くなっているからだ、と説明されている。
     また、硝酸塩が肥料として多用されるばあいや、除草剤2.4Dがつかわれるばあいにも、同じことがおこりうる。チリの中央部に胃癌の多いところがあるが、そこでは硝酸ソーダ(チリ硝石)が肥料にされ、野菜や水にも硝酸塩が多く、小麦の中にもナイトロサミンが証明されている。
    アルコール
    醗酵でも
     ナイトロサミンは、アルコールの醗酵のさいにも出来る。ザンビアに多い食道癌は、そこのビールやその他の酒にあるナイトロサミンとの関係がいわれている。
    体内で
    出来るもの
     硝酸塩の多い食品を食べたり水をのむと、体内で亜硝酸になり、アミンは蛋白食品からいくらでも出来るので、胃腸管内や膀胱で、ナイトロサミンになる。
    その他  亜硝酸塩は、胃腸管の中で生ずるフェノールと化合して、強力な発癌性のあるパラニトロフェノールになる可能性があるともいわれている。
    生産・加工の間に付着、混入するもの
    農産物  農薬、DDT、BHC、PCB、煤煙、粉塵、排気ガスなど発癌性があるか疑われているもの。ふりかかったり、土中に入って、根から吸い上げられる。
    畜・水産物  飼料に付着、混入しているもの(カビ毒、農薬、煤煙、排気ガスなど)に汚染されたり、石油酵母の配分された飼料。
    発育促進剤  家畜の成長を促進する目的に添加される薬剤のうちにも、発癌性のあるものが少なくない。ペニシリン(防疫・治療用にも)、合成卵巣ホルモン剤、甲状腺機能抑制剤、砒素。あるいはニトロフラン系の化合物など。こうしたものが、少量ではあろうが、肉・卵・乳に残っており、われわれの口にはいって来る。もっとも、いずれも、その量はごく僅か痕跡ていどにすぎず、屠殺までに時間をおけば減りまたはなくなる。調理でこわされるものもあるから、心配はあるまいとはいわれているが。

    (つづく)


19. 肉食と大腸癌

     医学博士 遠藤 仁郎 

     肉を多く食べると大腸癌になる危険度が増す。
     ホノルル在住の日系人について調査したアメリカの癌研と日本の東北大の報告によると、大腸癌になる率は、日本からの移住者が最低で、ハワイ生れが最高。肉を主とする西欧食をはやくとり入れたものは、和食者にくらべ、大腸癌になる危険がずっと高いこと。大腸癌患者は、非癌患者よりも肉を多く食べていること、がわかった。
     なお、大腸癌は、肉を大量に食べているカナダやウルガイに多く、肉をたべないセブンスデイアドベンチスト派に稀だ、という。

    (A.Jnt.Med.1974.4月号より)


20. こうしたら癌も防げるのでないか(3)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    加工の工程のあいだの汚染
     米の精白に使われる滑石には、発癌性のある石綿の繊維がある。
     また、小麦粉の漂白剤のうちの過酸化ベンゾイル、植物油の抽出につかわれる溶媒のヘキサン、植物油の固形化(マーガリンにする際の水素添加)の触媒ニッケル・カーボニール、などいずれも、発癌性があるか、うたがわれている。そうしたものが残留していないか。

    塩蔵品
     食塩には直接、発癌性はないが、過剰摂取はわが国の胃癌多発の原因に数えられている。

    燻製品
     煙でいぶしてつくる燻製品は、煙にある発癌物質(ベンツピレンやベンツアントラセン)で汚染されているし、煙の中にあって、肉の腐敗や油の酸化を防いでいるフエノールは、亜硝酸塩(これも添加されている)と結合して、強力な発癌性のあるパラニトロフエノールになる可能性もある、といわれている。
     アイスランドでは、羊肉や魚を燻製にしてたくわえているが、胃癌が多い(胃癌死35%に上っている)。

    添加物
     調味料、着色料、芳香料、保存料(防腐、防カビその他)など、いろいろのものが添加されているが、それらの中にも、発癌性のあるものが少なくない。

    調味料
     人工甘味、ズルチン、チクロ、ともに発癌性の故に禁止された。残っているサッカリンにも若干のうたがいがかけられている。

    化学調味料
     グルタミン酸ソーダは、石油化学工業の廃物(発癌物質が多い)からグルタミン酸生成菌で、イノシン酸は酵母のリボ核酸から青カビをつかって製造されているが、この石油製品、青カビ製品というところ、いささか気になる。

    着色料
     古くは、すべて無難な純粋の天然色素だけであったが、今は、殆んど合成物。ことにタール色素(石油製品)で、ふつう使われている色素のうち、厳格にいって、確実に無害なものは、僅か三種類にすぎないそうだ。
     なお、色素自体は無害でも、不純物として砒素、鉛などの混入もありうる。
     で、現在無害とされているものでも、中毒性、発癌性、催奇形成などについて、絶えず監視しなければならぬ、と注意されている。
     現にわが国でも、ここ数年来、何種類かが発癌性の故をもって禁止された。
     また、天然色素といっても、今つかわれているものは、純粋の天然色素そのものはなく、いずれも種々の化学操作が加えられているものなので、これとて、100%安全とはいいきれない。

    芳香料
     芳香料の多くは無害だが、中には発癌性や発癌促進性のあるものがある。たとえば、サツサフラス油の主成分であるサフロールは、香料として飲料に入れられていたが、肝臓をおかし、癌を発生することがわかって、今では使用が禁止されている。
     このサフロールは、茴香(ウイキヨウ)油、樟脳油、肉荳?(ニクヅク)、ナツメ、月桂樹油、肉桂油など、多くの芳香油にも含まれている。
     また、シトロン油、レモン油にも発癌性があるらしいし、テレビン油、ユーカリ油などにも、同様の作用のある成分があり、赤トウガラシは肝癌の発生を促進する、などのことが知られている。
     なお、芳香料は約300種あるが、その発癌性については、まだくわしい検査が行われていない。
     こうした芳香料は、食品その他に広く添加されているので、たとえ、それがごく少量ではあっても、ながい間に累積されることは考慮を要する、と警告されている。

    防腐剤
     いろいろのものが使われているが、はたして安全なものばかりだろうか。亜硝酸・硝酸塩については上記のとおり。豆腐、カマボコ、竹輪、ハム、ソーセージ、その他に広く用いられたAF2(フリル・フラマイド)が発癌性の故に、ついに禁止されたことは、まだ記憶にあたらしい。抗カビ剤のことも上記。

    エムルジオン剤
     低分子のポリオキシエチレンの中にも発癌性のものがある。

    豆腐凝固剤
     さいきんでは、グルコノラクトンが使われているそうだが、ラクトン系の化合物には発癌性のものが少なくない、といわれている。

    容器
     プラスチック製の容器や水道管から、微量ではあるが、発癌性の塩化ビニールが溶け出している。

    調理のさいついたり生ずるもの

      洗剤
       乱用されている洗剤には発癌促進性がいわれている。

      焦げ
       焦がすことだけでも発癌性をおびて来る。西ドイツに胃癌が比較的多いのは(欧人には一般に少ないのは)、幼時から、焦がした馬鈴薯をよく食べているからではないか、といわれている。
       とすると、焦げパン、焦げ飯、焼芋、焼味噌田楽なども気になるわけだが、動物の実験では、パンの焦げによる発癌率は0〜0.52%と僅かなものだから、さまで問題ではあるまい。
       しかし、焼き肉の焦げでは0.95%だという。脂肪が不完全燃焼して、多量の発癌物質ベンツピレン、ベンツアントラセンなどを生じ、それがついているからだ。
       だから、肉や魚は、燃える脂肪の焔で焦がしてはならないし、新聞紙で焼くべきでもない、と注意されている。(ステーキ、バーベキューでは5〜10PPMついている)

      あげもの
       脂肪を高温に熱すると発癌性をおびて来ることは、以前から知られていたが、ふつうの揚げ物では、それほどの高温にはならないので、まず大丈夫だろうと考えられていたが。が、たびたび使っているうちに、やはり発癌性が出て来るらしい。
       アメリカでは、フライ用の油を1回だけしか使わないようにしてから、胃癌がうんと少なくなったという。家庭での揚げものには、その注意はできるが、市販のカツやコロッケ、揚げ豆腐、ドーナツやフライ豆などの油は、いったい、どれ位ながく使われていることだろうか。
       アイスランドの研究で、胃癌とビタミンA・C欠乏との関係が明かになっているが、油の再加熱でできる抗A因子(ビタミンAの作用を妨げるもの)が、胃癌の原因かも知れないといわれている。
      (つづく)


21. こうしたら癌も防げるのでないか(4)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     主(熱量)食品 
     米 
     胃癌は米食地域に多いといわれる。
     それは、白米が栄養的に不完全であり(完全にするには良質ナッパ3倍量が必要。半搗米は2倍、玄米は同量。しかし、玄米は残留農薬が、まだ気がかりだ)、しかも、かたよった過食になりがち(糖質過剰)なため、一般抵抗力がよわめられること。
     食塩のとりすぎになること。
     米につくカビ毒には、ルテオスキリン(黄変米)のほか、アフラトキシン様のものもあるらしいこと。
     また、稲が水田作物であること(酸素の乏しい土壌中には亜硝酸菌がよく繁殖する)。
     硝酸塩肥料や除草剤2.4Dがつかわれると、発癌性ナイトロサミンの生ずる可能性が大きいこと。
     これらのことがらは、胃癌が、有機質の多い低湿地域に多いこととの関連を物語っているのではなかろうか。
     なお、アメリカのR.R.Merilss氏が、日本に胃癌の多いのは、米を滑石(発癌性のある石綿の繊維がある)で処理しているからだ、と指摘していることも気になる。
     小麦 
     栄養的にも(完全にするに2倍量のナッパが必要)米にまさっているほか、発癌に関しても、米より有利らしい。
     わが吉田博士が発表されたアゾ色素の発癌性は西欧の追試で否定されたのであるが、それは、わが国の実験では米、西欧では小麦が飼料であったことによるという。
     つまり、小麦にはアゾ色素の発癌を防げる成分があるが、米には玄米に僅かにあるだけで、白米にはないためであった(それは、ビタミンB2だといわれているようだが、おそらく、それだけではあるまい)。しかし、これとて問題がないわけではない。一般に色のよい粉が好まれ、フスマを除いた精粉になっていること。
     またさらに、今では、ほとんど粉が漂白されているため、大切なビタミンが失われているうえ、漂白剤によっては(たとえば過酸化ベンゾイル)発癌性のあるものもある。
     また、漂白小麦粉には、発癌性ナイトロミンのあるものもあるといわれている。
     パンにつくカビには、あまり有害なものはないらしいが、それでも、オクラトキシン、アフラトキシンその他のカビ毒にも注意されねばなるまい、といわれている。
     なお、カビどめ薬、その他が添加されていれば、それらの害がないとはいえない。
     そこで、米ことに白米はなるべく控えるべきだし、小麦ものとて、過ぎない方が安全といえよう。
     雑穀・豆・芋類 
     ソバ、雑豆、芋類は、栄養的にもすぐれ(ソバや雑豆類は同量の、芋類は半量のナッパで完全になる)、農薬汚染のおそれも、無いかずっと少ないから、主食品としては、むしろ、これらの方が有利といえよう。
     なお、トウモロコシを主食にしているところには癌が少ないという。
     これも大いに利用すべきだろう。
     もっとも、これらとて、市販の加工品、ことに既成食品ともなれば、各種の添加物あるいはカビの汚染がありうるから、けっして手放しに安心はできない。
     蛋白食品 
     肉類 
     肉類は蛋白源として一般に好まれている。
     しかし、栄養的にはむしろ劣り、切り身の肉類(獣鳥魚介)は2〜3倍の良質ナッパが添えられなければ完全にはならない。
     また、安全性ことに発癌性にも、かなり疑問がある。牛・豚・鶏・(養魚でも)に、農薬、煤煙、粉塵、排気ガスなどに汚染されたり、石油酵母(石油化学工業の廃物に培養した酵母)やついさき頃禁止されたばかりのAF2の配合された飼料があたえられていないのか。
     また、成長促進剤に発癌性のある危険なものがつかわれ、それが残留しているおそれはないか。
     加工品、貯蔵品では、塩蔵品の食塩、発色や防腐目的の亜硝酸塩、燻製品の煤煙処理。
     その他各種の添加物と、発癌物質による汚染のおそれが少なくない。
     卵・乳類 
     栄養的にはすぐれている(鶏卵は約半量のナッパで、牛乳は1/10のナッパで完全になる)。
     また、牛乳をよく飲むところには胃癌が少ない、といわれている。
     ただし、安全性においては肉類同様の不安がつきまとっている。
     大豆 
     栄養的にすぐれ(良質ナッパ同量で完全)、蛋白質は動物蛋白にちかい。
     そのうえ農薬汚染の心配も無いか、少ない。
     現在安心して利用しうる唯一の蛋白源といえるのではなかろうか。
     もっとも、市販の加工品には不安がなくもない。
     たとえば豆腐。いまの豆腐は、昔のように純粋に大豆だけからつくったものは殆んどない。
     おもな材料は大豆油を抽出したあとの大豆粉だが、この抽出につかわれる溶媒のヘキサン(石油製品)は発癌性がうたがわれている。
     また、凝固剤は、もとはニガリ(塩化マグネシウム)あるいは石膏(硫酸石灰)だったが、いまはグルコノデルタラクトン。
     さらに防腐剤として、つい最近までAF2(フリルフラマイド)がつかわれていた。
     幸いこれは禁止されたが、凝固剤はどうだろうか。
     ラクトン系の化合物には発癌性のあるものが少なくないだけに、少なからず気がかりだ。
     なるべく、自家製で、大豆からつくりたいもの。
     また豆乳・煮豆・黄粉・納豆などとして利用したいものだ。
     野菜・果物 
     良質ナッパを主体とする野菜・山菜・海藻・果物。汚染のない地域の山菜、きれいな水域の海藻は、ともに安全。
     しかし、現在市販されている、化学肥料、農薬依存農法による野菜・果物のほとんどは、むしろ危険。(水銀・砒素・鉛、DDT・BHCその他の汚染)また肥料も問題。
     硫安には発癌物ベンツピレンがあるというし、硝酸塩や窒素肥料は、ことに収穫前の施用で、植物に発癌性ナイトロサミンを生ずる可能性がないとはいえないからだ。
     水 
     雨水にとけた大気汚染物(煤・煙・排気ガス、粉塵、放射能性降下物、PCBその他)、山野・田畑ことに水田に容赦なく散布される農薬や化学肥料、放流される工場・鉱山の排水や洗剤などは、井戸水に入り、あるいは河川に流れて水道水となり、飲用や炊事用に供せられる。
     したがって、化学工業がさかんになり、古来の名泉さえしだいに汚されてつつある現在では、発癌物質汚染の危険は殆んどさけられない)。
     もっとも、井戸水は大なり小なり濾過されるため、汚染の度はよほど緩和される。
     癌が水道地域よりも井戸地域に少なく、浅井地域よりも深耕地域に、より少ない、といわれているのは、その故であろう。
     また、ビニール管からの塩化ビニール(さいきん肝癌との関係がいわれている)の溶け出し、亜鉛の多い地域に癌が多いというのが、わが国のように軟水で酸性度のつよい水道水では、導管の亜鉛メッキからの溶け出しも問題かも知れない。
     硝酸塩肥料や窒素肥料の繁用される農村の水には硝酸塩が多いので、発癌性ナイトロサミンが生じうる。
     チリの農村のことは前記したが、イギリスでも、ウオークソープ地方に胃癌の多いのは、そこの飲用水に硝酸塩が多いため、といわれている。
     煤煙は発癌物質にとんでいるが、それに汚染した水も危険だ。
     ウエストマン島では、煤煙のかかった屋根からの雨水をのんでいるが、胃癌が多く、その平均死亡率は32.6、女性では50%にも上っている、という。
     硝酸塩の多い水や、煤煙でよごれた水にも十分気をつけなければなるまい。

    (つづく)


22. トウモロコシと胃癌

     医学博士 遠藤 仁郎 

     トウモロコシを主食にしているアフリカのバンツー族には胃癌が少ない。
     ユーゴスラビアでも、胃癌は食事中のトウモロコシの量に反比例している。
     アフリカのナイジェリアにも胃癌が少ないが、主食はトウモロコシ。
     アメリカの黒人の多くは、このナイジェリア人の子孫だが、トウモロコシを食べていた頃には少なかった胃癌が、食べなくなった今では非常に多くなり、サンアントニオ、ヒューストン、テキサス、アラメダなどの黒人の胃癌は白人の2倍にもなっている。

    (Macdonald,JAMA 1974.5.13号より)




クリック  引き続き、食品の発癌・制癌性(3)へ






ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 青汁 健康と青汁 上の階層へ
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法

Copyright 2010 10 田辺食品株式会社