<1961年01月15日発行 第53号>
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目次
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1. 動物にならう(一)
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医学博士 遠藤 仁郎
私どもの健康は毎日の食べ物できまります。
それが正しいか、まちがっているかは、ながい間には、甚だ大きい影響をあたえます。
私どもの運命がこれにかかっているといっても、少しもいいすぎではないでしょう。
が、さて、それでは、一体どのように食べればよいのか。栄養学は、カロリー・蛋白質・ミネラル・ビタミンが充分にあり、うまく釣合っていればよい、とおしえています。
たしかに、理窟はその通りでありましょう。
けれども、実際に、私どもが食べるのは、それらの栄養素が、いろいろに組み合わされている食品ですし、それらの食品の中の栄養素がどのようになっているかは、その道の人たちはともかく、多くの人々には、おそらく知られてはいないでしょうから、それを、どのように摂ればよいのかは、ちょっと、簡単には理解しかねます。
そこで、やはり習慣のままに食べ飲みし、学校や新聞・雑誌、ラジオ・テレビなどでおしえられては、あれこれと迷っているというのが、今一般の姿ではないでしょうか。
で、私は、むしろ自然の動物にみならうのが、いちばん手っとり早く、また間違のない方法ではないかと思います。自然界の動物は、みな、本能的に正しい食べ方を知っており、自分に適したもの以外は、決して食べません。
そして、いたって健康であります。野生の動物はもとより、家畜でも、それが自然に放たれれば、そういう食べ方をします。ところが私ども人間は、万物の霊長だと威張ってはいますが、こうした本能はもっていません。
もともとはあったに違いありますまいが、すっかり忘れてしまって、今では、ただもう、食べられるものは何でも食べる、というだけです。
それは、しかし、よいことでもありました。動物は、自分の知っているものが無くなれば生きられません。氷河時代にそういう危機がおとずれて、多くの動物は死に絶えましたが、人間は何でも食べてそれを生き延びた、ということです。
それまでは確かによいことでした。しかし、何でも食べるということを裏がえしてみれば、それは、何を、どう食べればよいのか、知っていないということです。
そして、さらによくないことには、何でも食べるとなると、つい、食べよいもの、うまいもの、ということになります。そして、その目的にかなうように栽培し、飼育し、調理し、調味することばかりに頭をつかい、しだいに食の堕落へと進みます。
こうして、動物本来の本能的能力は全く失われ、ただ味覚のままに食い飲みするようになってしまいました。
やがて、近代文化のめざめとともに、栄養学がこれを科学しようと努力しはじめました。
さて、科学などと申せばいかにも立派ですが、結局、経験のつみ重ねにすぎません。そして、その経験なるものは、主として動物でなされており、しかも、その多くは、甚しく不自然な条件の下で行われています。したがって、それが果して本当に正しい自然の姿かどうか、また直ちに私ども人間にあてはめてよいかどうか、甚だ心もとないのです。
その進歩のあとをたどってみても、少くとも最近にいたるまでの栄養学は間違いだらけでした。そこで、自然のままの動物のやり方をみならうほうが、より正確であり実際的であろうというわけです。肉食動物は、小さい獲物は丸のみします。大きい獲物は、血を飲み、内臓を食べ、骨をかみ、決して肉ばかりは食べません。
草食動物は、実や根も食べますが、主に木の葉草の葉で、それだけあればそれでよいのですし、もし充分にあれば、あれこれとり混ぜて食べます。しかし私どもは、これらの動物のように、動物ばかり食べるわけでもなし、草ばかり食うわけでもないのですから、そのままを当てはめることはできません。
私ども人間の食べ方に似ているものにネズミがあります。栄養実験によくつかわれるのはそのためなのですが、このネズミでも米だけでは死んでしまいます。けれども菜葉をそえればよく育ちます。また、肉ばかり食わせても病気しますが、これまた菜葉で防がれます。
鶏は、もともと庭にこぼれた穀物を拾わすために飼われたものだそうですが、それでも穀物ばかりだと駄目になってしまいます。近ごろ流行の、いわゆる「完全飼料」(穀物と魚粉貝殻などからなる)だけでは廃鶏が多く出るのは、よく知られている事実です。
そういう鶏を外に出すと何よりも先も、まず青い草を貪りついばみます。
またこの「完全飼料」でも、菜葉を添え、青汁を加えると雛子は早く成長し、産卵率は上り、産卵期もながくなります。小鳥飼の名手の談によると、餌つけのコツは、ともかく菜葉をきらさぬことで、これさえまもれば100%成功するそうです。
飼い犬や飼い猫でさえ青草を食い、青汁をよろこんで飲みます。金魚や鯉にも青草が必要だ、と申せば全くオドロキ。まさかと疑われるかも知れませんが、実に、そこが名魚をそだてる秘訣であるようです。瀕死の金魚も青汁でいきかえるほどです。
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2. 大根のひとりごと(1)―葉っぱの方もお忘れなく―
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友成 左近
オレたちの仲間には、いろいろなのがあるが、人間どもは、あまりよく知ってはいないようだ。オレたちの世話をしている連中は、わりあいよく知っているが、食べてばかりいる連中ときたら、サッパリ知っていない。
細長いダイコン以外に、太くて短かいショウゴインやバカでかいのはサクラジマといった仲間があることを知っている程度だ。せいぜい、夏とか秋とか時なしとか、ハツカ、といった区別があることや、オレたちの遠縁にカブがあることぐらいだ。それはマア仕方がない。オレたちは、人間どもに、食べてもらう以外に用がないらしいから、もっとくわしく知ってほしいと望むのはムリであろう。
いったい、オレたちは、生きていく力はバカに強いのだが、残念ながら働きまわって生きていくことができない。日照りが続いて水がかれてきたり、ジャマものにさえぎられてお日様と仲よくできなくなったり、土の中によい食べ物が乏しくなったり、害虫ッてヤツがやってきたりすると、いかに生命力が強いオレたちも、さすがに閉口する。
そこを、人間どもがうまく世話をしてくれるので、ありがたいと思わねばなるまい。ジツパひとからげにダイコンと呼ばれても、ガマンしよう。
安ッぽくみているらしい
ところで、この頃、ちょっとガマンしかねることがある。人間どもがオレたちの世話をするのは、食べるためらしいが、どうもオレたちの値打をトクと心得ていないようだ。モドカシくて仕方がない。人間どもがオレたちを食べるのは、オレたちの生命力がバカに強いからであるらしいが、オレたちのどの辺に生命力が沢山あるのか、カンちがいしているようだ。
オレたちの生命力の大部分は、緑色をした葉ッぱのところにあるのだが、そこンところを、よく心得ていないようだ。根ッこばかり食べて、葉ッぱはゴミ箱やタンボにすてたり、ニワトリやブタやウシにやっている。
そして、下手クソな役者をダイコンと呼んだり、ダイコンといえば、とかく値打の少ないものの代名詞にして、いかにもオレたちを安ッぽくみているらしい。
コイツァ人間どもにもお気の毒だが、オレたちにもいささか心配の種だ。
値打が少ないとみると、大切に世話をしないのが、人間どものクセだからナア。オレたちの仲間にカキバダイコンというヤツがいるが、この頃では、もう殆んど人間どもに忘れられている。
コイツは、葉ッぱをヤタラに沢山もったバカに生命力の強いヤツなのだが、根ッこが小さいかららしい。だが幸い。一部の人間どもが、ニワトリやウシにくわせるため、お粗末ながら世話をしているので、死にたえなくてすんでいる。
けれども、それほど葉ッぱの多くない仲間は、いささか先行き不安である。
値打をよく知ってほしい
だが、人間どものやり方をよく調べてみると、そう心配しなくてもよかろう。オレたちの値打をよく心得ている人間どももいる。人間どもは、食べ物の値打をよく調べて、食品成分表ッてものを作っているが、そこにオレたちの値打がちゃんと出ている。
人間どもは、食べ物の値打を栄養価と呼んでいる。そして、オレたちの生命力を、熱量とか蛋白質とかミネラルとかビタミンといった栄養素にわけ、これらをさらに細かくわけて、オレたちにどれ位含まれているか数量を示している。
まだ十二分に知りつくしてはいないようだが、これ位でも知っている連中がいるのでマアマア安心もできる。あまり細かくオレたちの値打を宣伝すると、食ってばかりいる連中はメンドウぐさがるので、要点だけ簡単にいうと、こうなっている。よく心得て、これからオレたちを、あまり安ッぽくみないようにしてほしい。
(つづく)
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3. ダイコンの根と葉の成分
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――各生100g当り――
| 熱量 | 蛋白質 | カルシウム | A | B1 | B2 | C |
| Cal | g | mg | IU | mg | mg | mg |
根 | 16 | 1.1 | 28 | 0 | 0.03 | 0.02 | 20 |
葉 | 40 | 5.2 | 190 | 9000 | 0.10 | 0.30 | 90 |
秋大根中丸1本約1,200g、内 |
根部 900g |
葉部 300g |
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4. 長寿と食習慣について(1)
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東北大学教授 K.S.
大豊作と米食
昭和35年度の米作は空前の大豊作だったと言われています。
沢山の外貨を使ってお米を輸入している我が国の現状から考えて、甚だよろこばしいことではありますが。又一面心して食べなければならないのも米食ではあります。
昨夏私が上京した際、ブリヂストン美術舘で頂きましたパンフレット、東北大学近藤正二教授(現在は退官され名誉教授)「長寿と食習慣について」の中から皆様の御参考に供したいと思って、その一部を転載させて頂きました。(貝原記)
◎
(1)長寿村では食生活に必ず魚か大豆かが豊富である。大体から見て大豆の特産地は、長生き村であります。此れは動かすべからざる事実で、前述の隠岐島は魚と大豆と両方とも多い。
(2)長寿村では目立って野菜が豊富に食べられている。例えば富士山の北、海抜1,000米の所、富士五湖の真中の西湖(サイコ)の近くに鳴沢村があります。此処は昔から壮丁検査に秀れていて、即ち甲種合格が揃っていましたので戦時中有名になりました。
処が此の村が玉蜀黍を主食にしている変った所であります。
そこで玉蜀黍が主食だから健康であると世間では評判されました。
長寿率を調べると長生きが多いのであります。
即ち健康でそして長生きの村である事が判りました。食生活を調べて見ますと、此所は魚もない(あっても煮干位で、客があれば出す程度)、しかし甲州きっての大豆の名産地で良質しかも多いので、自然味噌を多く食べる。
そして味噌汁の中に野菜をたくさん入れている。
普通吾々の家庭では、味噌汁は煮てしまうと中味は水面より低くなるが、此の村の味噌汁は煮ても野菜が水面の上に頭を出している。
しかも一回に6杯も食べるのが伝統です。
大人の味噌の食べ方は1日に50匁で恐らく日本一でしょう。
此れが先祖代々の八升鍋という鉄鍋で煮る。即ち大豆と同時に野菜を沢山食べている。
更に野菜の種類に就て見ますと、長寿村に共通しているのは次の3つが豊富に食べられているという点であります。
之等が長寿村に目立っている代表的な野菜である。
トマト、ホウレン草になると事実としては殆ど見当らない。
尚一例に過ぎないが、岩手県で稗を主食にしている村で有名な有芸村(ウゲムラ)がある。
釜石の近くの山の中で、大して高くないが交通が不便で、世間の人はよくよくの用事がないと行かない。
曽て小泉軍医中将が稗食の研究に行かれた事がある。
此の村が稗を食べ、しかも壮丁の体格が良いので評判が高かった。
長寿率を見ると岩手県で一流の長寿である。
此の村では大根の葉を他の生野菜と同じように食べている。
栄養学上良い筈である。大根葉は貯蔵野菜として食べる地方はあるが生野菜と同じ様に食べるのは未だ見た事がない。
此の村は又豆腐を豊富に食べるのが実に目立っている、固い豆腐で(繩で縛れる)、昔からの云い伝えで「山の魚」だと云っている。
自分の家で作るので、嫁入する時には作り方の練習をしてゆく程である、野菜の中でも之等のものが長寿村で共通に食べられている事実は忘れてならない。
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5. 蓄膿症と青汁
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久米郡 M.A.
その一
私儀も先生の御著書によって非常に健康を回復誠に幸福な生活をさせて頂いて居ります。
回顧致しますに私の固疾蓄膿は35年も40年も以前よりも悪かったのでしたが(今年数え年54才でありますが、14、5才の時には既に罹って苦しんで居りました。)数年前先生の青汁と生食や青野菜食の事を承りまして以来、不思議に鼻の調子がよく全く此の頃では健康鼻の人と違わない程に相成りました。今一息で全快と云う所です。
何分私は穀食の大食家ですから。此の様な病に罹ったのでありましょうし、又確実に全治の域にも容易に到達し得ないのだと思って居ります。今でも蓄膿を手術で治そうとする人があるのかと都会を遠隔した山間で只先生の青汁生活する私は時々若い人達が蓄膿の手術をしたとの話を耳にして驚く程で御座います。
本当に青汁生食療法のお蔭で鼻病も大変軽減、尚其他身体の調子が大変宜敷く幸福な毎日を送らせて頂いて居ります事を厚く厚く御礼申上げます。
その二
私の体験を一つ申し上げます。
私はもう4、5年にもなるでしょうか。青汁をやる一方、ソ連より帰還兵として親類のものが当地に帰って来て申しまするにソ連兵舎では幾ら病重くとも先方配給の生松葉の束(人間の親指位の大きさの)を食わねば軍医が診てくれないとききまして、山仕事の場合冬は山の生松葉を又夏には時々疲れを感ずる時、其処にある山柿の葉とマツバを共食い致しますが、直ちに疲労を回復気分が爽快になって参ります。
柿の葉丈けだとよい事は大変よろしいが便秘して困るので、松葉を共食い致します。
そして一方では青汁はずっと続けて居りますが、40代の時より50年代の方が永年の鼻病始め(先日の書面に申し上げました蓄膿の事で御座いますが)身体の調子は却って宜しく暮させて頂いて居ります。
之全く先生の御著書を知る事の出来たのが初まりだと心から先生の療法に感謝致し居ります。茲に謹しんで厚く厚く御礼申し上げます。
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6. 医者が不思議がる
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遠野市 E.O.
4月初め、当地中学2年生菊地貞一君。病院にて診察うけたら、3人の医者に肝臓が悪いから入院せよといわれた。
保健所に行くと、生野菜をたべよといわれ、前に全快した及川勝郎氏宅に行き、生野菜の方法を聞いて私宅より、4月14日から毎夕50匁づつ配達したら、1週間くらいで大分よくなり、医者にみてもらったら、不思議によくなった、という。
22日に行ったら、5日毎に来いといわれ、26日から元気になって学校に行ってる。入院せずに治ったと、本人は勿論、家族の方々もよろこんで居るが、医者は不思議だといって居ります。
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7. 苦笑を禁じ得ぬ
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津山市 H.T.
所(しょ)の一隅に栽培しているケールは、雪にも霜にも負けず青々としています。
目下係職員に飲用をすすめていますが、皆われ先にと飲み大繁昌です。
当係職員の中に血圧の高い人が相当いるので奨励した次第です。
高血圧の人の効果はまだ現れていませんが、夏期のケダルサには相当の効果を自覚したようです。特に効果を現したのは深酒に対する効果で、目下その時期でもあるところから、その愛用はますます盛で、私としても苦笑を禁じ得ません。
勿論私もそのうちの一人であることは申すに及びません。まことに申訳の無い次第であります。年頭の挨拶をするにあたりここに改めてお礼を申上ます。
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8. 豆板(ひっぱり)
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玉島市 S.T.
材 料 |
豆一升 |
糯米 3合 |
塩 少々 |
青菜(ミンチ掛してどん鉢1杯位) |
青汁を入れてもよい |
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作り方 |
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- 豆を水洗いする。
- 蒸し器に豆を入れ、其の上に米を入れて一緒に蒸す。
大体蒸せた頃に、ケール(青葉)のミンチに掛けたものを、米の上へむらなくかけ、後3分位蒸す。
- よく蒸せたらこれを餅搗で塩少々を入れて搗く。
- 搗け上ったものを器に入れ4、5糎厚さにのばしておき、適当な堅さになった時うすく切る。
- 後よく乾燥して置く。
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9. 子供の食べすぎ
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10. 皮膚のしみ
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11. 草の青汁
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12. 味噌や醤油はからいもの
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13. 質問箱 出来るだけ早くとは?
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金光町 I.T.
問
遠藤青汁協同組合のビンには、「出来るだけ早くお飲み下さい」とありますが、「出来るだけ早く」とは大体、何時間以内かを具体的に示して下さい。
答
時間がたつとこわれて行くものもあります(たとえばビタミンCや葉酸。おそらくまだほかにもあるにちがいありません−たとえば、いきた力というものはそれでしょうと思いますが)が、変らぬものも沢山あります。
ですから時間が経っても全然ダメになってしまうというものではありません。
しかし味や臭が悪くなり、しだいに飲みづらくなります(冷蔵すればかなりもちますが)。それでなるべく早くとしていますので、何時間以内などとは申上げられません。
それは乾燥物や漬物でも有効なことでもわかると思います。
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コラム紹介
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