<1959年5月15日発行 第33号>
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目次
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1. 通じをつけるこつ
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医学博士 遠藤 仁郎
便秘の多くは運動の不足や食物の不適当なためもありますが、今一つには、行きたいのを我慢したり、催さねば行かぬ、といった悪い習慣の結果でもあります。
ですから、つとめて運動すること(全身および殊に腹部の運動)、繊維にとんだ完全食特に生菜食(緑葉食・青汁)とし、糖分をさけるのはもとよりですが、頑固な便秘では、とてもそれだけでもだめで、どうしても、習慣には習慣、便意のあるなしに拘らず、必ず毎日、そして出来るだけ充分に出す「くせ」をつけることが肝腎です。
まず便所にゆく時をきめること。条件反射といった意味もあるので、起床後とか朝夕の食後ときめ、必ずゆく習慣をつける。
そしてこの際注意せねばならぬのは、ゆっくり落ついて出せる時間にすること。それはいらいらしたり、何か邪魔がはいったりしては、折角出かかったものでも引っ込んでしまうからです。まさにサレルノ衛生養生訓にある通り、「脱糞の際はたとえ大王様が傍をお通りになってもやめてはならぬ」のです。
その上腸の運動が鈍っているので(弛緩性便秘)、出始めるまでにも相当の時間がかかるし、とても一気に気持よく出る、などということは望めないので、ゆっくり時間をかけぬと、まるで出なかったり、充分出きらぬため、いよいよ便所へ行くのが憶怯になります。そこで、卅分でも一時間でも落つける時に行くことが絶対に必要です。
孔子は三上の思量の処として、馬上、枕上、廁上といっていますが、机でもおいて何か仕事の準備をしておくのも妙案といえましょう。
さて、いよいよ脱糞となっても、むやみに力まぬことです。
じっとしゃがんでいるだけでも無論駄目です。しかし矢鱈に気張ってみても、精々痔を悪くするだけのことで、仲々おいそれとは出てくれません。そこで、平素の運動不足を補うつもりで、腹をもんだり、腹の皮を動かしなどして、便の移動して来るのを根気よく待ちます。
腹をもむにも色々のことがいわれていますが、別にむつかしいことはいりません。便のたまっているのは主に左の下腹からです(さわってみると軟い索をふれるものです)、その辺をくりくりやればよろしい。腹の皮の運動は、ただペコペコ早く走らしたり、ゆっくりと腹の皮を脊骨におしつけるように力を入れて凹ましたりします。
これでも腹圧を加えることは普通の力み方と同じですが、肛門への影響が少くて、便秘につきものの痔疾や脱肛をおこしたり悪くする心配がありません。
こうして気ながにねばっていると、やがてブーと一発鳴り、おもむろに一切りの便が出る。なおも続けていると、またブーと来て一寸出る。また一切り、また一切りと、しぶしぶながら何回か出て、ついにいかにもすがすがしい心地になる――そこまで出すのです。
とはいっても、はじめのうちは仲々思うようには出ず、時には無駄に終ることもあります。
けれども、ともかく毎日行き、出来るだけ出す、1回で出切らねば、2回でも3回でも行く、
という風に、辛抱づよく続けていると、やがて毎日出るようになり、また次第に早く出終るようにもなります。
貝原益軒先生の養生訓には、「常に秘結する人は、毎日廁にのぼり、努力せずして、成るべきほどに少しづつ通利すべし。かくの如くすれば久しく秘結せず」といかにも要領よくおしえられています。
なお、も一つ平常の注意として、便をこらえることだけでなく、放屁も我慢せぬこと。これも便秘のもとになります。サレルノ衛生養生書に曰く「公式正装にて扈従をつれた場合であっても、また如何なる理由があっても、放屁をおさえてはいけない」。
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2. 食費にムダは?(中)
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前号参照
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友成 左近
まず第一に、主食といわれているものについて考えてみましょう。
主食費が食費の中で占めている割合は、全都市平均で約35%です。
家計が貧しく、従って、支出の中で食費の占める割合が多くなると、主食費の割合は、それだけ高くなるようです。
ところが、この主食は、多くの家庭では白米が中心です。日本人にとって、白米飯は確かにおいしいものです。けれども、白米飯の偏重が、どれだけ栄養と健康を損っているか、新聞、雑誌その他で度々力説されている通りです。
厚生省の報告でも、白米飯の偏重が主要原因となって、国民の4分の1が慢性脚気にかかっているといっています。
本紙第23号で、田辺さんが「おべんとう、黒い御飯ははずかしい、命ちぢめの白米飯、ビタミン飲むよと、大威張り」と寸言刺している通り、なんとも理解し難いことです。
貧しい家計で、なおかつ、そうだとすれば、いよいよもって、おかしなこと、ムダなことではないでしょうか。
とはいえ、すでに白米飯に食べなれている以上、玄米飯は、どうにも口にあわず、消化もしにくいわけです。また、消化し易いように炊くのも、ずい分やっかいなようです。
それで、せめて七分づきか、半づきにするか、胚芽米にしたいものです。
そして、麦、芋、豆、その他の雑穀も併用したいものです。
それが、どうしても、いやなら、少々お金もかかることですが、強化米をウンと入れることです。
配給米には、この頃、強化米がはいっていますが、とうてい十分とはいえません。
第二に、副食といわれているものについて考えてみましょう。
副食を主副のおそえと考え、調理が面倒くさい時や、お金が足りない時には、よしてもよい、簡単にしてもよい、と考えたら大間違いです。
主食偏重では、せっかく摂った栄養素が、体内で十分利用されないばかりか、未利用のものが栄養の妨げとなります。食事には、主もなければ副もないのです。あれやこれやを取り揃えて、初めて栄養と健康に十分役立つのです。
あれやこれやといっても、野菜がぜひ必要です。
目分量で、その他食べ物の2倍位、どんなに少なくても同じ位は必要です。
そして、この野菜には、青野菜を、しかも、できるだけ生のままで、沢山含めることが大切です。でないと、米麦だけでなく、肉や魚や豆腐の栄養素が、体内で十分利用されず、それだけムダとなり、また有害ともなります。
といって、生の青野菜は、せんいが固いので、あまり沢山食べると胃腸がかないません。
その栄養素も十分消化吸入されません。けれども、汁だけしぼりとって青汁にすれば、その中に含まれている栄養素は極めて高度に利用され、また胃腸の負担も少く、消化吸収もよいわけです。
わが国でも、短命村で有名な、秋田県のある村では、平素の食事は、白米飯に漬物といった具合です。
これに引きかえ、長寿村で有名な、島根県のある島では、米が乏しいので、平素は主として、麦、芋、豆、あわ、きび、ひえといったものを主食とし、副食としては、肉や魚はあまり食べないが、煮干をマルごと食べ、みそ汁に野菜や海草を入れて、これを沢山のんでいるのです。
そして、70才、80才以上に長生きする者が非常に多く、しかも、若者におとらず元気に働いているのです。こうした食べ方は、すなおに手本としたいものです。
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次号参照
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3. 保健と体操(3)
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前号参照
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貝原 邦夫
- 背すじを伸ばす
肘がまがらないよう、指先をのばして腕を前から上に挙げて横から下す
- 肩たたき
頭を右に廻し、左肩をこぶしで数回叩く、次に頭を左に廻して右肩を叩く
- 腕を廻す
A. | |
振りをつかって腕を大きく前から上に挙げて後に廻す。反対に後から前に廻す
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B. | |
腕が鼻先とおへそをするよう、体の前で内と外に廻す(腕を挙げる時に力を入れ後は振りで)
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C. | |
腕を前から肩の高さまで挙げ、横に強く開いて反動で前までかえして前から下す(A・B・Cのいずれか一つ)
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次号参照
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4. (随想)生きていた鼓動(11)
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前号参照
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K.I.
こづかれても手出しはしない
度胸の太さで 受けている
ダルマさんの心になりたいものだ
またこづかれて 右へぐらぐら
またこづかれて 左へぐらぐら
ダルマさんは 倒れたかに思えたが
ニッコと笑って また起きたよ
私はダルマさんが好きです。じっと見ていると教えられます。
失望的境地に直面するとき、みょうに気のふさぐときには、空を仰ぎます。
晴れ渡った空は良いものです。午前中、いや朝が明けて左程に時間の経過してない雲の眺めは良いものです。
それが前景に緑樹のこんもり茂った山や、満水の池だったりすると、何とも言えません。
又、それが視野の下、眼差に写生画のようなプラタナスの並木路だったり、ビルデングの谷間を縫うているアスファルト路だったりすると、気持が清々するのとかわりありますまい。
気分のくしゃくしゃする時などには、早く気分の転換をするに越した良策はないようです。
私はそんなとき、さも私へほほえみかけてでも居るみたいに、花辨をひらいている花の顔の中に、鼻先をうづめて、甘い香を嗅ぎます。花の心が私の心を明るく誘ってくれます。
池のほとりにつくばんで、水面を滑べってゆくさざ波を眺めて、幼年の頃を追憶します。
池の小波はいつの間にか瀬戸内海の海の汐波に変っているのです。
思い出の浜の波は、私の心を慰めてくれます。
或ときは幾曲りかの山道を、とぼとぼと歩き、自分の好きな歌を口笛に乗してみます。
歌もまた心の慰めになります。
大自然の中に、しばらくの間を安息を見い出した時ほど、何とも言えない歓びに包まれることはないようです。
山川草木――自然こそ心のゆりかごです。ほろにがい青葉の液にはオッパイの臭がするようです。
幼い頃の母親の乳房を思い出し、牛乳を連想し、山羊の乳を連想し、青汁を思います。
青い野菜葉の汁や、生に近い状態の野菜葉を食べて居ます。
ホウレン草葉や、大根葉など、アクの強いものや、シゲキの有る葉は口にしませんけれど、青い野菜葉を常食に用いて来ています。
食事は過食をさけ、海草類はつとめて毎日口にするようにしていますし、大豆のサヤから出して日のたたないものが手にはいります季節には、一昼夜水かしにしたのを、少しやわらか目に煮て食べますし、大豆を口にしないときは、油揚や豆腐を食べるようにして居ます。
大根や人参は薄く皮をむいでから、清水で洗いうすく切った物を、少量の醤油を付けて食べます。
酢を付けて食べると、さっぱりして良いご飯のうけになります。
油物を食べる時などは、出来るだけ植物油を重点に置いています。
偏食は特に意を注いでいます。肉類だけでご飯はいただきません。
野菜と一緒にいただくように勤めます。肉類も口には運ますが、牛肉よりも魚類の肉を食べる様にしていますし、肉類の倍の青野菜を食べるようにしています。
主食は配給米――内地米6割に麦を4割の割合で炊いて食膳にのしていますが、調子がとても良く、いまでは麦がはいって無いとご飯らしく思えぬ迄になりました。麦は漂白しないままの麦を買ってる次第です。
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次号参照
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5. 保育園で青汁給食
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兵庫県香住町 K.T.
かえりみまするに、昭和32年4月、当時東京の大正大学に学んでいた長男が、多発性関節炎に冒されて帰省し、町立の病院に入院いたしましたが、主治医が種々の手当も施されましたがますます悪化するのみで、一時は身体の22ヶ所が激痛しました。
時たまたま先生の御提唱に関する青汁療法が卓効あるを知り、早速貴会に加入し、毎日熱心に青汁の飲用につとめました。
長男は10ヶ月間病院で加療し、とうとう学校を休学いたしましたが、おかげで全快し、1年おくれて大学を卒え、ひきつづき大学院の修士課程に学んでいます。
負うた子に教えられるの喩の通り、長男の病気に刺戟されて、私も理論的研究と青汁の実践とに努めるうち、ようやくその効の著しいのを認め、昭和32年10月より、私の主宰する保育園において、園児を対象として緑汁給食を実施し今日に至りました。
過般保育所連盟の年次研究会に発表いたしましたところ、大きな反響をよびましたものの、これを信じて実践にうつそうとする者なく悲観いたしました。併しこれに屈せず、ますます研究と実践につとめ、県下の保育所に普及させたいと決意した次第でございます。
(34・3・5通信より)
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6. 食物と歯
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色々の新らしい材料が入って来ると共に、多くの昔からの食物が全然我々の食卓の外に消えてしまった。
そうして其痕跡は必ずしも書物を探さずとも、正月の喰積(くひつみ)や婚礼の島台の上に、まだ幽かに残って居る。
之を見渡して第一に感ずることは、昔に比べると甘味の増加したこと、次には柔かいものの多くなったことである。
昆布は今でも関西地方の嗜好品として行はれて居るが、生の榧搗粟を食ふ人はもうなくなった。
慰鮑(のしあはび)の如きは、子供はもう食ふ物なりや否やさへ知らぬ。多くの人は見たことも無いであろう(中略)
それ程までも堅い物を食ふことを控へながら、不思議なのは歯の悪い人の年々増えて行くことである。
(柳田国男、木綿以前の事昔風と当世風より)
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7. 栄養学生のねがい
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東京都 N.A.
私は東京都の栄養学校に2年生として在学しておる者でございます。
本日「栄養療法」中の「緑葉青汁療法」を読ませていただき、筆をとらせていただいたものでございます。
昨年入学当時、故郷の知人より先生のお書きになった書物をいただいて、拝読後、自分も卒業後に、これを取り入れてやって見たらと考えました。野草には知識がないのでわかりませんが、ともかくすばらしいことだと考え、デモンストレーションの時“ビタミンC”という題で話をしたのですが、話の仕方や著想はほめられましたが、肝腎の野草についてはあまり先生や友達の心にとまらなかった様です。
後に先生にお話したり、先輩の栄養士さんに話をしたのですが、あまり取りあげられないのでがっかりしてしまいました。
しかし年はまたたく間に過ぎてまた新学期を迎え、5月になってしまい、なんとなく古い様な考え方とさえ思われていた青汁療法がこの5月のさわやかな風に新しくのったことは、とても嬉しく思いました。
人を健康にさせたいという願いでこの職業をえらんだ私は、栄養士になったら少しづつ実行して行きたいと考えています。
野山に育つ野草や青葉がこの5月なればこそ一層その恵みの豊かさを心新たに感ずることが出来たのではないかと感謝いたしております。
(33、5、31)
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8. タバコの害
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タバコの功罪をめぐって昔から議論がたえないが、最近特に紙巻タバコと肺癌の問題は世人に大きなショックを与え、異常な関心を集めている。
ところが、タバコは単に癌だけでなく、循環器障害、肺疾患、消化性潰瘍等死因となる重要な疾患の発生率を増加せしめ喫煙人の死亡率が、非喫煙者よりも著しく多いという恐るべき報告が、Hammond等によって、アメリカ医師会に報告されている。
これは、多数の医師と患者、一般人の理解ある協力によって44ヵ月もの長い歳月にわたってなされたものでデータの対象となった数は、年令50才から69歳までの187,783名に達している。
この報告を通じて最も印象づけられることは、肺癌の発生率が10倍以上ということと、最も悪い影響をうけるのは循環器疾患であるということ、そして同じタバコといってもパイプタバコや葉巻は大した影響をもたず、紙巻タバコが最も悪いということなどである。
- )タバコと極めて密接な関係を示すものは、肺癌、喉頭癌、食道癌及び胃潰瘍、
- )高度の関係を示すものは肺炎、インフルエンザ、十二指腸潰瘍、大動脈瘤、膀胱癌、
- )次に高度の関係を有するものは、冠状動脈疾患、肝硬変及びある種の癌、
- )中等度の関係を有するものは脳循環障害、
- )慢性リウマチ熱、高血圧性心疾患、その他の高血圧症、ネフローゼ、糖尿病、白血病、直腸癌、脳腫瘍等は殆どタバコとは無関係。
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9. 柿の葉汁の神効
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福岡県 N.T.
ケールはやっと5寸ばかりになりました。
私の患者は柿の葉汁をたくさん飲んでいます。
主に高血圧で眼底出血を起した人々ですが、先日百日咳で眼瞼や球結膜下に出血した女児にすすめました所、咳がずっと少くなったと喜んでいました。
それからもう一つの柿の葉で面白かったのは、友人が喀血しました。「ビタミンKやアドナを繰返すが痰の血が減らぬ。何かいいことはないか」、と相談されたので、「薬ならマネトールをやってご覧。その前に柿の葉をミキサーにかけ、ガーゼでしぼって飲んでごらん」とすすめました。
柿の葉汁をのんで2時間ばかりしたら、それだけですっかり血が止まったそうです。柿の葉汁の神効かどうか。どうも眉唾だとお笑い下さい。
(33・5・20通信)
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10. 歯ぐきの出血
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玉島市 H.Y.
32年6月頃より約1年間、玉島支所(田辺氏)の御好意に依り青汁をいただいていますが、おかげにて有形無形にて青汁の効果があることを認識しましたので一例として申上げます。
歯ぐきから血がよく出ていましたのが、現在では肩がこったりしても肩こり自身もすぐケロリ、勿論歯ぐきから血が出るなどというような事は殆んど有りません。理屈ぬきで飲むんですネ・・・、確かに良ろしいよ。
私の知人も歯ぐきの点は青汁に限ると云っていましたし、歯医者の先生も出血を少くするのは青汁が効いたのだろうと申されていますので、何かがプラスしているのは間違ありません。
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11. 水を割った青汁(?)
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12. 民謡 蔵どころ節
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山の(鶴形)のお寺のヨイショヨイショ
鐘が響いて朝が来る
けうも人出のソレソレ蔵どころ
さあおいでんさいおいでんさい
出船入船ヨイショヨイショ
昔話の街の川(倉敷川)
いまは文化のソレソレ花ざかり
みにおいでんさいおいでんさい
西へ南へヨイショヨイショ
伸びて黄金の蔵が建つ
住めば倉敷ソレソレ良いところ
まあおいでんさいおいでんさい
1958・12・14 作
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13. 質問箱 自家製菜種油は
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京都府 B.M.
問
私の病気(動脉硬化)に対し油は厳禁して居りますが、「質の良いものを少しづつそのまま入れて」とありますが、生の油であって、煮ては悪いといわれるのでありますか。また「質の良い」とありますが自家製菜種油は質の悪いのですか良いのですか。
答
動脉硬化に油がすぎることはよくないといわれています。しかしそれは動物性のもの(バタや牛豚の脂など)で、植物油ではありません。自家製の菜種油など大変質のよいものですから普通の分量でしたらご心配なくお使い下さい。生が一番よろしいが、煮てもかまいません。
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コラム紹介
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