<1960年10月15日発行 第50号>
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目次
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1.雪国の冬
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医学博士 遠藤 仁郎
北海道、東北、北陸方面にでかけて感じたことは、殆んど半年の間青物に欠乏する土地がらから当然のことでもありましょうが、私どもの緑葉食・青汁運動によせられる関心の非常に大きいことでした。
そして、どこでも受けた質問は、冬の間をどうすればよいか、ということでした。
私どもはケールを青汁材料として推賞していますが、それは、成分のよいこと、味も比較的よいことと、収量が大きく年中とれるからです。
私どもの地方(倉敷)は殆んど雪がないので、寒中でも青々としたケールに恵まれています。
またトウがたち花が咲き出すと、葉は小さくなり、ついには無くなってしまうのですが、10月中下旬にまいた苗は僅かの小さい葉で越冬し、春めくとともに成長、4・5月頃には採取可能になるので、播種時期をうまく按配すると、年中材料に困りません。
しかし雪の多い地方ではどうでしょうか。
それについて私は次のような提案をして、試していただくようお願いしておきました。
1、ケール
A 私どもの方でも冬の間の材料は11月頃までに準備しておくのですが、これらの地方でも、雪の来るまでに、出来るだけ大きくしておき、そのまま雪に埋めておくこと。
B 雪の来る前に移植できるように苗をつくり、定植して雪をかぶせておくこと。
雪の下の温度は比較的高いそうですから、Aの場合、緑葉のままでながく保存でき、冬の材料に役立つのではないでしょうか。もっとも、雪の重さで折れるおそれがありますから、丈は低いほうが適当でしょう。
Bの場合は、雪の下で十分根を張り、春の雪どけとともにグングン伸び(ちょうどクキタチのように)比較的早く材料の供給ができるのではないでしょうか。
しかし、この二つとも、まだ試験の段階で、果してうまくゆくかどうかわかりませんし、今すぐの間には合いません。
そこで次の方策としておすすめしたいのは、
2、緑葉の漬物と乾燥粉末の利用
A 現にこれらの地方の冬の間の野菜といえば漬物で、ハクサイや、キャベツがそれにあてられているそうですが、ぜひ、私は、それを緑の菜っ葉類にあらためてほしいと思います。ダイコン葉、カブ葉、コマツナ、ミズナ、ナタネナはもとより、シソ、ニンジン葉も漬けておきたいものです。(ニンジン、カボチャも結構です)
漬物の欠点は消化のよくないことと、塩分が強いと十分の量が食べられぬことですが、これは、よく咀むこと、うす塩にすることで避けることができます。
飛騨地方で行われている「お葉漬け」というのは、これも冬の野菜として貯えられるのですが、たしか塩なしに漬けると聞いていますが(記憶ちがいかも知れませんが)、これなど参考になりましょう。
B 乾燥粉末には大根葉が一番具合がよいようです。(その他の野菜、あるいは野草や木の葉でももちろんやれますが)。熱湯にちょっと浸け、(30秒―1分間)た後、かげ乾します。大根とりの頃は空気が乾燥していますから、とくにこの製造に適しています(但しこれは私どもの地方でのことですが)。よく乾いたら軸をしごいて除き、緑の部分だけを手でもみ、さらにスリバチか石臼ですると、抹茶のような粉になります。
そのまま貯蔵してもよし、ちょっと焙じて食用油をしみ込ませておくと、風味をながく保つことができます。工夫しだいで利用法はいくらでもあり、消化もよろしい。
但しこの際とくに注意せねばならぬのは農薬の汚染です。熱湯処理しますから虫卵の心配はありませんが、農薬はたとえ滲透性のない、葉の表面についているだけのものでも、それを一々ていねいに洗うことはむつかしいので、害をうけるおそれなしといたしませんから、必ずその心配のない材料であこと。
また漬物のばあいは、それとともに下肥のかかっていない清浄なものであることが大切です。
漬物にしても乾燥粉末にして、生葉や青汁には及ばぬまでも、白い野菜や果物には比べものにならぬ大きな栄養価があります。
こうして、ともかく青菜類を出来るだけ充分に利用することが、そしてまた、生食出来る材料の供給をはかることが、これらの地方の冬に対処する一番有効な方策ではなかろうかと私は考えます。
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2.ケールの挿芽
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3.くろい米と青野菜(6) ―青野菜のとぎれる頃には―
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友成 左近
第5に、青野菜に限らずすべての食物は、よくかんで食べることです。でないと意外に消化がよくないだけでなく、胃腸をいためます。また御飯を食べすぎるようになります。いったい、からだ具合とくに腹具合の悪い人は、だいたい荒がのみ大めしくらいです。でなければ野菜とくに青野菜が大嫌いか、お菓子が大好きかです。
ところで、それにしてもいろいろ問題があります。青野菜の少ない冬期、とくに青野菜が手に入りにくい北国の冬期や、たえず旅行をしたり、都市で下宿生活をして青野菜がとれにくい場合など、どうしたらよいか、ということです。仕方がないではすまされません。
こんな場合には、昔から北国の人々が実際やっているように、青野菜を乾燥して貯えておいて利用する工夫があります。この青野菜は、どんなものでもよいわけですが、晩秋になって多量にとれる大根葉が最も適切です。栄養価も高く、よく乾燥して、処理が手軽だからです。
まず、よく洗って、にたっているお湯に、ごく短時間(30秒か1分間位)したして、グニャッとさせ、緑色があせない程度にします。お湯にしたすのは、ビタミンAをこわす酵素を無効にするためです。短時間したすのは、熱に弱いビタミンが無効になるのを、できるだけ防ぐためであり、また各種の栄養素がお湯にとけ出るのを、できるだけ防ぐためです。
つぎに、水分をよくきって、風通しのよい日かげで乾燥させます。日当りですと、日光のため著しく無効となるビタミンがあるからです。年末頃ともなり、寒い風が吹くようになれば、10日か2週間もすれば、葉が緑色のままカラカラに乾燥します。
そこで、この葉をジクからしごきとります。ジクについたままにしておくと、ジクはなかなか乾燥しないので乾燥した葉に湿気がもどります。しごきとった乾燥葉は、手でもむだけで、粉々になりますが、もし湿気がもどっておれば、もう少し日かげで乾燥するか、ホウロクで乾燥します。そして、手でもんだり、あるいはさらに、スリバチかヤゲンかミンチで粉末にして、湿気がこないように保管するわけです。なお、このとき、食用油を少しまぜておくと、風味もよく、消化吸収のよいものとなります。
こうして作った大根乾葉は、生の場合より、やはり栄養価が多少劣っていますが、白色野菜や果物などより、はるかにすぐれています。からだ具合が悪いが、青汁の飲めない事情のある人に、これを毎日大サジ1杯か2杯位食べてもらうと、青汁を飲んだ場合に劣らぬ効果があらわれます。大サジ1杯約7gは、大根葉半株分約150gに相当しているのです。
なお、この大根乾葉の粉末は、これだけでも、けっこうおいしく食べられますが、イリコ、ゴマ、海草などをすりつぶして適量まぜあわせると、栄養価も申し分なく、また非常においしいフリカケになります。けれども、乾燥してあるため、ビタミンCその他の効力が低下しているので、ダイコン、ミカンその他の野菜果物を、生のまま食べて、これを補なうようにすることが大切です。
また、平素、青野菜、青汁が十分とれる場合でも、こうしたフリカケを食卓に常備すると、それだけ、より高度に調和した食事ができるわけです。が、いずれの場合でも、あまり塩からくないように、ごく薄味にしておくことが大切です。
それから、大根葉などを軽く乾燥して、塩づけにしておくことも、広く行われています。これも一つの工夫ですが、これを食べる場合、ちょっと注意が大切です。
まず第1に、これは少々しわいので、歯の丈夫な人でも、格別よくかんで食べることが大切です。お茶づけザブザブは禁モツです。なにほども消化しないだけでなく、とかく沢山食べすぎて、胃腸をいためるばかりです。
第2に、これは少々塩気がきついので、少しずつ、よくかんで、口であまり塩からく感じない位にして呑みこむことが大切です。でないと、きつい塩気のため意外に胃をいためます。
第3に、これは少々塩からく、またかなりおいしいので、こけだけで、けっこう食がすすむわけです。このため、他の副食が少なくなり、それだけ御飯を食べすぎるようになります。こうしたことが度重なっていると、意外に、栄養不良と胃腸病の重大原因の一つとなるわけです。
いささかダラダラと書き続けてきましたから、この辺りで切りあげ、要点をかきそえておくことにしましょう。
健康であることは、誰しも心から願うところであり、病気はいやなことです。ところで、病気の予防や治療に当って、基本的に大切なことは、からだをシンから丈夫にすることです。そして、これには、いろいろなことが必要であり、また互いに関連しているわけですが、わけても食事を、栄養上よく調和した完全なものにすることが大切です。
ところが、私たちの食事には、この点かなり間違っているところが、いろいろあるわけです。けれども、家計の上からも、炊事の都合からも、また個人個人の好みという点からも、さらに国民経済からも、一度にどれもこれも、というわけには参りません。
そこで「アホウのひとつおぼえ」のようではあっても、まずもって、これだけは、ぜひ改め、その他は、いずれそのうちに、といったことで、最も効果があり、また決して間違いを起こさないような工夫、しかも費用も別にそうかからない工夫はないか、と考えてみたわけです。
ところで、それは、ごはんには、できるだけくろい米、どんなに白くしても7分づきまでのものを使い、おかずには、青野菜を、できるだけ沢山、少なくとも1人1日200あるいは400g以上を、できるだけ新鮮なうちに、つとめて生のまま使い、そして、こうしたものを、よくかんで食べる、ということです。
そして、青野菜を、できるだけ沢山に、その上生のまま食べ、しかも胃腸の負担が少なく、最もよく消化吸収するようにするには、これを青汁にして飲むことです。(34、11、16)
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4.青汁禮讃(2)その2
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5.七十八番札所
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倉敷 G.S.
四国七十八番札所郷照寺は、塩田の街香川県宇多津町の丘の上にある。寺歴は古く行基菩薩の開創であり、今は藤沢市の清浄光寺を総本山とし、鎌倉時代の遊行の聖者一遍上人を開祖とする、四国札所では唯一の時宗の寺である。
青汁の会尊滝院支部のKさん、Fさんの2人と同行。3人がはじめてお詣りしたのは33年の4月初旬の夕暮時。八里余の道を歩き疲れた足を引摺って、漏れたような切石敷の参道を登って本堂を拝し、納経を済ませるとぐったりとのびてしまった。
住職佐藤寿善師に一夜の通夜をお願いしたところ、快くお引受下さって、先ず客殿へ招ぜられた。荷物を下し、青畳の上に3人共寝そべって疲れを休めていたところ、奥さんが夕食の膳を運んで下さった。
私は持参した青汁月報を2部差上げたところ喜ばれた。食後暫くして、佐藤師がにこにこしながら部屋に入って来られ、青汁月報を頂いて有難う。私も血圧が高く困っています。医療も続けていますが、良い方に向いません。青汁がそんなに宜しいか、と尋ねられたので、同行のKさんが、奥さんの血圧が高く、青汁を2年以上続けて飲ませて良くなったこと、Fさんも脂肪肝に悩み、一年半位飲み続けて治ったことなど、その神秘な効力に驚いたと交々話された。
聴いていた師は、判りました。私も飲みますが、材料はと質問された。
私は、広い境内に沢山自生しているオオバコ、タビラコ、ヨメナ、タンポポ、牛ハコベ、を用い、冬期は寺の檀家の農家から、農薬を用いないで栽培している甘藍の外葉を貰って用いることにすれば、材料にはこと欠かないでしょう、と申上げたところ、師は直ぐ奥さんを呼び、明日から作ってくれと頼まれた。
佐藤師は大変お話好きで、白衣の袖をまくり上げて、仏教の人生問題、「人生を理解しこれに対処すべき方法を如何にして知るかに就て」から、自然界の原理(大日)を究め、理想(阿弥陀)目的を定めること、即ちそれが人間の生活のためであり、幸福のためでもあると説かれ、更に、根本思想である般若と唯識に話が進んでつきない。ようやく話を打切って床に入ったのは11時であった。
翌早朝、早参りの信者のつく鐘の音に眼を覚された。この寺の鐘は江戸前期の作であると聞いている。毎朝師のつく鐘の音は、後の山にひびき街にひびきわたり、余韻は人々の耳を洗い心を洗うことであろう。
朝食のあと、裏の小座敷に招ぜられてお茶を頂く。座敷に座って眺めた庭は後の小山の自然林を背景に、庭の樹木一切手を加えず茂るにまかせてある。朝の日光を受けて眼のさめるような新緑が泉水に映る。さすが仏の棲む世界だけに街の中にあるとは思えないほど静寂て閑雅な美しさである。
それにここは野鳥の楽園で、声だけ聞いたのは白腹とウグイス。姿を見せたのはヒヨドリ、ヒタキ、アオジ、目白、小雀、で、枝から枝に飛び廻っている。野鳥の好きな徒歩の会の宇野善三さんを案内したいと今しみじみと思う。
あの時から、すでに2年余。奥さんの毎日の採草と青汁作りの苦労が報いられて、佐藤師の体はとても好調と知らされた。近く私も寺を訪れて師と再び語り合うことを心から楽しんでいる。(35、7)
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6.事業場に伸びる青汁 協和カーボン岡山工場の成績
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倉敷 G.S.
一、飲用を始めた動機
1.高熱作業者の高血圧対策に苦慮していた(2名死亡高血圧患者1名長欠熱射病)とき、たまたま1昨年10月、山陽技術振興会主備の講演会にて聴講
二、開始後の概要
1.搾汁開始 昭和34年6月1日 最初は高熱作業者を優先的に無料配付す
2.飲用人員の推移
開始当時 飲用者 53名
3ヶ月後 〃 95名
6ヶ月後 〃 135名
10ヶ月後 〃 167名
現在(13ヶ月) 〃 160名
A 内1合以上飲用者………………………………………18名
B 6ヶ月以上1合以上を飲用している者………………13名
C 社外の者で特に希望があり25本程度提供している。
三、効 果
発育期の幼児と異り数的に効果が現れないきらいがある
1.アンケートの集計(別表1)
2.高血圧問題(別表2)
3.炉出作業者にビタミンB1の無料支給をしていたが現在は希望者が殆んどない
4.胃酸過多に特に効果があったと思う
5.便通(45才を過ぎた婦人が日雇労働者に多い)
<別表1 6ヶ月以上飲用者65名>
5勺飲用者 1合飲用者 合計
体力・精力 大変体の調子が良くなった。…… 0 10 10
少し体の調子が良くなった。…… 17 3 20
全く変わらない…………………… 35 0 35
肩の凝り 全く肩の凝りが治った…………… 0 10 10
少し肩の凝りが治った…………… 10 3 13
全く変わらない…………………… 42 0 42
胃腸障害 大変胃腸の調子が良くなった…… 0 13 13
少し胃腸の調子が良くなった…… 17 0 17
全く変わらない…………………… 35 0 35
疲労・倦怠 全く疲れないようになった。…… 0 7 7
少し疲れないようになった。…… 13 6 19
全く変わらない…………………… 39 0 39
食欲 大変食欲がでてきた。…………… 4 0 4
少し食欲がでてきた。…………… 7 2 9
全く変わらない…………………… 41 3 44
少し食欲がなくなった。………… 0 8 8
<別表2 血圧調査票 26名中1年以上の飲用者(13名)>
概要:
飲用前 4ヶ月 12ヶ月
従業員数 233名 252名 287名
血圧150以上 26名 12名 4名
(以下、血圧150以上で引続き飲用した者 13名について詳査)
飲用前 4ヶ月 12ヶ月
高熱作業従事者 A 180〜100 170〜100 150〜90
B 166〜92 150〜90 130〜90
C 170〜80 140〜70 132〜80
D 188〜80 158〜80 138〜88
E 176〜90 150〜80 140〜84
F 180〜100 160〜90 148〜86
騒音作業 G 164〜92 156〜80 160〜90
H 164〜100 156〜90 155〜88
I 170〜100 155〜90 162〜92
肥満体質 J 174〜90 150〜80 140〜100
K 220〜130 164〜90 146〜110
L 170〜100 160〜80 146〜100
特殊 M 180〜100 180〜100 200〜100
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7.野草の青汁
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岡山市 G.H.
野草の最盛期にて、毎日青汁を満喫仕り居ります。初めは切れ痔がおきておりましたが、飲み続けるうちに体質が次第に変り、切れ痔の憂い少しもなくなりました。また初めスリ鉢もえらかったですが、此頃はそれも楽になりました。
此辺りにはクローバーとヒヅル草多く、この両種をまぜ、よく洗い、その日のうちにスリ鉢ですり、キナコを入れてのみますと味がやわらぎ大変美味です。
汁受けには手製のケーキか食パン一切れフレッシュつけてたべます。
此青汁の序に、小匙1杯を茶碗にとり、煮え立つ湯にて中等の煎茶を出し、それをまぜて飲みますと大変乙な味となります。寒い時には大変よろしい。皆さまお試み下さい。(34、1、15 78翁)
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8.質問箱 高血圧の青汁
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徳山市 Y,I,
私は高血圧ですが何の青汁がよろしいか。また愚妻は反対に低血圧ですがこれにはどんな青汁がよろしいか。
答
高血圧に特によいものといってはありません。
いろいろの病気は結局日常のあやまった食生活に出ていると考えらますが、青汁はそれを直す一方便です。質のよい青汁であればどの病気にもよいので、高低血圧でも同じことです。
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