遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 抵抗力

 現在、伝染病にたいする積極的の予防等は、ワクチンをつかうこと、あるいは特効薬をのむことに限られており、消極的の方法としては、せいぜい、感染の機会をさけることだけのようです。
 夏の脳炎には、ワクチンをせよ。直射日光をさけよ過労すな。よくねむれ。
 冬の流感には、ワクチンをせよ。流行地へ行くな。マスクをし、うがいを忘れな。ご馳走をうんと食って体力をつけておけ。といったぐあいです。


ワクチン  ある病気のワクチンを注射したり飲んだりすると、その病気には罹りにくくなり、たとえ罹っても軽くすむ。その病気にたいする特殊の抵抗力(免疫)が出来るからです。
 だから、すべての伝染病にたいするワクチンをしておけば、それらの心配はなくなるわけです。
 しかし、ワクチンの出来ているのは、まだごく僅かしかありません。
 細菌によるものでは、チフス、コレラ、ペスト、ジフテリー、結核。ビールス病では、痘瘡(天然痘)、日本脳炎、ポリオ、流感、ハシカなど。しかも、このワクチンももちろん、100%有効というわけではありません。
 ワクチンと病気とは、ちょうどカギとカギ孔の関係で、カギ孔(病気)に合えば錠前は開く(病気にきく)が、ほんの少しでも型がちがっていれば、全然役にたちません。
 たとえば、流感ビールスには、A型、B型だの、A1型、A2型、B1型、B2型だのいろいろあるので、その流行が、施行したワクチンとちょうど同じ型のビールスの場合ならば、うまく予防できます。
 しかし、もし施行したワクチンのビールスが、流行のビールスとちがっている場合、折角ワクチンをやっていても、効果がないか少い、というわけ。
 それに、たまにではあるが、障ること(副作用)がないでもありません。昨年もたしか流感のワクチンで何人かの犠牲が出ました。
特効薬  特効薬にしても、細菌にたいしては、非常に有力なものがいろいろ出来ました。
 しかし、まだ、すべての病原体にたいするものが出来たわけではないし、細菌のほうが強くなって薬に抵抗するようになったものもあれば、はじめからビクともせぬ、抵抗力をもった細菌もあります。
 また、ビールス病にたいしては、今のところ、多少きくものがある程度で、十分効果のある薬はまだ出来ていません。このように、現状では、ただワクチンや特効薬ばかりにたよっていればよいわけではないので、どうしても、自分で一般的の抵抗力をつけておく必要があります。
 また、たとえワクチンがあり、特効薬があるものでも、一般的の抵抗力が強ければ、それが弱いものや無いものに比べれば、ずっと有利なわけです。
 しかも、そうした一般的の抵抗力は、ごくふつうの注射とか、運動や皮膚の刺戟といった簡単なことで得られるのですから、なお有難いわけです。
 これらの刺戟のことを、(ワクチンのように特殊の刺戟にたいして)非特異刺戟といい、そうして得られる抵抗力を非特異抵抗力(免疫)といいます。
 もちろん、こうした一般抵抗力は、特殊ワクチンの場合のように、特殊の病原に対する抵抗力はそう強くはありません。
 けれども、どんな場合にも、なにがしかの抵抗力を発揮することが出来るわけですし、特殊刺戟をあたえた場合も、これにたいする抵抗力があって、はげしい異常反応をおこすこともないでしょうし、また、そういう練習が積まれていれば特殊の刺戟にたいしても、よりよく反応し、そうでない場合よりも、より強力な抵抗力が出来ようというもの。
 いずれにしても、生体にとって有利であることに間違いはありません。
非特異刺戟  一定の病気にたいするワクチンといった特異なものでなく、何でもよろしい。すべての注射はからだにとっては異物ですから、いずれも刺戟(非特異刺戟)になります。
 以前には牛乳を注射したり、動物の血清その他の蛋白体、あるいはその分解物を注射しました。
 また人間の血液もそうですし、自分の血の注射も同じです。
 ―つまり、採った血は、もう自分の血そのものではなく、一種の異物になっているので、そのまま注射しても刺戟になるのです。
 血清だけの注射はなおさらです(自家血清注射)。それどころか、カルシウムでも、糖でも、食塩水でも、ただの海水でも、いやただの水を注射しても、やはり一種の非特異刺戟です。
 皮内や皮下注射だと、その部の細胞がこわされるし、静脈注射では血球がこわされ、そこに出来るもの(蛋白分解産物)が刺戟になるのです。
 同じように、からだに加えるあらゆる刺戟、たとえば、筋肉運動でも、皮膚の刺戟でも、すべて非特異刺戟です。皮膚を日光にあてたり、寒さ暑さにさらしたり、摩擦するのも刺戟だし、皮膚を乱切したり、鍼や灸も同様。
 また、発疹させたり、発疱剤をはって水ぶくれをつくったり、叩いたり吸い出しをかけて出血させ、また渇血することなど、やはり非特異刺戟です。
 昔、流行病を防ぐために灸を奨励したのもそのためですし(三里の灸をした)ヨガの行者が、からだ中に針を通したり、傷をつけなどするのも、灸創に膿とり膏をはったり、傷に豆を挟んだり糸を通して治りを妨げなどしたのも、同じく非特異刺戟応用の健康法です。
 年中、ナマ傷の絶えぬ餓鬼大将が、カゼ一つひかぬのに、僅かなことにも医者よと薬よと、大事に育てられている良家の子女が、病気ばかりしているというのも、非特異刺戟で平素から鍛えられているか、いないかのちがいです。

 ところで、当節の子供は一般に、ちょうどこの良家の子女たちのように、小さい時から大切にそだてられ、寒さ、暑さにあわず、灸をすえられたり、ぶたれたりすることもありません。
 食べ物はご馳走づくめ、肉だ、卵だ、チーズだ、バターだ、お菓子だと、からだは大きくなり、丸々とふとっています。
 そして、病気しても、けがをしても、設備の完備した立派な診療所や病院で、高価な新薬をつかってすぐになおされます。
 まことに幸福この上ないように見えますが、果してどうでしょうか。いわゆる温室そだちで、僅かなことでもすぐ病気する。感染病に罹っても、からだに強力な免疫の出来上るまえに治ってしまうので、以前には一度やれば二度とやることはないといわれた病気にも、今では、何度でもかかる。
 今、世界中の関心は癌ですが、この癌が多くなったのは伝染病がへったからだといった人があります。
 癌もどうやらビールスによるものらしいと考えられているようですが、そうだとすれば、長年月の間に、いろいろの病気にかかったり、けがを繰り返して、一般的の抵抗力を十分強くしておくことが(癌が未開国に少い事実を思い合せ)あるいは、癌にたいしてもある種の抵抗がつき、そうでない場合よりは、罹りにくくなるかも知れません。
 それはともかく、流行病にたいする予防ワクチンの開発は、ありがたいことにちがいありません。
 しかし、ただ、それだけにたよりきらず、自らの力で、自らのからだに、出来るだけの抵抗力をつけておくことを忘れてはなりません。

<1966年11月 健康と青汁第123号より>




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