姿勢 |
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街をあるいたり、映画やテレビのニュースを見ていて、いつも感ずることは、われわれ日本人の、残念ながら、欧米人にくらべ、少なからず見劣りすることだ。たけの低いこと、顔色がさえず、顔の表情の乏しいことも確かにある。しかし、どうも、姿勢のよくないことが、大きくあずかっているようだ。 背中をまるめ、前屈み気味。肩はすぼみ、腰はふらつき、膝は屈っている。いかにもくたびれた、気力の乏しい、張りのない姿勢だ。 それは、畳の上の生活や躾けの乏しさによるところもあろうが、どうもそれだけではなく、むしろ国民全体が不完全かつ不自然な食(穀肉糖に偏り、いろいろの毒物さえも混っている)をとっており、運動、鍛錬の不足、さらには気分ばかりいらだっている、いわゆる文明病にとりつかれた不健康国日本の表現ともいうべきものではなかろうか。 昔から、坐禅の坐り方、武道の身なりはもとより、茶道でも、芸道でも、また健康法としても、正しい姿勢、正しい坐り方、正しい歩き方が、やかましくいわれているのは、健康であれば正しい姿勢になるし、正しい姿勢は直ちに本当の健康へつががる途でもあるからであろう。 そのいずれも、基本になるものは、身を真直にして、腰をのばし、あご、肩しりをひき、自然と下腹に力のこもる姿勢だ。 背中や腰をのばしたこの姿勢が、もっとも自然的な、したがって、もっとも健康的な姿勢であることは、牛馬などの家畜でも、シシ、トラ、ヒョウなどの野獣でも、健康なものは、すべて、その背中は、腰のあたりが少し凹んで、いかにもすんなりと、のびやかであり、病獣は背中をまるめ、すくんでいる、ことからも理解できようというもの。 正座の姿勢では、おのずと下腹に力がこもる。下腹に力がこもるということは、古人のいう臍下丹田に心をしずめることで、精神統一、鎮静をうることだ。 そしてまた、腹圧をたかめて腹腔内の血液を駆出し、全身の機能をたかめること、すなわち健康を増進することでもある。われわれの姿勢のよくないことは、平素の坐わる習慣、いやアグラをかいて前屈みになる癖が大いに影響しているようだ。坐るにしても、アグラをかくにしても(坐禅ではアクラだ)、つねに、必ず腰をのばすよう心懸けたいものだ。 < 1966・5 健康と青汁第117号より>
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