遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 サボテンはいかが

 サボテンを食べる、といったら、たいていの人は、「あのトゲのいっぱいあるやつを?」と、目をまるくされましょう。私自身も、日南海岸、小弥太郎サボテン公園の技師長、渡辺忠夫氏から、初めてうかがったときは、いささかならず驚きました。
 しかし、渡辺氏によると、サボテンには何千種もあって、なかには、古くから食用されているものもあり、その代表的なものは、

  1. コチニールウチワ、または臙脂団扇
  2. イチヂクウチワ、または大ナイヤガラ。
  3. 覇王樹、大型宝剣、竜葉宝剣

 の三種で、これらは、太古の米大陸文化(前史時代)の原住民によって、新芽を蔬菜として食用にするために栽培され、作物化されている。
 今日でも、メキシコなどの野菜市場では、とげをむしりながらサボテンを売っているインジオの姿が、よくみかけられるそうです。果実も食べられ、米国では「刺のある梨」(プリックリーペアー)と称して、一般果実同様にひろく食用されています。
 また、例のメキシコ特産のテキーラ種は、おもには竜舌蘭の汁からですが、サボテンの果実からつくるのもあるとの事です。ただし、食用サボテンの栽培は、原住民の居住する地方だけに限られたもので、サボテンが広く全世界に栽培されるようになったのは、サボテンに寄生するコチニール貝殻虫(エンジ虫)から、赤色染料(エンジ)を採取する。という用途がひらけたためでした。けれども、この用途はアニリン染料の出現によって完全に失われてしまったので、今では、もっぱら観賞用として、僅かに栽培されているにすぎぬ。という状態になっています。
 そこで、渡辺氏は、サボテンの食用作物としての復活を念願され、つくり出されたのだが、サボテン公園名物のピックルスや奈良漬、砂糖煮などです。そして、もっとひろく、食用の一般化ははかれないが、青汁の材料にはどうか。ともかく試食してみてほしいとのことで、昨年の秋私どものところへも送っていただきました。
 大部分はサボテン公園に100万本もあるという大ナイヤガラ種で、中に、バーバンク氏が改良したというトゲナシ種もありました。

生食  わかい芽なので、見掛けのたくましさ、いかめしさにも拘らず、いたって軟かくて、トゲをとり除くと(タワシでこすると割と楽にとれる)、そのままでも結構食べられます。口あたりは、ちょうどキウリのようですが、ちょっと酸っぱ味があります。そして、かむほどに粘りが出るところは、まるでオクラそっくりです。
サラダ  適宜の大きさ(長さ2〜3センチ、厚さ2〜3ミリくらい)にきざんで、サラダ油、塩、酢をかけると、一種の風味があって、なかなかオツです。
青汁  すりおろすと、すごく多量の汁がとれます。しかし、もともと緑色部が少いので(外表のうすい層は濃緑だが、中身の大部分は無色、これもキウリに似ている)、ケールなどの青汁に比べると、ずっと色はうすい。その上、粘りが強いので、いささか飲みづらい憾みがあります。
漬物
 酢漬け
(ピックルス)
 適当の大きさにきざんで、軽く塩漬けにし、あとで、ラッキョ漬のように。適当の大きさにたて割りに切ったものを浅漬けにする。貯蔵用には、沢庵漬けなみにながくおき、また、粕漬け、味噌漬けにもする。
煮物  煮つけにしてよし、汁の実にもよい。いずれも粘りがあって、おいしい。
粘りの利用  すり下して出来たトロで練れば、粘り気のない粉(米、大麦、キビ、芋の粉など)でもむしパン、流し焼をつくることも出来る。その他、工夫すれば、いくらでも変った食べ方はあるでしょう。
栄養成分  東京都衛生研究所と国立栄養研究所(ビタミンAだけ)に依頼して出来た分析結果は表のようです。
 おもしろいことに、味が似ているように、成分もキウリとオクラによく似ており、まずは、ちょうどその中間のもの、といったところです。けれども、目立っていることは、サボテンにカルシウムの多いこと(良質緑葉なみ)とカルシウム対燐の比がカルシウムに有利であることです。しかも、このカルシウムは、わが国習慣食にはもっとも不足しているものである点からだけでも、ずっとすぐれているわけですし、サボテンが、農薬に汚染される心配が全然ないという点でも、市販のキウリやオクラよりは、よほどよいわけです。
栽培  渡辺氏によれば、栽培はいたって簡単で、水のたまるような所をさけ、排水と日当りのよい場所ならば、どこにでも出来るし、肥料として魚の骨、卵の殻、木灰などを元肥として育てれば、驚くほどよく出来る。苗(もぎとった芽)は、切り口に石灰を塗っておくと、挿してすぐつく。ということです。問題は寒冷地の冬季。サボテンといえば砂漠、砂漠といえば炎熱の地が連想されます。しかし、本場メキシコにしても、乾燥地ではあっても、決して、必ずしも炎熱の地とは限らず、相当低温になるところもあるので、かなりの寒さにもよく耐える筈だ、との事です。私の庭でためしてみたところでは(当地の冬は最低で、0下5〜6度まで下る)南向きの軒下では大部分が越冬したが、露地ではほとんどが腐ってしまいました。もっとも、これは、試食用にいただいたわか芽を挿したためであったかも知れません。
輸送  なんしろ、ああいうゴツいもので、乾燥に強く、遠路の輸送、長期の保存にもよく堪えるので(冬期でも室内におけばながく保存できる)、無理に自家栽培をやらなくても、適地、たとえばサボテン公園のある宮崎県などで、大々的に栽培し、そこからの供給をうければ、年中、どこでも、また何時でも、利用することは出来ます。したがって、夏場はもとより、真冬の北海道、東北、北陸などの多雪地方での青物不足のばあいにも、まことに重宝なもの、といえるわけです。

 なお、いろいろの薬効もいわれています。一つご試作、ご試食はいかがです。そして、なんとか、大いに活用のみちを拓こうじゃありませんか。

 サボテンキウリオクラ 
熱量17.009.0031.00カロリー
蛋白質0.600.702.50グラム
脂肪0.100.100.30
糖質2.801.405.10
カルシウム166.0019.0065.00ミリグラム
10.0027.0048.00
0.300.301.00
ビタミンA172.0033.00100.00国際単位
B10.040.020.08ミリグラム
B20.040.020.06
C1.0015.0015.00
水分94.9096.7089.80 

<1969年 8月 健康と青汁第156号より>




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