遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
肉食はよくないか(1)(2)

 高血圧や動脉硬化などには肉食はよくないといわれます。
 事実、肉食の多い、贅沢な日常をおくっているところには、そうした成人病が多いようですし、早く現われるようでもあります。
 ライオンのような肉食動物でも、肉ばかり食べさせると、うまく育たず、早く死にます。
 また近頃では、陸棲動物の脂肪は動脉硬化、ことに心臓の動脉(冠状動脉)の硬化と深い関係があることが知られている、などのことからも、それはありそうなことです。
 肉の中では、ふつう、牛、豚、鶏、魚、タコ、イカ、エビ、カニ、貝類などの肉が好まれます。
 その成分は、良質蛋白質(血や肉になる成分)が主で、脂肪もあります。熱量もかなり多いので、栄養価の高い、よい食品とされています。
 けれども、蛋白質や脂肪などの体内処理(代謝)になくてはならぬビタミン類は一般に少いし、ミネラルでは燐や硫黄が多くて(体内で燐酸や硫酸になる)、アルカリことにカルシウムが少いので、酸性度がつよいわけです。
 蛋白質の代謝は非常に複雑で、それに必要なビタミンやミネラルが乏しい肉食が過ぎると、代謝がうまく行かず、種々の有毒なものが出来、その処理にあたる肝臓や腎臓、あるいは血管や心臓をいため、また悪性疾患の原因にもなろうというものです。
 そこで、肉食の害を除くためには、肉類に不足するビタミンやミネラル(アルカリことにカルシウム)を十分に補えばよい筈ですし、補われなければなりません。
 ここで、これまで種々の主食品についてみて来たように、みてみましょう。

 牛肉
 肉の代表の牛肉の栄養分は表(A)のようですが、ここで問題になるのは、熱量とB1(1カロリー対1ガンマが理想比)、カルシウムと燐(カルシウム1対燐1−2が理想比)との関係のほかに、蛋白質とその代謝に関係のふかいB2との釣り合いでしょうが、そのいずれについても、牛肉では甚だ不完全です。
 しかし、大根葉2倍量を加えると(表B)、すべての点で釣り合って来ます。
 ですから、牛肉ほどの不完全な食品でも、十分の菜っ葉をそえれば、それだけで結構生きて行けることになります。

熱量 蛋白質 カルシウム B1 B2
(A)牛肉 146 21.0 190 3.6 40 60 130 φ
(B)牛肉100+大根葉200 244 31.4 384 250 6.4 6040 260 390 180
(C)牛肉100+牛肝20 171.8 25.1 262 3.8 1040 120 570
(D)C+牛乳200 289.8 30.9 205 442 4.0 1240 180 870
(E)C+大根葉100 220.8 30.3 195 292 5.2 4040 220 870 96
(F)ワカサギ  100 17.1 750 680 5.0 100 130 360
(G)ワカサギ100+大根葉20 109.8 18.1 754 686 5.3 700 150 420 18
カロリー mg mg mg 国際単位 ガンマ ガンマ mg

 (注 表の単位 熱量はカロリー。蛋白質はグラム。カルシウム、燐、鉄はミリグラム。ビタミンAは国際単位。B1B2はガンマ。Cはミリグラム。図は理想的と考えられる釣り合いを基準としたもので、ミネラルやビタミンがカロリーや蛋白質の高さにそろうか、それ以上あれば、うまく釣り合っているか、むしろ余裕のあることをしめす)


 これは、肉だけでは育たぬ実験動物でも、菜っ葉を自由に食べさせると、よく育ち、健康でいられる事実と一致するものです。
 菜っ葉に相当する動物食品は肝臓ですが、牛肉100グラムに牛肝20グラムを加えても(表C)、熱量とB1、蛋白質とB2の関係はよくなるが、カルシウムと燐のバランスはとれません。
 これは、肉食動物が、内臓とともに必ず骨をかじる所以です。

 ところで、カルシウムに富むものに乳と菜っ葉があります。
 牛肉100グラムに牛肝20グラムを加えたものに、牛乳200グラムを添えるとバランスは余程よくなります(表D)。
 しかし、牛乳の代りに大根葉100グラムを添えるほうが、ずっとうまく全部が釣り合って来ます(表E)。
 エスキモーや南米の土人、あるいはアフリカの土人などには、主として動物食をとり、しかも健康で、血管病や癌などは少いということですが、彼等は肉だけでなく、必ず内臓を食べ、乳を飲みます。
 また、苔や海藻などもよく利用していますが、上記の事実は、これら未開人の食べ方の正しさを説明するものといってよいでしょう。
 こう見て来ると、肉を食うばあいは、内臓も骨も食べられるもの=小魚類などが、肉だけよりは遙かによいわけです。
 たとえば、ワカサギの栄養分は表(F)のようで、すべての栄養分が殆んどそろっています。
 ただビタミンCがないようですが、新鮮なものには、これもあります。
 そして、大根葉の僅か20グラムも添えれば(表G)、もう全く完全です。

 ですから、肉食がよくないというのは、肉を食うということだけが悪いのではなくて、食べる分量が余り多すぎるか、それに釣り合うべきビタミンやミネラル、つまり肉の害を消す成分のとり方が少なすぎる−不完全栄養になっているからです。
 そこで、肉食の害をへらすためには、肉だけでなく、小魚を食べ、乳を飲み、内蔵を利用すること。
 また、その分量も、必要の最小限にとどめること。および、良質菜っ葉を十分に添えることです。



牛肉(もも)100 +大根葉200
牛肉(もも)+大根葉


ワカサギ100 +大根葉20
小豆+大根葉





 肉類を食べるのは、主として身体に必要な蛋白質を補うためです。必要な蛋白質は、肉類のように質のよい蛋白質では、大体、体重1キロにたいし1グラム、ということになっています。つまり60キロの人なら60グラム。肉の中の蛋白質の量は約20%ですから、肉ばかりだと300グラム(約80匁)要るというわけ。しかし蛋白質は穀物や芋類、豆ことに大豆や大豆製品や野菜にもあるので、ふつうの日本人では、1日の必要量は70―80グラム。うち約30%を動物性食品から。つまり1日に肉や卵で100―150(蛋白質として20―30)グラムをとるべきだ、ということになっています。

 けれども蛋白質の必要量は、からだの大きさだけで、きまるものではなく、食物の組み合せによって大いに違って来ます。上の量は、今の日本人の習慣食のばあい――ビタミンやミネラルの不足した不完全栄養、したがって蛋白質の体内処理の不完全な食べ方、いいかえれば体内で無駄にすたっている栄養分の多い食べ方のばあいのことです。もっと栄養の組み合せが完全になり、ビタミンやミネラルが十分になると、蛋白質の利用率はずっとよくなり、体内での消費も少くなるので、遥かに少い分量で足るようになります。

 たとえば肉食に偏った食で100グラムの蛋白質が必要なものにも、ビタミンやミネラルの豊富な菜食になると、僅か25―30グラムでも十分だという事実さえあります。そこで、肉類だけ、あるいは穀・肉ばかり食べるのでなく、それらに良質菜っ葉(ビタミンやミネラルの豊富にある)を十分に添えるばあいは、決して普通いわれているほど大量の蛋白質は必要でなくなります。
 また、大豆などのような優秀蛋白質にとむ食品があれば、一層肉の量は少くてよい、いや全然動物性蛋白質は無くてもよいのです。ですから、ともすると害をなす恐れのある肉食をへらすには、ともかく、ビタミンやミネラルに富む良質菜っ葉を十分に補い、バランスのとれた完全食、いやむしろビタミンやミネラルに余裕のあるくらいにし、必要な蛋白質量をへらすように努めることです。またそうすれば、良質蛋白質の供給を増すことにもなります。

 植物性蛋白質
 というのは、これまで一般に植物性蛋白質は、質的に劣っており、血や肉など体構成材料としての価値が少いので、不適当だ。ために、良質蛋白源として動物性食品にたよらねばならぬように教えられていました。
 しかし、植物性蛋白質も決して、すべて質が悪いのではありません。蛋白質の質は、それを構成しているアミノ酸が人間の蛋白質のアミノ酸に近いほど人間の血や肉になりやすいので、それだけ優秀なわけですが、動物性蛋白質は、大体そういう性質をもっています。そこでこれが優れているといわれるのです。
 穀物や芋類や多くの豆類の蛋白質は、なるほど、ある種の必須アミノ酸(なくてはならぬ大切なアミノ酸)の少いものがあるので、動物性蛋白質に比べて劣っています。しかし大豆の蛋白質では、ずっとそれらよりもアミノ酸がよくそろっているし、菜っ葉類の蛋白質ともなれば、殆んど肉類のそれと差がないほどアミノ酸がそろっており、決して動物性蛋白質に劣るものではありません。それは野生の草食獣が、牛でも、馬でも、いやサイや象までもが、ただ葉だけを食って、あれだけの体躯をもつことを考えてもわかるというものでしょう。蛋白質は蛋白質からでなければ出来ないので、葉だけであれだけの体、つまり蛋白質が出来ることは、その中の蛋白質が、いかにすぐれているかを示すものですし、化学分拆上の結果もこれを裏書しています。
 また事実、最近では、一般緑葉の蛋白質が動物性蛋白質の代用としての価値が高く評価されて来ています。 そこで、動物性蛋白質でなくても、こうした良質植物性蛋白質をとっていればよいわけですし、少くともこうした植物性蛋白質があれば動物性蛋白質はずっとへらすことも出来ます。

 なおこれら植物性蛋白質源、ことに菜っ葉には、同時にビタミンもミネラルも十分にそなわっている点から、条件はさらに有利なわけです。(植物性蛋白質が害作用も少く無刺激性である、といわれるのもそのためでしょう。)

 ただ欠点といえば動物性蛋白質に比べ消化吸収がよくないことと、味がよくないことですが、これらは食べ方の工夫で解決することです。また、ビタミンやミネラルの点で、内臓、乳、卵、大豆などは、肉類よりは、よろしい。しかしこれらとても、それだけでは不完全で、いく分かづつの良質菜っ葉が添えられなければ、本当に完全にはなりません。ところが、ふつうには肉や卵や豆とともに飯やパンを食べます。また砂糖、菓子、酒もあります。したがって、いつも菜っ葉に十分の余裕のあるよう心がけられなければなりません。
 それはともかく、食べものの組み合せを合理的にして、栄養的にうまく調和し、しかもビタミン・ミネラルに十分余裕のあるようにすれば、肉食しても少しも差支はありません。まして、植物性蛋白質をふやして肉類をへらせばさらによいわけです。

 したがって、一部菜食論者の主張するように、動物食を、極端に排斥するにはあたらぬことです。但しそれは、あくまで上述のバランスを守ること、ことに良質菜っ葉をしっかり摂って、ビタミン・ミネラルに十分の余裕を残すようにしての話です。
 もしそうでなく、現在のような不完全な食構成のままで、ともかく高蛋白食が大切だ、必要だと、むやみに肉類、とくに脂肪のつよい肉類をとるばあい、種々の病気を原因し、あるいは悪化することも、到底まぬがれないでしょう。したがって、純菜食か、なるべく菜食に傾くほうが無難というものでしょう。

 脂肪
 陸棲動物、牛、豚、鶏などの脂肪は乳脂(バタ、クリーム)とともに、血液コレステロールを増し、動脈硬化を原因するといわれています。そこで、これらの肉類は、なるべく脂肪の少いやせ肉にすべきです。もっとも海棲動物の脂肪には、そうした傾向がないそうですから、肉を食う動物としては魚介類のほうが、有利というものらしいようです。
 なお、調理用脂肪としても、肉食に傾く食習慣では、とかくバタや牛豚脂が使用されがちですが、植物油にはヤシ油を除いて、動物性脂肪に多いコレステロール増加作用がないばかりか、むしろ血液コレステロールを下げるようにはたらくといいますから、これら植物油のほうが、ずっとよいわけです。

 安全性
 次に牛・豚・鶏など家畜の肉の良否は、その飼育法のいかんによります。現在の畜産では、多くのばあい、まず畜舎が問題である上に、飼料は余りにも不完全かつ不合理になっています。すなわち完全飼料と称せられる、不完全きわまる構成の飼料であるばかりでなく、(したがって栄養の点からもはたして本当に健康的であるかどうかの問題でしょうし)、今一つの問題は原料そのものの安全性です。降下性放射能物による汚染はともかくとしても、気になるのは農薬による汚染です。

 今は、農薬なしには農業は成り立たぬ、といわれているほどで、あらゆる面で農薬が用いられ、むしろ甚しく乱用されています。そこで、飼料用の糠、雑穀、豆、芋、野菜、あるいは牧草などに施用された農薬が、ごく少量づつでも残っていて――各の飼料についてみれば、おそらく中毒するほどのことは勿論なく、殆んど取るに足らぬほどの微量にすぎないかも知れませんが――それが、ながい間に動物体内に蓄積されていないでしょうか。
 アメリカなとでは、DDTその他脂溶性のものが脂肪組織の中に、かなりの%にたまっているということですが、もしやわが国でも、そうした心配がありはしないでしょうか。また、不健康な環境、不健康な飼料を与えられて病弱となった家畜に、病気の予防あるいは治療のために、用いられる薬剤(抗生剤その他)も少くないし、肥肉の増産のために用いられる成長促進剤(ホルモン剤や抗生剤など)もあるのですが、そうした薬剤が食肉の中に残っている心配はないでしょうか。また、屠殺後に防腐その他の目的で加えられる薬剤にも、ながい間には災をもたらすようなものがありはしないでしょうか。

 魚介類
 海産の魚介類は、自然の環境の中で育つものですから、養殖ものを除き、飼料に関する問題はもちろんありません。しかし、遠洋ものは貯蔵のために防腐剤や殺菌剤や抗生剤が加えられているそうです。こうした点から、いわゆる地ものの「イキ」のよいものが好ましいわけです。しかし、一面、これら沿岸や河川の魚介類には、工場廃液または農業、さらにまた、これも甚しく乱用されている洗剤などによる汚染の危険がしだいに大きくなって来ています。

 加工品
 加工品ともなればさらに、多くの危険がはらんでいます。塩乾魚などでは食塩も問題ですが、これは塩ぬきすればよろしい。ミリン干など、今では本物のミリン干はなく、大抵はアラビアゴム干だそうですが、これはそう大した問題ではありません。燻製品では煙の発癌性が問題になっていますが、これはどうでしょうか。また罐詰では、馬肉や鯨肉が牛肉に化けたり、マトン(羊肉)やカジキがハム・ソーセージに加工されているとしても、それは大したことではありません。カマボコには、製造所に行ってみればわかることですが、随分どうかと思われる材料が使われています。しかし、それでもこれらは、実はまだそう大した問題ではありません。
 本当の問題は、これらの加工の際に用いられる混合物や添加物――防腐剤、防臭剤、漂白剤、着色料または人工甘味など――これらが、はたして無毒のものばかりでしょうか。実のところ私どもには全くわかりません。
 多くのものは、ただ売らんがため、儲けんがための製品であって、消費者のためを考えに入れた、新鮮良質の材料をつかい、危険な混ぜもののない、本当に良心的なものが、はたしてどれだけあるだろうかと疑いたくなるのが、遺憾ながら現在のいつわらぬ現実なのです。無論これら加工品に添加されている色素・人工甘味・薬剤などは、あるいは毒性の弱いものであるかも知れません。また分量は、それぞれの食品についてみれば、殆んど取るに足らぬ僅かなものにしか過ぎないかも知れません。
 けれども、あらゆる食品が加工されている今日です。
 毎日とる食品のどれもこれもが、少しづつでも有害物をもっていれば、一つ一つの食品の中の毒性は極微でも、食べもの全体としては相当なものになるでしょうし、それが毎日つづくとなれば、ながい間には積り積ってどんな害をもたらすか、わかったものではありません。
 ですから、一つ一つの食品の中の分量が少いからといって、少しも安心できないと私どもは恐れるのです。
(つづく)

<(1965・10 遠藤)健康と青汁 第109&110号より>




ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 利用者の声 上の階層へ  
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法
Copyright 2010 02 田辺食品株式会社