遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 くずものの効用

 くずものの効用について一つ食物で考えてみましょう。
 まず主食の米麦。上等米のよく肥えたものと、下等米の痩せたくず米いわゆるシイナ米と、どっちが果していいでしょうか。よく肥えている米は胚乳が多い。で、よく搗いて真白にして食べられます。ところで、胚乳は熱量源(殆んど澱粉)ばかりですが、胚皮や胚芽には、それが体内で代謝されるために必要なビタミンやミネラルがあります。
 やせ米、シイナ米は胚乳が少くて、いわば皮ばかりですが、それだけにビタミン、ミネラルの率がよい。しかも搗くわけにもゆかぬので、粉にして団子にしたり、餅について食べます。ですから、くず米の方が栄養上からはすぐれているわけです。

 本草綱目には「浮麦」の主治に、「気を益し、熱を除き、自汗、盗汗、骨蒸、虚熱、婦人労熱を止む」とあります。この浮麦は、水で淘うと浮き上るもの=シイナ麦で、ここにあげてある症状は結核にあたるものです。つまりシイナ麦が結核によいというのです。
 白米食の多い所に結核が多いことはよく知られていることですが、それは白米(胚乳)ばかり食べすぎるためで、これに対して浮麦は薬になるというわけで、これは確かにくずの効用の一つでしょう。

 芋
 穀につぐ主食であり野菜の意味もある芋、
 そのくずはどうでしょうか。
 ジャガイモを輪切りにしてみると二つの層に分かれています。大部分を占める内肉は澱粉ばかりみたいなものですが、外皮層はミネラルやビタミンが多い大切な部分です。
 八百屋でもとめた150−200グラムのものと、農家の家畜用のくず芋1.5から12.5グラムまでのとを輪切りにして、その厚さを比べてみたのが挿図(実物の4分の1大)です。
 詳しい測定はしてありませんが、大凡の関係は、これでわかりましょう。肥料を充分に施すとよく肥った大きな芋が出来ます。戦時中畑をかりてジャガイモをつくりましたが、始末に困る下肥をジャンジャンかけたので、とても見事な芋がうんととれました。腹を太らすにはよいのでよろこんで食べたものです。

 終戦前応召して九州の山奥に駐屯、平家残党のかくれたという五家荘へ行きました。ここはひどい山の中で米はもとより出来ません。比較的緩い斜面を開墾して雑穀や芋をつくり主食にしていますが、古老によれば、昔から、下肥をかけたものを食べると病気すると言い伝えて、一切つかわぬ。出来る芋は小さく、くず芋のようでも、味はとてもよく、余所のものとは比べものにならぬ、いうことでした。
 確かに意味のあることだと感じたことでしたが、これもくずの効用の一つといえましょう。脂ぎった牛や豚の肉よりは痩せた赤肉がよいし、タイやマグロの切り身よりは、それでも魚まじり、と軽蔑される小雑魚、肥料にするか犬猫に与えられる臓物のほうがはるかによろしい。いずれもくずとされたものが実は栄養物だったよい例。

 くずの代表的なものともいうべき青ナッパ。惜し気もなく切り捨てられて、店頭にも出されぬ、あるいは人間の食うべきものでないかのようにさえ考えられている、家畜用のナッパ類。ケール、ダイコン・株・ニンジンの葉やキャベツの外葉などが、いかにすぐれた栄養価をもっているかはいま更申すまでもありますまい。そして一番もてはやされていたホウレンソウが、ようやく近頃になってケチがつき、野菜の王座から危くすべり落ちそうになっていることも、よく知られている通りです。
 果物も同様。姿のよくととのった大きいやつは、いかにも立派そうには見えますが、存外大あじで、小さいほうが、かえって豊富な味をもっているものです。ビタミンでも日陰に出来た大粒の見かけのよいものより、陽当に出来た小粒の見てくれの悪いくずもののほうが多いといわれています。

 数えあげればまだいくらでもあるでしょうが、ともかくこうながめてゆくと、立派そうに見え、上等と思われ、高価でもあるものが実は存外くだらぬものであり、反対に、見向きもされず、あるいは捨てて顧みられないような、下等のくずものとされているものが、実はすばらしくよい、また大切な食いものであったというわけですが、何だかこれは、ただ食いものばかりのことでなく、われわれ人間についてもいえることではないのかナ、てな気もするようです。


<1960・12 健康と青汁 第52号より>




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