遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 桑の葉

 桑の葉の栄養価は、蚕の発育ぶりからも、想像できようというもの。ケシ粒ほどの卵から生まれた1ミリ内外の小虫が、僅か3週間くらいで指の太さほどになり、あの美しい強い糸を吐くのです。桑の葉には蛋白質が多く、質はマメ科の葉のそれを凌ぐ程で、殆ど濃厚飼料に近いといわれています。ミネラルでは、カルシウムや鉄やマンガンが多く、葉の成熟とともに増し、秋の落葉前に最も多くなるそうです。

 ビタミンAは、1000〜2500国際単位、
 B1は、緑葉菜なみ、
 B2は、3〜4ミリ、
 Cは、2〜300ミリもあると言います。

 そして、家畜の飼料としても頗るよい成績が上がっているそうですが、われわれ人間の食糧としても見逃すことのできないすばらしいものです。


食べ方
 肥後熊本の細川銀台はあるとき桑の葉飯を食べたと伝えられている(日本食物史)そうですが、わかい軟い葉はサラダとしても、煮て食べても、よろしい。たけた葉は硬くて、舌触りがよくありませんが、テンプラにすれば食べられます。


乾燥末
 また乾燥粉末として利用します。

 牧野先生によれば、
 「周防国大島郡比良居村大字土居にては、その土地の習俗、桑葉を生のまま日に干し乾きたるを、揉み毀はし烙焙で炒り、之を茶の如く湯に入れて飲む。ただ口さはり軟き感あるをもって飲用するなり。また時に茶粥に入れることあり」
ということですが、

 これは決して「口さはり」だけの問題ではありません。蚕糞でも高血圧によい、といわれているほどです。これには不老長寿の効あるに相違ありません。しかし、こうした利用法も、おそらく、今ではもう惜しいことにも、すたってしまっているのではないでしょうか。それにしても生のまま乾したものよりは、製茶法に準じ、蒸したのち乾燥したほうが、貯蔵もきいて、なおよいでしょう。抹茶に代用し、フリカケにし、飯に混ぜ、餅につきこみ、小麦粉、ソバ粉に混ぜて、「流し焼き」や「むしパン」にするなど、利用法はいくらでもあります。

 この「むしパン」で面白い失敗談があります。
 終戦の年の夏召集されて九州の山奥にいた時のことです。米は十分にあるし、大豆も方々に集積されていて、いくらでも配給されましたが、副食の野菜がありません。もともと乏しいところへ多くの部隊がやって来たので、気の利いた野菜の調達は全然不可能。明けても暮れても、野山に自生している筍と蕗ばかりという羽目になってしまったのも、止むを得ぬしだいでした。
 野草をあさって、青汁にもし、副食にもあてましたが、すぐになくなってしまいます。そこで目をつけたのが、その辺りの畑にあった桑の葉です。しかし、もうたけていて汁の実にも、おさいにもならぬし、青汁は粘って飲みてがないので、乾燥粉末にして蒸しパンにしてみました。
 菓子製造が本職の炊事兵もおり、当時の地方ではとても手に入れることができなかった砂糖もうんと奮発してもらったので、見た目にも立派な出来栄えだったし、味も相当のものでした。
 ところが、兵隊は、それでもまだ、いくらか食べてくれましたが、将校連はてんで見向きもせず、「蚕じゃあるまいし……」と数々の悪評。勿体ないことに殆ど捨ててしまい、お釈迦さんではないが、「縁なき衆生……」とつくづく感嘆したことでした。


青汁
 桑の葉は、質は良いし養蚕地方なら無尽蔵です。下肥や農薬の心配もなし、味や匂いも格別悪くはありません。青汁材料としてまことに好適といいたいところですが、この青汁、まるでトロロのようにねばりいささか飲みづらい。もっともあの粘りがとても良いという人もあり、飯にかけて食べるという人もありますから、そこはやはり好きずき一口には言えないようです。なお、この青汁は米粉、麦粉、豆粉、芋粉などに粘りをあたえ、「流し焼き」や「蒸しパン」や団子にするのに都合がよろしい


桑茶
 これも昔から愛用されていたようです。本草には、「葉を炒って茶代わりに飲むと渇を止める。」とあり、葉の煎じ汁は盗汗労咳(結核)によいとか、脚気水腫を除くとか、目を明らかにし、髪を長くするなどと もあります。
 また古くから桑の木は、中風の霊薬とされ、その予防に桑の木の枕や箸や楊子を使い、桑粥を食べ、桑茶や桑酒を飲みなどしました。そのほか飲水(糖尿病)や不食(食欲不振)によく、久服すれば無病長寿をうるとも出ています。ですから、葉と枝を煎じ、茶代わりに飲めば、なおよいわけです。生葉茶ならいっそうよいでしょう。
 なお、桑の葉は霜後の葉とか、冬至後にとったがよい、あるいは新茶と老茶を合わせ用いる、などといわれていますが、これは老葉にカルシウムやマンガンなどの多いことと関係があるのでしょうか。桑湯も面白いでしょう。


 ともかく、桑の樹は、諸仏菩薩の樹なりといわれ、中国では茶の樹とともに、大切な樹として尊敬されたということですが、たしかにいろいろの効用があるようです。古い川柳に、「薬いぢりの植える桑の木」とありますが、一本やニ本は、庭に植えておきたいものです。

<1965・6 健康と青汁 第106号より>


 桑方

桑粥法
 宋朝の医の曰く、桑の枝の指の如くなるを三寸に截(き)り、三四細かに破り、黒豆一握と倶に水三升を投(い)れて之を煮る。完熟して桑煎ぜらるれば、即ち桑を却けて米を加ふ。水の多少に依って米の多少を計り、薄粥と作すなり。冬夜は鶏鳴の期に、夏の夜は夜半より煮初めて、夜明けて煮畢(おわ)る。空心に之を服す。塩を添へず。毎朝懈(おこた)る勿れ、久しく煮るを薬となすなり。朝に之を食すれば、即ち其日水を引かず、酒に酔はず、身心静かなり。信に必ず験あり、桑は当年に生ずる枝もっとも好し。根、茎の大なるは、用ふるに中(あた)らず。桑の粥は総て、衆病の薬、別けて飲水、不食の良薬なり。

桑木を服する法
 鋸の截屑の細なるを、五指を以て撮(つま)み、美酒に投じて之を飲む。女人の血気能(よ)く之を治す。身中、腹中の万病、差(い)えざるなし。是れ仙術なり。信ぜざるべからず。恒に服すれば長寿無病を得。

桑の煎法
 桑の枝を二分計りに截って、之を燥し、木の角の焦る計り燥して、割(さ)く可し。三升五升盛る袋に置く。久しく持ては弥々好し。時に臨んで、水一升計りに木半合計り之を入る。之を煎じて服せよ。或は燥かざるも煎服して失なし。生木も亦宣し。新渡医書に曰く、桑は水気、肺気、風気、癰腫、遍体に風痒し、乾燥して四肢拘攣し、上気、眩暈、咳嗽、口乾等の疾、皆之を治す。常に服すれば食を消し、小便を利し、身を軽くし、耳目を聡明にす。云々 仙経に曰く、一切の仙薬は、桑を煎じて服せざるを得ず。云々 就中、飲水、不食、中風に最も秘要なり。

桑の葉を服する法
 四月の初めに採って影(かげ)干にす。秋九月十月、三分の二落ちて一分枝に残れるを採って又影干し、和合して末にし、一に茶法の如くして之を服すれば、腹中に疾なし。身心軽利なり。夏の葉と、冬の葉とを等分に秤を以て之を計る。是れ皆仙薬なるのみ。

(栄西禅師喫茶養生記)

<1965・6 健康と青汁 第106号より>




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