遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
カビと健康

 カビはなかなか有用なものです。さいきんの有力な新薬、抗生剤はみなカビのつくったものです、
 われわれの遠い先祖の時代から食べなれてきている酒、味噌、醤油、いずれにもカビの力によってできたものです。しかし、一面、非常に危険なものであることも、しだいにわかって来ました。
 たとえば、われわれにもっとも関係の深い米につくカビにも、十何種類あるそうですが、中には、脚気様の神経マヒをおこすものがあったり、腎臓を悪くするもの、また肝臓をおかし、肝硬変をおこし、長い間には癌さえもつくるような毒素をつくるものもあります。
 先年騒がれた黄変米もその一つです。また、南京豆につくカビの一種から出る毒素は、肝臓を障碍し、癌をつくります(アフラトキシンといい今まで知られている肝癌原のもっとも有力なもの、アフリカに多い肝癌との関係がいわれています)。
 同じように、小麦、大麦、栗、トウモロコシ、綿実などにつくカビにも危険な毒素の出来るものがあります。生の牧草や雑草、ワラなどについて、家畜に害をあたえるカビもあります。もちろん、すべてのカビが有毒ではありませんが、有毒か無毒かの見分けは出来ませんから、ともかくカビたものは食うべきではないわけです。
 ところで、食品加工のさかんな今日では、殆んどあらゆる食品に殺菌剤、防腐剤など各種の薬剤が添加されており、中には危険なものがないとはいえず、その害にも測り知れないものもあること。したがって、健康を保ち、病気の治りをよくするためには、つとめて純正良質の安全食品をとるべきである、その目安として、私共は、いつまでも変化しないものよりは、むしろ、腐ったり、カビたりするようなものの方が安全だ、といっているのですが、カビたものに、こうした危険があるとわかってみると「カビるようなものを、カビないうちに食べるべきだ」といいかえねばならなくなったわけです。
 また現に、昔の人はそうしています。味噌も醤油もカビのないところを食べ、餅のカビは削りおとして食べました。米粉、小麦粉、ソバ粉なども、カビで酸っぱくなったものは、捨てて食べることはしませんでした。
 そしてまた、カビのはえないように注意もしました。カビは温度がたかくて湿気が強いとき、たとえば、梅雨時などに、もっともよく繁殖します。そこで昔の人は、食物の乾燥に細い注意を払いました。ことに、毒素のうちには紫外線によって破壊されるものもあるのですから、日光による乾燥が、もっとも合理的なわけですし、昔の人はこれを実行していました。

他の食料への流用
 カビた米は搗くと砕けます。また、よく洗えば糠とともに取り除かれる。ですから、飯に炊いて食べることは、まずありません。しかし砕米は餅についたり、炒ってコガシにしたり、粉にして団子にします。で、オカキやオコシなどは、そうした危険なカビ米が混りこむおそれはないでしょうか。

家畜飼料への転用
 また、カビた穀、豆、芋などは、とかく家畜にあたえられます。しかも、そうしたものは家畜には却ってよいのだ、とさえいわれたこともあった程です。
 しかし、それが間違いであったことは、しだいにハッキリしてきたし、ものによっては、その毒素が、家畜の供給する食品の中に、たとえば、肉の脂肪の中にたまっていたり、乳に出る(おそらく卵にも出るだろう)ものもあります。
 ですから、直接、カビた食品は食べなくても、それをあたえられた家畜を介して、間接に毒素をとり入れることにもなるというものです。われわれになじみ深い酒、甘酒、味噌、醤油をつくるカビにも、いろいろの種類があり、経験上、安全なものがつかわれているのだろうと思われるが、ふつうのコウジでも、動物実験の結果では、やはり毒性(肝腎毒)があるといいます。
 味噌やモロミ、ヒシオのカビも恐らく同じではないでしょうか。これらは昔から食べなれて来たものですが、それが、日本人に肝癌(肝硬変や肝癌)の多いことの原因ではなかろうか、とみている学者もいるほどです。
 これらの製造用のカビについては、その性質を十分に検討し、毒素の心配のない、安全性の確実なものの撰出につとめてほしいものです。ともかく、カビたものは食べないこと、カビぬよう注意すること。また、カビたものを他に転用――他の食料品や、家畜飼料にふりむけぬよう、業者の良識と、当局の厳重な監視が願わしいこと。
 コウジカビについては、絶対安全な品種の供給が望ましいわけです。

<1968・6 健康と青汁142号より>




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