肥満児 |
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ちかごろ、ふとりすぎの子供がふえた。とくに都市に多く、中でも富祐な家庭ほど多い(全学童の2〜3%、学校によっては8%にも及ぶという)。ふとりすぎは生れつきにもよる。生後はやくふとる児は、後でもふとる傾向がつよい(肥満児の70〜80%は成人肥満症になり、ふとった成人の1/3は幼い時からふとっている、という)。しかし、やはり、結局は食べすぎと運動不足のため。 食べすぎ 赤ん坊のときから飲ましすぎのくせがついていたり、あまやかしの結果。あるいは欲求不満の「やけ食い」などにもよるようだが、ともかく食べすぎている。しかも、経済的にゆとりが出来、生活様式の都市化あるいは欧米化のため、おいしい濃厚食ばかりを食べすぎている。主食の白米飯はしだいに減り、パン食がふえて来てはいるが、いつも腹いっぱい食べているのは同じ。そこへ蛋白質の重要性が強調されているため、また一般食習が贅沢になって来たため、肉(獣鳥魚介)や卵をうんと食い、味は濃厚。砂糖、バタやマーガリンもしっかりつかわれる。間食は甘味のつよい菓子ばかり。これもたら腹食べ、チーズやハム・ソーセージもお八つになる。くだものはいくらか食べているかも知れぬが、野菜はいたって少なく、中でも緑のナッパなど殆んど食べない。親たちも「嫌うものを無理にも」と、強いて食べさせようともせぬ。というのが、こうした子供たちに共通した食習のようだ。 運動不足 そのうえ運動が、また、ひどく不足、と来ている。ふとっているだけでも動くのが憶怯なところへ、あの物凄い交通地獄。うっかり外であそばすこともできぬ。家族づれの外出も、学校の遠足も、すべて乗り物。あるくことはまるでない。学校からかえれば、英語、塾、ソロバン塾、書道塾、音楽塾と、毎日の塾通い。上級になれば、進学準備の補習塾。いよいよ勉強にいそがしい。それでも、テレビは見なけりゃおさまらぬ。こうして、栄養の過剰と運動の不足はつのるばかり。これでは、ふとるのが当然。ふとるなということがすでに無理というもの。 健康状態もよくない もっとも、たとえ豚といわれ、デブとわらわれても、健康状態さえよければ、少しも問題ではない。けれども、からだだけは大きくなったが、溌溂さ、元気さがなく、運動能力はさっぱりダメ。学業の方もけっして優秀とばかりはいえない。病気にもよわい。以前は大人の病気と考えられていた病気が一般に多くなったし、突然死するものや、小児ガン、その他わけのわからぬむつかしい病気がしだいにふえて来た。また、成人病(正しくは老人病)とのつながりがいわれているが(成人病予備状態)、ふとりすぎの子供のうちに、すでに高血圧や糖尿病など、はやくも老化のきざしが出はじめている。死亡率もたかい(肥満児の死亡率は正常児の1.5倍といわれている)。それは、こうした食べ方が、ただ量的にすぎているだけでなく、質的にもひどく偏り、カロリーと蛋白質ばかりが多く、それらの体内処理に必要なビタミンやミネラルは著しく不足するという不完全食になっていること。そして、運動不足とあいまって、代謝はいよいよ不完全となり、いわゆる「血の濁り」をつよめているためであろう。また、菓子をはじめ、各種の加工食品、インスタント食品が好まれ、有害〜有毒添加物の公害的影響も、おそらく無関係ではなかろう。 対策 なにしろ元気のよい(筈の)子供たちのこと。少々食いすぎても、ともかく運動さえしっかりやればよいわけだが、家ではいつもごろごろねころんでばかり、学校では体育の時間は休んでいる、という始末。うっかり運動させて事故でもおこされてはと、学校当局がとかく大事・大切と、控え目にあつかうのも、また止むをえぬ。となると、どうしても食べもので加減するしか方法はない。 食べもの
<1973・5 健康と青汁 第201号より>
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