遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
養殖ハマチ

 さきごろ、NHKテレビで、ハマチの養殖について放映され、斃死魚の多いこと。それが、これまでなかったバイ菌(レンサ菌)の感染による敗血症であること。そして、予防薬も効果がないこと。しかも、もともとの原因はエサのやりすぎにある、と聞いて、まったくあきれかえってしまった。
 ハマチは大変な貧食魚でエサさえ十分なら、天然もののブリが6年かかるところを4年で成長する。それだけ利潤が大きいわけで、生産者は安いイワシをどんどん食わせる。しかし、イケスの中で、いつも飽食し、運動不足に陥っているハマチは、自然、弱体化してくる。そこへ、食い残りのエサの腐敗で水質はよごれ酸素が不足する(夏に多い赤潮の影響もあろう)という環境の変化も加わり、それだけで死ぬものもあれば、感染をうけやすくもなる。

 抵抗力(自衛能・自癒能=生命力)のおとろえたハマチには、有力な予防薬もはかばかしくきかないのも当然であり、たびたびあたえる薬剤にたいしバイ菌がしだいに強くなり耐性となってくるのも、また、しごく当然のこと。対策としては、エサをへらし、環境をよくし、運動をさかんにやらせる。つまり痩せさせる、しかないのだが、それではソロバンが合わぬ。せめて、生き残ったやつだけでも、はやくそだてあげてと、いっそうエサを多くし、肥り薬もあたえる。そして、弱体化はいよいよつのり、斃死魚はますますふえる、といった悪循環で、いまでは、もうどうにも処置なし、お手あげという状態においこまれてしまっている。

 これほど手を焼き、苦労をかさねてそだてたダブブクレのハマチ。なるほど見かけだけはいかにも立派だし、値も張るだろうから、生産者にとってはとてもの魅力、大きなバクチもやってみたくもなるのだろう。しかし、われわれ消費者にとっては、少しもありがたくはない。だいいち、味からしていただけない。こどもの頃、正月にはいつも大きな寒ブリが来、お節料理にしたり、粕づけにし、沖スキにもしたが、あのキリッとしまった肉をかみしめる味のよかったこと、いまだに忘れられない。で、季節になると、思い出しては買って来させるが、何にしてみても、いやにふやけてしまりのない肉で、どうしても昔の味がない。不思議に思っていたが、これも、いまどきわれわれの口にはいる「ブリ」は、みなこの養殖ハマチだとわかってみると、なるほどと合点もゆく。栄養的にも劣っている。

養殖ハマチイワシ
熱量163130カロリー
蛋白質21.017.5グラム
脂肪8.06.0
カルシウム880ミリグラム
リン220240
13
ビタミンA4060国際単位
B10.140.02ミリグラム
B20.100.15
1
 ハマチとイワシの栄養価をくらべてみると、表のように、蛋白質・脂肪はハマチがやや多いが大差はない。もっともめだったちがいはカルシウムで、イワシはハマチの10倍も多いことは、とくに注目すべきだ。
 
 エサの浪費
 しかも、エサのイワシの量は、ハマチの肉の数倍にもなるというのだから、海洋資源のしだいに窮屈になってきている折から、まことに浪費も甚しい贅沢そのものというほかない。だから、ハマチを養殖するよりはイワシのそのままを食べるほうが、どれだけ有利であるか知れない。見かけだけの高級魚にあこがれ、多大の労力と資源とをムダにしていることの、いかにむなしく愚かしいことであるか、もう、このあたりで猛反省すべきではあるまいか。そして、折角めぐまれており、味でも栄養的にもすぐれているイワシを、エサにしたり肥料にするなど、もったいないことをせず、もっともっとすなおにいただこうではないか。(54・4)
(1979・8:遠藤仁郎)<健康と青汁276号より>




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