痛風 |
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ちかごろふえた病気の一つ。 もともと欧米に多く、わが国には殆んどない、といわれていたものだが、今では、珍らしくはないどころか、むしろ多い病気になった。 寿命がのび、食糧事情がよくなると多くなる病気だそうだが、帝王病という異名もあるほどで、やはり、贅沢な日常生活、ことに欧米風の肉食に傾いた食と運動不足、といったことによるものと思われる。 中年以後の男性、とくに実業家、政治家、学者など、富裕インテリ層、中でも美食大食家、大酒家、肥満家に多い。遺伝関係もかなり濃厚。ふつう、足や手の関節、ことに足のおやゆびの関節に来る急性発作で発病する。 関節が赤く腫れ、はげしく痛む。発熱もするので、化膿性の蜂窩織炎と、よくまちがえられる。しばしば、宴会などでの暴飲暴食、あるいは心身過労、感染、外傷、手術、気象の変化などが誘因になる。こういう発作をくりかえしているうちに、関節の骨の形が変って来たり、皮下に結節(痛風結節)が出来たり、腎臓が悪くなったり、結石が出来たりする。 病気の本体は、尿酸代謝の体質的異常で、血液中の尿酸塩がふえ(高尿酸血症)、関節、皮下、腎臓その他に拆出、沈着するもの。 この尿酸はプリン体や、細胞の核成分である核蛋白(核酸)から出来るので、痛風の予防、治療には、まず、そのもととなる食品(プリンや核酸にとむ)をへらすことと、尿酸の排泄を妨げるものに対する注意が大切だといわれる。 たとえば、肉類ことに内臓や小魚類、豆類などが禁じられているのは、蛋白とくに核蛋白にとむからであり、アルコールがよくないといわれるのは、(少量は差支ないが大量だと)尿酸の排泄を妨げるからだ。また、ホウレンソウ、アスパラ、キノコ、アンズ、モモ、ブドウなども、プリン体が多いから避くべきだ、といったぐあい。 しかし、プリン体に乏しい食でも、血液尿酸の減少は僅か1〜2ミリ%ほどだという。また、本病はもともと尿酸代謝の異常にもとづくもので(体内での生合成の増加、しかもプリン体以外のものからも合成される)、食事の制限の効果にはあまり大きな期待はかけられないので、プリン体にとむものの過食やアルコールの過飲はもちろんさくべきだが、厳重なプリン制限食には意味がない。 なお、本病では同時に、血中コレステロールや中性脂肪、あるいは血糖の増加を示すものが少くない。つまり、本病者には、尿酸代謝だけでなく、脂肪代謝や糖代謝にも異常があるなど、かなり広汎な代謝異常があると考えられる。さて、こうした代謝異常が何に由来するか、もとより明かではない。けれども、痛風の原因と目されている食についてみると、その特長は、プリン体にとんでいるほかに、みのがされないことは、それが全般的に甚しく不完全栄養になっている。すなわち、蛋白質、脂肪、したがって熱量にもとんでいるが、それらに釣り合わねばならぬミネラル、ビタミン類に乏しい食になっていることだ。 ために、体内代謝は円滑に行われず、何らかの有害産物が出来、それが素因のあるものでは、尿酸代謝にあずかるいずれか、たとえば肝臓の尿酸分解酵素のはたらきを妨げるなど、により、尿酸の増加が原因されるのでないか。 同様にして、脂肪代謝あるいは糖代謝にも変調をおこしているのではないか。もしそうだとすれば、痛風食としては、従来行われているように、ただ尿酸原料にとむ食をへらすとか、尿酸排泄を妨げるものを避けるという狭いものでなくて、食全体としてバランスを正しくし、体内代謝の完全化をはかることが、より根本的の筈だ。 こういう意味で、私どもは、痛風にたいしても、他の病気のばあいと同様、緑葉食・青汁を中心とした完全食の少食をすすめている。 また、痛風の発生のためにも、尿酸生成の増加と排出の減少のほかに、組織に沈着しやすいという条件があるとも考えられるわけだが、尿酸のアルカリにとけやすい性質からもわかるように、体液の酸度が高まると沈着しやすくなるし、酸度が低くなれば溶けやすく、排出されやすくなる。 この点からも、アルカリにとむ食が望ましいわけであり、事実、昔から痛風にグリーンサラダが推賞されており、青汁をやるだけでもかなりの効がみられる。 なお、この原則にしたがって、つねに全体としてのバランスに心懸ければ、従来の禁忌食品(プリン体にとむ肉食やアルコール)も、無暗なことをやらないかぎり、差支ないから、食禁についても少しも神経を悩ますことはない。 その他、痛風で気をつけねばならぬことは、
便通をはかること
運動
精神の安定
薬の乱用をさける
<1971・5 健康と青汁 第177号より>
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