遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 タバコの害

 タバコの煙には、1200種にも上る化合物があるそうだが、問題になる主なものは、主成分のニコチン、燃焼で生ずる一酸化炭素、およびタールの発癌物質。

ニコチン
 紙巻タバコの煙には6〜8mg%ふくまれ、深く吸いこむと90%が吸収されるという(口でふかすだけでも25〜50%)。主な作用は、神経(自律)の刺戟・興奮(のちマヒ)と、血管を攣縮して血圧を上げること。血液コレステロールを増し、血小板の粘着性をたかめて血液のネバリ、凝固性をすすめ、血栓ができやすくなること。

一酸化炭素
 紙巻タバコの煙にはかなりの一酸化炭素がある。一酸化炭素は血色素(ヘモグロビン)との親和性がつよく、これとかたく結合するため、血色素の酸素輸送を妨げる。その結果、喫煙がつづくと、慢性の酸素欠乏状態に陥ることになり、血管をいため、ニコチンのコレステロール増加作用とともに、動脈硬化を原因する。また、ニコチンの血管攣縮・血栓形成作用とともに、組織・臓器の酸素供給を妨げ、それらの機能にも不利にはたらく。この影響は、抵抗力のよわい、弱点のある組織・臓器ほどうけやすいので、たとえ、それが、直接煙にさらされないところであっても、喫煙はなるべく慎しむべきだ、ということになろう。

発癌性成分
 タバコの煙には、いろいろな発癌性成分がある(ベンツピレン、ベンツアントラセン、Nニトロノルニコチンなど)。また、これらの作用を賦活する酵素もあるらしい。また、煙の中の亜硝酸塩とアミンからできる発癌性ニトロサミン、あるいは、フェノールからできるパラニトロフェノールなど、いずれも強力な発癌性物質。なお、トリプトファンの代謝産物にも、発癌性のものができるし、砒素、ニッケル、カドミウムなどもある。そして、直接煙にさらされる肺・喉頭・口腔だけでなく、食道・胃・肝・膵・前立腺などにも癌ができやすい。アメリカのHammondによれば、肺癌は禁煙者の11倍、喉頭癌は5〜6倍、口腔癌は4倍、食道癌は4〜5倍も多い。平山氏によれば、肉食と喫煙が重なると膵癌、飲酒とでは胃・食道・肝癌、脂肪食とは腎・膀胱癌が高率だという。また、ウラン・ニッケル・石綿・クローム、あるいは大気汚染も、喫煙と複合すると発癌の危険がずっと大きくなる。なお、猛煙家では、癌が発生しやすいだけでなく、悪性度の強いものができる傾向がる。

慢性気管支炎・喘息
 煙の刺戟で気管支炎をおこし、分泌(痰)を増し、粘膜の抵抗力を減ずる。すなわち、炎症により、気管支粘膜の繊毛運動(痰を上方へおくり出そうとする運動)がよわり、痰の喀出が困難になるうえ、細菌・ビールスにたいする防衛能がおとろえ、感染をうけやすく、治りにくくもなるため、しだいに慢性化する。また、アレルゲンにたいしても、同様、感作されやすくなり、喘息気味となる。

肺気腫
 タバコの煙の中のカドミウムが、肺実質を破壊し、肺気腫を原因する。喫煙もしないものには肺気腫は殆んどなく、喫煙量の多いものは正常の肺は殆んどない(Auerbach,NewEng.J.M.1972.4.22日号)。また自然気胸の原因にもなる。

肺癌
 喫煙は肺癌のもっとも有力な原因とされている。喫煙本数の多いほど、喫煙歴のながいほど、喫煙開始年令のわかいほど、肺癌は多い。

動脈硬化
 ニコチンの血液脂肪増加作用や、一酸化炭素による酸欠状態のため、欠陥が傷害され、動脈硬化を生ずる(実験的に、動物に、低い濃度の一酸化炭素を吸わすと、動脈硬化がおこる)。アメリカのある病院で、1950年から64年までの感に死亡した1019例について調べたところによると、大動脈の硬化は、紙巻タバコの喫煙量や期間と並行しており、中止者は禁煙者との中間。パイプやシガーでは禁煙者と大差がなかった。
(Br.m.J.69.2.22号)

心筋梗塞
 有力な危険因子の一つ。ことに若いときからの喫煙者に多い。ニコチンと一酸化炭素とで、動脈硬化および血液の凝血傾向がたかまるため、とかんがえられる。

狭心症
 明かに関連がある。ニコチンで血圧が上り、脈数が増え、酸素の需要がますこと、ニコチンによる血管攣縮、一酸化炭素による酸欠状態とのため、心筋への酸素の供給がへる結果であろうか。また、肺機能の障害による酸素吸収が減っていることもあずかっていよう。

バージャー病
 また、動脈硬化によるバージャー病(下肢の血管がつまる病気)も、殆んど喫煙家であり、喫煙によって症状が悪化する。

高血圧
 喫煙でカテコラミンがふえ、神経を刺戟し、細血管が攣縮し、高血圧を来しやすい。もっとも、喫煙家に多い偏食(肉食・精製穀・糖・アルコール)、濃厚味食(食塩・刺戟物も多い)の意義の方が、より大きいかも知れない。脳卒中 はっきりした関係はないようだ、ともいわれているが、無関係ではあるまい。

慢性胃炎
 唾液にとけた煙で刺戟され慢性の胃炎をおこす。食欲がへる(喫煙をやめて食欲が旺盛になりふとって来ることは、よく知られている)。

消化性潰瘍
 胃液分泌の増加については異論があるようだ。しかし、素因のあるものでは、血管攣縮や酸欠状態のため、局所の粘膜の防衛力に欠陥を生じ、胃液の消化をうけやすくなるのではないか。少なくとも、多くのばあい、禁煙は潰瘍の経過に好影響をあたえる。

胃癌
 胃癌との関係もいわれている。

便通
 喫煙で、一時的に胃腸管の運動はつよめられ、便通がよくなる。排便時の喫煙は、その意味で有利ともいわれる(暗示的のところが多分にあろうが)。但し、後には、かえって運動をよわめ、便秘するようになる。

肝炎・腎炎など
 喫煙により、血がねばり凝りやすくなること、血管の攣縮作用、酸欠状態など、組織・臓器への血行に不利な影響があるとすれば、肝炎・腎炎・その他の臓器の病気でも、なるべく禁煙するか、せめて節煙すべきであろう。

腎・膀胱癌
 煙の中に、微量ではあるが、ナフチールアミン(膀胱癌ができる)があること、喫煙で、発癌性のあるトリプトファン分解産物が、尿に著しくふえることなどのためか。ことに脂肪食とかさなると腎・膀胱癌が多い、という。

糖尿病
 糖尿病では、腎臓、網膜などの細血管に病変がおこりやすいので、血行に不利に影響しがちな喫煙は、なるべくさけるべきであろう。

自律神経
 冷え性、レイノー症、その他自律神経症の原因にもなっているようだ。

妊婦
 動物では、妊娠率が下るが、人間では明かでないという。妊婦の喫煙で、胎児の発育がわるくなり、未熟児・病弱児・奇形・自然流産・産後の死亡を原因する。知能の発達にもよくない。ニコチンおよび一酸化炭素による酸素不足のため、身体および脳の発育が障害される結果であろうと考えられている。

乳幼児
 乳幼児への影響は、胎児に次いで大きい。幼児の突然死は、妊娠中からの喫煙ママに多いという。ニコチンは乳へも出る。また、喫煙家庭のこどもには呼吸器疾患が多いというから、こども部屋での喫煙も慎しむべきだ(間接の、または、受身の喫煙)。

少年
 喫煙をはやく始めたものほど肺癌にかかる率も、悪性度も甚しいといわれる。せめて成年にたっするまでは禁煙すべきだ。

老人
 喫煙家は狭心症・心筋梗塞・脳卒中・癌のほか、いのちとりになりかねない肺炎にもかかりやすい。気管支・肺の抵抗力・防衛能をそこなうためだ。また、老婦人の喫煙家には骨多孔症による骨折が多いという。

タバコと寿命
 喫煙は一般罹患率をまし、総死亡率をたかめ、寿命をちじめる。
 1967年のアメリカの総死亡の48%はタバコと何らかの関連があり、関係の確実なものだけでも37%に及んでいる。36〜60才の男子について、もし喫煙者が禁煙者と同じ死亡率だと仮定すると、1/3は死ななかったことになる(つまり、それだけ多く死んでいる)。
 同年令では、喫煙者の方が早く死んでいるし、毎日の喫煙量ではその多いものほど、喫煙量が同じならば喫煙期間のながいものほど、寿命が短くなっている。
 また、病気がちなものは、45〜60才代で、喫煙者に28%多く、17〜44才代でも20〜23%多かった。
 このように、タバコは確かに寿命をちぢめ健康を害する。けれども、常習喫煙者でも、禁煙すれば、やがて、死亡がへり健康度も向上して来る。
(Shuman;Chest 59.4.1971)
 さいきん、イギリスの医師会員で、20年間追跡調査したところでも愛煙家の死亡率は、70才未満で2倍、以上で1.5倍だった。
(Br.m.J.2:1525.1976)

煙害をさけるには
 禁煙。せめて節煙。また、喫煙法の工夫。
 紙巻タバコよりはシガーやパイプ・キセルにする(ラオのながいものほどよい)。紙巻は、先端の1/10ほどだけを吸うか、フイルターつき。ただし、いずれのばあいでも、口だけでふかし、ふかく吸いこまないようにしなければ効果はないか、少ない。
 ニコチンやタールの少ないタバコの開発。
 そして、も一つ大切なことは正しい食養。緑葉養・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食。せめて、青汁だけでも十分(一日少なくとも2〜3合、もとのナッパ500〜750グラム)のむこと。
 「土・草・癌」の著者ヴォアサンが、「タバコの発癌作用は食べもので減る。タバコによる発癌がふえたのは、むしろ、防衛力の減じた今日の食べものにある、と考えられる。白パンになったことだけでも関係がある。一般栽培法の変化も同様の役割をしているだろう。なにか欠けると癌ができ、補えば防ぎうるようなものがあるに相違ない」といっているとおりだ。
(51・12)

<1978・10 遠藤 健康と青汁第266号より>




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