遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
赤地利ソバ

 ずっと以前のこと、松阪の森下先生から、特殊学級を担任されるについて意見をもとめられたとき、こちらの西小学校などでの経験から、青汁をすすめ、ケールの種子を差しあげたことがありました。
 その後、これもいつの頃だったか、すっかり忘れてしまいましたが、同先生から、「自分の所では青汁材料にアメリカソバをつかっているが、仲々都合がよいように思う」といって、見本数株をいただきました。それからずっと庭に植えていますが、なるほど、よく繁り、一年3−4回も刈りとることが出来るほどなので、冬の間を除いて、かなりの量が供給されるようです。もっとも私どもの所では青汁の材料はケールで十分間に合っているので、これはただ試作しているだけで、精々緑肥にしているくらいに止っていました。またアメリカソバの名称のいわれについても、別にふかく穿さくしてみることもありませんでした。
 それから何年もたったある秋のこと、瀬戸市の養蜂家小倉氏から、やはりケールの種子の礼として、「支那原産の赤地利というものだが」といって数株の寄贈をうけました。見るとそれは森下先生からいただいたアメリカソバと区別がつかぬほどよく似ています。ならべて植えておいたところ、やがて春になって芽ぶいたのは全く同じです。
 妙に興味がわいて来たので本草綱目をひもどいてみると、

    「茎赤く、葉は青くソバの葉ににている。七月に白色を開き、ソバのようで青い実がなる。根を薬方に用いている」

 などとあり、牧野先生はシャクチリソバと命名されていました。
 また先生著「新日本植物図鑑」には

    「インド北部および支那原産の多年生草本で、近年各地で栽培され、また野生化もしている云々」

 と記載されていました。
 葉はソバとそっくりですが、ずっと大型で縦15センチ、横20センチになるのも珍らしくありません。葉質はごく軟らく、味もよく、少々たけたものでも少しも食べにくくはありません。
 生でも(私はたいていグリーンサラダに加えて食べます)、油いため、いりな、汁の実にもなり、青汁にしても特別のクセもありません。但し、ソバの葉には日光に感作する物質があり、余り沢山たべるとカブれることがあるといいます
 (ソバ病―これは古人も知っていたことで、本草綱目「ソバの葉」の所に、「孫曰く、生で食えば刺戟を生じ身体を痒くする」と出ています―古人の経験の広さ正しさには全くおどろく他ありません)。
 あるいはこの赤地利の葉にも、同じことがあるかも知れません。しかし、いずれにしても少しだけ食べるには少しも差支はありません。なお血管を強くするというので、ひところ高血圧にもてはやされたルチンは、もとソバの葉から抽出されたものです。この赤地利も同じ仲間だけに、あるいは、こういう成分も多いかも知れません。

 これはともかく、つくり易い上に、なんしろ宿根草ですから、

  • いちど植えておけば、いつまでも利用できること。
  • 秋には枝がうんとのび出して、白いソバそっくりの白い花をつけ、ソバ形の青い実がなり、これからもどんどんふえること。
  • また、少したけた茎だと根元には気根のように毛根がついているほどで、さし芽にすれば、いくらでもふやすことが出来ること。
  • 緑肥にしようと、刈りとって、1−2寸の長さにきざんで埋めておいても、切れ端から芽が出るといった、あきれるほど生活力の旺盛な草であること。

 など、家庭菜園の蔬菜として、たしかに重宝なものの一つです。

附記
 森下武生氏(三重県大淀局区内)から、「アメリカソバ苗、送料10円で差し上げます」とのことです。ご希望の方は同氏あてお申し込み下さい。尚 友成、風早両氏のご体験によれば、余り大量に食べると、やはり日光でカブれるそうです。


<(1963・11 遠藤)健康と青汁第87号より>




ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 利用者の声 上の階層へ  
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法
Copyright 2005 08 田辺食品株式会社