遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 赤痢禍にそなえて

 昨年は、早くから赤痢や食中毒の多発が懸念されていましたが、いかにもそのとおりで、あまつさえ方々で数百名にも上る集団発生さえみられるという盛況でした。
 昔から、赤痢や食中毒は好景気にはつきもの、といわれていますが、5年つづきの豊作のあとのことです。今年も、どうやら、また随分出そうです。もっとも、このごろの赤痢は症状がかるいので、表沙汰になることは少いようですが、かくれた患者は相当多いのではないかとうたがわれます。(統計による患者数だけでも十数万をこえるほどですが、実際にはその数倍に上っているだろうといわれています)
 これほど医学が進み、よい薬が次々に出来ているのに、なぜ、こうしたことが繰返されるのでしょうか。その一つには、保菌者がふえているからだといいます。(東京での調査などでは、0.6%以上だそうです。)よい薬が出来、薬屋でらくに手にはいるので、ちょっと変だと思っても、すぐに飲む。すると簡単に調子はよくなり、下痢もとまりますから、当人は治ったつもりでまたすぐ、薬はやめてしまいます。そして「なま殺し」のバイ菌は、いつまでも生きながらえて、住みついてしまい(保菌者)、たえずまき散らされます(排菌者)。そして、何かの機会に飲食物を汚染することとなりときには恐ろしい爆発的の発生をみるといった大騒ぎのもとになります。
 また一つには、たしかに油断もありましょう。だいたい軽い上に、よく効く薬があるので、「たとえ罹っても世話はない」という安心感から、とかく、物ごとすべてにルーズになりがちです。そこへ、味覚をそそるうまそうなもの、珍らしいもの、しかも、どんな所で、どのようにしてつくられたかわからぬ、いかにもいかがわしい飲食物が氾濫しており、一方では危険な排菌者はふえている。と来ているのですから、じっさい、いつ、どこでバイ菌を食べさせられ、飲ませられるか知れたものではありません。

 ところで、困ったことには、肝腎のこの特効薬のききめが少々あやしくなって来ました。「おかしい」と思っては飲み、「予防のためだ」といっては飲む。それを、誰れも彼れもがしょっちゅうやっているものですから、バイ菌のほうはしだいにこれに馴れて来てついには抵抗するようになります(耐性菌)。
 しかもそれは、ただ赤痢に対して薬を飲む場合だけではなく、ほかの目的で使うときにも起るそうですから厄介です。たとえば、結核だとか化膿症だとかの、赤痢とは全然関係のない病気にも、赤痢と同じ薬が使われますがながくつづけているうちに腸の中に普通にいる大腸菌に耐性が出来ます。この大腸菌は、赤痢菌とは親類仲間なので、たがいに接合(二つの菌が合体すること)します。そして大腸菌の耐性が赤痢菌に移されるというのです。ますますもって新薬というものは、無暗矢鱈に飲むべきものでないわけですがともかく、こういう奴(耐性菌)には、頼みにしている薬もさっぱりききません。
 これはダメだ、と次の薬にする。それも、やがてダメになる。また新しいのを使う。これもまたダメになる……。これでは、いくらいい薬が出て来ても、結局同じことというわけですが、赤痢が実は、まさにそれなんです。田舎ではまだよろしいが、薬の濫用されている都会ほど、その傾向はひどくなっています。

 医者の方では、いろいろ薬の使い方を工夫したりなどしてみてはいるものの、しだいに薬のきかぬ赤痢がふえていることは紛れもない事実であります。こうなると、もう、病気せぬよう気をつけるほかありません。さてその予防法ですが、現代医学で、伝染病に対するもっとも有効な武器とされているワクチンも、赤痢ではトンと役に立ちません。頼りになる薬はないし、ワクチンもダメだとなると全くのお手上げです。そしてやむを得ず、流行の季節になると、みんながかりで手洗い励行だの、なま物や冷いものを食うなとか、食べすぎすな、腹巻を忘れるな、過労をしてはならんぞなどと、古めかしい養生法に声をからしているありさまです。
 それもまことに結構なことではありますけれども、この赤痢のはびこった今日です。いかに用心はしていても、どんなことでバイ菌の洗礼をうけぬがものではありません。また今日の赤痢の蔓延はあまりに薬にたよりすぎ、あまりに消極的になりすぎた予防法のために、からだの抵抗力をよわめてしまっているからでもありましょう。そこで私は、この赤痢禍に対処するには、何はともあれ、まずからだを鍛えておくべきだ、と思います。平素から緑葉食青汁を中心とする完全食をとり、寒さ暑さにならし、何でも食べて胃腸をたんれんしておけば、たとえ少々の不養生はやってもビクともするものではありません。その上に、いわれているような注意を怠らなければそれこそ万全の備えというものでしょう。
<(1960・7) 健康と青汁第47号より>




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