遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 入浴

 夕食まえのひと風呂は、夏も冬もなく、まことにたのしいもの。さて、あつ湯がよいか、ぬる湯がよいか、特別のことのないかぎり、好みにしたがえばよい。
 だいたい、日本人は欧米人にくらべ熱好きだし、強健な人は熱好き、虚弱なものはぬる湯を好む。こどもの頃、あつい湯に入れられ、陰嚢をにぎりしめて我慢させられた覚えがあるが、あれも鍛錬というものであろう。ぬるい方は、カゼさえひかねばよいわけだし、たとえブルブル震えても、やはりこれも鍛錬。また、馴れれば、年中、水風呂で結構だ。30年ものあいだ、水風呂ばかりつかって、いたって元気。カゼひとつひかず、若い連中と山野を跋渉。夏山で夕立にあいズブ濡れになったがビクともしなかったという90ちかい老健脚家がいられた。
 しかし、これらは、いずれも健康なものでのことで、弱いものや病人は、むやみなことをやってはならぬ。入浴時間また同様。きまりはない。いわゆる烏の行水のもあれば、ずいぶんゆっくりとつかる人もある。元気のよいものはそれもよい。せいぜい汗をかくだけで、とかく濁りがちな血が浄められ、気分はせいせいしようというもの。
 しかし、異常のあるものには注意が肝要。ことに、熱風呂の長湯にはよほど慎重でなければならぬ。目安になるのは疲労。浴後のつかれが残るようなばあいは禁忌だ。
 今は昔語りだが、肺結核の入浴にはひどく神経をつかった。ともすると喀血したり、急に悪化することがあったからだ。
 今で問題になるのは、肝炎、高血圧、腎炎などだろうか。
肝炎  入浴して皮膚のはたらきをよくすることや、汗を出して血液浄化をはかることが悪い筈はないのだが、なにぶんにも、後の疲れがひどい。ぐったりしてしまって、食事はとれず、夜はねむれぬ、といったことにさえなり、その回復にもひまどる。刺戟がつよすぎるためだから、適温で短時間入浴するか、あるいは、ただ汗を流すだけにとどめるなど、疲労したり、疲労の残らないよう加減すべきだ。
高血圧など  高血圧、動脈効果、あるいは心疾など、血行器の異常のあるばあい、浴温が適当であれば、皮膚の血管がひろがり、そこに包含される血液量が増えるため、心臓の負担はかるくなる。また、血行がよくなり、血圧が下るので、入浴はむしろこのましいことなのだ。けれども、いきなり熱い風呂にとびこんだり、長湯するとか、寒い時節に、あたたかい居間や浴場から出た途端によく事故がおきる。暖房のよくきいた部屋ならばともかく、一般のわれわれの家での冬の入浴には、よほど気をつけなければならぬ。
腎炎  腎炎でも入浴はやかましく禁じられる。安静が大切な急性期は、もちろん禁忌だが、ボツボツ動けだすと、はいりたくもなる。皮膚は腎臓のはたらきを助けてもいるので(皮膚呼吸や発汗で尿成分をいくぶん排出している)、入浴して皮膚を清潔にし、温めるのは、腎臓の負担をかるくすることになる。また、皮膚があたたまると、反射的に腎臓の血管がひろがり血流がよくなるので、治りをすすめることにもなる。腎炎で、安静と食事と保温が三大原則になっているのも、そのため。そこで、気候のよいころならば少しも差支ないばかりか、むしろ、すすめてよいくらいだ。問題は、やはり寒い時節で、あたたかい時をえらんで、適温、短時間入浴するか、清拭だけにとどめるのが無難だ。
 入浴回数は、健康者では好みにより、また季節にもより、春秋の好季節には、いくらか間隔をおいてもよかろうが、夏や冬は毎日でもはいりたい。
 病人では、病状、体力に応じ適宜加減する。ところで、入浴の目的はふつう皮膚の清潔。これについて養生家の説くところによれば、あまり石鹸をつかい皮膚の脂肪をとりすぎるのはよくない。入浴は毎日でもよいが、なるべく手拭でこすって垢をとり、石鹸は週1回くらいが適当だ、という。なお、肌があれる場合は油をすりこむ。熱帯地方ではヤシ脂をぬるそうだが、古代ギリシャ、ローマ時代には、マッサージをかねて香油がこのまれた。
 「油を以て身に塗り、塵穢を澡浴し、新浄の衣を著し云々」(妙法蓮華経)
 また、浴後、冷水をあびたり、冷タオルで摩擦すれば、湯ざめを防ぎ、鍛錬にもなる。

<(1975・1 遠藤)健康と青汁第221号より>




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