妊婦の食べ方 |
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妊婦は、自らの健康を維持するためにも、また胎児の発育の完全を期するためにも、十分の栄養をとらねばならぬ。 妊娠の前半期ではさほどでないが、後半にはすべての栄養素の必要量はしだいに増して来る。 熱量、蛋白質はもとより、しっかりした骨組をつくるためにはミネラル、ことにカルシウムが十分でなければならぬし、鉄は胎児の肝にたくわえられるので、それだけ余分に必要。 ビタミンも十分でなければならぬ。 不完全食では、妊娠中毒(悪阻、妊娠腎、子癇など)がおこりやすいし、胎児には発育不全、奇形などの先天性欠陥、流産、早産、死産、未熟児、新生児死亡などの異常がおこる。 正しい栄養で、これらの障害が減るか無くなる。 そして、その改善の主体が蛋白質だというので、高蛋白食として肉類や卵がすすめられる。 蛋白質の多いことは確かに大切。しかし、この高蛋白食というのは、ただ蛋白質だけ多ければよいというのではなく、よくバランスがとれていて、蛋白質も十分あるという意味。 そして、欧米で推賞されている高蛋白食は牛乳を多く飲むものだ。牛乳は良質蛋白質のほかに、カルシウムも、ビタミン(A・BことにB2・D)も多い。 だから、ほかには少量の野菜をとれば、それで十分完全になる。 けれども、わが国ですすめられている、肉類による高蛋白食では、良質蛋白質は十分になろうが、カルシウムやビタミンは乏しい。 主食として穀類ことに白米が多ければ、なおさらだ。 また、事実、肉食がすぎると妊娠障害が多くなる。 第一次大戦の欧州で、肉や脂肪がへって子癇がへったということだが、今次大戦のわが国でも同様だった。 そして、戦後、肉食の増加とともに妊娠障害もふえて来た。 以前は、少くとも明治の母親までは、妊娠中には肉食はあまりしなかった。 いや、むしろ忌まれた。そして、野菜や海藻をすすめた。 粗食や菜食しているものや民族には妊娠障害が少いといわれている。 それは、菜食では、栄養のバランスがとれやすいばかりでなく、繊維の多い食では腸内菌叢に好影響をあたえ、ビタミン合成(B群、Kなど)がさかんになることもあずかるのだろう。 ともかく妊婦は十分の栄養をとらねばならぬが、食量にはおのずから限度があり、食欲のよくないばあいも少くない。 それだけに、少量で足り、しかも十分の栄養素をそなえ、それらがうまく利用されるような無駄のない食でなければならぬわけだ。 そのためにも、良質蛋白質だけでなく、ミネラル、ビタミンにとむ食品からなる、ことに緑葉食、青汁を中心とした完全食が適当だと、私どもは考える。 なお、味はうすく。 砂糖がすぎると栄養のバランスをみだすし、食塩がすぎれば胎児に浮腫傾向があらわれるという。 ところで、妊娠とわかってからでは、その頃はもう2〜3ヶ月で、胎児のからだは大体でき上っているので、もう遅すぎる。 よい子をうむためには、もっと早く、妊娠の可能性の考えられる時、つまり結婚の時から、あるいは妊娠計画のはじめから、緑葉食・青汁に徹底し、良質ナッパを十分に添え、なるべく多くを生食し、青汁にしてうんと飲む。 そうすれば、妊娠は極めて順調に経過し、つわりその他の中毒症をおこすことはないし、いつも元気で、ふつうに仕事が出来、運動も不足せぬ。 胎児の発育はよく、お産もかるい。もっとも、生れる子供は犬の子のように痩せ、猿のように赤い皺だらけの面をしている。 この頃の赤坊のように丸々とふとって、天使のように綺麗な子では決してない。 けれども骨組はがっちりしている。 (今では、生れ落ちた時の体重ばかりいうが、以前はむしろ頭のかたさで、子供の強弱をきめた) 泣き声には力があり、乳を吸う力も強い。乳の出もよいから、子供はぐんぐんふとってゆく。 生後しばらく体重がへるのがふつうとされているが、それすらはっきりしないくらいだ。 「初生児が、胎便の重さ以上に体重がへるのは水分が多すぎるためだ。体重が重いことは少しも誇るにはたらぬ。とベルグ氏がいっている通りで、まこと、小さく産んで大きくそだてることが出来る。 もちろん、それは生物にとっては、ごく自然の現象で、きわめて当然のことで、少しも不思議なことではない。 要するに、正しい食養さえまもれば、自然の正しい妊娠、分娩、授乳が、何の苦もなく実行できる。 ところで、今一つ大切なことは、すべての食品が、良質であるとともに、かならず純正、安全でなければならぬ。 それは、サリドマイド事件からも想像できるように、また最近マスコミでも騒いでいるように、食品に付着しているかも知れない農薬・洗剤、鉱山・工場の排水、また加工食品に添加されている薬品・色素・人工調味料などが、母体には何等の影響をあたえないでも、胎児にはあるいは有害であるかも知れないからだ。 当局でも、もちろん、そうしたものの胎児への影響を、動物実験で調べてはいるようだ。 けれども、サリドマイドにしても、動物によって、明かな影響の出るものもあれば、出ないものもある。 だから、1〜2の動物でたとえ安全だという結果が出たとしても、直ちにそれを人間にあてはめてよいかどうかはわからぬ。 また、サリドマイド児のように外形に出るのでなくて、体内のどこかに、なにがしかの変化(それもただはたらきの上だけにでも)をあたえ、それが、後の発病のもとになる、といったことがないともいえまい。 こういう影響は、ながい人体実験によって、はじめてはっきりして来るので、それがわかってからでは遅すぎる。 もう、どうすることも出来ない。 だから、動物実験の結果がどうであろうと、それだけに頼りきらず、少くとも有害なものの付いたり、添加されている、あるいは、そのおそれのある食品は、つとめて避けるべきだ。 少し思いすごしかも知れないが、ながい悔を残さぬためには、気がかりなこと、危ぶなそうなことは、一切よける方が賢明だし、神経質すぎるくらいの方が安全だと、私は思う。
したがって、主食には芋類がもっともよく、次が豆・雑穀類で、米麦は少い方がよい。 肉・卵類よりは、むしろ小魚類・大豆もの。 野菜ことにナッパあるいは海藻類を十分に。 青汁せめて2合はのみたい。 調理は簡単に。味はうすく。ということになる。 (71・2)
<健康と青汁第174号より>
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