農家貧血 |
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国力の源であった農家の婦人に貧血が多くなった。なぜか。どうすればよいのか。折角、献血をしようと出かけたのに、血液がうすいとて、採血をことわられるものが少なくない、という。しかも、若い婦人。ことに農家の婦人に、それが多いというので、農家貧血と呼んでいる人もある。 原因としては、いろいろのことが考えられよう。
そして、栄養は、よほど改善されたとはいえ、まだ十分ではない。 ことに、良質蛋白に乏しく、慢性の蛋白不足に陥っていることが、もっとも重大な原因に数えられている。あるいはそうかも知れない。しかし、私どもは、むしろ、不完全食、とくに良質ナッパの欠乏による不完全栄養の結果ではないかと考えている。 某バレーチームでのできごと それを裏書するおもしろい実例として、某紡績の女子バレー・チームでの出来事を紹介しよう。 このチームのメンバーは、もちろん、年頃の若い女性ばかり。 全国制覇をめざして毎日猛練習をつづけ、その食事は3000〜4000カロリーで、蛋白質(肉類・卵など)はとくに豊富にあたえられていた。 それなのに、ある年の検診で、その大部分が、ひどい貧血に陥っていることがわかって、大騒ぎになった(事実また、体力的にも決してよくはなく、スタミナに乏しかったそうだ)。 で、当然のことながら、栄養が問題になったわけだが、それが、何のことはない、コーチがすすめて励行した青汁で、いとも簡単に解決してしまった。 これは何を語っているか かの女たちの労働は、農家の婦人よりもさらに激しいだろう、けれどもカロリーは十分にとっていたし、蛋白質も十分食べていた。それでも貧血になっていたのだから、カロリーだけでも、蛋白質だけでも、貧血は防げぬことをしめすとともに、ナッパを十分にとり、栄養を完全にすることが、いかに大切であるかを教えるものだ。 農家の婦人は、もとよりバレー選手ほどの肉は食べていないだろう。けれども、今では、以前のように少なくはないし、カロリーはむしろ十二分にもとっている。しかし、野菜ことに良質ナッパはいたって乏しい。それは、農家の菜園の状態をみれば、よくわかる。以前の農家には、かならず自家用菜園があり、野菜ことにナッパ類もよく利用されていた。今は菜園は草ぼうぼう。つくるにしても市場用野菜ばかり。良質ナッパはおろか、毎日のおかず用の野菜も、すべて店から買って来る。それも町の市場から仕入れて来たもの、という有様。 作り方もまちがっている。まず、耕しかたが不十分。 手不足のためやむを得ぬとはいえ、また耕耘機によるにしても、表土のほんの僅かだけを浅く耕やすだけ。これでは、地下に深く沈んだ、大切な痕跡成分(その中には貧血のために必要な鉄分もある)を掘りおこして、地力をたかめることもできない。 肥料にしても、化学肥料ばかりなので、不足している痕跡成分は補えない。そこで、見かけだけは立派そうでも、成分的には甚しく劣った不健全作物しか出来ない。 病気にかかりやすいし、虫害もうけやすいので、いきおい強力な農薬がつかわれ、直接それにさらされたり、それに汚染したものを食べることにもなる。 こういうことも、農家貧血と無関係ではあり得まい。 危険いっぱいの既成食品 なお、そのうえに、大抵のものは、みな、自分でつくっていた昔とちがって、漬物や味噌をはじめ何もかも、安くてうまいかも知れないが、危険がいっぱいの既成食品にたよっている。 どんな辺鄙なところでも食糧品店があり、袋入りの加工食品が山積されている。ちょっと家並のそろったところなら、専門の魚屋や肉屋や菓子屋がある。それだけ食べものは豊富になり、都市化されても来ているわけだが、それだけに食品添加物の害も大きかろう。 また、洗剤、化粧品と、生活の近代化による諸種の家庭薬品類乱用の影響も少なくないだろう。 そこで、貧血に悩む農家の方にすすめたいことは、ともかく、まず、化学肥料・農薬依存農法をやめ、少なくとも30〜40年まえまではふつうだった、深耕と堆肥を主とした健康・自然農法を復活すること。 そして、良質かつ安全なナッパをうんと利用し、緑葉食の原則にしたがった完全食をとり、青汁を飲むこと。 加工食品やインスタント食品はつとめてさけ、有害薬品類に汚染された近代生活から遠ざかること。そうすれば、貧血はいうにおよばず、昔の農家の人々がそうであったように、頑健そのものの健康体となり、少々の激しい労働にも、断じてへこたれるものではない、と私どもは確信している。 <1972・8 健康と青汁 第192号より>
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