イナゴ |
いちばんよく知られているのはイナゴだろう。秋、稲田のあぜをあるくと、それこそ一杯いたものだ。うんととって来て、竹串にさし、醤油のつけ焼にして食べた。害虫退治をかねたお八つにすぎなかったが、その栄養価は大したものだ。蛋白質にとんでおり、ビタミンことにB群が多く、中でもB2はすばらしく豊富。農村の栄養不足の補いには少なからぬ意義があったことだろう。今では農薬のため、すっかりいなくなってしまったのは惜しいことだ。先年、山形を訪ねた時、街頭で飴煮を売っているのを見かけたが、欲しそうにしていたと見え、小林さんからおみやげとして頂戴、恐縮したことがある。
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蜂の子 |
蜂の子もよく食べた。大きい蜂の巣は、とても子供の手にはおえぬので、垣根の腰細蜂くらいしかねらえなかったが、大抵は生で呑みこんだ。これまた、すばらしい栄養食品だ。
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さなぎ |
蚕のさなぎ(ビビといった)も食べたことがある。子供の頃の村では養蚕がさかんだったし、どこの家でも真綿をつくっていたので、ビビはいくらでもあった。魚寄せの団子にしたり、鰻とりのモジ(竹製の捕籠)の餌にするのが主だったが、焼いてもたべた。蛋白質・脂肪にとむ栄養価の高いものだが、匂いがよろしくない。アミノ酸製剤第1号のポリタミンはさなぎが原料だった。但し、あの特有の臭気がとりきれず、うまくゆかなかったようだ。で、ふつうは、まことに勿体ないことながら、肥料や飼料(養鶏や養魚の)になっている。
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割木の虫 |
冬、山をたてて、新しい薪を割るときころげ出る、指の太さくらいに、よくふとった芋虫(カミキリムシの幼虫)を、割り木の虫といった。つけ焼にするとなかなかおいしい。食べると、からだをあたため丈夫になるというので、よく食べさせられた。
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ガンビの虫 |
同じ効能がいわれているものにガンビの虫というのがあった。ガンビというのはノブドウのことで、その茎に喰いこんでいる虫。少し赤味をおび、割り木の虫よりはずっと小さい。串さしにして、つけ焼にした。
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青虫 |
ナッパの大敵、モンシロチョウの幼虫。春から初夏への5〜6月、秋は9〜10月の好季には、農薬をつかわないケール畑には、蝶は群がりとび、青虫がさかんにつく。そして、さすがに成長のはやいケールも、またたくうちに食い荒らしてしまうので、ケール栽培者の頭痛のたねなのだが、これまたすぐれた栄養食品。最盛期には、バケツ1杯くらいらくに集めることが出来るので、佃煮にでもしては、とよく冗談をいうんだが、大いに利用すべきものだ。
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