遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
麦飯

  麦飯にする大麦や裸麦の栄養価は、米にくらべるとかなりすぐれています。じっさい、むかしの農家の健康を保証していたのは、まさに、この麦飯と大根葉と味噌とでした。
 少くとも明治時代までの農家の多くは、牛肉はもとより食べず、魚でも「だしじゃこ」でもあればよいほう。魚らしい魚といえば、蚕上りや、豊作の秋祭に塩サバぐらいのもので、平素は殆んど麦飯とナッパの毎日をすごしていました。
 その農家から出た兵隊は、日清日露の両戦役にうちかって、近代日本の礎をきずきあげたので、麦飯とナッパは、実に、日本発展の原動力だったのです。


 むかしは、搗いただけの丸麦を食べていましたが、いまでは、殆んど押麦とか、切断麦などといった加工品ばかり。それでも、白米に比べ、蛋白質もいくらか多いし、カルシウムや鉄はずっと多く
     カルシウム対燐の比は1:5.8−6.36
     (白米では1:25。理想比は1:1−2)
     ビタミンB1は白米の倍、B2は倍以上。
     もっとも熱量にたいしB1は不足です
     (理想は熱量1カロリーにたいしB1一ガンマ)。
 という優秀さです。
 そのうえ、ありがたいことに、麦は値が安いことと、季節の関係上から、金のかかる農薬をつかうこともないので、まず、その汚染のない安全な食品といってもよいでしょう。
 ただし、押麦は漂白されているようだし、切断麦も、ただフスマやフンドシをとって、磨きをかけただけでなく、どうも漂白されているのではないかと疑われる白さをしています。
 もしそうだとすると、折角多いビタミンも、少々あやしくなってくるでしょうし、あるいは漂白剤による害も気になります。
 それに、加工後の貯蔵期間のロスもあるでしょうから、いまでは、白米も麦も、そう大してちがいはないかも知れません。



 それはともかく、これらの麦も、米にくらべいくらかよいというまでで、十分のナッパをそえなければ完全にはなりません。(大根葉で約2倍でよいようですから、だいたい半搗米と同じわけです。表および図)。
 ところで注目されてよいのは、麦飯が減食するのに都合のよいことです。それは、麦飯が米飯ほどうまくないことにもよるでしょうが、いまひとつ、麦が水加減しだいで、いくらでもふくれあがるということです。むかしの農家が麦飯を食った理由の一つはこれであったといいます(もちろん貧ゆえであったことはいうまでもないでしょうが)。



 94才までいたって元気であった、ある米どこの一老翁がこう語っていました。「米の飯はかるいから、つい腹いっぱい食ってしまう。そして、ねぶたくなり、からだがだらけて働けなくなる。麦飯は水さえ入れればうんと嵩ばる。そこで、腹いっぱい食っても(百姓は腹いっぱい食わねば力が出ん)、実際はそう大食になっておらん。
 それで、むかしの百姓は達者で働けたんじゃ。今の若いものは米を食って怠けてばかりいるが、わし等の若い時分には、米をせ負って隣村(そこは畑ばかりで米ができぬ)へ行き、麦と取り換えて来たもんじゃ」と。



 これは、減食が望ましい現代人、ことに成人病の予防や治療にとって聞きのがしできぬことではないでしょうか。池田前首相は、そのむかし、「貧乏人は麦飯を食え」といわれましたが、こうした意味あいから、戦後ふところ具合がよくなり、すっかり贅沢になってしまったお百姓はもとより、金持ちや、いわゆる文化人など、成人病になやまされ、おびやかされている人々にも、大いに麦飯を、できれば押麦や切断麦ではなく、むかしながらの丸麦の純麦飯を、すすめたいものです。


熱量 蛋白質 カルシウム B1 B2 備考
押麦 337 8.0 24 140 1.5 180 70
切断麦 8.8 22
白米 351 6.2 150 0.4 90 30
大麦100g+ 435 18.4 404 200 4.3 6000 380 670 180 押麦
大根葉200g 19.2 402 切断麦
麦こがし 344 10.8 42 350 4.5 250 80
カロリー mg mg mg 国際単位 ガンマ ガンマ mg
 なお、麦飯粒は少々すべっこくて、うまく咀みにくい欠点があります。これは粉食にすれば簡単に解決できることです。丸粒のままでいり、粉にした「麦こがし」(はったい粉)の成分のよさ、ことにビタミンB1の多いことは(表参照)、いっそうその必要を感じさせます。


一日摂取量に見た、大麦100+大根葉200の成分バランス
大麦+大根葉

 (図は理想的と考えられる釣り合いを基準としたもので、ミネラルやビタミンがカロリーや蛋白質の高さにそろうか、それ以上あれば、うまく釣り合っているか、むしろ余裕のあることをしめす。
 訂正 1月号ソバ粉の成分表でB1B2の単位がミリグラムになっていました。謹で訂正します。)



<1965・3 健康と青汁 第103号より>




ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 利用者の声 上の階層へ  
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法
Copyright 2007 08 田辺食品株式会社