慢性腎炎 |
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慢性腎炎には、急性腎炎から慢性になるものと、いつ始ったかわからず、たまたま検診で発見されるといったものとがある。 なおる腎炎 腎炎は、急性のものは完全になおるが、慢性になると、もはや完治することはないとされ、半年も経って治らなければ、もう治る見込はないようにいわれていた。 しかし、今では、慢性の腎炎も全部が不治ではなく、なかには2年〜3年、5年〜10年もかかるかも知れないが、完全に治るのがある。つまり、慢性の経過はとるが、まだ治る急性腎炎の状態がつづいているのがあることがわかっている。だから、慢性腎炎と診断されても、すぐさま、もう駄目だと諦めてしまったり、やけくそになって大切ないのちを粗末にするようなことがあってはならない。 治す薬はない ただし、腎炎を確実に治す薬は、今のところまだできていないから、昔ながらに正しい養生法をまもって、自然になおるのを待つほかない。 それには、できるだけ腎臓を刺戟し、負担になるような、ためにならぬ条件はつとめて避けるようにし、ためになる良い条件はなるべく益すように心がけることで、以前から心身の安静と温保と正しい食養が大切といわれている。
なるべく安静にする。但し急性のばあいのように厳重にする必要はない(比較的の安静)。 これまた急性の時ほどやかましくいうことはない。しかし、からだが冷えると腎臓の血管が収縮し、血行が悪くなるから、なるべく温かくし、急に、また強く冷すことはさける方がよい。 なるべく寛大に、ということにはなっている。けれども一旦いためられた腎臓は、抵抗力がよわくなっているので、刺戟になるものはなるべく避け、負担を軽くするようつとめなければならない。 蛋白質はもっとも腎臓を刺戟・負担する。その分解産物が主として腎臓がら排出されるからだ。しかし、健康の維持のためにも、病腎の修復のためにも絶対必要なもの。 そこで、なるべく質のすぐれた利用効率のよい(それだけ少量で足る)もの。そしてエキス分(これも刺戟になる)の少ないものが適当といわれている。
動物蛋白は質的にすぐれている。
卵・乳 卵や乳は栄養的にすぐれ(卵は半量、乳は1割のナッパで完全になる)、エキス分もない。しかし、これにも安全性については同じ。 植物蛋白 植物蛋白は一般に質的に劣るとされている(穀・雑豆・芋には必須アミノ酸が不足)。但し、大豆蛋白は動物にちかいし、緑葉蛋白は動物蛋白をしのぐ優秀蛋白であり、いずれも無刺戟性。また、農薬汚染さえなければ安全でもある。 なお、良質緑葉には蛋白節約能があるので、少量の蛋白質でも、よく需要をみたすことができ、腎臓にたいする負担はそれだけ軽くなる。したがって腎炎の蛋白源としては、これら植物蛋白がもっとも好適しているわけだ。 排出は主に腎臓で行われ、かなりの負担(刺戟)になる。急性腎炎の初めに厳重に制限されているのは、そのため。慢性腎炎では、ふつうあまり制限されていないが、やはり少ない方がよい。 というのは、食塩の必要量は、特別のばあい(強い発汗、下痢、嘔吐など)を除き、ごく少量にすぎず(1日2〜3グラム)、その程度にはふつうの食事には十分含まれているので、それ以上は健康者でも無くてよく、まして腎炎ではただ腎臓の負担を益すだけのものだからだ。 砂糖 砂糖は、一般には、少しも差支えないものとされている。しかし、砂糖ことに精製糖は、その体内処理に必要なビタミンBを欠くため、B不足をおこしやすい。 そして、B不足たけでも腎臓がおかされることが動物実験でわかっている。しかも病腎はこれにたいし、とくに敏感なので、Bが十分あるばあいはともかく、とかく不足がちな食では、砂糖はかなりの刺戟になる。(私は、親子2代にわたって、数名の腎炎の出た砂糖問屋の一家を知っている)。 そこで、味つけはうすく(塩分も糖分も少なく)する方がよいし、菓子にはさらに添加物の害も加わるから、これもつとめて避くべきだ。 主食類 ふつう無刺戟性のものとされている。 けれども、
小麦粉は2倍のナッパで完全になるが、漂白によってビタミンが失われ、漂白剤の残留、また製品(パン・ウドンなど)では添加物も気にかかる。 芋類(ジャガイモ、サツマイモなど)、半量のナッパで完全になるし、農薬の心配も少ない。 すなわち、芋類が栄養的にも安全性においても、もっともすぐれ、小麦これに次ぎ、白米もっとも劣っており、腎臓にたいする影響も、芋類もっとも軽く、次に小麦。白米がもっとも強い。 これは腎炎患者でためしてみるとよくわかる。たとえば、芋食で蛋白の殆んど出ないものでも、小麦では少し出、白米だとずっと強く出る。つまり、無刺戟といわれている主食類でも、その性質によって、腎臓にたいする刺戟性にはかなりの差があるわけだ。 腎炎食 そこで慢性腎炎の食としては、まず安全であること(危険な農薬や産業廃棄物あるいは添加物などによって汚染されていたり、そのうたがいのあるものはつとめてさける)、とともに蛋白食にも、主食にも、なるべく刺戟性の少ないものをえらび、十分の良質かつ安全なナッパを主とする野菜・山菜・海草・果物などをそえ、調理は簡単に、味つけはうすくし、全体としてよくバランスのとれた完全食になるようつとむべきだ。 そこで、主食には芋類、蛋白食には大豆がよいわけで、これに良質ナッパを十分にそえたイモ・マメ・ナッパ・青汁食が最適であり、せめて青汁だけでもうんと(1日少なくとも3合。5合でも6合でも)のむべきだと考える。 表はその大体をしめしたもの。
ところで、とかく問題になるのが野菜にカリウムの多いこと。 カリウムは食塩と同じく主に腎臓から排出されるので、腎臓が悪くなると血中量がふえ(高カリウム血症)、不利な影響をあたえることがないとはいえないからだ。 しかし、腎炎でカリウムが出なくなるのは、いよいよ末期のばあいだけだし、カリウムの多いものはナッパに限ったことでもない(主食品にも蛋白食品にもかなりある)。 だから血中のカリウムが少々多いようでも、ともかくやってみる。 そして、大して影響がなければそのまつづけてゆけばよし、もし調子が悪いか、しだいに悪くなるようなら、そこで止めればよろしい。現に、尿毒症状があり、人工透析(人工腎)をすすめられたほどだったのに、熱心にやって、やがて、社会復帰できるまでに、よくなった人もある。 香辛料 胡椒、カラシ、唐辛子、ワサビ、カレーなどはもとより、野菜類でも刺戟性の強いもの(カラシナ、ニンニク、生玉葱、生大根など)はさける。但し少量を薬味に用いるくらいは差支えない。 嗜好品
その他 便通は毎日快適、ねむりは十分に。そして、万事ひかえめ、無理をせぬ。また、薬の乱用をさけるなど、日常諸般の合理化につとめること。 (1974・2:遠藤仁郎)<健康と青汁215号より>
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