遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 くだもの

 嗜好品として好ましいものは果物。日常食にとかく不足がちなビタミンやミネラルの補いにも、いくらかはなるので、間食には、なるべく果物といいたいところ。だが、困ったことに、今では濫用される農薬のため、殆どすべての果物が、必ずしも安全とはいえなくなっているのではないでしょうか。
 リンゴにも、ミカンにも、イチゴにも、モモにも、ナシにも、ブドウにも、スイカにも、メロンにも、カキにも。病害虫防除のためや、鮮度保持のため。または、味をよくするためにも、危険な農薬が、ずい分無造作につかわれているようです。
 リンゴ地方で、学童が中毒したこと、ガスマスクをつけて通学している姿が、いつかのテレビに紹介されていたが、この辺でも、果樹の消毒期には非農家にも肝臓をやられる人が少くありません。イチゴ狩に誘われ、知人の畑に行った。真紅に熟したイチゴがいかにも美味しそう。摘んで食べようとすると、「おっと、それは市場用」と、別のところに案内された。マサカと思われようが、本当の話です。
 この頃のミカンは春晩くまで、まるでとり立てのような新鮮さと色彩を保っています。その秘密は、採取後の着色ワックス処理と冷蔵によるようですが、農薬につける「手」もあるらしい。一粒十何円、いや季節によっては何十円、もする高級ブドウの房の切口には綿がくるんであり、説明書には、鮮度がいつまでももつ、と書かれています。菜っ葉や、トマト、キウリ、ナスなどの鮮度をながくもたすために、出荷前ホリドール液に浸ける、ということを思い合わせ、なんとも気味のわるいことです。
 あの酸っぱかったナツミカンが、最近甘くなった。農薬の砒酸鉛のせいだといいます。吸収されて、酸が少くなるためらしい。食べよくはなったが、砒酸にしても、鉛にしても、決してためによいものではありません。等々。ともかく、いろんな農薬が、いろんな目的で、ジャンジャンつかわれています。

 もっとも、いかに猛毒がつかわれていようが、食べる時分に毒力がなくなっているか、取り去ることが出来るものならば、少しも差支はありません。農薬の中には、ただ表面についているだけのものもあれば、滲透性で中までしみこんで行くものもあります。また、その毒性にしても、はやく分解して消えてしまうのもあれば、いつまでも残るものもあります。表面についているだけの農薬は、よく洗うか、皮をむけば、その毒はさけられるが、滲透性のものは、いかによく洗っても、皮をむいても、とり除くことは出来ません。そして、やがて分解して毒力のなくなるものは、ともかくですが、分解しにくいものは、いつまでも残っているわけです。もちろん、中毒するかしないかは、食べる分量にもよります。少々の毒はあっても、食べる量が少いか、たまさかであれば、無論、大した影響はありません。私は果物が大好きなのと、人間が下種に出来ているので、つい食べすぎるからでしょう。
 モモでも、ブドウでも、スイカ、リンゴ、ミカンなどでも、ともするとジンマシン様のかゆがりが出ます。以前にはなかったことなので、どうも、農薬のためと思えてなりません。そこで、果物については、安全であることのハッキリしているもの以外は、せめて皮をむいて、お上品に、少しだけ食べるべきで、無鉄砲な大食いなど、決してやってはなりません。
 先年、見知らぬ行商人から買ったスイカで生命をとられた事件があったそうですが、おそらくこれは、消毒直後と知らずにコッソリ盗んで来たものではなかったろうか。ともかく、素性のわからぬものは食ってはならないし、昔、悪戯によくやった水瓜泥や果物荒らしなど、うっかりやってはなりません。

 かなり旧聞に属するが、香港で日本産リンゴの中毒事件がおき、輸入が禁止されたことがありました。リンゴは皮ごと食べる方がずっと香りもよいし、外国ではみなそうしているので、ついていた農薬にあたったわけです。ミカンの外皮には、果肉よりも栄養分は多いし、香りもよいので、皮ごと食べる方が遙かにうまい。私も以前はそうしていたし、すすめてもいました。けれども近頃では、農薬(有機弗素剤がすごくつかわれている)のおそろしさと、収穫後処理の色づけの不安さとのため、皮をすてるのは勿体ないと思いながら、やめてしまいました。
 もっとも、最近、厚生省はリンゴ、トマト、キウリなどの残存農薬の許容量について発表しました。それは、一生涯食べつづけても安全な量だということです。しかし、はたして、これが真面目に守られるでしょうか。また、当局は、どのようにして監視するのでしょうか。なんでも、抜きとり検査をするのだそうですが、その結果がわかるのは、もう売りさばかれた後だともいいます。これでは全く無意味に等しい。たまさかの検査だけで実効の上る筈はないが、現在の手薄な陣容で、十分頻回の検査が出来るだろうか。甚だ心もとない次第である上に、汚職流行の当今のこと、検査そのものが、はたして、どこまで信頼できるだろうか。これでは、いかに立派な法律が出来ても、結局はいわゆるザル法に終ってしまうのではないか。たとえ、また、きめられたものだけについては厳重に実施されるとしても、多くのものはまだ野放しになっているのですから、まだまだ、手放しで安心するのは早すぎるわけです。

 ともあれ、こうした薬剤の応用は、いずれも、科学のめざましい進歩、撓まぬ研究のたまもの、輝かしい成果というものではありましょう。問題は、ただ、その際に使用される薬剤の人体への影響です。それが絶対安全、無毒無害のものばかりであれば、われらとて、双手をあげて喝采し、感謝するにやぶさかではないが、はたしてどうでしょうか。缶詰果物 缶詰、瓶詰などの加工品ともなれば、なおその上に、人工甘味、人工着色、人工香料、あるいは防腐剤、その他もろもろの薬剤が添加されており、その中には有害なものがないとは保証のかぎりでありません。
 少くとも最近まで、人工甘味には、諸外国では厳禁されているズルチンが使われていました。たとえば、輸出用のモモの缶詰は砂糖で味つけされているが、内地向けはズルチンでした。(ズルチンはいよいよ全面的に禁止されることになりましたが、許されている他の人工甘味料も、今のところ無害ということになっているだけで、ながい間に、はたして、どういう結論が出るか、知れたものではありません)缶詰をもとめるばあい、かならず、レッテルを念入りに隅から隅まで、よく見てください。小さい活字で(時には虫メガネでなければ見えぬほど小さい字で)「人工着色、人工甘味使用」と記入してあります。中には、ビタミンを強化したものもあるようですが、加工品はあくまで加工品。自然のものの味もなければ栄養価もありません。こうした加工品は、(次のジュース類も同じ)、健康なものが、たまに食べたり飲んだりするのは、まだしもでしょうが、常用するのは断じて不可。まして、病人や子供や老人には、もってもほかのことだし、妊婦などには、とくに注意が肝要です。
 果物ジュース ジュース類も同じです。天然果汁と銘うっているものでも、純粋のものはない、といっても、まず間違いはないでしょう。すべて人工品。色も、味も、香りも、すべて薬品。それに防腐剤もはいっていようし、ネバリをつけたり、沈殿をとめて液を濁らせておくのも、みな薬品だ。いわゆる濃厚ジュースはいうまでもない。果汁がほしいなら(もともと、そう有難たがるほどのものでもないのだが)、かならず生の果物からしぼった純粋の汁にすべきです。なお、果汁をつくるにあたっても、ミキサーなどにかけると、栄養分の減ったり無くなるものもあるし、だいいち味が不味くなる。したがって砂糖など入れることにもなる。果物というものは、歯さえよければ、そのままかんで食べるべきです。そして、どうしても、しぼり汁がほしければ、手おしジューサーのような圧搾するだけでとった汁にする方がずっとよろしい。
<(1968・10 遠藤)健康と青汁第146号より>




ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 利用者の声 上の階層へ  
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法
Copyright 2005 08 田辺食品株式会社