遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
肝臓をまもるには
 ちかごろ肝臓の悪い人がすごく多くなったようです。
 私どもの病院でも、10年もまえにはさほどでなかったのですが、その後、年々ふえ出し、現在では、内科入院約250名中、肝臓の悪い人はなんと実に35−40名に上っています。そのうちには、ビールスによる流行性肝炎もあり、いわゆる黄色い血の輸血によっておこる、やはりビールス性の血清肝炎(輸血性肝炎)もあります。しかし、そういうはっきりした原因のない慢性の肝臓病も少くないのです。どうしてでしょうか。
 これには、今日の誤った日常生活、ことに食養のまちがいや、いろいろの薬品類の濫用といったことが、大きく関係しているのではないでしょうか。肝臓には、複雑かつ多岐にわたる機能がありますが、中でも大切なのは解毒機能です。体内で出来たものであろうが、体外からはいって来るものであろうが、およそ体のためにならぬもの、有害なものは、すべて肝臓で処理され解毒されます。


体内毒  代謝の過程中にできる有毒産物(中間代謝産物)、腸管内での分解で発生する毒素、心身の活動によって生ずる毒素(疲労物質)など。
体外毒 酒、タバコ。変質した食品たとえば黄変米や腐敗食品にできる毒素、農薬、食品添加物(種々の薬品、色素、人工甘味、香料)、洗剤など飲食物に付着あるいは混在して摂り入れられる有毒物。さらには医薬品、ことに最近の有力な新薬類には肝臓を悪くするものが少くありません。

 従来の習慣食は穀類、肉、糖、脂、酒に傾き、良質野菜が少いので、熱量源(糖質、脂肪、蛋白質)ばかりが多く、それらの体内処理に必要なビタミンやミネラルが乏しいという、甚しい不完全食になっておるために、代謝は不完全となり、有毒代謝産物が出来やすいので、それだけでも、肝臓にかかる負担は大変大きいのです。

 ところが、その上に、食品そのものは、殆んどすべてが、大なり小なり加工され、種々の有害物をもった飲食物となっています。そして、原料食品(農、畜、海産品とも)や飲料水にいたるまで、農薬や洗剤あるいは工場廃液による汚染をうけています。空気もしだいに汚れて来ました。さらに医薬品、ことに新薬類は甚しく濫用されている、という今日です。
 その一つ一つに含まれている有害物の分量は、あるいはとるに足らぬほどの微量であるかも知れません。しかし、空気からも、水からも、食物からも、また医薬品からもと、いろいろの毒物がとり入れられていれば、結局、それを始末しなければならぬ肝臓は、たえず過労の状態においこまれざるを得ません。それだけでも度がすぎれば、ついには肝臓をいためるにいたるでしょうが、こうして疲労をかさね、抵抗力を弱めているところへ、ビールスなどといった発病因子がやって来れば、すぐにもまいってしまうでしょう。こういうわけで、肝臓病時代といってもよいようなことになってしまっているのではないでしょうか。そうしてみると、この肝臓病も、いろいろの点で不自然不合理になっている、いわゆる文化生活のためにはぐくまれた文明病の一つといってよいでしょう。

 ところで、現在、肝臓病の予防、治療には、まだ、これといったきめてはありません。いま流行の肝臓薬にしたところが、あまり当てになるものはありませんし、中には、却って、有害なものもないではありません。それは、薬なるものの本質からもわかることです。肝臓に効く効かぬを決めるには、いろいろある肝臓の機能のうちのどれかを目安にして、それが、この薬によって強められるかどうかを調べて決めるのです。しかし、そういう作用のあるものも、すべてが肝臓のためによいものばかりではありません。
 たとえば、私どもの社会にとって迷惑なものが、何かやって来たとしましょう。すると、そこには、必ずや、この招かざる客の害を受けまいとする、活発な防衛運動がおこるに相違ありません。この際、このちん人者そのものは好ましくないものですが、そうした社会活動をあおりたてる刺激、つまり薬にはなるわけです。
 それと全く同じことが、肝臓薬でもいえます。大量は有害なものでも、ほんのチョッピリであれば、肝臓は極力これを排除しようと努力し、その活動をさかんにするので、肝臓機能をたかめる薬になりうるわけですが、その度がすぎれば却って肝臓を害する可能性は十分にあります。
 そのよい例は、以前もてはやされたメチオニンです。これが発売されて間もない、私どもでもまだ入手の容易でなかった頃のこと。肝臓病であったある薬剤師が、「最新の良薬」とばかり無暗にのみ、ために病状が急に悪化したのを診たことがあります。
 このことは、その後、学会でもやかましくなり、今ではもう使われなくなってしまいました。グロンサンまた同様。甲論乙駿、いまだ帰一するところのないのは周知のとおりです。その他、曰く何、曰く何と、全く雨後の筍のごとく、肝臓薬は市場にあふれていますが、それらの効果について確定的なものは何一つありません。
 それはちょうど、最近の特効薬の出るまでの結核薬さながらで、よいという薬が多いということは、本当に効く薬はないということですし、中には、好ましくない副作用のあるものもないではないのですから、薬だけに頼るべきではないし、そうした薬の使用はすべて、医家の指図によるべきもので、マスコミの宣伝にのせられて、出鱈目の素人細工は断じてやるべきではありません。
 まして、嗜好飲料なみに店頭で飲むアンプル薬などとんでもないことです。また、ああいったものが濫用されていて、しかも弊害がないというのであれば、それは、恐らく、いわゆる毒にも薬にもならぬものに相違ありません。

 そこで、肝臓の病気にとりつかれぬためにも、また、その治りを早めるためにも、もっとも大切なことは、肝臓を愛護し、その抵抗力を強くする以外にはないわけです。そのためには、まず栄養を完全にすること。良質青菜の葉を十分に配した緑葉食、青汁。また、さらに肝臓を加えた肝臓緑養食、青汁など、うまく調和がとれた―良質蛋白質だけでなく、ビタミン、ミネラルに十分余裕のある―食をとり、代謝の完全をはかって肝臓の負担を軽くするとともに、肝臓の機能をよくし、つねに十分の余力をたくわえておくこと。
 また、つとめて有害物をとらぬよう注意すること。個々の食品は、すべて、必ず安全、無毒性の純正食品とし、農薬のかかったものや、有害添加物の危険のある加工食品をさけ、洗剤の使用にも慎重であること。そして、日常生活を合理化し、適度の活動と十分の休養をとって心身の過労をさけ、便通をととのえ、尿利をはかり、飲酒、喫煙、甘味の濫用を慎しむばかりでなく、薬の便用にも十分の注意を払うこと。
 これらは、いかにも平凡極まることがらであり、また、いかにもまわり遠いようですが、肝臓をまもるには、やはり、これが一番確実であり、根本的なことだと私は確信しています。

<(1965・7 遠藤)健康と青汁第107号より>




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