遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 胃潰瘍(1)

 ちかごろ胃潰瘍や十二指腸潰瘍が大変多いようです。病気でもそうですし、ケールの種子をもとめる来信のうちにも、ずい分とあります。
 この病気は、薬をのめば苦痛はなくなりますが、やめれば、また元の通りになるとか、ある時間がすぎると、一応はおさまるが、その時期がめぐって来ると、また現われる、といった風で、いつまでも再発をくりかえし、しだいに高じてゆくという、しつこい、根治しにくいものです。
 いわば一つの体質病で、潰瘍のできやすい体質になっているといってもよいでしょう(潰瘍体質)。
 しかし、体質とはいっても、別に、生れついた性質とは限らず(親にあり、その子にもあり、まるで遺伝病のように感じられる場合も珍しくありませんが)むしろ、ながい間の誤った日常習慣から招かれた体質上の変化と解すべきものです。

 1 荒がみの習慣
 かみ方が悪いと、
 (1)直接には、不消化物による負担過重のため、胃は疲労しやすく、過冷過熱食や刺戟物の影響をうけやすいので、ながい間には、慢性の胃炎をおこし、潰瘍の下地をつくります。
 (2)また間接には、栄養の不均衡を招いて、潰瘍素質をつくることにもなります。
 やわらかく炊いた主食や動物食は、比較的こなれやすいため、さほどよくかまなくても吸収されようが、果物や野菜ことにナッパ類の成分は、かたい線維の中につつまれているので、よほどよくかまなければ、吸収されません。
 そこで、たとえ食構成は完全でも、結果として、熱量や蛋白質ばかり多く、ミネラルやビタミンは少いという、不完全栄養になります。まして、もともと野菜のとり方の少い食では一層その影響は大きいわけ。
 その結果、代謝は不完全となり、有害な中間産物ができ(所謂血がにごり)、一方では胃の抵抗をよわめ、他方では胃の機能を調節している神経や内分泌の変調をおこして、ともに潰瘍の発生を促がすこととなります。

 2 食のこのみ
 また食物に対する嗜好から、もともと、食構成がまちがって来ています。
 潰瘍家にはご馳走食いが多いようです。
 真白についた米飯を、魚や肉や卵などの、砂糖をしっかりつかって美味しくたいた添物ばかりて食べ、野菜はきらい。菓子は食う、酒はのむ、タバコは乱用する。(この傾向は、食糧の豊富になった現在はとくに甚だしい)
 これでは、タバコ、酒、菓子、刺戟物、濃厚味の直接の害のほか、熱量、蛋白質ばかり多く、ミネラル、ビタミンは不足する不完全食となり、そのため体液の変調、神経の興奮異常を来して潰瘍のもととなります。

 3 有害食品
 さらによくないことは、便利な既成食品、インスタント食ばやり、加工、貯蔵食品が氾濫し、愛用されていること。
 これらでは栄養価の低下のまぬかれぬ上に、有害な添加物(種々の薬品、色素、人工甘味など)の害も加わります。
 ために、直接胃を悪くするものもあれば、調節系をおかして間接に影響を与えることもあります。

 4 農薬
 その上、農薬ことに滲透性の猛毒類の害さえも加わっている状態です。
 農薬はいずれも神経毒(ほかの臓器ももちろんおかされるが)。神経系をおかして潰瘍の下地がつくり上げられます。梁瀬先生によると、農薬使用の多い農村には、とくに潰瘍が多いそうです。

 5 ストレス
 そして、今日のテンポの早い、いそがしい、刺戟の多い、いらだち立った、不自然きわまる日常生活。
 神経興奮、睡眠不足による心神過労。
 これを紛らすためには刺戟興奮性飲食物、さらには医薬品の乱用も加って、神経をすりへらすことは甚しく、神経衰弱、ノイローゼ傾向は、いわゆるストレスとしても潰瘍の発生をうながすことになっています。
 こうした悪条件の累積で、今日のように胃のよわいもの、潰瘍に悩むものが多いのでしょう。潰瘍が文明病、文化病といわれるのもそのためです。

 そこで潰瘍家にすすめたいことは
 (1)いかにも、今ではよい薬ができてはいますが、これだけにたよらず、
 (2)かならず同時に日常生活、ことに、食を中心とした日常生活の合理化、根本的建直しをはかること。

 1 休養
 潰瘍や胃炎では、胃は興奮しやすい過敏状態になっています。つまり、感じばかり強くて、抵抗力はよわく、疲れやすいのです。
 だから、負担をかるくして、なるべく胃を休ませることが肝要です。
 (1)それにとって、最もよさそうに思われるのは断食ですが、これは一時的のものだけに余り意味がありません。
 (2)むしろ、食事の回数をへらし、また1回量を少くしてよくかむこと。間食や夜食はやめること。
 回数は1日2食でも1食でも結構。
 1回の量は、いわゆる腹八分。つねにいくらかづつの余裕を残して食べ、次の食事までにこころよく腹のすくように加減すること。

 2 食構成
 つとめて安全な純正食品のみをもちい、食全体としてよく調和のとれた完全食でなければなりません。
 主食はひかえめ。白米飯よりは粗搗米、玄米、麦、芋、豆の雑食。
 蛋白食品は必要量にとめること。
 糖分(味つけの砂糖、間食類)はできるだけ少く。
 野菜ことに質のよい(吸収されやすいカルシウムやビタミンにとむ)青ナッパ類はできるだけ多く。しかも、なるべく多くを生食すること。
 青汁(刺戟のない)は、なるべく多く飲む。
 これは、栄養のバランスをとる簡便法であるばかりでなく、潰瘍面にたいする葉緑素の直接効果も期待されます。(以下次号)

(S37・11:遠藤仁郎)<健康と青汁75号より>

 胃潰瘍(2)

 3 調理
 なるべく簡単に。ナッパ類はつとめて生食。潰瘍の出来るような人の食にはビタミンCが少いといわれていますが、これは食構成が不適当なだけでなく、煮すぎるからでもありましょう。また、潰瘍の発生を防ぐ作用があるというビタミンUは、ながく貯蔵したり、熱をあてると壊れやすいものです。生で食べれば、そのどれもを充分にとることが出来ます。なお、ナッパ類は、生がいちばんかみつぶしやすいので、消化吸収の率もよいわけです。

 4 調味
 なるべくうす味。味が濃いと胃にもたれます。その上食塩は胃酸を多くしますし、糖分がすぎると栄養のバランスをみだします。また調味料そのものも、なるべく自然のままのものまたは添加物のない純正安全なものばかりにしたいものです。

 5 咀嚼
 ともかくよくかむこと。少くとも一口30回、多いほどよろしい。ご飯なら、口の中でオモユのようになるまで。胃が悪いから「ご飯」を「カユ」にし、「おさい」は「うらごし」にする、というのは、かまぬことを前提にしてのことです。かたいものでも、よくかみさえすれば、少しも差支はありません。かめない場合は、まず歯をなおすこと。それも出来なければ、やむを得ず、何もかもすりつぶして食べる。但し、それでもよくかみ、つばとよく混ぜて。こうすれば、食の量は少くてすむし、過冷、過熱、あるいは刺戟物の害も防ぐことが出来ます。

 6 食事時間
 規則正しい方がよいことはよろしい。しかし別に、そう窮屈にこだわる必要はありません。要するに、よくかめばよいので、不規則な食事よりもかみ方の足らぬことの方がずっとよくありません。

 7 嗜好品

    菓子  ほとんど熱量源、ことに澱粉と砂糖ばかり。これに釣り合うべきミネラルやビタミンが乏しいため、栄養のバランスをこわします。その上添加物(色素や人工甘味など)の害ももありますから、つとめて避くべきです。(菓子ずきには潰瘍が多いものです)
    冷菓  アイスクリーム、アイスキャンデー同様。純正品の少量はよいでしょうが。
     アルコールの強いものは直接に胃を傷け、これが慢性になると潰瘍にもなりやすい。また栄養のバランスをみだすことは砂糖や菓子と同じです。もとより病状、酒の種類や量にもよることですが、なるべく避くべきもの。
     茶そのものは少しも差支ないのですが、問題はお茶うけの菓子にあります。紅茶、コーヒーも同様、砂糖に注意。
    清涼飲料  純正品、たとえばプレーンソーダなど、少量はよろしい。大量は炭酸ガスのため危険なことがあります。
    人工着色  人口甘味、人工香料のはいったジュース類、サイダー、ラムネは避けること。
    喫煙  直接には胃炎をおこし、また神経を刺戟して間接に潰瘍素質をつくります。嗜好品のうちではもっともよくないもの。つとめてやめること。精々2−3本ないし数本に制限。また、なるべく長いキセルで吸うこと。

 8 便通
 通じが悪いと潰瘍は治りにくいので、いつも快く通ずるよう気をつけること。今までの普通の潰瘍食は消化のよいものが主であるため、便秘傾向になり、却って治りを妨げています。(といって、薬で加減すると、これがまた癖になってしまいます)なるべく線維の多いものことに生の青ナッパをよくかんで食べ(かみ切れぬものは出す=かみ出し)、自然の便通をはかります。

 こういう風な食べ方にすれば、自然、食べる量はへり(腹八分)胃の負担は軽くなり、栄養のバランスもとれて来ます。そして一面、気分は落付いて来、神経の興奮性も低まり、物事に動じなくなり、よくねむり、疲れなくなるので、いろいろのストレスに対する抵抗力も増して来ます。
 そして、よほど頑固な胃病でも、おいおいよくなって来るものですし、食べ物の選択も、そうやかましくやらなくてもよいようになりますから、食養生もずっとやりよくなります。

食禁
 どんな病ででもですが、とくに潰瘍では、やれあれはいけない。これはいけないと、禁食品が多いものです。しかし、いたずらに食禁をきびしくするより、「安全純正食品による完全食」という原則の下に、なるべく寛大にし、融通性をもたせ、禁食品はなるべく少くすべきです。
 食養生は、一時的の投薬とはちがい、厳格にいえば生涯つづけなければ意味のないものです。それだけに、余り厳格にすぎては実行しにくい。「良い」、「悪い」、といったところが、それは人により、また分量によることなので、たとえ「悪い」というものでも、ためしに少しだけ食べてみて、何ともなければ、それはちっとも差支はありません。
 このように、完全食という条件の下でさえあれば、安心して食べられる食品をしだいにふやしてゆくことが出来るので、食養生はさらにやりよくなるわけです。

<健康と青汁77号より>




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