遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 不食河豚説

 松蔭先生の幽室文稿に不食河豚説というのがあります。
 「世に言ふ河豚毒ありと。其の之を嗜む者特に衆し。余独り食はず。死を懼るるに非ず、名を懼るるなり。夫れ死は人の必ず有る所、固より懼るるに足らず。然れども死生亦大なり。苟も一魚の小を以て死生の大を致すは顧ふに士名を辱めずや。或は謂ふ河豚必ずしも毒あらずと、然れども死は人の必ずある所にして又予期すべからず。且世固より病無くして死する者あり。況んや其の万に一毒あり嗜みて之を食はば、安んぞ其れ偶死して名を辱めざるを保たんや。或は謂ふ河豚の美衆魚の比に非す、食はざれば其の美を知らずと。夫れ清人悪む所の阿片煙、その味蓋し美ならざるに非ず、其の味愈々美なれば則ち其の毒愈々深し、故に今日河豚を嗜む者は必ず他日阿片を貧る者なり」。
 よくあたるからか、めったにあたらぬからか、テッポウと名をとり、雷と名に負うているだけに、たまにではありますが確かにあたり、ひょっとすると生命をとられます。私自身でも今までに少くとも三人はそれでやられたのでみています。
 これで死ぬのはほんとうに死んだのではない、往々蘇きかえることがある。だから急いで埋葬するものでない。昔は首だけ出して土にいけたものだ、などともいわれていますし、古い物の本には色々毒消しになる草の名などもあげてあります。
 また、むかし鞆の浦で大漁があったとき、中毒が続出したが、ツワブキで治ったという話もあります。
 すると、緑葉食や青汁をやっておればめったにあたりもすまいし、治ることもあるかも知れません。けれど私の患者の場合は、そんなことは知らなかったずっと以前のことでしたし、学校では無論そんなことは教えてくれません。
 よいという方法はいろいろ講じてみたが、息をひきとってしまったので、死亡診断書を書いて渡したまででした。今でも大概はそうであろうではないかと思います。
 こうした言伝えを知っている老人でもおれば、「ちょっと待て」ということにもなるかも知れませんが、だいたいみんなせっかちですから、息をふきかえしても、もう墓石の下か焼場の竃の中でしょう。いずれにしても、うっかりフグなどで死んではつまりません。

     雪の夜フグだんべいと藪医おき(川柳)

 寒い冬の夜につきもの。味も格別よい相ですし、ポカポカとからだのあたたまるのが何より快いんだということですが、あれは皮膚の血管が麻痺してくるからです。舌の先がしびれ、頭もぼやけて来て一種恍惚とした気持になるそうですが、ともに神経のやられるしるしだと思うと、いかにも気味の悪い話です。
 私はたった一度だけ、どうしても食べねばならぬ羽目になって、ほんのちょっぴり食べたことがありますが、生命を賭けてまで食わねばならぬ程の味とは、どうしても、思えませんでした。やっぱし私は松蔭先生にしたがいます。
(25、10)(遠藤仁郎)


<健康と青汁第77号より>




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