遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 大豆

 大豆は熱量が多く、蛋白質にも脂肪にもとんでいます。しかも、この蛋白質には栄養上大切な、つまり血や肉になるのに無くてはならぬアミノ酸が、殆んどそろっており、動物蛋白にちかい良質のものです。最も、シスチンというアミノ酸だけはやや少いが、このシスチンは米には多いので、米に大豆を添えると、互に不足を補いあって、肉や卵に劣らぬりっぱな蛋白質になります。
 また大豆の脂肪は、レシチン(類脂体の一種)や必須不飽和脂肪酸が多いせいか、バタやマーガリンや牛豚脂などとちがい、血液中のコレステロールを増やさないばかりか、むしろ、これを減らす作用があるので、動脈硬化の発生や進行を防ぐ力があるともいえるわけです。

 ミネラルではカルシウムや鉄にもとんでいます。そしてカルシウムと燐の比は1:3(理想比は1:1〜2)で、穀類や雑豆類にくらべ(白米では1:25、豆ではインゲン豆1:3.1〜エンドウ1:6.2)カルシウムに有利、アルカリにとんでいるわけ。ビタミンはBだけで、A・Cはありません。B1は非常に多く、熱量392カロリーに対しB1、500ガンマ(理想比1カロリー対1ガンマ)。しかし体内代謝でB1の不要な脂肪が多いので(17.5%)B1には十二分の余裕があるわけです。
 したがって大豆は、白米を主食としているわが国の習慣食の改善にとっては、まさに、欠くことの出来ないもの。余り肉食をしなかったわが祖先の蛋白源として大切な食べ物でしたし、今でも大豆をよく食べる地方には長生きするものが多いといわれている所以でもあります。

 なお大豆は、ただ栄養的だけでなく、安全さという点でもすぐれています。それは、大豆には、肉や卵や乳などの動物食品のように、飼料が不完全であるための影響もうけなければ、飼料中の農薬、あるいは疾病の予防や治療にもちいられる薬品などによる汚染の危険もないと考えられるからです。このように大豆は、確かに優秀で安全な食品ですが、けっして総ての栄養素が完備した完全な食品ではなく、やはり適当量の良質菜っ葉が添えられなければならぬことはいうまでもありません。もっともその量は比較的少くてよく、たとえば大根葉だと、大豆100グラムに対し僅か50グラムでもほぼ釣り合いはとれて来るし、100グラムにすれば殆んど理想にちかいバランスになります。

 このことからも、いかに大豆がよいものであるかがうなづけるわけです。大豆飯 大豆は米の欠陥を補うのに適しています。白米100グラムに大豆30グラム入れた大豆飯にすると、大根葉200グラムでほぼ釣り合いがとれます。白米100に大根葉300、大豆30には15〜30、計315〜330が必要なところが200ですむのですから、確かに大豆飯の方がよいわけですし、菜っ葉を入れた大豆菜飯にすれば、それだけでも完全な食が出来上るわけです。
 欠点は消化のよくないこと。(煮豆の利用率は65%にすぎない)。あらかじめ長く水かしし、十分ふやかした上、そのかし水のまま飯に炊くことと、出来るだけよくかむこと。戦時中私のいた部隊では大豆飯をよく出しましたが、その度に下痢患者が多く出ました。大豆餅も同じ。煮豆 軟かく炊くコツは、十分ながく水にかし、とろ火で炊くことなのですが、余り時間をかけるとビタミンが減るそうです。もっとも、早く軟かく炊こうとして重曹を入れると、ビタミンの破壊はいっそうひどくなりますから、やはり気永に煮るほかはないわけです。多少のビタミンのロスはあっても止むを得ないでしょう。

 なお煮豆は、ふつう味つけして「おかず」にしますが、これでは主食ばかりの偏食になる上味よくするため砂糖が多くつかわれ、偏食の度はさらに甚しくなるので、これは感心できません。素煮きのままか、精々、ごくうすい塩味(昆布や和布を入れて煮る程度の)くらいにして、野菜を十分そえて、飯代りに食うべきものです。

枝豆  栗や甘藷と一緒に蒸した枝豆の味は、田舎そだちの私どもには忘れられない秋の味覚の一つです。たいてい間食にしましたが、今時の子供の間食が危険な菓子ばかりになってしまっているのにくらべ、健康的であった私どもの幼い時代の有難さが、今さらのように、しみじみ感じられます。
 今では早蒔き種もあって夏のうちからビールのつまみなどにも出されます。美味しくもあり、なま物ですから野菜にちかく、ビタミンCの多いのも嬉しいところです。そして、白米100グラムに枝豆100グラムと大根葉150グラムで、うまくバランスがとれるのですから、こうした配合の枝豆飯にしたり、煮豆と同様、主食代りにすれば、いっそう素晴しいわけです。
納豆  納豆菌のため消化がよくなり、ビタミンB2もうんと殖えています。(B1は菌の繁殖のため消費されて少くなっていますが)もっとも、嗜好の点でやや一般的でないうらみがないでもありません。関東や東北では非常に好まれていますが、関西ではさほどでないし、私どもの地方では、むしろ嫌われます。以前、病院で出してみたことがありますが、「こんな腐ったものを!」と、食養係がひどく叱られました。また、粘素のため、かみにくい点もありますが、納豆汁のように、すりつぶせばよいわけです。
黄粉  炒るため、いく分ビタミンがこわれますが、他には大して失われないし、消化はよろしい。但し、市販品には、かなりの麦粉(はったい粉)がはいっているし、色づけされているのでないかの疑いがなくもありません。手数でも、家庭で、味も香りもよいつくり立てを食べたいものです。ご飯にまぶしても、おさいの黄粉和えも、汁物に入れても黄粉茶にしてもよろしい。小麦粉、ソバ粉、芋粉などの粉食料理にも、かならず入れることです。

生粉
 なまのままの粉はなおよろしい――もっとも油気があって後の掃除が大変なので製粉屋はいやがりますが。この生粉に沸湯をかけてソバかきのようにして食べてみたことがありますが、なかなか美味しいものです。
豆腐  大豆製品のうちでは、いちばんなじみ深いものは豆腐でしょう。食べよくもあり、消化もよく、栄養にもとんでいます。もっともビタミンはかなり減っているようです。カルシウムが多いのは、最近の豆腐には凝固剤として石膏(硫酸カルシウム)がつかわれているからでしょう(以前はニガリ=塩化マグネシウムでしたが)。
 そのせいかどうか、この節の豆腐は、むかし田舎の豆腐屋でつくっていたものとは格段に味が悪くなっているようです。私はよく夕食の豆腐を買いに走らされましたが、帰り道で、ちょいちょい角をかいで失敬したものですが、あの頃のは本当においしかった。今では、ビニール袋入りなど、保存のきくものも出来ていますが、添加されている防腐剤は果して無害なものばかりでしょうか。
 豆腐は、やはり、新しいもの。そして時間がたてば腐るようなものに限る、と私は思います。それはともかく、豆腐100グラムに大根葉50グラム添えれば、それだけでも完全にバランスがとれて来ますから、すぐれた栄養食品であることに間違いはありません。

揚げ豆腐
 これも昔のはおいしかった。学生時代、ハイキングの折など途中の豆腐屋で揚げたてを求め、山の中や野っ原で、何もつけず、そのままを食ったものですが、とても美味しかった。今は、豆腐の質がおち、油もよくないのか、いかにもカスカスしていて、とんとうま味がありません。
豆乳  水によくかした大豆を臼でひき、しぼったもの。これに凝固剤を入れて豆腐をつくるので、豆腐のもとといったもの。そのまま飲んでもよろしい――ひと頃健康法としてこの飲用が宣伝され流行したこともありました。調理用に、水代りにつかうのもよいでしょう。


 ともあれ、大豆はもっと大いに利用すべきであり、なるべく成分の損失のない、しかも美味しくて消化吸収もよい食べ方が、もっといろいろ工夫されなければなりません。なお、大豆や大豆製品はふつう副食として主食にそえられていますが、栄養素の関係からは主食に準ずるもので、十分の菜っ葉をそえて、飯代りに食うべきであることを忘れてはなりません。


 熱量蛋白質脂肪カル
シウム
B1B2
大豆
39234.317.51904707.065002000
 仝+大根葉50
416.536.917.852854857.7150655035045
 仝+ 〃 100
44139.518.23805008.4300660050090
大豆飯 白米100
    大豆30
458.616.396.05632912.51.8240900
  仝+大根葉200
556.626.797.454433515.36001.8440690180
煮豆
28216.49.8672002.8050300
枝豆
12512.13.6982003.01303007045
枝豆飯 白米100
    枝豆100
47618.34.41043503.413039010045
仝+大根葉150
549.526.15.453893955.54630540550180
納豆
19116.510.0921903.30705600
黄粉
42638.419.21905009.054001500
豆腐
586.03.5120861.4020200
 仝+大根葉50
82.58.63.852151012.115007015245
揚豆腐
34618.631.43002304.2020200
豆乳
423.62.015491.2030200
カロリーグラムグラムミリ
グラム
ミリ
グラム
ミリ
グラム
国際
単位
ガンマガンマミリ
グラム

<1966年 4月 健康と青汁第116号より>




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