遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 大腸癌と食べもの

 大腸癌は欧米人に多いが、わが国には割と少ない。(胃癌は、反対に、わが国には多いが、欧米には少ない。そして、大腸癌のうちでも、欧米には結腸、すなわち上行・横行・下行結腸・S字結腸などの癌が多いのに、わが国では、それらは少なくて、直腸癌のほうが多い)しかも、これは、人種の差ではなく、生活程度が高く、経済的にゆとりが出来ると多くなり、食べものでは、とくに脂肪の多いこと(高脂食)と関係がある、といわれている。

 アメリカでは、脂肪は総熱量の40%を占め、しかもその大半は飽和性脂肪(バタや牛豚脂)。これに対し、わが国では脂肪は総熱量の12%程度にすぎず、しかも不飽和脂肪(植物油)が主。アメリカにいる日系人では、日本の習慣をつづけている一世には胃癌が多く大腸癌が少ないが、二世(アメリカ流になった)には胃癌がへって大腸癌がふえて来ているというが、現在のわが国にも、どうやら、この傾向がぼつぼつあらわれかけているようだ。

 つまり、わが国の昔ながらの質素な生活や食形式では胃癌や直腸癌が多くて大腸癌は少ないが、欧米風の贅沢生活に変って来ると、胃癌はへって大腸癌がふえ、しかも結腸癌が多くなる。さて、腸内の細菌をしらべてみると、高脂食では嫌気性菌がふえ、好気性菌が少ない。繊維にとんだ菜食では、逆に、嫌気性菌が少なくて好気性菌が多くなる、といわれているが、ヒルス博士らが、大腸癌の多いイギリス人・アメリカ人の便と、大腸癌の少ないアフリカ(ウガンダ)人やアジア(インド・日本)人の便について調べた結果も同様だった。そのうえ、欧米人の便の胆汁ステロイドは、アフリカやアジア人の便に比べ、変化の程度は非常に高度であった。これは、嫌気性菌が好気性菌よりもステロイド分解能が強いからであろう、という。

 ところで、この胆汁ステロイドの分解産物の中にはメチルコラントラセンなどといった有力な発癌性物質もあるが、ヒルス博士によれば、高脂食による腸内細菌の変化の結果として、食餌中の脂肪からか、胆汁ステロイドからか、こういう発癌物が出来るようになるのではないか、という。なお、イギリスのバーキット博士は、砂糖や精製穀粉の多い、つまり渣(繊維)の少ない便秘しやすい食餌が、大腸癌やその他の大腸疾患(憩室、潰瘍性大腸炎、痔、虫垂炎など)のもっとも重要な原因だとしている。

 これらのことがらからすれば、大腸癌が脂肪(また動物蛋白)や糖分の多い食をとっている、そして便秘がちな欧米人に多く、菜食で、脂肪(動物蛋白)とともに糖分の少ない食をとっている、便秘傾向の少ないアフリカ人やアジア人に少ないこと。同じ日本人でも、従来の菜食に傾いた食習慣のものには少なくて、欧米風にうつっていったものに、しだいにふえて来ていることもよく理解できるように思う。いまやわが国は世界第2の経済大国にのし上ったわけだが、調子にのって肉類・脂肪・砂糖・酒と、贅沢三昧にうつつをぬかしていい気になっているのはとんでもないこと。かならず、同時に、良質ナッパを中心とした野菜・海藻類を十分そえることを忘れたくないものだ。

<1972年 2月 健康と青汁第186号より>




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