米食は悪いか |
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今年もまた史上最高の豊年といいます。まことに結構なことと申さねばなりますまい。しかし、米をよく食べる地方ほど早く年がより、長生きも少い。秋田県など米の単作地では、もう40すぎにもなれば脳溢血でたおれるものが多く、70以上の年寄は殆んどいないといいます。 また、腎炎や糖尿病や高血圧が米食をやめて、はじめてよくなったとか、本当に安定した、などということもよく聞きます。 どうも米が原因らしいが米食は本当にそのようによくないものでしょうか。その問題点はどこにあるのでしょうか。 栄養的の面 その第一は栄養的に劣っていること。 白米の主な成分は糖質(澱粉)。蛋白質も相当あるが、質的には余りよくない。カルシウムは非常に少く、燐がすごく多い(カルシウム対燐の比は1:1−2がよいとされているが、白米では実に1:25、酸性が非常につよいわけ)。 ビタミンではAやCは全然なく、Bが僅かにあるだけ。このB1は糖質や蛋白質から出る熱量の1カロリーにつき1ガンマ(1ミリグラムの千分の1)が必要となっているが、白米の100グラムのカロリーは約350だのに、ビタミンB1は僅か90ガンマにすぎません。このようにBが不足しているため、分解が完全にうまくゆかず、有害な中間代謝産物(ピルビン酸)ができ、からだのはたらきをいため、いろいろ故障をおこします。 半搗米100グラムからは345カロリーで、B1は250ガンマ。玄米では約340カロリーにたいしB1は360ガンマ。十分余裕があります。 米を食べるなら玄米、あるいは、せめて搗きの悪い米、または強化米といわれるのはこのためです。 食べすぎやすい 問題点の第二は食べすぎになりやすいこと。それは白米飯のあの「軽るさ」です。 玄米飯は咀みでがするし腹ごたえ腹もちともによいので、そう大食することはありませんが、搗きがよくなるほど味は淡薄になり、いわゆる満腹価に乏しいので、いくら食っても腹ごたえがありません。 その上、どうしても味の濃い添え物がこのまれます。塩からい沢庵や味噌汁、塩鮭とか塩昆布など、ほんの少しで4−5杯の飯がらくにかきこまれるので、つい米飯ばかりに偏った過食となり、甚しい不完全栄養に陥ってしまいます。 実に、これが米食の害のもっとも大きい原因といってもよいでしょう。 ナッパで完全になる さて、米のこの欠陥を補正する方法として、もっとも簡単なのは良質のナッパです。 実験動物のネズミでも米だけでは十分そだたず、生きながらえることもできないが、その籠の外にナッパをぶら下げて自由に食べさすと、完全にそだち、長く生きのびます。米粉に乾燥緑葉粉末を混ぜてやっても同じ結果になります。
それは、成分の上からもよく理解できます。たとえば、米に良質ナッパの代表として大根葉をそえてみると、玄米では同量、すなわち玄米100グラムに大根葉100グラムを加えただけで、半搗米では2倍、精白米では3倍で、だいたいバランスがとれて来ることがわかりましょう。 (註 表の単位、蛋白質はグラム。カルシウム、燐、鉄はミリグラム。ビタミンAは国際単位。B1、B2はガンマ。Cはミリグラム。図は理想的と考えられる釣り合いを基準としたもので、ミネラルやビタミンがカロリーや蛋白質の高さにそろうか、それ以上あれば、うまく釣り合っているか、むしろ余裕のあることをしめす) 米食の害を防ぐには 上のことは、米のように栄養的に不完全なものでも、適当量の良質ナッパをそえれば、調和のとれた完全食になることを示すものです。 そこで、米食ことに白米食の害のもとは、一つには確かに米の食べすぎにありますが、今一つには、それに配伍さるべき補正食品のとり方の不足にあるわけです。そして、その害を防ぐためには、米食はなるべく減らすようにし、それもなるべく玄米か、せめて粗搗米とし、最良の補正食品である良質ナッパを十分にそえればよいわけです。 そうすることによって、まず栄養的にバランスがとれて完全食とすることができるだけでなく、食べものの嵩が大きくなり、かみでも腹ごたえもよくなって、米ばかりの偏った過食を防ぐことができます。 常にナッパを十分に したがって、米食が悪いのよいのといったところが、それは結局食べ方によることだし、たとえ白米を玄米にかえ、粗搗米あるいはカルシウムやビタミンを加えた強化米にしてみても、ただそれだけでは、本当に完全な食とはならぬのです。 また、たとえ麦や芋や豆を混ぜ、あるいは肉卵類などが添えられるばあいでも、これらも米と同様栄養分の偏ったものであり、その不足している主な栄養分は、多少の差異はあるにしても、いずれも米と同様ミネラルやビタミン類です。 だから米食の量をへらすには役立っても、それだけで完全食とはならないので、この際もやはり十分のナッパがそえられなければなりません。 残る問題 残る問題は農薬。現在の農法では、肥料として殆んど化学肥料ばかりがつかわれる。 そのため、栄養価の低下も一つの問題です。しかし、それよりも重大なのは農薬でしょう。 最近の稲作には種々の、そして大量の農薬がつかわれます。
二化螟虫にたいするホリドールは猛毒性の有機燐剤だが、これは結実までには植物体内で分解されてしまうので、まず問題ではありません。 水銀剤 おそろしいのはイモチその他の予防に、むしろ乱用されている水銀剤です。浸透生があるから直接しみこむのもあろう。また連年の使用で土壌の中にたまっているのが根から吸い上げられるのもあるでしょう。ともかく、現在米に含まれている水銀量は、すでに許容量をこしているというのです。 この水銀がはたしてどれだけの害を及ぼしているか、もちろん明確なデータはまだありません。しかし、これが私どもの健康上全然無関係だとは絶対いいきれるものではないでしょう。 学者の中には、現に今、何ともないじゃないか。危険な兆候は何一つみられないのだから、余り神経質になるべきではない、と主張するものがあります(いずれ御用学者でしょう)。けれども、私どもが恐れるのは、現在のことはもとよりですが、むしろ、ながい間につもりつもった影響です。 じわじわと知らぬうちにやられており、それと気づいた時には、もうどうにもならぬということがあってはならぬ、と考えるからです。 しかも、この水銀は主として穀皮(糠の部分)に集まっているそうですから、栄養的にも、また味や腹ごたえ腹もちなどの点でも、白米とは格段すぐれている玄米が、安心して食べられないということは、まことに悲しむべくまた憂うべきことと申さねばなりますまい。 <(1964・10 遠藤)健康と青汁第98号より>
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