遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
汗をかく

 汗をかくことが健康上よいこと、また、病気の治療にも役立つことは、よく知られている。
 発汗の主な作用は、体温調節と排泄浄血作用

体温調節
 気温が上ると、熱い物を食べ飲みすると、運動すると、熱い風呂や蒸し風呂にはいると、汗が出る。
 ことに、ふとった人(いつも厚い外套をきているにひとしい)は、よく汗をかく。
 いずれも、体内にたまった熱を発散して、体温を正常に保とうとする生理的の現象。

熱病
 熱病の熱は、病的に体温がたまったもの。
 これも、汗をかけば一応は下る。
 古方では、熱病の初めには、病毒が体表についているから発表すればよいと、発汗剤その他の方法で、汗をかかした。

傷寒(流行性熱病のこと)
 3日に満たざる者は汗して癒ゆべし(内経)。

 今でも、まだ、カゼをひくと、熱い食べもの(ニラ粥や、トウガラシをよくきかしたウドンなど)を食べ、熱い飲みもの(熱燗の酒、ホットウイスキーなど)を飲み、布団をひっかぶって、汗をかく人もあろう。
 そして、大抵はそれで治ってしまう。
 汗で病毒が排泄され、からだの抵抗力がもり上って来るため。
 つまり、発汗の効とされているわけ。
 肺炎の分利もそうだった。
 むかしの肺炎は、老人はもとより、若い元気のよいものでも、ともすると、忽ちやられてしまうという恐ろしい病気だった。
 しかも、今のような有力な特効薬はない。
 部屋を温くし、熱い湿布をとりかえとりかえして、温めぬく、といったことをやって、分利をまった。
 それは、ちょうど一週間目。にわかに頭からホケが立ち、全身にグッショリ大汗をかく。
 そして、40度もの高熱が平温、あるいは、それ以上にも下り、それっきり治ってゆく。
 家人も医者も、ただひたすらに、この分利の汗を、祈りながら待ちあぐねていたものだ。
 だからヒポクラテスが、「発汗は分利を助ける」といっているように発汗剤に、こうした効果を期待していたのだろう。
 しかし、多くの熱病、ことに慢性の熱病では、汗で熱が下ることと、病気の治りとは、おのずから別で、原因がとり去られるまでは、いくら汗をかいても、それだけで治るものではない。

排泄浄血作用
 汗には、水、食塩、尿素、尿酸その他の蛋白分解産物、あるいは異物などが排泄されるから、血液を浄化するはたらきがある。
 そして、これらは本来腎臓から出される成分だから、皮膚は腎臓の仕事をたすけ、補うはたらきをもっているわけだ。
 そこで古方では、「腎と皮膚とは相表裏する」、といっている。
 実際、尿毒症(尿に出る筈の成分が血の中にたまっておこる中毒症)などで、往々著しい発汗をみることがある。
 明かに、この代償機能のあらわれだ。
 また、腎炎で、皮膚を温めることがいわれているのも、それだ。
 皮膚が冷えると、反射的に腎臓の血管が収縮して血行を悪くし、治りを妨げるためとされているが、おそらく、それだけではなく、温くすることによって、皮膚のはたらきをよくし(汗を出し)いくらかでも腎臓のはたらきを助け、負担を軽くして、その回復をすすめるからであろう。
 したがって、腎疾では、つねに、皮膚を清浄にし、温くして、皮膚の機能ことに発汗を妨げないよう心懸くべきだし、場合によっては進んで発汗法を構ずべきだ。


 皮膚はまた腸とも相表裏している。
 皮膚を冷やすと下痢することがあるし、汗をかくと下痢がとまる。
 子供のころ、よく、寝冷えして下痢をしたが、桃やイチジクの葉、あるいは茅(カヤ)の根を煎じた熱い湯に、襦袢のまま腰までつかって、汗をかくと、すぐ治った。(もちろん、腹を温めることも与っているが)。

気道
 気道とも相表裏している。
 寒いと水バナが出、クシャミや咳が出たり、ふるえたりするし、温め汗をかくと治る。
 それはともかく、こうした熱病や、尿毒症、その他の自家中毒のみならず、鉛や水銀などの慢性中毒でも、汗をかくとよいことが知られている。
 つまり、汗をかくことで毒物が排泄され、血液が浄化されるというわけだ。
 ところで、むかしは「万病は?血(血の濁り)に発す」といい、この?血を除くために、あらゆる病気に発汗法が応用された。
 もちろんこの?血なるものが、はたして何ものか明らかではないが、おそらくは、誤った日常生活、ことに食養のまちがい、運動の過不足、心身の過労などといったことのために招かれた代謝の異常にもとづいているのであろう。
 そして、そうした状態がながく続いていると、ついには発病するようになるというのだろうから、現在では、さし当り、動脉硬化、高血圧、糖尿病といったいわゆる成人病、リウマチや喘息、あるいは肝臓や腎臓の病気に応用したいところだ。
 もっとも発汗には、代謝の亢進や体液の移動が著しいので、全身とくに血行器にたいする影響が少なくない。
 そこで、若いものや、元気がよく、心臓や肺に異常のないものにはよいが、老人や衰弱者ことに心肺に故障があったり、神経質なものには危険がないとはいえないから、誰れ彼れなしにむやみにやってはならぬ。

 汗すべからずして強いて汗せば、人をして、その津液を奪せしめ、枯槁して死す(金匱玉凾)。
 また、発汗の程度も体力に応じて適当にすべきで、大体、ジットリと汗ばむ程度、といわれている。
 傷寒論に、
 遍身熱し、熱汗あるに似たるものますます佳し。
 水の流滴するごとくならしむべからず。
 病かならず除かず。
 とある通りだ。

<1971・7 健康と青汁第179号より>




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