遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
みんな歩るこう

      野山を歩くのはほんとうに楽しいもので、おそらくこれほどよいリクリエーションはないでしょう。私は学生時代からよくやっていましたが、倉敷へ来てからは殆んどその機会がなく、いわゆるひ肉の嘆をかこちつづけていました。
     さいわい最近になって、岡山に「徒歩の会」というのが出来、月一回ではありますが、歩るけるようになったのはありがたいことです。

     初めて行ったのは昨年の5月。参加者は少人数にすぎませんでした。途中で道がなくなり、丈余の女竹の藪をしやにむに掻きわけて行きましたが、大阪の病院にいた頃(当時よくこの式のハイキングをやっていました)がいかにもなつかしく思い出されました。
     その後、昨年中は、いつも何かと差支えて行けませんでしたが、今年からは毎月第一日曜ときまったので、やりくりしてでも出られるようになったのはうれしいことです。

     参加者はしだいにふえ、今では毎回5、60名にもなっています。5−6才から70代までの老若男女がききとして野道山道をたどってゆくのです。
     歌人あり、詩人あり、画家あり。野鳥の声に耳をすますもの(岡山野鳥の会とも合流)植物を採集するもの、古城趾古墳にありし昔をしのぶもあれば(それぞれの道の専門家が同行されて説明もしていただけます)私のように、ただ歩くだけ、精々、あれはまずい、これはうまいと木の葉草の葉を食ってばかりいる無風流ものもいます。
     行程はだいたい4−5里。小雨決行とあって傘もちでも行こうという愉快な連中ばかり。全く自然の子になりきることができるわけです。

     さて、「あるくことの効用には」なんていい出すとむつかしくなりますが、少くとも、若いものには鍛錬法として、ふるいものには老化予防若返り法として、これにまさるものはまずないでしょう。
     今日の日常生活で、(1)過度の精神緊張と(2)運動不足、そして(3)食べ方の間違いほど、健康上おもしろくないものはないでしょうが、そのすべて、(1)と(2)はもとよりですが、(3)の食の改善もこれで簡単に解消されます。
     その一つは、完全食の効果が、このときにこそ、いちばんよく現われるからです。

     青汁党のある人が
     山に来て青汁党はいばり出し
     山に来てはじめてわかるその効果
     と駄句っていますが、まさにその通りです。
     そしてまた、もう一つには、完全食の実行を可能にする絶好のチャンスともなるからです。
     私どもの考えるほんとうの正しい健康食(安全な純正食品による完全食)は、一般の人からいえば、まことに不味いものです。
     戦時中のように食糧の乏しい時であればともかく、おいしい食物の氾濫している現在、こうした食への切りかえには余程の覚悟と努力を要します。
     しかし、美しく静かな環境、澄みきった空気、さんさんたる日光の中での運動による快い空腹は、いかにも不味いこの完全食でも結構おいしくしてくれます。

     べんとうは、ナッパの漬物をうんと入れ、海苔かとろろ昆布でくるんだ玄米飯のおにぎりにしてみてください。ほかには梅干と精々塩鮭があれば充分です。そして竹の皮包みにすれば食べた後がかさばらず邪魔になりません。(包装も必ず持ちかえりましょう。跡を汚さぬため、また不時の用のために)ミソか食塩を用意して、木の葉草の葉をそえるのも乙でしょう。

     おやつ 色づけしたり人工甘味のおそれのある菓子類はやめ、氷砂糖か、むしろ自家製のいり豆、乾芋などにしましょう。果物も結構ですが、野生の木の実草の実の味に及ぶものはありません。なお、痩せる目的には、べんとうやおやつは持たず、果物と水だけで出かけることをすすめます。

     飲みもの ジュース類そのほか、瓶づめ缶づめ類が好まれていますが、安全食という立場からは、これもあまり感心できません。平凡ですがお茶を水筒にいっぱい持って行くことです。魔法瓶で、熱いもの冷いもの、というのも悪くありませんが、渇いた時の飲みものは、石田三成の故事ではありませんが、飲みごろの温度のほうが好ましいものですから、普通の水筒のほうがよろしい(もっとも冷した青汁というのであれば話はおのずから別。魔法瓶に限りますが)。

     谷川の水 水道の水に比べ、はるかにおいしく健康上にもよい、大いに飲もうといいたい所ですが、上流に下肥や農薬のまかれた果樹園や田畑があるかも知れず、また、もともと毒水であるかも知れませんから、知らぬ土地ではうっかり飲んではなりません。支那では、ボウフラのいる水は飲める、といわれているそうですが、魚がすみイモリがいる水なら安全というものではありましょうが、それでもバイ菌のほうはわかりません。またジストマの流行地であれば、その幼虫が水の中にいるかも知れません。

     なお、水はむやみに飲んではいけません。汗ばかり出て却って疲れます。せいぜい飲まぬくせをつけることです。なれればかなり我慢できます。うがいをするのもよろしいし、水筒に少し食塩を入れておくのもよい方法です。また味のよい木の葉草の葉をしがんでいてもずっと凌ぎよく、疲れも少いようです。

     こうした自然の生活に、たとえ月1回でも(欲をいえばせめて2回)、ひたり切ることは、それだけでも大変なプラスですが、それがほんとうの完全食への理解と実行のきっかけともなるならば、おそらくそれは、何ものにもかえられぬ大きな効用といってよいではないでしょうか。
     それはともかく、この暑さにもめげず、また厳冬の寒さにもひるまず、「徒歩の会」の黄色の旗は野に山にひるがえっています。こうした会が各地に生れ一人でも多くの人が参加されることを心から祈りたいと思います。
     但し、ここでぜひお願いしておきたいのは、いうまでもないことですが、団隊行動の規律をよくまもり、山林や田畑を荒らさず、国民の、いや人類全体の共有物である自然を、あくまで愛し、あくまで大切にしていただきたいことです。

    <1960・8 健康と青汁第048号より>




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