遠藤語録文字 乾燥青汁ピロサンマーク
 按撫

 なでる、さする。皮膚の上を軽く撫でさする――もっとも緩和な表面的の刺戟。これもなかなか馬鹿にならぬききめがある。局所の血行をすすめ、リンパの流れを促し、吸収をはやめ、神経を鎮める。
 高校の時、その頃もよく歩いていたが、時折はマメを出して弱ったことがあった。その、ある時、下宿の老人が、
 「マメどすか。いっぺん試しておみやす」と教えてくれたのは、
 「寝る前に、マメの上に筆で、教えてくれた人の名前を百遍かけ」というのだった。
 その通りやってみたが、なるほど、朝にはスッカリ退いてしまっていた。これは、軽い刺戟を加えてマメの吸収をよくする方法で、別に筆でなくてもよいし、教えてくれた人の名前でなくてもよい。指の先で軽く20−30分も撫でまわすか、舌でなめてもよい。打撲で腫れたり、血腫が出来たり、化膿で痛むのにもよろしい。
 痛みの強いときには、刺戟をより軽くする意味で、昔から、羽毛がつかわれている。「鷲の羽痘瘡を撫て快し」などと物の本には書いてある。腹を軽くさするのも、痛みを和げたり紛らせたりするのに具合のよいものだ。
 子供のころ、腹が痛むと――大抵は虫のためだったようだが、婆やが、「尿になれ屎になれ、茄子畑の肥になれ」ととなえながら撫でてくれたが、確かによほど凌ぎよかった。胃潰瘍や胃炎の痛みや、胆嚢の痛みなどでも、手をのせたり、軽くなでるだけで、かなり軽くなるものだ。もちろん、手のぬくみの温熱効果もあろうし、気紛らしの心理的効果もあろう。また苦手といった、ただ手をあてるだけでも、キリストの奇績のように効くという、特殊の霊妙な力をもった手もあるそうだし、その能力は個人差こそあるが、誰れにでもあるということだから、あるいは、そういう力が手伝っているのかも知れないが。それはともかく、今時のように、なんでもかんでも、すぐさまつい薬にたよるよりは、安全なだけでも、ずっとすぐれた方法といってよいだろう。

<1967年 2月 健康と青汁第126号より>




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