アクビ(欠伸)の効用 |
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とあって行儀はわるい。しかし、深い吸気と全身の伸展。次で発声を伴う強い呼気で気分たちまち爽快となる、という生理的の意義も少くない。 全身の筋肉、および発声による腹筋の緊張による血行促進と、深呼吸によるガス交換の促進――ながく続くアクビは呼吸の結いたものである(ヒポクラテス)――の浄血効果ということであろうか。 また、大きく口をあける運動で欧氏管が開通する。アクビの拍子に耳の中でツンと音がするのは誰れでも知っている。あれは、中耳と口腔との連絡路である欧氏管を空気の通うことを示すものだ。トンネルにはいったり、ケーブルで山にのぼって、鼓膜の調子が変になった時、アクビするとすぐなおるのも、そのためだ。 ネーゲリという人は、「中耳の病気の時に、さかんにアクビすると治りが早い。本当のアクビが出ぬときは、真似をしておれば、やがて本当のが出るようになる。」などといっている。 また、欠伸体操といってアクビを大きく勇ましくやるのをすすめている人もある。「吸気で胸を張り、両手を斜上方にのばし、下肢をふん張り、大声を出す。腹に息をおとし、上下肢に力を入れ、かるく動かし、背中をそらし、頭をうしろにひいて、気張る。大声を出して、息を吐き、力をぬいて、上下肢をもとにもどす」。というのだ。 平田篤胤の父は84才まで健康であったが、その健康法は、「毎夜寝所に入り、そのいまだねむりにつかぬまへに、仰向にて、両脚をそろへ、強くふみのばし、総身の元気を、臍の辺から気海丹田の穴、および腰脚足の心までに充たしめ、さて、他の妄想をさらりと止めて、指を折り息を計へること百息にして、その踏みしめたる力を緩め、暫あって、またかくのごとく、大抵、毎夜この術を行ふこと四五度づつ、缺さず修すること毎月五七回づつすれば、元気総身に充満して、腹中の積塊皆とけるなり。何なる良薬もこの術に越すものなし」。 というのだったと「志都の石屋」に誌してあるが、まずはこの類だろう。それはともあれ、葉隠にあるように、たしかに阿呆げには見えるが、出かかったアクビを、なまじいにかみ殺すよりは、両手をのばし、大きい口をあけ、うんと力みかえって、はでにやってのけるほうがずっとからだの為になるというものだろう。 <1965・6 健康と青汁第106号より>
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