味つけ |
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味つけはなるべく簡単、かつ淡白に。 最上は自然のまま。つけるにしても、ごくうすく。 しかし、ふつう一般に、濃厚味が好まれます。 まず、砂糖がひどくつかわれ、それにみ合うだけの食塩が加えられるわけで、全く、汗が出るほど甘からい。まことに濃厚。まことにおいしい。いや、それどころか、十分味つけしてあるのにも、たとえば、西洋料理にはソースをかけ、和食の煮物漬物に、まだ醤油をぶっかける、といったぐあいです。 味が濃厚だと、ついご飯を食べすぎます。 白米飯が淡白で、味の濃いおかずが欲しいのでもありましょうが、塩からい漬物や塩魚、甘からい佃煮、その他の煮物などで、ほんの少しだけで、4〜5杯の飯を平げることになるので、甚だしいアンバランス栄養を結果とすることにもなります。 なお、食塩のとり過ぎだけでも、高血圧や胃癌が原因されるともいわれています。 砂糖は、380〜390カロリーもの高熱量食品であり、しかも、その代謝に必要なビタミンB1(カルシウムも)欠けているので、味つけの砂糖は目に見えない主食といった関係になり、味が濃ければ濃いほど、栄養の過剰と不完全化はいよいよ甚しくなります。そして、ふとりすぎを原因し、動脈硬化の原因としても、脂肪と同様、あるいは、それ以上重大な関係があるといわれています。そこで、つけ味はなるべくうすく、砂糖も食塩も少くしたいものです。 もともと食べものには、すべて、それぞれそのもの本来の自然の持ち味があり、そのまま食べて、おいしいものです。いや、自然の味そのままが一等おいしいのです。自然の動物は、自然から与えられた食物そのままを、いかにもうまそうに、満足しきって食べています。あれは、やはり、あのままが、本当においしいからに相違ありますまい。しかし、濃厚味になれたものには、うす味への切りかえは、ちょうど、タバコ好き、酒好きの減煙減酒と同じで、かなり困難なことのようです。 さて、この実行のためには、まず、
西洋料理を食べて、いつも感じるのは、牛肉も、豚肉も、鶏肉も、魚肉も、肉そのものの味は、全く同じ。それこそ、何もかも同じ(出しがらの不味い)味にして食べている、いろいろのソースでやっと食べているようなものだ、ということです。 野菜でも全く同じ。新鮮でイキのよい菜っ葉は、そのまま食べても、とても美味しいものだが、萎びたものは、まことにまずいし、ゆがいたものは、一層まずい。しかも、煮汁はなかなか美味しい(野菜スープ)。 つまり、自然のままでは美味しいものも、ふるくなったり、ゆがくことで、あるいは何か手を加えることで、自然のよい持ち味(大事な成分)がぬけてしまうわけです。だから、つけ味なし、あるいはうす味になれようと思えば、自然のままか、自然の持ち味をそのまま活かして食べることです。 もっとも、主食類の生食は、ちょっと無理です。 肉類の生食は、寄生虫の心配があって、これも、むやみにやるべきではありません。 しかし、せめて良質ナッパだけは生食すべきです。 但し、そうした菜っ葉は、ただ清浄であるばかりでなく、良質であり、かつ、無毒性の安全なものでなければならぬことは、いうまでもありません。下肥はもちろん、農薬の汚染もなく、耕地はよく耕され、堆肥その他の有機質肥料の十分施されたところに育ったものでなければならぬわけです。 また、そうしたナッパは味も大変よろしい。それを、サラダにして(初めは、いくらかの調味料――サラダ油、酢、食塩。または酢味噌など――が必要ですが、やがては、何もなくてよくなる)、もりもり食べ、青汁にもしてうんと飲むのです。そうしているうちに、しだいに嗜好がかわり、濃厚味をきらい、うす味を好むようになり、うすく調味したものはもとより、つけ味なしの煮ものでも、僅かだけの塩味で、結構、うまく食べられるようになります。 私の家では、よく素炊きの団子汁(もろもろの野菜、芋、油揚を入れた小麦粉またはソバ粉の団子汁)を食べますが、そのままでも十分おいしいと思うし、僅の味噌(純正品)か漬物(自家産の菜っ葉漬け)をそえれば、とてもおいしく食べられます。 今は昔とちがい、無塩醤油といったものもあり、また、砂糖の害を防ぐためにはいろいろの人工甘味も出来ています。けれども、それら人工甘味にもなにがしかの害がないとも保証は出来ません。たとえ、これらが、すべて無害だとしても、私どもは、自分の健康を守るためには、旧弊とそしられるでしょうが、なるべく人工にたよらず、つとめて、もっと自然の法則にすなおであるべきで、自然の正しい食べ方により、薬剤による胡麻化しには、慎重でありたい、と考えます。 また、私どもは、自分の健康には、あくまで自分が責任をもつべきで、他人にまかすべきではないこと。間違いを直すためには、もっと真剣に努力すべきであり、こういうあまやかし法にまかせることは、食養の正道ではない、と信ずるものです。 それはともかく、食べ方が正しくなれば、自然の動物と同様、自然のままのものが好ましくなり、人工的なものを忌むようになることは否定できないようであり、少くとも、うす味に苦痛を感じるなどということはなくなってしまいます。 <1968・9 健康と青汁第145号より>
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