健康と青汁タイトル小
薬害・療法禍





1. 精神安定剤に對する警告

     トランキライザー(精神安定剤)は毒性が少い、副作用も少い、というふれ出しで発売され、ノイローゼ流行の今、最大の売行をしめしているらしい。
     が、さて、それはほんとうに中毒はないと安心してよいものだろうか。
     本場の、アメリカでは、その使用が急激に増すにつれて、様々な副作用のあることがわかり、昨年、早くも警告が出された。
     そして曰く、毒性が少いの、副作用がないのといわれたが、それは、比較的少い臨床観察でいわれたことで、広く使われて来てみると、いろいろのことがあることがわかって来た。

     まだ死んだ例こそないがこの濫用は余程注意せねばならぬ、といわれている。
     過敏症がしばしば見られる。ジンマシンが出る。広い範囲に発疹が出、悪寒して発熱することもある。
     しかも僅な量でもそういうことがある。血管に傷害がおこって皮膚に出血したのもある。
     甚しい大量でも、自殺の企てはすべて失敗しているが、重篤な中枢傷害の症状を呈した。
     また習慣性もある。次第に、しかもかなり急速に増量せねばならなくなるし、そのため急性の中毒をおこすおそれもある。
     禁断症状として、ながい間使って急にやめると痙攣をおこすこともある。
     その他胃の変調、腹が張ったり腸がうねうねしたり激しい下痢をすることもあり、甚しい興奮状態を来すこともある等々。
     ともかく、どんなによい薬でも、薬はあくまで薬。
     それだけに頼りきるのは余り賢いことではないことはこの場合でも同様である。




2. レ線照射療法の禍害

     レ線照射療法は現在悪性腫瘍の治療には有効な一手段として応用されている。しかし又しばしぼ良性疾患、例えば「にきび」、足裏の「たこ」、湿疹、「わきが」、多毛症などの治療にも、応用されている。しかしこの場合余程慎重にしないと後に思わぬ災禍を患者に与える。この事は既に知られているが、案外多く又よほど長い年月の後にも起ることが最近アメリカで確認されて一般の注意を特に喚起している。

     ボストンのMaasachusetts General Hospitalで治療した患者の病歴やCannon,Randolph,Murreyたち自身が治療した患者の病歴を合わせて165例を調査した結果、約半数の患者は照射部に難治性有痛性潰瘍を発生して悩み、又36名(22%)には癌腫を発生していた。しかもその中の10名の「にきび」を治療した者の9名に皮膚癌が発生していた。なお皮膚癌発生はレ線照射後5年長いのは55年後に起っていることも知られた。それで一層慎重でなければならないとしているのである。(Time,February23,1959)




3. サリドマイド剤その他薬剤の副作用

    by The Research Staff of SEXOLOGY

    眠剤奇形
     イギリスで著名の医事誌The Lancet は欧州諸国でちかごろ先天性の奇形があちこちに生まれることをつたえ、この奇形はアザラシの子に以たPhocomeliaとある。
     この情報は東西ドイツを中心に、スエーデン、スイス、オーストリア、ベルギー、イギリス各国の医師からの報告の集積で、

    「親指、その他の指がない、長骨もない、栄養の不足、鼻や上クチビルに血管腫 hemangiomas,心臓とか性器、尿路系の欠落・・・・・・」
     といった“アザラシッ子”を図解入りで紹介している。
     とくにイギリス側の専門医連は、その原因を妊婦や産婦がふつうに利用される催眠鎮静作用のある錠剤サリドマイドThalidomideの連用によるものとの見方を示し、胎児生長の重大な時期、つまり妊娠2か月にこの薬物が作用するのではないかとみている。
     このことを真っさきに唱えだしたのは西独ハンブルグ大のDr.Windukind Lenz で、
     「西独では1959年来コンテルガンContergan を常用する妊婦から2,000〜3,000の奇形ができる・・・・・・」
     といいだした。
     コンテルガンという新薬はサリドマイドの市販名。
     別にDistavalとかValgis,Valgraine,Asmaval,Tensivalなどの呼び名のある鎮静催眠向きの錠剤である。
     合衆国やカナダではKevadonといい、とくに合衆国では濫用を最初からきびしく取締っているものの、妊婦に向くところからヨーロッパ旅行を終えたアメリカ人たちは、何よりの土産とサリドマイド剤を持ち帰るほどの歓迎ぶり。
     ところがイギリス側では、“レンツ学説”に打たれ、指折りのメーカーのディスティラー生化学品会社は、マネージャーのヘイマン博士の名でThe Lancet誌上に次の声明を発表して市場から製品を全部回収することになった。
     「――レンツ氏の奇形説は、問診から誘かれた推定によるものかも知れないが、事実とすれば重大であるから本剤を市場から下ろした上、改めて実験的、臨床的の研究を進めることを決意しました。ご諒承下さい・・・・・・」
     この声明に前後して、同誌上にニューサウスウェールズのマックブライド氏によると、
    「先天性奇形は、1.5%にすぎないが、サリドマイド製剤を服用する妊婦には20%の奇形を生むようになる・・・・・・」
     と結んでいる。
     一方、スペア氏はスターリングシャイア病院の産科で、薬名不明のサリドマイドをふくむ錠剤を常用する妊婦10人のうち8人が下肢のない奇形を分娩したことを認め、ヨーロッパ各地から持ちよられた数は115児にのぼったと発表したのに対し、西独のパフィアー、コーゼノウ氏からもまた、妊娠3か月内に服用した妊婦の胎児はすでに奇形的発育の過程をとるといい、そのほか多数の専門医から奇形報告が持ちよられた。
     これらの情報を知った医師や受胎した婦人は驚き出し、果して妊娠初期の服用が胎児にこんなに影響するものだろうかと、とくにやがて母親になる妊婦たちのわずらいとなった。
     ランセット誌によると、X線を妊娠4か月に照射すると胎児に変性変形が現われるとあるから、本剤の投与が初期に影響すると考えられるようになった。
     さらに同誌は、
     「少なくも動物実験では奇形学的に胎生初期に奇形を生じる。人間の場合もこれとほぼ同じで、この期間は妊娠にとって大切な時期。とくに薬物を用いる場合は、その用量と期間と薬物の名称をよくわきまえる要がある・・・」
     と注意を促し、西独では処方箋なしで自由に入手できるサリドマイド製剤が大きくクローズアップされてきた。
     サリドマイド剤のほか、他の薬剤も用法用量を誤まると胎児にはとくに鋭敏に反応するからアメリカではかなり多数の医薬品がきびしく取締まられている。
     ランセット誌は最近またトリパラノールという抗コレステロール作用のある新薬の濫用が性機能低下の副作用を起すものとして注意するよう伝えている。
     「こういう不安なニュースはわれわれの新薬への信頼感を失わせ、永年利用されている薬物にくらべ、よほどの効果がない限り副作用に留意を要するが、ぜんぜん副作用のない効果的の新薬を求めることは、現在の状態では残念ながらあまり安易にすぎる・・・・・・」
     と同誌は新薬に対する戒めを記している。同誌はまた
     「未婚の婦人がこれを常用して結婚し、やがて受胎したらどうなるか・・・・・・」
     という“眠剤と女性”の特集を企画中とある。
     サリドマイド――フタリルグルタミン酸イミドはこうして黒い脚光を浴びてきたが、これを極めて大量に服用しても自殺は未遂に終った例を製造元、発売元では紹介。非バルビ剤の安全性を謳っている。
    (檳椰子抄訳)



4. クスリ狂日本(1)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     日本人は薬がすき。いや薬好きというよりは、むしろ、薬狂といったほうがあたっているかも知れません。薬とさえいえば何でもとびつき、ジャンジャンのみまくる。舶来の薬ともなれば、とくに目がない。「売れ残ったら日本へもって行け」というのが、製薬業者のかげ口だそうです。医薬であろうが、食品添加剤であろうが、農薬であろうが、日本へもって来ればどんどん売れる。日本は世界中で最良の薬の市場だといいます。

    医薬
     医薬には、もとより無難なものもあります。とくに民間薬のように、あるいは流行の強肝薬のように、大してきかぬ薬、毒にも薬にもならぬ薬はまだよろしい。しかし、最近の新薬にはもの凄くよくきくのがあります。そして、それだけに危険も少くないし、事実いろいろと警告もされています。それでも、医師の処方によるものはともかくですが、わが国のように、薬局で大抵のものが自由に買えるところでは、出鱈目に素人療法が行われやすい。そうした乱用薬の二三をひろってみると、

    睡眠剤  胎児を奇形にすることでよく知られているサリドマイドほどのことはないにしても、睡眠剤はすべて神経毒です。決してむやみに使うべきものではありません。夜泣きしてうるさいとて赤坊に睡眠剤をのますインテリ・ママがあるということですが、とんでもないことです。睡眠剤遊びというにいたっては全く言語道断。麻薬はもちろん、ヒロポンなどと同様、青少年の健康をむしばむこと甚しいもので、ついには廃人にもなってしまいます。
    鎮静剤  ある種の鎮静剤の乱用で不治の慢性腎臓炎がおこることは、欧米でははやくから問題になっています。わが国でも近来原因不明の腎臓疾患が多く見られるのですが、こうした薬の乱用があるいは関係しているのではないでしょうか。ごくふつうに、無難な鎮痛剤、解熱薬として多くに人に愛用されているアスピリンでも、むやみな使い方をすれば、やはり害があります。
    精神安定剤  近ごろ流行のノイローゼによろこばれる精神安定剤も、もとは副作用も習慣性もないといわれたものですが、しだいに、いろいろの害を伴うことがわかって来ました。
    ステロイド剤  最新の医療界の寵児ともいうべきステロイド剤――コーチソンの発見以来、次々に登場している副腎皮質ホルモン系統の薬剤で、多くの難症に奇効がある――も喘息、レウマチ、神経痛などの慢性難治症でとかく乱用されがちで、往々おそろしい副作用をおこしています。中には習慣になって一日に数十ないし百錠ものまなければならなくなっているものさえできています。その他いろいろのホルモン剤がありますが、いずれも、必ず医師の指導のもとに用うべきもので、素人細工は断じていけません。

    食品添加剤、農薬
     日本人の薬狂は医薬だけではありません。食品加工で添加される薬品や農薬 あるいは洗剤にいたるまで、まことに夥しいものです。そして、これらも医薬品と同じく、無害といわれているものでも、ながい間にはしばしば恐るべき影響をあたえるものがあります。

    薬品の有害性
     さて、これら薬品の有害性ですが、もともと薬剤そのものの有害なものであれば、それはいうまでもないことです。医薬にはもちろん毒薬も少からずあります。しかしそれらは、それに関する知識を十分にもった医師や薬剤師にまかされているのですから、まず問題はありません。食品添加剤には有毒なものは勿論禁止されているし、許可されているものは使用法がきびしく規定されています。農薬はすべて毒物ですがこれまた、同じくその使用には厳重な規定があります。したがって、これらもすべて少しも懸念すべきことはない筈のものなのです。
     しかし無害の筈のものが実際には有害であったり、後で有害とわかるものも少くありません。それは、一に規定が正しく守られているかどうかにかかっています。たとえば食品添加剤の場合、一定の%であればよろしいというので許可されているものが少くないのですが、よりよい効果をあげるため、規定外の量が用いられたり、あるいは有害物と知りながら禁止薬剤が使われています。こういうものが保健所から摘発され、販売停止、製品回収、または製造禁止処分をうけていることが屡々報道されています。
     しかし、それはほんの氷山の一角にすぎず、検査の目をのがれて私どもの口にはいるものは、いくらあるかはかり知れません。また、たとえ規定の薬品を規定通りに使ってあるとしても、決してそれだけで手放しに安心は出来ません。それは、一つ一つの食品には、無害とされる分量しかはいっていないとしても、殆んどすべての食品が加工されている今日のことです。あれこれと食べているうちに、つもりつもって有害量に達することがないとは保証できないからです。
     このことは農薬でも全く同じで、一つ一つの食品に含まれている農薬の量は、あるいはとるに足らぬ微量かも知れません。しかし、どの野菜にも、果物にも、穀物でも、いくらかづつ含まれているとしたら、一つ一つの分量が少いからとて、少しも気は許せません。

    混りもの
     なお、本来の薬品自体は無害の筈でも、不純物が混っていて、これが有害作用をなすばあいもあります。
     先年の森永のドライミルク事件も、また宇部の毒醤油事件も、そうしたものでした。どちらも、加工の途中で使われた薬品が精製品でなく、粗悪な工業用薬品であったため、それに砒素がまじっていたからでした。医薬品はとくに精製されていますから、まず間違いはありませんが、食品添加剤や農薬の材料には、ともすると粗悪品が使用されるおそれがあるのです。

    (以下次号)







5. クスリ狂日本(2)

     医学博士 遠藤 仁郎 

    検査法
     また、有害性をきめる目安も問題です。
     いったい薬剤(医薬品、食品添加剤、あるいは農薬にしても)が無害だとか有害だとかいわれているにしても、それは検査法によることなので、現在ふつうにやっている検査法で害が無いというものでも、検査法が変れば、あるいは有害という結果が出るかも知れないからです。
     たとえば、肝臓や腎臓などへの影響を目安にすれば、比較的短期間の実験でも、こと足ります。
     しかし、発癌性の検査などとなると、随分ながい時間(少くとも2年)をかけなければ、確かな結論は出せぬということです。
     ですから、しばらく使って、または、短期間の検査で、害がないからといっても、果して、ながい間に、本当に何もないかどうか即断はできません。
     また、薬にたいする反応性は個体によってもちがいます。そこで、動物実験でも、できるだけ多くの種類のものを使わなければ、確かなことはわかりませんし、勿論年齢によってもちがいます。
     サリドマイド事件以来、胎児への影響が注目されて来ましたが、そうした検査法(胎児への影響を目標にした)によると、これまで無害とされていたものにも、いろいろの悪影響のあることがわかり、今では、そうした方法によって薬品の有害性の再検討がされつつあるくらいです。

     ところで、日本人のこの薬好き、薬狂のもとはどこにあるのでしょうか。
     あるいは、それは、メーカーのたくましい商魂、売らんかな、儲けんかなのあくどい宣伝と、そしてまた、それを少しも疑おうともせず、丸のみするお人好しの国民性によるものでありましょう。
     いや、まったく日本人は薬によわい。やれ人参、やれ何首鳥、やれ熊笹、やれ枸杞と、すぐにブームになります。
     私どものばあいでも、青汁は要するに栄養の改善が目的で、良質の菜っ葉ならば何でもよいのですが、いろいろの点で便利なのでケールをすすめているだけなのです。
     するとそれが、すっかり薬草あつかいされてしまいます。そして、ご丁寧にも、「分析しても薬効作用のあるものは何もない」とケチをつけて下さるご人もある、といった塩梅です。
     抱朴子には、

      「籬陌(まがきとみち)の間顧眄すれは皆薬なり」

     とありますが、これは「そこら辺りを見渡せば薬ならぬはない」というのです。
     実際、使い方しだいでは、どんな草でも木でも、何がしかの効はあります。これぞと思うものがあったら、もっともらしい勿体をつけてブームを巻きおこしてみることです。大当りは必定でしょう。
     ある薬屋の裏話を聞いたことがあります。ともかく薬は1年売れればよろしい。1年たつと、本当にその薬がきくかきかないか、害があるかないかもわかるし、競争相手の他社から類似のものも出て来ます。しかし、1年たって効かぬとわかったり、害があるとわかって、売れなくなっても、また他社からもっとよい、もっと安いものが出て来ても、1年売れれば十分儲っているから、それでよい、というのです。
     そして、その通り、新しい薬はどんどん現われ、どんどん消えてゆき、薬の流行はどんどん変って行っています。

     それはそれとして、もともとの原因は結局、わが国一般が不健康であり、健康上の欠陥なり不安なりにたいし、救いをこの薬品にもとめ、これにすがりつこうとする気持が大きいこと、にあるのも争えないところでしょう。
     また、誇大宣伝にたいする当局の取締りの生ぬるさ、薬禍についての権威筋からの啓蒙、警告といったものの不徹底や無力さにもあるといえましょう。
     食品添加物や農薬(あるいは洗剤にしても)の害の重大さについては当局はよく知っています。
     しかし、いたずらに言を左右にして、責任の転嫁、または一時しのぎの胡麻化しに終始して、何ら積極的の手をうとうとはしません。
     報道関係の態度もまた極めて冷淡かつ消極的です。

     先年、ある有力誌の記者に、農薬の恐ろしさについて献身されている五条市の梁瀬氏を紹介し、材料を提供していただいたが、ついに陽の目をみることなく、握りつぶされてしまいました。
     かくて、知らぬは、あるいは知らされぬは一般大衆ばかりなり、一般国民こそいい面の皮、というのが、いつわらぬ現実の姿なのです。
     こうしたことは、誰れが考えても、とても正気の沙汰とは思えないのですが、その不合理がまかり通っているのですから、全く奇態というほかありません。
     この世の中は、たしかに何か間違っており、どこかが狂っています。
     ともかく、こうした薬禍からのがれるためには、日本国中のみんなが本当に健康になり、医薬のいらぬからだとなることです。
     また、薬は必ず医師の指導によって用うべきものであり、たとえ無難なものでも、決していつまでも用うべきものではないことをよく心得ておくことです。
     そして、一致協力して、危険な食品添加剤、農薬、洗剤などの使用の禁止について、一大国民運動を展開して、当事者の自粛と当局の英断をもとめ、食品の安全確保につとめ、薬好き、薬狂の汚名を返上するようつとめたいものです。




6. 妊婦の薬物服用による障害

     妊娠中の薬物服用は、非服用に比べ、43週以上の在胎期間の延長および37週以前の早産は増加し、胎児障害としては、薬物服用群では、凡ゆる障害、ことに未熟児が増加し、服用時期では、妊娠3ヶ月までの早期服用群に、奇形児の増加が著明であり、妊娠8ヶ月以後の服用では、死産、未熟児、生後1週以内死亡、ならびに周産期死亡の増加がみられた。

    (広大医学雑誌41・2)





7. 漢方ブームのコンフリー
   根服用し胃カイヨウ 消化器学会

     薬草ブームでコンフリー(漢方薬草)の根を服用する人がふえているが「根をすりつぶして飲み胃カイヨウになった」という病例が16日、徳島市の文化センターで開いた第2回日本消化器外科学会総会で、国立姫路病院の寺井武寿医師(32)から発表され、素人療法に警告を与えた。
     寺井医師の発表によると、今年の6月中旬、兵庫県神崎郡市川町の男子患者(59)が胃カイヨウで入院、手術した。この患者は自宅でコンフリーを栽培、入院するまでの数日間、コンフリーの根をミキサーでつぶし、1日0.2リットルくらいずつ飲用していた。同病院で胃をレントゲンや内視鏡で検査したところ、コンフリーの繊維で出来た110グラムのゆがんだ長円形の胃石と胃カイヨウが発見された。患者の話では、コンフリーの根を服用するまで胃カイヨウの自覚症状は全くなく、胃石によって胃カイヨウが出来たと推定した。
     コンフリーの葉は体力強増、栄養剤、内臓強化、血圧正常のための良薬で、市販され、成人は1日普通10−15グラム飲用しているが、冬になると葉の代わりに根を服用する人も多く、根は消化が悪いので、大量に服用すると胃石になりやすいと指摘している。寺井医師は9月下旬ごろ、マウス8匹にコンフリーの根を食べさせたところ、1週間後に7匹のマウスに胃石が出来た。

    徳島大薬学部・東丈夫生薬学教授の話
     コンフリーの根で腎臓結石になったということは知っているが、胃石が出来たということは初めて聞いた。しかし、根を生のままジュースにして飲むことは好ましくなく、素人療法にたよるのは危険だ。

    (44・10・17 毎日)

    コンフリーについてのご注意





8. 青汁と抗生物質

     愛媛県 越智 廓明

     2月下旬、広島の旅先きで、耳下腺かと思われる頬腫れと疼痛。発熱。折から意地のわるい土曜日の夕方。タクシーの中から、無線で二医院に連絡。一内科医院に快よく受け入れていただいた。
     病人は50才の妻。医師は、外科ですね。唾液腺の腫れで万一切開せねばならないことのないようにと、抗生物質の注射と6時間おきの内服薬。そして明朝もう一度来院せよ、といわれた。
     翌朝も注射をうけた。その夜は安眠ができなく、疼痛とだるさを絶えず訴えた。湿布し、氷で冷した。月曜日を待ちかね、日赤外科の専門医を訪うた。診断は同じ。かるい薬疹が出たのは火曜日。

     腫れは日増しにとれたが、抗生物質の故か、先年患った肝炎の時の如き胃症状で、食欲不振になった。しかし、服薬を中止し、青汁をのんでいるうち、次第によくなって来た。何分、主任保母という多忙な職。その上、卒園を間近かに発表会、県の指導監査等、多忙な行事が過労を助長したか、体のよわり目に、
     それから十日を出ず、軽い発熱をともなった尿意頻数を訴え出し、たまらなくなったのが土曜日の午後であった。非尿科の当番医は松山にもなく、月曜日まで待った。遠藤先生に電話でお伺いし、それまで1日1合半だった青汁を3合にした(幸いに三畝位ケールを作っており、青汁にはこと欠かない)。
     松山市の綜合病院の泌尿科へ、やっとかけこむ。診察、尿検査の結果、大分悪いと申し渡され、明日婦人科へも行ってみるようにとのこと(その日は午後であったので)。また出直して婦人科を訪う。

     診察の結果、外陰部にかたい腫れものがある(性交に痛いであろう)が、切開してもよし、そのまま放置してもかまわない。ここでも、また抗生物質をいただいたが、副作用で前回と同じ状態になり、服薬中止、青汁一辺倒に、早くしてしまった。
     外陰部の腫れも治り(一時は悪性のものでないかと心配したが、それは全く杞憂で、そんなものは雲散霧消)、頻尿もおさまり、婦人科は笑いこと(夫婦生活にも少しも差支なし)。
     ふと、谷奥先生の「薬禍」という本を手にし、抗生物質の副作用中、泌尿器症状、生殖器症状、消化器症状、口腔症状等云々。また、某家庭医学誌では、女性の魔の40代、という見出しに、更年期、自律神経の失調、心因性疾患等々、と見たが、ここ数年来の妻の症状に思いあたるものばかり。これらの症状にたいする薬には、青汁こそ、他に追随を許さぬものと、私は信ずるのである。

     先年、妻の肝疾患入院の時、医師はきびしく偏食をただされたが、多年の食生活のあやまりの影響が、この更年期に頭をもたげたのであった。遠藤先生の青汁に近づいたのは、その時であった。1ヶ月の入院を、私は、ひったくるようにして、青汁のわが家へ連れもどしたが、半年も出ずして旧に復することが出来た。
     爾来、青汁は一日とて欠かさず、3年ちかくになっている。そして、抗生物質を、どうしても用いねばならぬ場合には、私は、かならず青汁をうんと併用して、妻の、提供する疾患に、いつも答えるのである。青汁こそ命の綱と、私は遠藤先生にいつも感謝がつきぬ者の一人である。





9. サリチル酸剤と奇形

     アスピリンなどのサリチル酸剤が、動物実験で、奇形の原因になることは、よく知られている。
     しかし、これは、直ちに人間に通用するとはいえない。
     人間の胎児が、ネズミの胎児と同じ感度をもっていると仮定して、奇形を生ずるに必要なアスピリンは30グラム。ふつうの治療量の5倍(註 わが国では10〜20倍)。
     したがって、その催奇形性は、まず、問題にはならぬ。
     あるとしても、そう大して強いものではない。
     けれども、奇形児と正常児の母親について調べたところでは、妊娠の初期(16週まで)にサルチル酸剤をのんだものは、奇形児の母親には22%あったのに対し、正常児の母親は14%にすぎなかった。
     また、それ(16週)以後については、両者に差がなかった。
     もちろん、この関係についての結論を出すには、なお広汎な調査が必要だが、ともかく、妊娠中に大量のサリチル酸剤を用いることはさしひかえるべきだ。

    (英医誌、1970・3・14号)





10. 薬害をさけるには

     医学博士 遠藤 仁郎 

     むかしは、今のように、よくきく、しかし副作用も強いという薬は割と少なかったし、その使用には、きわめて慎重でもあった。今は、そうした新薬がどんどん出まわっており、しかも、存外無雑作につかわれているような気がする。

     カゼをひき、寒けがし、熱が出、頭が痛む、とする。
     むかしなら、卵酒かホットウイスキー。精々がとこアスピリンくらいをのんで布団にくるまって寝る。のどが痛んだり咳が出れば、湿布をする。といったところだった。それが、今は、すぐさま何とかマイシンの抗生剤だの、抗ヒスタミン剤だの、副腎皮質ホルモン剤だのと、たいそうな薬がドシドシつかわれる。それも、後のさわりさえなければ、それもよかろうというものだが、うっかりすると、とんでもない、時にはとり返しのつかぬことにもなりかねない。それまで、とても元気がよく、リンゴのようなほっぺをしていた子供が、カゼをひいて医者にかかった。例によって、注射され、いろいろの薬をもらったが、それから、食がすすまず、元気がなくなり、やがてひどい貧血をおこし、からだの方々に紫斑(出血斑)ができだした。あわてて病院に行くと、血小板減少性紫斑病という重患で、どうしてこうなるまでほっておいたか、と叱られた。入院して、たびたび輸血をしているが、なかなかよくならぬ。といったことが最近あった。

     鶏を割くに牛刀を用うること勿れ、と昔の人はいましめているが、どうも、この節は、鶏どころか、ヒヨコや雀のような小鳥にも牛刀をつかっているのではなかろうか。近ごろよく医原病ということがいわれる。もともとは、医者の不用意な言葉から、患者がそれを気にして病気になる(ノイローゼ)。そういうのを、医者が原因になったというので医原病といったのだが、今は、もっと広く、すべて医療に関連しておこる病気につかわれるようになっている。手術によるものもあるが、多くは薬によるもの。薬原病といってもよいわけだが、この子のばあいは、まさにこれ。ともかく、薬にはよほど気をつけなければならぬ。

     しかし、病気をすれば医者にかかるほかはないし、医者が薬をつかうのも、また当然のこと。ところで、簡単なはずの病気にも、きつい薬がつかわれるようになっているのは、一つには、一般に体質が悪くなり体力・抵抗力がよわくなっており、ともすると厄介や合併症をおこしやすくなっており、医者はそれをおそれるからで、あながち医者が無責任に薬を乱用しているとばかりはいえない。だから、こうした薬害をさけようと思えば、根本は、やはり病気せぬようなからだにし、体力・抵抗力をつちかっておくしかないわけだ。

     それには、結局、日常生活の合理化。ことに正しい食養、毎日の食事の完全化・自然化だ。そして、良質ナッパを十分にそえ、青汁をうんと飲んでおけば、めったに病気にもならぬし、たとえかかっても、むやみに厄介な合併症をおこすこともなく、昔ながらの簡単な(カゼにはアスピリンといった)無難な治療法でも、結構こと足りるだろうから、医者の世話にならずにも済むだろうし、投薬されても、そうそうひどい目にあうこともないだろう。(46・9)




11. 放射線治療に青汁

     医学博士 遠藤 仁郎 

     レントゲンやコバルト治療をうける時には、徹底した緑葉食・青汁が望ましいが、せめて青汁だけでもうんと飲んでほしい。
     放射能の副作用で、局所の組織がいたんだり、全身への影響(白血球がへったり、食欲が落ちたりだるくなるなど)を防ぐことができる。




12. 水銀避妊薬

     岩手医大産婦人科の清水源之氏の実験によると、酢酸フェニール水銀を膣内に入れておくと、吸収されて腎、肝に多量にとり入れられる。(その他の臓器にもは入るが、その量はごく少い)。
     そして、肝臓からは速かに排出されるが、腎臓にはながい間たくわえられている。そこで同氏は、これを主成分とする避妊薬を長期間にわたって使用することは(腎臓を障害するおそれがあるので)好ましくない、と警告している。

    (日本産婦人科学会雑誌22、11号、昭45)




13. 抑ウツ剤飲み奇形児出産 各国に警告出す

    (シドニー3日UPI=共同)
     サリドマイド禍による奇形の発見者であるオーストラリアの婦人科医ウィリアム・マクブライド博士は3日、抑ウツ(鬱)症治療薬として数種の商品名で市販されている「イミプラミン」を服用した母親が腕のない奇形児を出産した例が、ことしシドニーで少なくとも3件発生したことを明らかにした。
     これはシドニー婦人科病院でことし7人もの奇形児の出産があったことに疑念を持ったマクブライド博士が調査した結果、うち3例は母親がイミプラミンを服用していたことがはっきりわかったもの。他の4例についてもイミプラミンは明らかに奇形と関係があるが、決定的には証明できない、と同博士は述べている。
     マクブライド博士は、イミプラミン禍についてオーストラリア及び各国当局に警告を発したと語り、神経系統に作用する薬の服用は、特に妊婦に危険を及ぼす恐れのあることがはじめてわかった点を重視している。

    マクブライド博士の話
     「サリドマイドは骨に作用して手足の奇形の原因となるが、イミプラミンは神経系統に対する作用を通じて奇形児出産の原因となる。それがわれわれの調査で決定的に判明した」

    松永英国立遺伝子学研究所人類遺伝部長の話
     「手足の欠損などの障害は他の薬剤でも起こるが、サリドマイド奇形は特異的なもので、他の薬で発生するという例はこれまで聞かなかった。
     しかしマ博士はサリドマイド奇形に詳しい人だから、この警告は早急に検討されねばならない。
     精神薬の次代への影響は、染色体異常や奇形を起こすという報告もあるし、否定する報告もありまだはっきりしていないが、障害が起こる可能性は十分考えられる。
     とにかく大部分の薬剤が胎盤を通過することがわかっているのだから妊娠初期に薬剤を服用するのは控えるという原則を貫くことだと思う」

    (47・3・4 サンケイ)




14 抗ヒスタミン剤で奇形児?

     【モントリオール(カナダ)27日発=AP】27日モントリオールで開かれたアメリカ科学振興協会(AAAS)の年次大会で、米政府公衆衛生局のC・T・G・キング博士は、乗物酔いや妊娠中のつわりに対して広く使われている抗ヒスタミン剤は、先天的な奇形児が生れる原因になることが動物実験でわかったと報告した。同博士によると、妊娠中のネズミにこれらの抗ヒスタミン剤を与えた結果では、その子に口蓋(がい)破裂、アゴや口の未発達などの多くの奇形が現れたほか、骨格にも奇形が出ることがわかったという。米国では現在、メクリジン、サイクリジン、クロルサイクリジンの3種類の抗ヒスタミン剤が市販されており、うち2種類は医師の処方なしでも購入できる。キング博士はこれらの薬品が62年スウェーデンで「先天的奇形児ができる危険がある」と販売停止になったこと、フランスでも市販を許しておくべきかどうかについて検討が行われていることなどを例にあげこの動物実験の結果が人間の場合にもそのままあてはまるとはまだいい切れないが、この結果を無視することは許されない」と語った。

    (39・12・29 朝日)




15. 麻酔扱う女医や看護婦 流産などの恐れ多い

    東大講師ら発表

     治療中にもれる麻酔ガスのために女医、看護婦たちは、流産や奇形児出産の危険性が高い―という調査データが、東大医学部付属病院分院麻酔科の柳田尚講師らのグループでまとまり、10日、大阪・高槻市民会館で開かれた麻酔学会で、花見千幸(けみ・ちゆき)助手から発表された。
     アメリカなどでは、すでに発がん性も指摘されており、新しい“職業病”としてクローズアップされそうだ。柳田講師らは、昨年2月から、麻酔を扱う女医123人、手術室勤務の看護婦605人計728人と、手術室にほとんど出入りしない女医753人を対象に流産回数奇形児出産など30項目のアンケート調査をした。(回収率50−64%)
     この結果、流産の恐れがあり緊急治療した率が、一般女医は23%だったのにくらべ、麻酔関係グループは31.6%−36.4%。原因不明の流産発生率も、一般女医が6.7%だったのに、麻酔科女医では16.4%あった。
     また、先天性心臓奇形など奇形児出産率も、一般女医が3.4%。これに対し麻酔関係グループは5.3%−7.3%と高かった。
     柳田講師らは、この結果について「結婚、勤務年数などにばらつきがあり、いまのところ統計学的にまだはっきりと断定はできない。しかし、ガスを一度だけ吸入する患者と違い、手術室の女医らが長い間、微量の麻酔剤を吸うところに問題がありそうだ」といっている。

    (50・4・12 サンケイ)




16. 薬は毒

     医学博士 遠藤 仁郎 

     このごろ、薬にたいする批判がかなりきびしくなって来た。
     これは、よくは効くが、ともすると、ひどい副作用をおこす薬が多くなったこと。
     そして、いささか、つかい過ぎの傾向がないではないこと、にもよるようだが、結局は、「薬は毒」ということを知らぬ、
     薬好きの国民性が根本になっているのでないか。

    きつい薬がふえた
     私どもが医者になった当時(50年もまえのこと)の薬にも、危険なものがないわけではなかった。
     しかし、問題になることは、ずっと少なかった。
     いまは、すごくよく効く薬ができ、昔なおらなかった病気が治るようにもなった。
     けれども、それだけに副作用もきつい。

    薬は毒
     だいたい、薬はすべて毒。
     毒をもって毒を制しようというのが薬。
     ごくふつうに使われているアスピリンのようなものでも、厳格には、決して無害ではない。
     もともと栄養素で、本来無害の筈のビタミンやミネラルでも、薬となると、必ずしも安全とばかりはいえない。
     まして、さいきんの新薬ともなればなおさらだ。

    後からわかる
     新薬が発売されるまでには、無論、くわしい検査が行われる。
     しかし、動物の成績を人体にあてはめること自体すでに無理だし、メーカー側にしてみれば、発売を急ぐのあまり、どうしても、ききめの検査に重点がおかれ、副作用のほうは、発売後の広汎な使用(いわば人体実験)によって、はじめてはっきりする、といったことになりかねない。
    (発売の当初には、無害だともてはやされていたのに、やがていろいろの副作用が出、ために、使用されなくなったものも少なくない) 

    使い方も変った
     薬のつかい方もいささか無造作。
     どこか調子がわるいと、当然つとめなければならない手当は、まるで怠って、何でも彼でも薬にたより、しかも、速効をもとめようとする気持、薬の多いのを喜ぶといった気持が、病人側や医者側にあることも否めない。
     薬をつかうほど儲けが大きいようにできている今の医療制度も、たしかに問題。
     薬治には主薬・補佐薬があり、それを、いろいろ組み合わすことは、昔も今も変りはない。
     が、いぜんは、大抵、1日1〜2剤、精々3剤に調合され、1剤の分量もわりと少なく、水薬はもとより、散薬でも、よほど不機用なものでも、オブラート1〜2ヶで、らくにのめる程度だった。
     いまは、殆んどの薬がメーカー品の錠剤やカプセル剤。
     それを、あれこれとり合せるのだから、いきおい、数もふえ、かさばり、手提げ袋でもちはこびせねばならぬほどにもなるし、分量のこまかい加減もむつかしい。
     それをのんで、胃・腸・肝その他がおかしくなったり、カブれたりすると、また、それぞれに応ずる薬が追加される。
     そのうえ、皮下や筋肉注射。はては大層な点滴静注。欧米先進国では、10人診察して、薬を出すのは精々3〜4人。注射など殆んどしないそうだから、つかいすぎの傾向にある、といわれてもしかたあるまい。

    医者だけの責任ではない
     それにしても、病気を治すためには、これも止むをえない。
     けれども、隣りの人には注射して、自分にやってくれぬのは差別待遇だ、とすごむ患者がいたり、私のように、薬はまるで出さなんだり、精々、むかし流儀のチョッピリだけの薬では、機嫌の悪い患者が少なくないのだから、薬の使いすぎも、決して医者や制度だけの責任ではない。

    薬好きの原因
     これは、文化程度のちがいによるものでもあろう。あるいは、高い保険料を払わされているんだ、病気せにやァ損だ、薬をのまにやァ、注射もさせにゃァ、という貧乏根性のせいかも知れない。
     また、薬品メーカーのあくどい宣伝にふりまわされてい るためかも知れない。
     が、結局は「薬は毒」という理解が足らないからではないか。
     それはともかく、薬好きの原因の一つは、いまの、文化的という、あまりにも不合理・不自然な日常生活――環境の汚染、騒音、はげしい生存競争(精神的ストレス)、運動不足、不完全きわまる贅美食と有害有毒食品(精製穀・肉・卵・糖・脂食に傾き、ビタミン・ミネラル源である良質ナッパの欠乏した、そして、農薬・産業廃棄物や洗剤に汚染された食品、高度に加工され、危険な添加物いっぱいの既成食品)の氾濫。
     タバコ、アルコール、薬品類の乱用といった――のため、実際に、国民の多くが不健康化され、薬なしには、しかも、きつい薬なしには、もたないからだになってしまっており、薬にたより、薬を有難がる気持が大きくなっているからであろう。
     だから、根本的には、正しい食を中心とする日常生活の合理化・自然化によって、本当に健康な、薬のいらないからだになることが先決だ。そうすれば、たとえ、不幸にして病気しても、少々のことは薬なしでもすむし、少量の、しかも比較的無難な薬でも、こと足るから、厄介な副作用に悩まされることもなくなるだろう。

    病弱だった私
     私は、もと病弱だった。そして、大学でおしえられた通り高熱量・高蛋白食をつづけている間、ずっと不調。製薬会社のプロパの提供してくれる新薬の見本で、机はいつも一杯になっており、あれこれと、期待をかけてのんだり、注射したりもした。
     けれども、全然だめ。それが、30年余りまえ(医者になって20年たった時)いまの緑葉食・青汁に切りかえてから、体調はしだいに好転。
     いつか薬はいらなくなり、毎日のように出入りしているプロパも、まるで寄りつかなくなった。
     机の上にも中にもサンプル一つなく、わが家の薬といえば、沃丁とエビオスだけ。
     ともあれ、薬は毒。
     いかによいといわれる薬でも、まこと、かなわぬ時だけに限るべきで、決してむやみにのむべきものではない。
     まして、薬をのんで健康になろうなど、とてもかなわぬこと。
     本当に健康になるには、「薬は毒」ということをよく心得、薬によってではなく、あやまった日常生活の建直しによるほかない、ということを銘記しておきたいものだ。

     (49・11)




17. 恐ろしきかな!!薬品公害

     医学博士 遠藤 仁郎 

    クロロキン製剤、5年後も後遺症
     視力、再び低下
     服用中止後、急激に進む


     慢性ジン炎やリューマチの治療で服用したクロロキン製剤の副作用で、視力障害を起したクロロキン網膜症患者に、服用中止後5年以上もたってから再び視力が大幅に低下する後遺症が出ている。
     23日東京・新宿の厚生年金会館で開かれた日本眼科学会で、岡山労災病院の那須欽爾眼科部長がクロロキン製剤の長期的副作用を初めて明らかにした。クロロキン網膜症は網膜の色素にクロロキン成分が沈着して網膜の中心部周辺を侵し、視力の低下や視野のせばまりを起こす。これまで症状経過を迫った臨床データが少ないため、早く副作用に気付いて薬の服用をやめれば症状は比較的軽くてすみ、約1年で視力の減退も止まるとされていた。ところが、那須部長が行った患者七人の追跡調査では、5人が服用中止後5年から10年たった後に、片目、両眼いずれかの網膜変性が再び急激に進み、視力0.03以下まで低下していることがわかった。  岡山市の男性Aさん(52)は皮膚科の治療で40年からクロロキンを服用したが42年末、視力の異常に気づき直ちに服用をやめた。中止直後は0.六だったが一年後には0.1に落ちた。その後この状態が続いていたが49年ごろから再び視力が低下し、現在は両眼とも0.01以下で、歩行も困難になった。  また、慢性ジン炎の治療で5年半服用していた福山市の主婦B子さん(45)は中止後1年から6年間は左右の視力がそれぞれ0.3、0.5と安定していたが6年半後に急に悪化、両眼とも0.03まで衰えた。5年以上もたってから後遺症が集中的に現れる理由について、那須部長は「体内に吸収されたクロロキンが代謝されず、網膜色素に蓄積したためではないか」とし、今後とも詳しい追跡調査を続ける必要を強調した。
     クロロキン網膜症の患者は全国で数百人といわれるが実態はつかめておらず「クロロキン被害者の会」(横沢軍四郎会長)が国や製薬会社、医療機関を相手取って、東京地裁に約69億円の損害賠償を請求する集団提訴を起こしているほか、各地で被害者が提訴中。裁判では後遺症の存在が争点となっており那須部長のデータは裁判の今後に影響を与えそうだ。

    (52・4・24サンケイ)



    中年婦人はご用心
     ピル脳血管障害の恐れ


     軽口避妊薬(ピル)の使用は、高血圧のご婦人や四十歳以上の人はご用心
     14日東京・大手町の経団連会館で開いた第1回日本脳卒中学会で、九大第二内科の緒方絢助手がピルを愛用している脳血管障害を起こした患者3人の臨床例を報告、乱用を警告した。緒方助手は、この3例ともピルの影響が強く働いたと指摘しており、特に高血圧や肥満女性はピルの服用を注意するよう強調している。
     ピルによる脳血管障害の正式報告はわが国では初めてである。

       第1例
       30歳のとき、高血圧と診断されながら妊娠9回、うち人工流産7回の主婦Aさん(36)は、ピル服用後、11ヶ月目に右足がマヒしたが1週間で軽快した。ところがピルを中止してから1ヶ月目に右目が半盲状態になり、九大病院で脳血管撮影の結果、脳の大動脈の閉(ソク)塞が確認された。
       第2例
       妊娠5回、うち4回人工流産のBさん(46)は、5年前から3年間、不定期だが大量のピルを飲んでいた。
       ところが、服用をやめてから2年後に突然左目が失明した。診察の結果、虚血性の網膜症と左の内ケイ(頚)動脈ヘイソクが見つかった。
       第3例
       人工流産5回の経験を持つCさん(28)はピルを飲み始めてから20日目ぐらいから気分が悪くなり頭痛が起こった。さらに25日目ごろから激しい頭痛、意識障害を伴った全身ケイレンと左半身のシビレが現れた。このCさんの場合は約2週間くらいで軽快した。この発表について座長を務めた国立名古屋病院伊藤栄一内科部長は「非常に興味ある臨床例だ。今後、わが国でも乱用により、これよりもっと重いケースが出る事が心配される。産婦人科関係の医師たちは、この点もっと一般の人を啓発するとともに、このような脳血管の障害について十分注意してもらいたい」といっている。
      (2・16 山陽夕刊)



    奇形児出産の恐れ
     トランキライザーで警告


     米国食品医薬局
     【ワシントン22日共同】米国食品医薬局(FDA)は22日、精神安定のために広く使われているトランキライザーの使用について「妊娠直後3ヶ月間の妊婦の使用はミツクチなどの奇形児出産を引き起こしかねない」と警告、メーカー各社にその危険の可能性を知らせる警告ラベルを製品に添付するよう命じた。
     妊婦の精神安定剤使用については、その危険性が早くから指摘され、FDAとしてもすでに「妊婦が使用する場合にはその利点と危険性を十分に考慮する」よう警告するラベルの添付をメーカー各社に義務づけていた。
     今回の措置はこれを妊娠3ヶ月の妊婦を対象に一段と強化したもの。FDAは今後6ヶ月以内にこの警告ラベルを付けるよう求めており、これに応じない各社には、処方薬としての許可取り消しを含む強硬措置をとる方針である。なお、今回のFDAの命令の対象となっているのはメプロバメート系、ベンゾダイヤゼピン系のトランキライザー。

    (7・23 山陽夕刊)




18. ステロイド

     医学博士 遠藤 仁郎 

    ヤケドの特効薬でなかった
     やけどの治療にはステロイドと呼ばれる合成ホルモン剤が広く使われているが、調べてみると害の方が多く、治療効果はほとんどなかった。やけどの専門家が集まって大阪商工会議所で開かれている日本熱傷学会で10日、「熱傷とステロイド療法」のシンポジウムが行われ、こんな結果がまとまった。
     「長期間、塗っていると、かいようが深くなり、筋肉が露出する」という指摘もあり「有害」とする報告が圧倒的。「筋肉が露出する場合もある」と指摘したのは防衛医大皮膚科の藤田恵一教授。同剤には皮膚の下層である真皮を減少させる作用があるために、やけどでできた、かいよう面に長時間、塗り続けると脂肪層が消失し、ついには筋肉組織が見えるようになることもある、という。
     江東病院(東京)の村松正久外科部長は臨床治療でステロイド剤(吉草酸ベータ・メサゾン)を含む軟こうと、含まない軟こうを使いわけた結果を報告。痛みと、はれをとる作用では両剤に差がなかったが、傷口からにじみ出す体液を止め、皮膚の再生をうながす作用を比べるとステロイド剤を含む軟こうの方が効くように見えたのは4日目ごろまでで、それ以後は含まない軟こうを塗った方がよく治った。
     さらに、京都第2赤十字病院の大島良夫医師は、京都府立医大皮膚科と、モルモットを使った共同研究で「何も薬をつけなかったものが一番、よく治った」と報告した。クリーム状のステロイド剤をやけどのかいよう面に塗って経過を無処置のものと比べたが、両剤には皮膚が再生する時に起こる線維化を逆に抑制し、治ゆを遅らせる作用が見つかった。
     一方、やけど患者に対するステロイド剤の注射も否定された。大やけどをすると、かいよう面から体液が失われるなどしてショック状態になるのだが、現在の治療法では全身状態をよくする目的で、ステロイド剤を注射するのが常識になっている、しかし、阪大病院特殊救急部の黒岩宏助手の報告では「組織細胞の酸素摂取量が、低下して患者を弱らせる」ことが確かめられた。帝京大医学部麻酔科・岡田和夫教授も犬を使った実験で酸素摂取量の低下を指摘。順天堂大医学部一般外科の笹生幹夫助手は、同剤の大量療法を行うと効果がある程度、認められると報告したが「すべての患者に用いるのには問題がある」と付け加えた。
     これらの報告を総合して、座長の北大医学部形成外科・大浦武彦教授は「やけどに対して、ステロイド剤は危険性があるうえに、効果がないかも知れない。安易に使うべきではないだろう。ケロイドの予防など一部の症例に限られる」と締めくくった。

    (53・6・12 産経)




19. 薬の怖さまざまざ 副作用24人死ぬ

     厚生省は18日55年度の医薬品副作用モニター報告をまとめたがそれによると、
     ことし3月末までの1年間にモニターである全国の医療機関から医薬品の副作用として報告された症例は669件にのぼりうち死亡が24件もあった。
     抗生物質や解熱鎮痛剤X線造影剤などによるショック死がほとんどで、「両刃の剣」でもある薬のこわさを見せつけている。いままで知られていなかった副作用も発見され、添付文書の「使用上の注意」を改めさせるなどの措置を取った。このモニター制度は、承認された薬が販売されてからの副作用発生状況を追跡調査するのが目的。薬害に対する世界的な関心が高まり、世界保健機関(WHO)が40年にモニター制度実施を決議したのを受け、42年から始まった。
     現在、指定されているのは全国の国立、大学病院のすべてと主な公立病院を合わせ838施設。18日にまとまったのは、昨年4月‐ことし3月の1年間に報告された症例で、発熱、頭痛、下痢、食欲不振、呼吸困難、湿しんなど、医薬品の副作用の疑いがあるのは669件あった。複数の医薬品が関係した場合もあるため、医薬品数では784品目に及ぶ。そのうち患者が死亡したのは24件。解熱鎮痛消炎剤のインドメタシン、スルピリン、解毒剤のD−ペニシラミン、抗生物質の塩酸リンコマイシン、カルベニシリンナトリウム、セファゾリンナトリウム、X線造影剤のヨードキサム酸、機能検査用試薬のインドシアニングリーンなどだ。ほとんどがショックによるものだった。
     厚生省は、患者の病状や体質にもよるため、薬との因果関係は必ずしもはっきりしない、としている。しかし、薬害の被害者に対し、製薬会社などのきょ出金により医療費補償、遺族年金の支給などを行う厚相の認可法人「医薬品副作用被害救済基金」は、年間に死亡100件、長期の障害100件、短期で治る障害2900件が出ることを救済の目安にしている。実際にはモニター報告数の数倍の被害例が埋もれているはずで、医薬品の安全性にはまだ厳しい監視が必要だ。個別の医薬品について、日本では知られていなかった副作用も見つかった。血圧降下剤のピンドロールによる筋肉の痛みやけいれん、感染症治療薬のセフェム系抗生物質による腎(じん)障害と硫酸アミカシンによるショックの3例で、メーカーに添付文書の内容を改めさせたり、臨床調査を行わせたほか、添付文書を改めさせた医薬品は150件にのぼる。全体的に副作用報告が多かったのは、セファレキシンなどの抗生物質(182件)、メフェナム酸など中枢神経系用薬(120件)、クロルヘキシジンなど外皮用薬(106件)などだった。

    (56・9・19 朝日新聞)




20. コルチコステロイドは骨をもろくする

    【デンバー】喘息の治療に用いられるコルチコステロイドは、骨を著しく弱くする可能性があるという。
     当地のNational Jewish Hospital のA.Adinoff,R.Hollister の両博士は、1年以上にわたり大量のコルチコステロイドを用いた喘息患者128例のうち、15例が肋骨や背骨に合計58例の骨折を生じた、とNew England Jonrnal of Medicineに報告。
     これに対して、間欠陥にしかコルチコステロイドを用いなかった喘息患者54例で、骨折を生じたものはいなかったという。

    (Medical Tribune 83.9.1)




21. 小児心臓病

     医学博士 遠藤 仁郎 

    ママ、気をつけて 酒、たばこ、薬も影響
    「ウーマン・リブとやらで女性が地位向上を果たしたのは喜ばしいが、男から奪った酒とたばこは彼女らの健康を損ね、こども達にも悪影響を及ぼしている。
     若い女性は何をはき違えているのだろう」
     新生児百人に一人、この驚くべき先天性心臓病発生率の原因を米コロラド大、J・ノラ教授は皮肉たっぷりにこう説明した。
     5年前の本紙主催・心臓病国際シンポジウムでの講演である。
     ノラ教授はいう。胎児の心臓は妊娠2ヵ月以内に大体の形ができあがる。
     その間に妊婦が毎日アルコールを飲めば25−30%、風疹に感染すると35%の割で心臓奇形の赤ちゃんが生まれてくる。
     同じようにホルモン剤、睡眠剤、食欲抑制剤も危険という報告もある。そのほとんどは今、妊娠女性の常識になりつつあるが、百人に一人の確立は減るどころか、逆に微増している。
     しかも、もっと重くもっと危険な症例が−。
     昨年暮れ、東京女子医大病院の新生児センターに生後まもない赤ちゃん(男児)が運び込まれた。チアノーゼの出た顔は青く、脈もかすか。赤ちゃんは手の施しようもないまま、その日のうちに死んだ。
     解剖所見は「新生児肺高血圧持続症」。
     心臓そのものには異常がないのに、肺全体にウッ血症状が見え、そしてチアノーゼ。
     先天性心疾患と同じ症状を示す奇妙な病気で、最近になってやっと日本やアメリカの学会で症例が報告され始めた。
     重症だと、生後、2、3日で死ぬ恐ろしい病気だ。
     「妊娠中、お酒かたばこは・・・」門間和夫助教授(46)は、まだ涙が渇ききらない若い母親にそっとたずねた。
     「いえ、酒もたばこも・・・。それに、風疹の検査も大丈夫でした」。
     外出にも気をつけ、医者から早産止めの薬ももらった。
     “犯人”はそれだった。
     インドメサシンという座薬。
     薬効は早産止め以外に解熱、鎮痛作用もある。
     さらにもうひとつ、恐ろしい副作用がある。
     「ヘソの緒を通じて胎児に入る母親の血液は肺動脈から動脈管というバイパス血管を通って大動脈に流れます。
     そのバイパスをこの薬が収縮させ行き場を失った血液が活動前の肺に流れ込むんです」
     肺はウッ血し、分娩後の呼吸を不能にしてしまう。
     母親は赤ちゃんを思って薬を使用した。
     処方した医者も思いは同じだったろう。
     しかし、逆の結果を招いた・・・。
     門間助教授はこれまで解熱、鎮痛剤40種を赤ちゃんサイドから研究し、インドメサシン系を含め34種の危険薬を見つけている。
     この中には、あのアスピリンも含まれている。
     「あなたの薬が赤ちゃんを死に至らしめた」門間助教授はその日のうちに問題の薬を処方した産婦人科医に電話し、その事実を告げた。
     「でも、産婦人科医に限らず、内科、歯科の医者の中にもまだ不勉強な人が多いんです。妊婦に多い腰痛や歯痛に、今現在も危険な薬が調合されているんです。」
     気をつけてママ。
     それは胎児からの命をかけた呼びかけである。。

    (58・5・3 サンケイ)




22. ビタミンEの大量注射 米で乳児38人が死ぬ

     (ニューヨーク3日=共同)ビタミン・ブームの中で日本でも人気の高いビタミンEを大量投与された乳児が全米でこれまでに、38人も死亡していることが米食品医薬品局(FDA)の調査でこのほど判明した。FDAが原因究明調査に乗り出すとともに、事態を重視した米下院政府活動委員会小委も4日公聴会を開く。
     このビタミンE剤は米レプコ・D・S社製の「Eフェロール」で、注射液として販売され、これまでに全米62の病院で使用された。
     ワシントン州スポケーンのセイクリッドハート病院でこのビタミンE注射を受けた4人の乳児が死亡したのをはじめ計35の病院で死亡者が出ている。
     FDAによると、死亡した乳児のうち数人は未熟児で、失明を予防するため通常の4−5倍の量を投与されたといわれる。
     そのほか同じ注射を受けた43人の乳児の腹コウに水がたまるなどの異常症状が出た。
     ビタミンEは1938年以来、米国で発売されており、注射液についてもFDAはこれまで特に規制の対象とはしていなかった。
     一方、3日付のニューヨーク・タイムズ誌が報じたところによると、この販売会社は、死者が出たことが分かったあと4月9日から注射液の回収をしているという。

    (59・5・5 サンケイ)




23. プレドニンをやめたい

     医学博士 遠藤 仁郎 

     「ひどいゼンソクの発作がつづいたのでプレドニンをのんでいます。が、副作用がこわいので、なるべくはやくやめたいと思っています。そのたしにもと、青汁をはじめました。どれくらいのめばよいんでしょうか?」との相談。

     「多いほど結構です。もともと青汁のねらいは栄養のバランスをよくすることなんですが、それには、平均的の食事をとっている人で良質ナッパ400〜500g、青汁にして約2合。健康増進、病気予防の目的にはそれでよいでしょう。
     しかし、どこか故障があるばあいはそれ以上。少なくとも3合。
     厄介な、いわゆる難病のばあいは、少なくとも4合〜6合、もとのナッパ1.1〜1.5キロ以上。多いほどよいことが経験上知られています。
     プレドニン離脱も難病に準ずべきものですから、そのあたりが適量といえましょう。
     なお、青汁の効をたかめるためには、食べものはすべて、なるべく安全な自然食品にし、加工・保存食品はつとめてさけること。
     また、一般食品も、なるべくミネラル・ビタミンにとんだものとすべきですから、主食には白米飯よりは雑穀・豆、ことにイモ類を、蛋白食には肉・魚の切り身よりは小魚、大豆やナッツ類を多くし、良質ナッパを主とする野・山菜、海藻を十分そえる。
     つまりイモ・マメ・ナッパ・青汁食にすること。
     調理は簡単、調味はうすく。タバコ・酒はもとより、菓子・ジュース類など嗜好品その他日常諸般の養生法にも十分気をつけること。
     このようにして、いつも血をきれいにし、からだ中のすべてのはたらきをよくするようつとめていれば、ふつうよりは、ずっとらくに、また早く、やめられるようです。

    (60・7)




24. 鎮痛剤が頭痛の原因に

     ある種の鎮痛剤を常用すると、慢性の頭痛が治るどころか頭痛を誘発することがあるという。
     頭痛を毎日生じる患者52例を検査し、治療した。
     40例は片頭痛、残りは血管運動性または打撲後の頭痛であった。
     片頭痛の持続期間は平均21年、慢性頭痛は平均7.6年だった。
     全例が少なくとも三種の鎮痛剤を規則的に使用していると報告し、週当たり平均35.6個の錠剤または坐剤を用いていた。
     患者を外来で3〜6か月間観察、薬剤の使用状態、頭痛の頻度と程度を監視した。
     次に入院させ、すべての薬剤をいっぺんに中止した。
     頭痛の増大、悪心、嘔吐、頻脈、発汗、睡眠障害などの禁断症状が認められたが、幻覚と脳症状はそれほど多くなかった。
     薬剤の使用中止後、入院の最終日までに慢性頭痛は77%の患者で著しく改善または完全に消失、16か月のフォローアップ後も70%で有意な改善が続いた。
     酒石酸エルゴタミンとアミノフェノール誘導体が、慢性頭痛の原因として最も多いと結論された。

     Dtsch.Med.Wochenschr.109:369,1984
    (Medical Tribune 1984.9.12)




25. 抗がん剤で精神障害

    メーカーに安全情報指示 厚生省 

     抗がん剤「カルモフール」を投与した患者のうち、7年間で44人に副作用で意識障害などの重い精神神経障害が起きていることが判明。
     また痛風治療薬「アロプリノール」を投与した患者で国内3人、国外6人の計9人(うち国外で2人死亡)が副作用のため再生不良性貧血となっていることが分かった。
     このため厚生省は28日、各メーカーなどに対し医療機関に注意を喚起する緊急安全性情報を出すように指示した。
     カルモフールは三井製薬(本社東京)と山之内製薬(同)が共同開発したもので56年に製造承認された。
     三井がミフロール錠、同細粒、山之内がヤマフール錠、同細粒という商品名で販売。
     これまで同剤の投与で言語障害、歩行障害などの副作用が報告されていたが、最も重い場合には脳の神経繊維の一部が損失、CT(コンピューター制御断層撮影装置)撮影では真っ白に映る白質脳症に至る症例もあったため、使用上の注意に同症を追記するとともに緊急情報を出すことにした。
     同剤の投与患者は7年間で約10万人で、重い障害となった44人のうち37人が回復、未回復7人の中には合併症による死亡例もあった。
     「アロプリノール」は43年12月に輸入承認され、20社以上が販売。
     血液中の尿酸値を下げ、痛風や高尿酸血症の治療薬として使われている。

    (63・7 サンケイ)




26. 薬害の恐怖身にしみた

    大分市 K.N. 

    「あなたのからだは、薬が満杯ですから、死にたくなければ薬をやめなさい。なんで10年ものんだのですか、全部副作用からそうなったのですよ…」

     と、夫を診察した医大のN教授から宣告されたのは昭和60年の秋でした。
     病院からだされた薬に加えて薬局で自分で買った薬など夫はすすんで薬にたよっていました。その薬害で骨と皮ばかりになり、全身衰弱のため視力聴力が急におとろえ、死の一歩手前だったようです。
     自宅療養で断薬に踏み切りましたが、あらゆる薬を一度にやめると、その夜から、油汗を吹き出し、畳のめをかきむしって苦しみだしたのです。
     翌朝この症状をN先生に告げると、
     麻薬中毒と同じ禁断症状だからそのまま耐えて何かに打ち込みなさい」とアドバイスを受けました。それに従って夫は好きな短歌を作り始めました。
     あれから4年が流れた現在、不思議と元気になり、耳は補聴器でカバーし、視力は少しずつ良くなったので白杖も市に返還し、これまでやれなかった町内会のお世話、同窓会の幹事、若い者の縁結び、短歌会のお世話、特にこれまで奉職させていただいた盲人のための点訳ボランティア、カラオケなどにも打ちこんでいます。
     友人もたくさんでき、見違えるように明るくなり、別人のようになりました。これもN先生などのお蔭と老夫婦共々よろこんでいます。
    (平成元・5・8サンケイ)




27. 胃袋

    「私、このところ胃の調子がよくないんです。胃がシクシク痛んだり、軽い吐き気もありますし・・・。食欲はまあまあなんですが、なんとなく胃がもたれているようでスッキリしないんです」
     いろいろと市販の胃薬を飲んでみたのだが、いっこうによくならない、といって中年の婦人が外来に来られた。
     ここで問題になるのは、胃の調子がよくないという場合のその原因である。
     胃の働きからみて、その原因を大きく2つに分けることができる。
     1つは胃の働きが強すぎて胃液の分泌が多く、胃の粘膜が胃液に負けて爛(ただ)れている状態である。
     もう1つは、逆に胃の働きが、低下していて、胃の運動や胃液の分泌が低下している状態である。
     したがって、この2つの場合では、それぞれまったく別の働きを持った薬が必要になってくる。
     胃の働きが強すぎて胃の調子が悪い人が胃の働きを強める薬を飲めば、胃の粘膜の爛れは一層強くなり、へたをすると胃かいようにもなりかねない。
     また、反対に胃の働きが低下している人が、胃の運動や胃液の分泌を抑える薬をのめば、当然のことながら症状は悪化してしまう。
     このように、胃薬には消化剤タイプと制酸剤タイプの2種類があり、その使用法を間違えれば、“胃の調子”がよくならないのは当然なことである。
     一般に市販の薬はどちらのタイプにも当てはまるような効能書きと内容になっていて、適用のはっきりしないことが多い。
     市販薬はあくまで一時しのぎのもので、頼りすぎは危険である。
    (杏林大学教授 石川恭三 1987・サンケイ)







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