健康と青汁タイトル小
環境




1-1. 死の灰とケール

     医学博士 遠藤 仁郎 

     世界人類全体の悲願にもかかわらず、ソ連は超大型核爆発実験を強行してしまいました。
     まことに困ったことです。しかもわが国は世界の谷底といわれる悪条件の土地がらです。
     実験直後の大量に降下する死の灰の危険はもとよりですが、これから10年以上もの間降りつづくという灰の影響を思うと、全く戦慄を禁じ得ません。
     いったい、どうすればよいのでしょうか。(毎日多数の質問状が来ますが、一々くわしい回答はしかねていますので、ここに私どもの考えを誌すことにしました。なお拙著「青汁の効用」にもあらましのことは書いてあります。)

     死の灰の危害を防ぐ方策の一つは、放射性成分の体内蓄積を出来るだけ少くすること。そしても一つは体抵抗力を出来るだけ強くすることであろうと思います。

    A 蓄積の減少
     これには、とり入れる量を少くし、排泄をはかること。

       1、摂り入れる量をなるべく少くするには
         イ、死の灰
           直接降りかかって来る灰は出来るだけとり除くこと、雨水は濾して使用する。
           野菜果物は安全な水でよく洗う。洗剤の使用(私どもは、これは余り推奨していないのですが)も、この際はやむを得ぬでしょう。但し後洗いを十分にすること。
           ガーゼやスポンジで丁寧にこすり落せば、なお結構でしょう。

         ロ、食品中の放射能
           水にとけて地中にはいった死の灰の成分は、根から吸い上げられ、穀、豆、芋、果物、野菜などからは直接に、また、それらを与えられる家畜の供給する乳、卵、肉などからは間接に、私どものからだにはいって来ます。
           これに対しては、なるべく植物の吸収する放射能を少くするようにする他に途はありません。
           これは、肥料として、堆肥、厩肥、石灰などを十分に施すことによって、よほど少くなるといわれています。(これは健康農法ともいうべきもので、ミネラルやビタミンも豊富になります。)

       2、排泄をはかるには
         放射能成分の体内からの排泄をすすめることでも、その蓄積は防がれます。
         これについては、燐の多い(つまり酸性のつよい)肉、魚、卵、穀、豆などでは蓄積されやすいが、アルカリことにカルシウムにとみ、燐の少いもの(その代表的のものは良質の青ナッパですが)の場合は、排泄が促進される(吸収はむしろ妨げられ)ということです。

    B 体抵抗力の強化
       放射能の害にも体のほうの条件が関係することは、ほかのすべての害毒(たとえばバイ菌や毒物など)と同じです。
       すなわち、体の条件さえよければ、そうそう無暗にやられるものではありませんが、条件が悪ければ、普通にはよく堪えられる程の僅かのものにも、ひどく影響されます。
       ですから、つとめて放射能成分の蓄積を防ぐ一方、できるだけ体の条件をよくするよう、中でも食養を正しくするよう、心懸くべきです。

     従来の邦食の最大の欠陥が米の過食にあることは周知の通りですが、それは放射能害についてもいえます(本紙二面所載のストロンチウムの量をみても、いかに穀食が不利であるかがよくわかりましょう。)そしてまた、良質緑葉の不足が、邦食の今一つの欠陥であることは、私どもの強調している所ですが、ケールやキャベツのストロンチウム量が穀類の十分の一以下にすぎぬことに、ご注目ねがいます。
     さらに有難いことに、これら良質菜をとれば、ストロンチウムの吸収が少くなり、体内からの排泄は多くなるというのです。
     穀類をへらし、良質ナッパを多くとるべきことは、こうして、死の灰の脅威に直面してみると、一層その重要性が痛感されるわけです。
     そこで、私どもの死の灰対策は

      1. ケールその他の良質緑葉菜を、堆肥、厩肥、石灰を十分施し(健康農法)てつくること。
      2. これを安全な浄水でよく洗ってしっかり食べ(なるべく生で)、汁にして飲むこと。
      3. 主食ことに穀類を少くし、肉、魚、卵類はてきぎにとること。

     ということになります。
     これはつまり、私どもの常にとなえている緑葉食、青汁栄養法なのですが、そうしていれば、死の灰の害も必ずや防ぎうるにちがいないと考えられます。
     本食養法が原爆症によいという臨床上の事実。先年アメリカ軍部から、動物実験の成績では、ケールやキャベツの葉で放射能の害が半減する、と発表されたこと。
     これまでカラーケール(黒人しか食べぬのでそう呼ばれていたのだそうです)と蔑まれていたアメリカで現在ケールを食べようという運動がおきつつあるということも、これを裏づけるものではないでしょうか。
     当局の発表でも、今の所はまだ大したことでなく、これからの土の汚染の方が恐ろしいといっています。
     いたずらに雨や塵のカウント数に一喜一憂せず、もっと冷静に、根本的な対策を講じたいものです。


1-2. 安全な水、不安な水 大きな水道のありがたさ

     皆さんの毎日の生活をちょっとふり返っていただくと、私が今までやって来てこれからもまたやって行こうとしている環境衛生の仕事とあまりに関係が深いのにきっと驚かれることでしょう。
     人間が生きているからには誰しも水を使わない人はありません。
     何気なく水道のせんをひねって清浄な水をざっと出して、どしどし使っておられる人も多いことと思います。
     日頃はあたりまえのように思っていても、断水でもしてみるとしみじみと水道のありがたさがわかります。
     清浄な水をいつでも充分使えるようにするのが水道のねらいであり、これは環境衛生の一番基礎をなすものです。

     けれども日本中でこの水道の水をのんでいる人はまだ全体の48%に過ぎないのです。
     残りの半分以上の国民は井戸の水や河の水を使っているのです。
     これでは安全な清浄な水とはいえません。
     赤痢のような伝染病が大へん多いのはこんな所にも大きな原因があるのです。
     近代の上水道は、河の水を使っている人々の間に腸チフスなどの伝染病が流行したので、その河の水を砂でこして給水したところが伝染病が急にへってしまったことからはじまり、次第に世界中に広がっていったのです。
     もちろん、今では水道の水は伝染病を予防するだけではなく、その他いろいろ使われており、豊富で清浄な水がほしいということは、文化生活の最も基本的な欲求といえましょう。
     私たちの生活では文化が進めば進むほど、水を使う量はふえてくるのです。
     こんなに必要な水が、未だ水道から得られない所では、毎日大へんな苦労をしておられます。
     私は先日「郷土の環境衛生」という中学生の作文で、岩手県の一人の女の子が水をもらい、それをはこぶのにどんな苦労をしているかということを克明に書かれたものをよみ、心を打たれました。
     こんな所では、主婦の方々はどんな苦労をしておられることでしょう。
     農山村で簡易水道が出来て、その竣工式に水道の栓からほとばしり流れる水によろこびの声をあげる人々、特に主婦の方々のうれしそうな顔、水くみという重労働から開放されて、またその結果家庭の衛生だけでなく、生活に余裕が出来てよろこんでおられる人々の話を聞くと、何とかしてこの水道を全国津々浦々までおよぼして行きたいものだと思います。

    伝染病がはやるもとおくれている下水道
     日常生活で水を使うことが多くなれば、一方排水の問題が当然おこってくるわけです。
     下水の問題はこの排水にからんだ問題です。
     下水といえばすぐ都会を考えられるでしょうが、近頃は農家でも水の使い方がふえるにつれて、家庭下水の問題がむずかしくなって来ています。
     都会や郊外の住宅地でも下水道がちゃんとしていないと生活全体が不潔な感じがするものです。
     どぶがつまったりすると、一番頭をいためるのは家庭の主婦の方々でしょう。
     町や住宅地の地区組織活動が案外このような身のまわりの困ったことから始まる場合がよくあります。
     しかし環境衛生の面での下水はただ溝から下水が流れ出るというだけではまだまだ不充分なのです。
     水洗便所と、それにつながった下水道をもつことが一番大切です。
     皆さんはよくパリーの公共下水道の話をきかれることがあるでしょう。
     あのように台所の水も、便所の水も、時には雨の水もみんなまとめて安全な所にはこびさってしまう下水道と、こうしてはこばれた汚水を安全なものに処分してしまう下水処理が文化生活の最も大切なものの一つです。
     ところが残念ながらわが国では下水道の終末処理場で、台所の下水も水洗便所の下水も何もかも合わせて完全に処理されている割合は、国内のわずか5%にすぎません。しかもこれは都会といわれているものでも15%にすぎないのです。日本の公衆衛生の中で最もおくれているのが環境衛生で、その中でも下水道が最もおくれており、欧米諸国にくらべて約一世紀近くおくれているといわれています。
     これでは赤痢の大流行もうなずけますし、あのいたましい小児まひ(ポリオ)の予防にも問題でしょう。
     水道と下水の処理は何といっても最も基本的な環境衛生の問題なのです。

    “黄色い海”の歓迎とははずかしい尿処理
     人間の排泄した大便や、小便のしまつにはこのように水洗便所が一番よいのですが、そうかといってわが国の実状では全国の便所を一ぺんに水洗にするわけにもいきません。
     そこでし尿消化そうなどのし尿処理施設というものをつくって始末をするようにしています。
     もちろん、このときは便所から汲取り、それから施設のある所まではこばなければなりません。
     皆さんも気がついておられることでしょうが。
     最近では肥桶で街角をはこぶ風景はもうほとんどみられなくなり、真空ホースをつけた自動車になりました。
     大小便がし尿処理施設にはこばれたあとは、川などに流しても大丈夫になるまでいろいろな方法で処理されますが、し尿処理施設もたりないのです。
     ことに最近、化学肥料が普及したため、全国の市町村で急激にし尿の始末に困って来ている状況です。
     今のところ、し尿処理施設はわずか159都市に設けられ、970万人分を処理しているだけです。
     そこでやむを得ず、かなりの分量のものを海にすてたりしています。
     はるばる海外から観光船で日本をおとずれる外国人の人々が、東京湾の入口でまずお目にかかるものが、この排せつ物による黄色い海なのですから何としてもなさけない次第です。
     日本のまわりの海を清浄な海にすることは環境衛生の念願の一つです。
     せいじょう(聖成)の名前にかけてもこの問題の解決に努力いたしたいと決心しています。


1-3. 正しい自然

     医学の進歩により、細菌の感染による病気は、確かに目立ってへりました。
     しかし、いわゆる成人病は、それと逆比例するかのように、ひどくふえ、またふえつつあります。
     いったい、成人病という呼び名は、実に妙なもので、実際は老人病というべきものです。
     それが成人病と名づけられたいわれは、何でも、老人病というと、いかにもしめっぽくて面白くないというので、景気のよい成人病ということになったのだそうです。
     ところでこの成人病が、長生きするものが多くなったため、多くなるのであれば、それは至極当り前のことです。
     しかし、皮肉なことに、元気盛りのものにも、いや、もっと若い、中学生や高校生などの青年層にも、しだいに多くなり、すっかりふさわしい名前になってしまっているのです。
     これについてその道のお歴々からいろいろと説明されているようですが、どうも私どもには、あやまった日常生活から来た現象としか考えられないような気がします。
     現在の私どもの日常は、余りにも不自然になり、余りにも人工的になりすぎています。

      食べもの 食糧の豊富になるにつれて、真白についた純白米飯(または漂白して真白にしたパン)に、肉、魚、卵のおいしい添物ばかりそえて飽食し、バタや砂糖の消費も多くなっています。
       しかし、それらに釣り合わねばならぬ筈の野菜、ことに良質の緑葉類は逆にしだいにへってきています。
       そして、細菌を恐れて、何もかもよくたいて食べています。
       この、いかにも衛生的にみえる食べ方は、実は、大変偏った不完全食になっているのです。
       しかし、その欠陥は、食品強化か薬剤の使用によって、簡単に改善されるかのように誤解され、あるいはそういった錯覚に陥っているようです。
       そのうえ、食品そのものの質は低下し、あまつさえ有害なものさえ少くないという状態です。
      農作物 化学肥料の濫用によって荒廃しきっている耕地に栽培される作物は、それ自体すでに軟弱で病虫害をうけやすく、毒力の強い農薬の助けによって、ようやく生産をつづけている有様です。
       したがって、不健康であるばかりでなく、栄養的にも劣っており、農薬の害をあたえる危険さえももっているのです。
       促成、抑制、トンネル栽培といった、さらに不自然な生産法によるものともなれば、その度はいっそう甚しいわけです。
      畜産物 この不健康で劣質、または有害な農作物を飼料としてあたえられ、不自然な環境(畜舎)に飼育されている家畜。
       これまた病弱で、人間なみの薬剤のささえによって、辛うじて生命を維持しているのです。
       これでは、彼等が供給する乳も卵も肉も、すべて健康で良質でありうる筈がありません。
       いやそれどころか、繁用される薬剤(病気の予防や治療のためだけでなく、増産を目的とする薬剤さえ使用されています)の、これらの食品への移行もさけられません。
       また、貯蔵のために使用される薬品も少くありません。
      加工食品  なお、食品加工のさかんな今日。あらゆる食べもの飲みものが、大なり小なり人工を加えられているといってもよいのですが、その際に使用される薬品、色素、人工甘味などの種類にいたっては、まことに夥しい数に上っています(学者によれば、千種以上にも上るだろうといいます)。
       これら、農畜産用薬品や食品加工用添加物の中には、栄養素を破壊したり、その吸収利用をわるくしたりするものもあれば、肝臓、腎臓、造血器、神経系などの重要臓器をおかすもの、アレルギー反応を原因するもの、甚しくは癌の発生を促がすものなど、有害有毒なものも少くありません。
      洗剤  食品に付着している下肥や農薬や放射能性降下物などの汚染を除くために推賞されている洗剤も、決して無害でないことも知られています。
      医薬品  さらに見のがせないのは医薬品です。ことに新薬の濫用。
       ひどいのは薬あそび(睡眠剤、麻薬、覚醒剤など)。
       ある種の睡眠剤に、胎児に奇形を生ずるもののあることは周知の通りです。
       また鎮痛剤のある種のもので慢性腎臓炎のおこることも警告されています。
       もとより、そういう影響は幼いものほど著しいわけですが、これらの事実からすると、その他のものに対しても、またごくありふれた薬の中にも、このようにハッキリと形にあらわれないまでも、内臓のどこかに、何がしかの影響をあたえるものがありはしないだろうか。
       少くとも、そういう危険な薬品の存在を否定することはできないように思われます。
       またこのことは、ひとり医薬品だけに限ったことではなく、農畜産用や食品添加用、その他すべての薬剤でも同様です。
      その他  化粧料の中にも、また、近代工業の花形である化繊やプラスチック、その他の化学合成品も、決して、必ずしも無害のものばかりではありません。
       河川、池沼、湖水、井水にも、下水や農薬や洗剤、あるいは礦山や工場の廃水が流れこみます。
       古から味を誇った良井の水も、今では、うっかり安心して飲めない状態です。
       水道水には消毒薬がうんとはいっていますし、中にはムシ歯予防の目的で弗化物の混入されているところもありますが、これらとても、ながい間にも、果して何らの悪影響がないものでしょうか。

      海産物  糞便の海中廃棄のためや工場からの廃棄物によって、海水や近海産の魚介も不潔ないし危険なものとなり、また、なりつつあります。
      空気  大気は塵埃、煤煙、工場廃気、排気ガス、スモッグによって汚され、明るい日光を奪われ、有害な空気を呼吸させられている始末です。
       そしてエアコンディショニングのビルの中には人いきれとタバコの煙がうずまいています。
      放射能  それに、今ではこれらすべてに放射能の害さえも加わっています。

     こうして自然(太陽、大気、大地)の恩恵にそむいて、食べもの、飲みもの、空気にいたるまで、あらゆるものが人工的にけがされ、有害あるいは有毒物と化し、これをとり入れることを余義なくさせられている現代人は、本当に健康でありうることでしょうか。
     そればかりか、便利になって運動は不足し、煖冷房に寒さ暑さに対する鍛錬を忘れ、困苦欠乏を知らず、安易になれ、あまやかされて、心身ともに抵抗力を失いだらけ切っているところへ、騒音と交通地獄の中に、いよいよ激しさを加える生存競争。緊張につぐ緊張、闘争につぐ闘争に、いらだちだったストレスの連続です。
     こうして不健康となり病弱となる。
     そこで、赤ん坊の時からいや胎内にある間から、万事ひかえめに、大事にされ、大切に扱われて、いよいよひ弱さを加え、病気しやすくなる。
     そして、やれ強壮剤だ、栄養剤だ、予防薬だ。安定剤、強肝剤、強精剤、若返り薬だと、何もかも薬づくめにする――ながい間には果して本当に安全がどうか保証かねる薬によって。
     この、余りにも人工的、反自然的になりすぎた、そして、余りにも薬にたよりすぎた日常生活では、かがやかしい医学の進歩にも拘らず、不健康なものや病人、ことに成人病、高血圧、動脉硬化、癌、糖尿病、肝臓病、腎臓病、アレルギー疾患、神経症、精神病、妊娠障碍、未熟児といったものが、ドンドンふえて来るのも、けだし余りにも当然ではないでしょうか。

    もっと自然に
     もっと自然のままの姿にもっと人間の自然に則した正しい日常生活にかえらなければ、おそらく真の健康はえられないし、真の幸福はもとめられないのではないでしょうか。
     古人は健康法として、頭寒、足熱、腹八分と訓えています。
     もっと頭を冷やしましょう。
     静かに正しい自然の姿をみつめましょう。
     そして、きれいな自然のままの太陽、大気、水、土に親しみましょう。
     自然は決してなまやさしいものではありません。
     子供のときから、出来るだけ多くの困難になれ、欠乏にたえしのび、あらゆる刺戟にたいして心身を鍛錬し、人生行路に横わるであろうあらゆる苦難にうちかつだけの体力と気力を養うのです。
     そして、自然の恩恵にみちみちた、もっと自然的に健康的(化学肥料だけにたよらず、深耕と十分の堆肥による自然的健康農法で。そうすれば農薬の必要もなくなる)に栽培した自然の食品と、それをあたえて飼養した健康な家畜が供給してくれる食物を、なるべく自然にちかい形で利用し、良質菜葉(ことに生の)を十分に配し、うまく釣り合いのとれた完全食を、よくかんで、控え目に食べましょう。
     治病や健康の根本は、決してむつかしい理窟にあるのではありません。
     また、決して高貴薬で買いもとめられるものでもありません。
     それは、こうした正しい自然の、簡素な日常生活にあるのだということを、年のはじめにあたり、トックリと考えてみようではありませんか。


1-4. 肺ガンと大気汚染<

     喫煙が肺ガンの原因になると大きくいいふらされているが、この説を反論する向きも少なくない。国立保健センターのウィルヘルム・ヒューパーもその一人。
     最近の報告によると、タバコよりもディーゼル・エンジンやガソリンなどの分子による大気汚染の方が肺ガンをひき起こす公算が大きいと主張している。
     同氏は過日ペンシルバニア州の大気汚染対策委員会に臨み、

     「地球上のどこを眺めても、空気汚染度の高い工業都市の住人ほど肺ガンの発生率は大きく、シガレットの煙の発ガン成分は何も確かなものは見出されていない・・・」
     と述べ、特に工業国イギリスの医師会が肺ガンをタバコのせいにいいふらしているのは解せないとつけ加えた。
     しかし、保健センターの研究員側にはやはりスモーキングが発ガン原因の主役であることを支持してヒューパー氏に対決しているが、同氏はタバコの害を発ガン以外におそれ、すでに20年前から禁煙しており、どこまでも大気汚染がガン発生のクセ者と主張してやまない。
    (Newsweek,June25,‘62)


1-5. 水のケイ酸

     水の中に溶性の硅酸の多い地方には脳卒中死が多く、少い地方には少いそうだ。
     これは、硅酸が脳の血管の動脈硬化の発生と、何かの関係があることをしめすものといってよいだろう。
     ところで、尿がアルカリ性だと、ということは体液がアルカリに富んでいるということだが、硅酸の尿中への排出が増す。
     しかし、尿が酸性だと、硅酸は体内に蓄積するという。それは、酸性の食品をとることが多いと、硅酸が体内にたまり、動脈硬化の原因になるかも知れないが、アルカリ性食品の多い場合は、硅酸の排出を促かして、動脈硬化の発生を防ぐようにはたらく、ということだ。
     硅酸の多いわが国では、また、ことに脳卒中の多い地方では、カルシウムに富んだ良質ナッパをしっかり食べる必要があるわけだ。


1-6. PCB汚染と蛋白源

     食品のPCB汚染がやかましくなって、重要な蛋白源である魚介類をはじめ、肉類、卵、乳などにも、安心して食べられるものが、殆んどなくなってしまった。
     動物蛋白が栄養上大切であることは、いまさら、いうまでもないので、せめて、比較的汚染度の軽い肉類や遠洋魚などにすべきだろうが、これとて、はたして、どれだけ安全か。
     一々検査されるわけではあるまいし、検査成績そのものにしても、はたして、どれだけ信頼できるかと疑いたくもなる。
     とすると、動物食品はなるべく控え目にし、なにかほかの、もっと安全なもので補うほかないわけだ。
     そのためには、大豆、菜っ葉など良質の植物蛋白をもちいることと、栄養のバランスをよくとり、栄養素の、ことに蛋白質の節約をはかることだ、と思う。

    大豆
     大豆が良質の蛋白質(アミノ酸組成も動物蛋白にちかい)にとんでいる(34.3%)ことは、よく知られている通り。
     そして、他の栄養素のあり方も、肉類に比べはるかに有利。
     たとえば、肉類(獣鳥魚介)を完全食にするには、大凡、2〜3倍の良質菜っ葉が必要だが、大豆は1/2〜同量で十分。
     それだけ完全食になりやすい。

    菜っ葉
     また、菜っ葉には、すべての栄養素がそなわっており、これを十分にとれば栄養のバランスがずっととれやすくなる。
     バランスがよくとれていれば、つまり完全食であれば、不完全食のばあいに比べ、栄養素の利用がよくなるので、蛋白質に必要量も少なくてすむようにもなる。
     その上、緑葉の蛋白質は、その量こそさほど多くはないが(コマツナ2.3、ケール3.9、大根葉5.2%)、質的にはすこぶる優秀。肉類に匹敵するものであることも注目されなければならぬ。
     それは、組成アミノ酸の科学的分析の結果からも、よくうなづけるし、ゾウ、サイ、キリンなどのように大きな動物の食糧が緑葉類だけであること。
     そして、蛋白質は蛋白質からでなければ出来ないことからしても、いかに、緑葉の蛋白質がすぐれているかがわかろう。
     そこで、主蛋白源を大豆にし、それに、十分の量の菜っ葉をそえ、蛋白質の節約をはかるとともに、緑葉の蛋白質を利用するようにすれば、決して蛋白不足に陥る心配はないわけだ。
     なお、熱量食にも、精製穀(白米飯、白パン、白ウドン)よりは、ミネラル、ビタミンにとむ玄米麦や雑穀、豆ことに芋などにすれば、いっそう条件は有利になる。
     イモ(ジャガイモ・サツマイモ各300グラム)マメ(大豆100)ナッパ(ケール1000、青汁にして4合)食だと、それだけでも蛋白質は、もう80グラム(標準1日所要量70〜80)以上になる。
     こうした食をタテリとし、適宜動物食品を配位すれば、嗜好の上からも無難であろうし、動物食品だけにたよる場合より、はるかにPCBその他にさらされる危険が少なくなるだろう。

    (遠藤)


1-7. これでよいか洗剤対策 人体にも悪影響

     中性洗剤による環境汚染、人体への悪影響についてはこれまでもくり返し各研究機関から警告が出されている。特に、台所用中性洗剤は主婦に多い“湿シン”の犯人といわれるが、その毒性については37年11月、食品衛生調査会が

    「中性洗剤は野菜、果物類、食器などの洗浄に使うのは、洗浄の目的から著しく逸脱しない限り、人の健康をそこなう恐れはない」
     −との答申を行ない、厚生省では一応“無害である”との見解に立っている。
     しかし、国立衛生試験所ではハード型中性洗剤に界面活性剤(よごれをつつみこみ、よごれを分離、再び元へつかないようにする)として含まれているABS(アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ)の慢性毒性試験を続けており、岡山県消費生活センターでは「調査会の答申も“普通の使い方をする”との前提にたった見解とみた方がよい」と話している。
     では、中性洗剤の普通の使い方とはどの程度か−というと、各家庭でははっきりした目安がないのも事実である。
     この結果、ことし初め兵庫県西宮市生活課が行なった台所用中性洗剤の調査では「肝臓やジン臓疾患になる恐れがある」と指摘されている。この調査は大量の中性洗剤を使用する学校給食調理員163人の面接と浜甲子園団地の主婦千人のアンケート結果をまとめたもの。
     これによると、給食調理員の96.3%が手荒れを経験しており、うち12.1%がかゆみと水ほう、35.6%がヒビ割れ、24.8%がツメの変型などの症状を訴えている。特に26人(16%)は肝臓、ジン臓の障害を経験、うち2人は医師から「中性洗剤が原因」と診断されたという。
     さらに団地主婦のアンケートでも、49%が手荒れを訴えており、うち水ほう、ヒビ割れ、ツメの変型など訴えているのは37.5%で、全治するのに1週間以上かかったものが11.1%もいたという。
     岡山県下ではまだ同様調査はなされていないが、関係者は、同程度の被害はあるとみている。加えて家庭で使用された中性洗剤は、各戸単位では微量とはいっても、総トータルでは、ぼう大な量になる。
     このため岡山市下水道終末処理場(同市七日市)では、下水処理工程に“アワ消し装置”をつけて“アワ公害”に対処しているが「浄化処理した下水の中から中性洗剤を完全に除去するのは現在の技術では不可能」という。
     このほか、中性洗剤は自然界の持っている天然の浄化作用をも次第に弱めており、最近では地下水が汚濁する原因の一つに中性洗剤があげられている。
     香川大学農学部の岡市友利助教授(海水利用学)は瀬戸内海の赤潮と有機、無機質との関係について「中性洗剤、農薬、肥料などに含まれている窒素やリン酸などが赤潮発生の原因となっており、家庭での中性洗剤の使用規制を急ぐ必要がある」と警告している。
     また、岡山保健所でも一家庭で便器を洗うときに中性洗剤を利用するが、そのまま水洗いして流すので、簡易浄化そう内でアワとなり、浄化そう内の微生物が死滅して、浄化そう本来の機能(微生物による汚物の浄化)を台なしにしている」と、誤った中性洗剤の使用を指摘するなど中性洗剤についての問題は山積しているわけだ。
     だが、「普通の使い方をすると毒性はない」というわけで、いっこうに中性洗剤対策は打ち出されない。
     岡山県衛生部でも「中性洗剤問題はかねてから研究しているが、すべては国の方針なので」と困った表情である。ハード型中性洗剤にかわって、最近はソフト型洗剤が市販されるようになった。
     ソフト型ではABSのかわりにLAS(リニアベンゼンスルホン酸ソーダ)また高級アルコール系洗剤には高級アルコール硫酸エステルなどの界面活性剤が使用されている。
     これらはABSに比べバクテリアによる分解は大きいものの、毒性についてはあまり差がないといわれている。(以下略)
     (47・6・23 山陽)


1-8. 洗たくは米ヌカで

    手荒れなく 洗浄力バツグン
    彦根の婦人団体が運動

    【彦根】米ヌカでワイシャツも洗えます−。
     びわ湖を死の湖から守るため中性洗剤を追放しましょう−と滋賀県彦根市婦人団体連絡協議会(早崎ひさ会長、4千5百人)の主婦たちが、中性洗剤を台所から締め出して米ヌカを洗剤代わりに使う運動に乗り出した。
     中性洗剤は手指の炎症や皮膚を通して肝臓障害を起こすなど人体に悪影響を及ぼすとして最近問題化、とくに滋賀県では中性洗剤がびわ湖汚染の最大理由にもあげられている。
     このため早崎会長は今月はじめ、むかしの人が生活の知恵から生み出した“米ヌカ”に着目。
     さっそく県消費生活センターへ米ヌカの分析を依頼したところ、100グラムの米ヌカの成分は

      ▽脂質   18.2グラム
      ▽炭水化物 45.1グラム
      ▽灰分   12.5グラム

     でいずれも洗浄力があることがわかった。
     米のとぎ汁に食器をつけ、ヌカ袋で洗ったところ、予想通り洗浄力は上々、おまけに食器につやが出、手の荒れもなくなった。
     さらに洗たく機にも米ヌカ袋(50グラム入り)を入れ肌着やワイシャツの洗たくにためしたところ、やはりよごれや黄ばみがとれることがわかったという。
     この成果をこのほど開かれた同婦連の役員会で報告、40人の役員がそれぞれの家庭で実験した結果、その効果にあらためてみんなびっくり。
    (48・4・20 サンケイ)



1-9. 粉せっけんはお湯で使用を

    合成洗剤と変わらぬ効果
     (京都)合成洗剤に含まれているリンによる海や湖の水質汚濁が各地で深刻な問題になっているが「粉せっけんを使ってお湯で洗濯すれば合成洗剤より効きめがあり、水の汚れも防げる」という実験結果がこのほどまとまった。

     合成洗剤はリンがもたらす赤潮などの水質汚濁のほかに、ABS(アルキルベンゼン・スルフォン酸ソーダ)が人体に悪影響を及ぼすと消費者団体などから販売禁止を求める強い声が上がっており、この研究は水質対策に悩む自治体と家庭の主婦にとっても一挙両得の解決法になりそうだ。

     “せっけん洗たく法”を研究、提唱しているのは滋賀大教育学部の板坂修教授(生化学)。
     京都市で開かれている国際環境保全科学会議でも琵琶湖の富栄養化についての共同調査結果を提出している。同教授の話によると、粉せっけんをお湯に溶かして合成洗剤との洗浄能力を比較したところ、80度のお湯に入れて洗うと合成洗剤より効きめがあることがわかった。

     50度のお湯でも合成洗剤と変わらない効果があり、汚れがきれいに落ちる。ふろの温度が普通42、3度なのでやけどの心配もないという。
     合成洗剤メーカーは、粉せっけんは合成洗剤に比べ洗浄能力が劣り、せっけんカスでかえって水が汚れる――と合成洗剤の効用を説明しているが、板坂教授は

     「お湯を使えば洗浄能力は変わらない。日本では軟水が多く水を軟らかくするためにリンを使うこともない。カスはすぐ分解するので大丈夫」
     と自信たっぷりに反論している。
    (50・11・20 山陽)



1-10. 睾丸の萎縮

     このごろ、男子の不妊症、つまり、精子に原因のある不妊症がかなりある。
     放射線やオタフクカゼで睾丸がやられ、不妊症になることはよく知られているが、今では、いろいろの環境公害が原因になっていることもかんがえられる。
     たとえば、DDTその他の農薬や抗生剤によって、またPCBとABS(中性洗剤ハード型)の複合汚染でも睾丸の萎縮をおこすといわれている。
     また、慢性の軽い鉛中毒でも精子に異常のあるものが少なくないというから、排気ガスの鉛による空気の汚染も問題かも知れない。
     といったぐあい。環境のすっかり汚れてしまった現在、まだまだいくらでもあることだろう。




1-11. 秘境祖谷渓を訪ねる

     10月はじめ、久米さんの招きにより、ご郷里、平家残党がこもったという、四国の祖谷渓を訪ねた。土讃線の阿波池田駅から、車で、大歩危経由の新街道を、東祖谷の中心地京上まで約1時間半。
     翌日は、さらにさかのぼって剣山リフトの登り口まで。これまた約1時間半。日本の秘境の名にふさわしく、東西50キロは裕にあろうがその間、4〜5ヶ所、やや家の密集したところがあっただけで行けども行けどもただ、けわしい山また山、きりたった崖のふかい渓また渓。
     そのところどころ、けわしい山の斜面に、へばりつくように点在する家。
     あくまで緑の山、すみきった空・水。まことすばらしい環境。
     さぞかし、たぐい稀な健康地だろうと思ったが、村役場の保健婦さんの話によると、高血圧、したがって卒中をはじめ、糖尿病、胃潰瘍、リウマチ、神経痛などをわずらっているものが少なくない。歯の悪いものも多い。
     開業医は二人、内科と婦人科。歯科は土・日曜、池田から出張診療とのこと。
     なんとも、けしからんこととさえ感じたが、どうやら、この不健康化の原因は、はやくから営林署の舗装道路が開通したこと。そこの仕事や、道路の改修工事や砂防工事などで、現金収入がふえ、村民の懐がうるおって来たことにあるらしい。
     もとは農業が主であったが、転業したり、都会に出たりで、畑は荒れ放題となっていたり、杉が植林されたところも少なくない。そして、毎日の野菜さえ店で買っている、とのことだし、もちろん、店さきには、都会なみの食料品がいっぱいならべられている。
     また、女性のドライブ熱がさかんだそうで、途中出会う小型車のドライバーは、おおかた、わかい女性ばかりだった。




1-12. 環境の保全は各人の責任で

     日本人は一体、環境を破壊する製品を買わなくてはいけないとでも思っているのでしょうか。いや、そんなことはないはずです。コンパクトディスク(CD)が登場し、LPに取って代わりつつあるように、生産者である大企業は消費者の意向をくんでくれています。
     ですから、消費者の買うか買わないかの意思一つで、ヘアスプレーなど環境破壊の恐れのある商品を市場から駆逐できるのです。
     日本には1億2千万人の人びとが住んでいますが、めいめいが一つの方向へむけ積極的に活動すれば、その集団的パワーは相当なものです。
     スーパーマーケットから合成洗剤を買うのではなく、地元の昔ながらの店へ足を運ぶ労をいとわずせっけんを買いましょう。そうすれば、河川汚染にストップをかける一助にもなりましょう。
     また、買い物に行く時は常に自分のバッグを持ち歩き、スーパーなどで積まれている、闇夜にぬくぬくと大きくなったキノコのごときプラスチック製買い物かごなど拒否しましょう。
     最近、私と妻は、携帯用小箱入りの漆器のしゃれたはしを買いました。なぜこれを常時愛用するかといえば、割りばしを消費することの無駄を省くためです。この気持ちは日本人の友人にも何回か言ったことがあるのですが、それでも彼らは相変わらず割りばしを使っています。
     しかし、考えてみて下さい。だれもが割りばしを使わなくなれば、1年でどれだけの木材資源が節約できましょう。政府や関係機関が何かしてくれるまで待っていてはダメです。自分たちの環境は自分たちが責任を持って守らなくてはなりません。
     さ細なことでも、気持ち一つで世界をよくする無限の可能性を秘めています。一回一回は小さくても、百万回積み重なれば、これはもう大変で、目に見える実効は十分にありましょう。

    (ジャパン・タイムズより)







ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 青汁 健康と青汁 上の階層へ
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法

Copyright 2010 08 田辺食品株式会社